ユリゴコロ

  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575237191

感想・レビュー・書評

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  • ユリゴコロ=ヨリドコロ。
    一般的でない方法で自我を埋めてその満足感をユリゴコロと表現している。その方法でないと自己肯定ができない。ユリゴコロを持った登場人物の生育環境がおかしい訳では無く、外傷的なモノが要因だとされている。なので、そのユリゴコロは一般的とは言えないもののはずで、それなのにそれにまつわる物語がこんなに心を動かすのは何故だろうか、、と考えていてふと「その後の不自由」という本を思い出した(http://booklog.jp/users/whiteprizm/archives/1/4260011871)。「その後の不自由」は実体験。自傷的な行動で自我を埋めざるをえなかった人たちが何故そうなるのかを説明している。ユリゴコロは自傷という方法で埋めないのだけれど、きっとその自己肯定できない人格の仕組みが似ている。そして何とか社会に受け入れられる形、家庭というものを作る事ができ、幸せを手に入れる過程が美しい。そして過去のユリゴコロのせいでそれが壊れてしまう。でも、最終的にその人物とユリゴコロが子供を守る事に繋がっていく。
    そもそも皆小さな頃は色々なユリゴコロを持っているのかも知れない。サンタクロースも神様も、小学校裏庭の池の氷を保護しようと思った事も。それは大人になって消えてしまったり、持ち続けていてもその人の死で失われてしまったりする儚いものだけれど、芸術になったり誰かの役に立ったりしなくとも、それが他の人に伝われば、散ってしまった桜のようにその人の心を動かす。何故ならその人もまた確実に死んで、その人のユリゴコロも消えてしまうから。同じものを持っているから、その儚さに共感して心が動く。ましてそれが小さい子供の命を守る事と強く絡まった物語になっているのなら。。

  • 以前、「ジムトンプソン祭り」でジム・トンプソンっぽいっと紹介されていたので気になっていた本。
    サイコ・キラーの告白手記からはじまって、家族愛で終わる話。
    最初の手記の部分は面白かったのが、どんどん物語がつまらなくなってくる。並行するもうひとつの話なんて「典型的すぎて現実味がない」とあるように面白みがに欠ける。
    もっと「あっ」と思わせたり、ゾクゾクさせてくれる何かが欲しい。「ユリゴコロ」でもっとひっぱればそうなったかもしれないのに残念。

  • 読んでいてきつい話だった。
    生きることの危うさ。
    人と関わるということ。
    ギリギリのラインに立たされた時、人はどうするのか。
    心の危うさを持つ人を家族に持つ辛さ、きつさ。
    絆。
    でも、最後はふたりの絆に涙が出た。

  • 一気に読了の、朝6時

    本としての評価は☆5、すごくよかった

    ユリゴコロを求めて犯した殺人、心の拠り所のアナタと息子
    誰かのために…何かのために…

    でももう一度読みなおしたいかとなると、心にずしんと来るものがあるからしたくないってことで☆4です

  • 沼田まほかるさんはホラーミステリのジャンルになっているので、ずっと読むのを躊躇していた。しかし本屋大賞ノミネートした作品でもあるし、思い切って手に取った。

    初めはなかなかエグイ…。静かで抑揚のない語り口調がかえって異常さを際立たせている。
    でも途中からはそのエグさはなりを潜め、ミステリーとして一気に読めた。よくまとまっていて面白いと思う。むしろきれいにまとまり過ぎか。

    手記の書き手の心理に共感するのはかなり難しいが、こういう生き方しかできない人もいるのかなとは思った(殺人を次々と犯すことは別として)
    主人公の男性、振り回されてばかりで少し情けない気もする。

  • 序盤で色々読めたけど、良い作品だ。

  • 嫌ミス(いや~な感じのミステリ)だけど妙に読みたくなるという作風で評判の作家。
    これも衝撃的な作品だけど、構成がはっきりしていて、読みやすい。
    「猫鳴り」のほうが純文学的ねっとり感がありましたね。

    亮介は、「シャギーヘッド」というペットと過ごせるカフェを経営していました。
    身近で、次々に意外な出来事が起きます。
    店で働く千絵と婚約したら、二ヶ月後に突然、部屋を引き払って行方不明に。
    癌宣告された父が治療を拒み、家族は父の死を覚悟する日々となった。
    そうしたら父よりも先に、母の美紗子がふいに交通事故死してしまったのだ。
    その一ヶ月前頃から、母は様子がおかしかった。
    ある程度は流行っていたカフェも、店長の亮介が暗い顔をしていて元気がないので、スタッフの細谷さん任せとなっている。

    父の家の押し入れで、遺品らしき品と、「ユリゴコロ」と表紙に書かれたノートを見つける。
    それは、殺人者の手記だった。
    幼い頃、自分から喋ることがなく、何度も精神科にも連れて行かれたという。ユリゴコロはその時に聞いた医者の言葉を聞き違えたもの。
    創作か? 誰が書いたのか?
    父か母としか思えないが、字でははっきりしない。

    亮介は子どもの頃に、自分が一時入院していて退院したとき、母親が別人に入れ替わったと感じたことがあった。
    あれは本当だったのか…?
    大学生の弟の洋平とは、母親が違うのか?
    父に隠れて、少しずつ読み進む手記。
    弟に協力して貰い、戸籍を調べ始めます。

    淡々と書かれている殺人者の手記に迫力があり、怖いです。
    子どもの頃に目撃したあることから死に取り憑かれ、平気で殺人を犯してしまい、意外に疑われることもつかまることもない。
    中盤は、全く救いがない印象ですが…

    後半はぐっと事態が動いて、意外な展開に。
    ごく普通の人間である亮介が、親の世代の出来事を思わせる事件の渦中に立ちます。
    誰にでもお勧めというほどではないけど、かなり面白かったですね。
    救いを感じさせる結末まで持ってくる力業に、著者の人生の年輪を感じました。

    2011年3月発行。
    著者は1946年生まれ。
    主婦、僧侶、会社経営を経て、50代で作家デビュー。

  • 一気に読ませるおもしろさ。
    自分が男性作家の小説ばかり読むので、女性の視点から書かれた小説は斬新に感じます。
    すごくリアル。男の人にこの愛の世界は書けない。
    きれいごとやロマンチシズムは一切ない。

    そしてちゃんとハッピーエンド(笑)。
    今のところ今年の個人的ナンバーワンです。

    その不思議な違和感が愛なんだと気づくのはいつなんだろう。

  • まほかるさんの本を読む時は、「自分の守備範囲外の闇」を抱えた人の物語&後味の悪さ、を覚悟してとりかかります。

    そんなにしてまでなぜ読みたいか?と言われそう、(というか、怖がりの私なのに、なんでわざわざ?と自分でもそう思う)けど、その引っかかり方の尋常じゃなさ、にたまには蓼でも食べたいな、みたいな気分になっちゃうんでしょうね。

    主人公は、ドッグラン付きの喫茶店を経営する若い「僕」。
    店の従業員の千絵と恋仲になり婚約、実家に連れて行って両親や弟と会食をする和やかで楽しい場面から始まるのだけど、もうその時点で、その幸せが長くは続かないことを明示しているので、さぁ、何が起こるのか、どんな悪いことが彼に降りかかるのか、とビクビクしてしまう。幸せの描写を読みながら、その後の不幸を感じるなんて、一番、イヤな展開だよね・・・。

    で・・・!
    その後、千絵の突然の失踪(涙)、父が死病にとりつかれたと思ったら、母が自殺かと思えるような交通事故死、と、立て続けの禍が!

    しかも、それ以上に衝撃だったのは、父が1人で住む実家で見つけた4冊のノートに記された「殺人鬼」の手記だった・・・。

    この「ユリゴコロ」の眼目は、人を殺したい、という闇にどっぷり浸っている謎の人物(誰?この人は?男か女かもわからず、今現在の生死も不明)の告白でしょうね。その衝動は私には全く理解できないのだけど、日本人は国語の授業のせいで“共感”読みができないとその本を認めない、と斉藤美奈子さんが言われていたことを思い出しつつ、なぜか、妙にさくさくと読めてしまう自分・・・。

    そういえば、「猫鳴り」でも、人を傷つけたい暗闇を持つ子どもの話が怖かったなぁ、と、これもまた思い出し、まほかるさんは、そんな世界をいろんな角度から描きたいのかなぁ、とも。

    その後、あれこれ、伏線やら推理やら、謎解きやらがあって、
    帯で桐野夏生さんが言われているように
    「こんな不思議な小説は初めて読んだ。恐怖や悲しみが、いつの間にか幸福に捻じれていく」という・・・。
    うんうん、まさに!でありました。

    不満を言わせてもらえば、途中から大きな仕掛けが見えてしまって、だから、もっと驚きたかったのに、という物足りなさ、と、こんなに人が死んだのに、こんな風な持って行き方でいいの?とか・・・。

    うろ覚えだけど、「家庭の幸せは社会の不幸せ」と看破した、太宰治の「桜桃」なんかを思い出すと、うん、これでいいのかも、なんて思えたりもするのだけどね。

    本屋大賞のノミネート作、ということで読んだ本作です。
    そっか、本屋さんたちはまほかるさんの本を売りたいんですね。
    正直、大賞作にはならないような気がするんだけど、
    (「舟を編む」か「ピエタ」じゃないかな。)
    こんなご縁があったから読めた本だと思うと、本屋さんたちにありがとう、と言いたいです。

  • 本屋大賞ノミネート作品。

    実家の押し入れから4冊のノート見つけた主人公。
    ノートの内容は、誰かの手記のようなもので、
    殺人癖のある書き手がこれまで犯してきた殺人を記録したもの。
    その内容が恐ろしくて読むのに一瞬躊躇しましたが、
    結局最後まで一気読みしました。

    とはいっても気付きやすい結末だったような気もします。

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著者プロフィール

沼田 まほかる(ぬまた まほかる)
1948年、大阪府生まれの小説家。女性。奈良県在住。読んだあとイヤな後味を残すミステリーの名手として、「イヤミスの女王」という称号で語られることもある。
寺の生まれで、大阪文学学校昼間部に学ぶ。結婚して主婦になり、母方祖父の跡継ぎを頼まれ夫がまず住職となるが、離婚を経て自身が僧侶になる。50代で初めて長編を書き、『九月が永遠に続けば』で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞、56歳でデビュー。
2012年『ユリゴコロ』で第14回大藪春彦賞を受賞し、2012年本屋大賞にノミネート(6位)。それを機に書店での仕掛け販売を通じて文庫の既刊が売れ出し知名度を上げた。
代表作『ユリゴコロ』は2017年9月23日に吉高由里子主演で映画化。同年10月、『彼女がその名を知らない鳥たち』も蒼井優・阿部サダヲ主演で映画化された。他の代表作に、『九月が永遠に続けば』、『猫鳴り』、『アミダサマ』。

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