夜行観覧車

著者 :
  • 双葉社
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レビュー : 1099
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575236941

作品紹介・あらすじ

高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。

感想・レビュー・書評

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  • この小説を読んで思い出したのが、東野圭吾さんの「手紙」です。
    犯罪者を家族に持つという所が共通点。
    まだ「手紙」を読んでいない方は、読んでみてください。

    「夜行観覧車」は犯罪を犯してしまった母親と
    これからどうなるのか不安な三兄妹。
    そして、向かいに住む、家庭内暴力をふるう娘をもつ家族。
    そして、高級住宅地に住む人々。
    それらの人々が絡まって話が進んでいきます。

    読後感、とても良かったです。
    最初から途中までは、意地悪で心が狭く有閑マダム的に描かれていた小島さと子が、最終的にはとても良い人に描かれています。
    そして、比奈子(犯罪者の娘)の友人や隣人たちが、悪質な張り紙をはがしていく。

    家族って、一つ歯車が狂うとここまでおかしくなるのか、と怖くもありますが、それでも家族は家族。捨てられるものじゃない。
    そして、犯罪加害者の家族の周りに存在する、助けてくれる人々。
    内容はダークですが、心温まる場面で終わりましたので、
    読後感は良かったです。

    生徒にも薦められます。

  •  図書館より
     高級住宅地で起こった殺人事件の真相を、事件の起こった高橋家、その隣に住む遠藤家、そしてその近所に住む小島さと子、それぞれの視点から迫っていくミステリー。

     『告白』の湊さんらしい人間のドロドロっぷり(笑)。コンプレックス、エゴ、親からのプレッシャー、ストレス、現実逃避……、事件の真相は? というミステリ的な興味はもちろんありますが、読めば読むほど明らかになっていく、各人物たちの抱えた黒い部分に嫌悪を覚えつつも、
    筆の巧さ、そしてなによりも舞台や各人物の境遇の置き方が巧くその黒い部分にどこかしら共感や理解を覚えながら読み進めてしまいます。

     一見幸せそうに見えた高橋家と娘が常に癇癪を爆発させている遠藤家、しかし事件が起こったのは高橋家の方。しかし読み進めてみると遠藤家でなぜ事件が起こらなかったのか、なぜ高橋家で事件が起こってしまったのか、という境界線がぼんやりと見えてきます。

     読んで思ったのは家族という共同体の曖昧さ、そして家族の平穏は常にギリギリの綱渡りの上で成立しているのではないか、ということでした。

     個人的に小島さと子の悪意がなかなかに強烈でした。善良そうな人かと思いきや、自分の価値観のためにやること、そして何よりそれをとがめられた時の反論が
    理解はできてもまったく共感できないもので、こんな行動原理でこうも自分が正しいように言い返せるんだな、とある意味感心してしまうほど。そんなさと子ですが、終盤では意外な面もみれて、人間って分からないな、とも思いました。

     まとめ方が少し雑というか、無理やり話を希望を残した感じで終わらせようとしているのが、少し違和感がありましたが、改めて「やっぱり湊さんだなあ」と思わせられる作品でした。高橋家の子どもたちは本当に頑張ってほしいなあ。

  • 高級住宅地「ひばりヶ丘」
    娘の狂ったような癇癪で内側はボロボロになっている遠藤家。
    整った外見と素晴らしい内面を持ち合わせた高橋家の人々。

    ある日、高橋家で殺人事件が起こる。犯人は母親。被害者は父親。

    高級住宅街で起こった事件に、マスコミは盛り上がり、高橋家に嫉妬していた遠藤家も興味津々。
    遠藤家の隣人、小島さと子もおばさんパワー全開。

    残された高橋家の子どもの出した答え。
    高橋家に便乗して答えを出した遠藤家。
    自分の価値観に従う小島さと子。

    ひばりヶ丘でそれぞれの夜が明ける。

    --------------------------------------------------------

    遠藤家にすごく人間味を感じた。
    家のなかで暴れることで自分を保つ娘、彩花。
    ステータスに執着する母、真弓。
    壊れる家族の前に無力な父親、啓介。
    自分よりものしか叩けないし、自分より優れたものが壊れていくのが気になってしょうがない。これぞ人間の嫌なところ!と言った家族。

    家族内での殺人事件、最終的に高橋家の出した答えは単純にすごかった。
    生きてる者を優先させる行為。
    母親を減刑させるために、父親に汚名を着せるのはなかなかの発想力。

    小島さと子は結果的に遠藤家を救ったけど、高橋家への対応がふわふわしていて一貫性がなかったように思ってしまった。

    なんていうか、出てくる家族みんな狂っている。

    遠藤家が全然救われないのはよかった。
    壊れてしまったものが簡単に直るはずがない。

    読み終わってからずっと考えてたのは、当事者である高橋家の母親が捕まっているので、全て推測にすぎないということ。
    息子の教育方針についての夫婦の意見の違いも、息子と遠藤家の父親の証言でしかない。

    きっとこうだよ!信じられないけど、そうかもしれない‥‥間違いないよ!と推測で話を進めていく、登場人物が一番怖かった。滑稽にすら思えた。

    この小説のMVPは高橋家長男の彼女、明里。
    圧倒的に狂った価値観で物語のなかの異常な世界観をリードしていたように思う。最高に狂気。

  • 『告白』以来の湊かなえさんの作品を読了。

    エリートという設定、血がつながっていない家族の関係性や
    「手術室」などという単語が出てくるあたり、
    きっと元ネタは2006年に起こった『奈良自宅放火母子3人殺人事件』だろう。
    この事件では、放火事件の他にも、
    原則非公開の少年審判や、少年の供述調書が外部に漏洩し、
    それが出版されたりして騒ぎになった事件でもある。
    どこにでもある一家の詳細なプライバシーがズタズタに暴かれ晒され、
    あることないことを書き立てられた事件として記憶している。

    あと、著者は2007年に発生した
    『渋谷区短大生切断遺体事件』も参考にしたのではないかと思った。
    この事件は、身内をバラバラに切断するというその猟奇性もさることながら、
    両親が被告である次男をかばって、
    被害者である長女を批判したとも取れる手記を発表して物議を醸した事件でもある。
    両親は裁判でも検察側証人ではなく、弁護側証人として出廷して当時話題になった。
    この事件もまた、こぞって騒ぎ上げられた痛ましい事件である。

    登場人物の醜悪な内面の描写が剥き出しにされるのに加え、
    今作はミステリー要素の部分は少なく、
    代わりに家族の崩壊と再生が大きなテーマになっている。
    著者の作品に頻繁に登場する謎解き要素もどんでん返しもないため、
    肩透かしをくらったように感じる人もいるかも。

    ある出来事をきっかけに、
    家族をめぐる人々の本音と真実が暴かれてゆく展開は、
    サム・メンデスの『アメリカン・ビューティー』を連想させた。

    正当化、責任転嫁、コンプレックス、恥、世間体。
    登場人物は自分で処理しなければいけないことを己の弱さのために、
    すべて他人のせいにして受け止められずにいる。
    そういった自己中心的な登場人物の心理や行動に嫌悪しつつも、
    自分が同じような状況におかれた場合、絶対にしないと誓えるかというと、
    そうとも言い切れないところに己の心の弱さを自覚する。

    最後の記事は、裁判で証言された部分をもとに書かれた記事だと思うし、
    それから推測できることは、裁判で世間に真実を明らかにするよりも、
    残された家族で力を合わせて生き抜いていくほうが大切だと決断したということに
    著者の作品では珍しい、かすかな希望が描かれている。

    「どんな感情を持っていても、家族であり続けなきゃいけないんだから」
    「そうだな。家庭内の事件に、他人の裁きはいらない。
     事実のみ、俺たち家族だけが知っていればいい」(p.326)

    帯にあった松たか子さんの言葉、
    『息もつかせぬ展開の連続だった。家族が摩擦を起こしながら、
     それでも家族であり続ける姿は、胸が痛むほど美しい。
     家々に灯るあかり、それは希望そのものだ。』は、素晴らしい感想だと思った。

    「ラメポ」はドラマでは夏木マリさんが演じているんですね。
    自分は白石加代子さんをイメージしながら読みました。
    あと、装丁がいい仕事してますね。家族の繊細さがうまく表現されていて。
    スピンが2本あった理由は、最後までわからずじまいでした。

  • 正直そこまでめちゃくちゃ面白いわけじゃない。
    むしろ。

    劣化版告白なのか?

    とか思う気もする。
    それでも。
    でもでも。
    続きが気になりまくって。
    移動中もずっと読んでた。

    時間が開けば。
    手が開けば。
    目が開けば。
    気がつけば。

    読んでた。

    そして家族についてとか。
    他人についてとか。
    色々考えさせられたんです。
    ただ単に家族が大事とか。
    そういうことじゃなくて。

  • 登場人物すべてに嫌な感情を持ちながら読んだ作品。

    絶対、自分の家族はこうなってはいけない! と思わざるを得ないストーリー。

    小説としては、湊かなえ調全快の面白い作品です。

  • ミステリーで殺人事件が起こればそれは犯人やその動機やトリック、事件の真相に面白みを感じるものだと思っていました。
    そういう意味では読み終わった直後の印象は物足りなさを感じました。

    でもこの物語の主人公は殺人事件の当事者家族ではなく、そのお隣さん家族。
    憧れと僻みを抱いていたエリート一家で起こった事件をきっかけに、自分達の家族のあり方を考え、完結していっていると思いました。

  • 湊かなえらしい作品。どこかにいそうな家族がでてくる。誰もが抱えそうな気持ちを抱えている。それぞれの家族が、すこしづつ影響しあって、一つの本になっている。湊かなえ得意の表現だ。
    ドラマ化されたが綺麗すぎた感じがある。やっぱり原作の方が人間臭さあって面白い。

  • ドラマは観ていませんが、かきたかったテーマはこんな感じでしょうか。

    ・「家族」という断ち切れないつながりに苦しめられ、でも、救われていく
     (遠藤家)
    ・仲がよさそうで裕福。理想の家族に見えても、悩みや事情を抱えている。家族という形をとっているけど、結局は個々の人格の集まり。
     遠くの親戚より近くの他人
     (高橋家)
    ・大好きな息子との二世帯同居を夢見るおばあさんの孤独感
     (小島家)

    遠藤家と小島家は、どこの家族でも起こりそうな問題でスリル満点でしたが、肝心の高橋家の描写がちょっと少なくて、残念。

    なかなか難しいですが、今、自分の周りにあるものに感謝しつつ、身の丈に合った生活をしていきたいものです・・・

  • 野次馬丸出しで女性週刊誌の中にありがちな他人の家の中を覗き見ている気分になる一冊。さまざまな登場人物の心中や言い分を率直に描いていて引き込まれた。空恐ろしい気分になる。あっという間に読み終えてしまった。

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プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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