- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575237467
作品紹介・あらすじ
稀代の物語作家が紡ぐ、古より潜む"在らざるもの"たちの咆哮4編。傑作ダークファンタジー。
感想・レビュー・書評
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金色の毛を持つ幻獣 風天孔参りの雷獣 稲光山のサクラと鯨の様に大きな身体を持つ鎌鼬...。たまに訪れたくなるこの不思議な世界、今回は四作からなる短編ツアーでした。
「異神千夜」
蒙古と博多の残酷な戦争に今のロシアとウクライナが重なる。当然、一方的な攻撃を仕掛けた蒙古側がロシアの体で想像するがそうなるとロシア側の個々の兵士達の心情が気になってくる。苦しいのは国か、人か。視点を変えると感情まで変わるなら、戦争は「悪」。とは全面的に言えないが、黙殺された悲しい心があるのも事実なのだろう。その中で、巫術師の血は宿を変え、時代を超え、“在らざるもの”として存在し続け世界に干渉していくのだろうか。不思議なお話だった。
「風天孔参り」
山中を彷徨い歩く謎の一行が求めるのは風が集まる場、風天孔。そこに身を投げると雷獣が空へと連れていってくれるらしい。言葉の通り跡形もなく、一切の痕跡を残さずに。自殺にはうってつけである。山の中でレストラン&民宿を営む男の元に現れた一人の女性の登場と末路に、彼自身も風天孔の不思議な力に引き寄せられる事となる。オチは恒川ベタが炸裂した。良い意味だ。
「森の神、夢に還る」
稲光山の“在らざるもの”サクラの視点。自然豊かな描写と一人の女性への眼差しは暖かく、反面常に切なさが取り巻いている。時代を渡る人間模様は一概に「ファンタジー」とは片付けられない。だって証明できないもの。サクラはこの世に存在していてもおかしくないし、いて欲しいと思う。過去と現在の繋がりに第三者が関わるのはタブーなのだろうか。あの大きな鎌鼬は人間に何を求めたのだろう。疑問が量産される物語だったが、必ずしも真実を明瞭とするのが答えとは限らないのだろう。
「金色の獣、彼方に向かう」
タイトルとなる代表作。この話が一番好きだったなぁ。「リンネさせる」と蛇を殺そうとする千絵、立ち会う大輝。村にずっと昔からいる猫の墓掘人。そして金色の毛を持つ獣、「ルーク」....世界観が壮大だった。千恵と金色の獣 ルークは鼬行者になれたのかはわからないが、映像を共有した大輝に流れてくる情景は美しく、様々な景色を見せてくれていた。
「彼方から送られてくる映像は旧友から送られてくる絵葉書のようだ。」今きっと、この世界のどこかで鼬行者は歩き続け、何かを見、自然を感じ、密やかな隠棲を過ごしているのやもしれない。
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読了感は未知の世界から帰還した浦島太郎の様な気分。現実に戻った事を少し残念に感じるも 元の世界の平凡さに安心感を覚えた。
これは....【静謐な美しい文章、瞠目の幻視力、物語の奔流に呑み込まれるこの快感】帯文句そのまんまの体験ではないか。大鎌鼬の泉に二度と辿り着けなかったサクラの様に、あの美しい光景は夢だったのやもしれない..と、余韻が心地良い。
装丁をまじまじ見直すとなんだか本書が神々しい神聖な物に感じてきた。奉ろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
来る日も来る日も恒川光太郎の作る世界を見続けて、本自体はホラーだとは思わないが、この状態がホラーなのかもしれない。ほら、現実との境目がどんどん曖昧になっていきますよ。
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独特の幻想的な風景、人ではないものを描き物語に織り込んで読ませてくれる作者さんですが、短編集のこちらでも壮大なファンタジックな世界がとても抒情的に描かれていました。
人間世界の残酷さの救いのように「この世でないもの」が存在することがあれば、人間をとことん貶めるように存在することもある。けれどもやはり恐ろしいと感じるのは人間のなすことである、というのはしみじみと感じたことでした。
獣たちは、この世ならざるものたちは、いつもいかなるときも変わらず、ただそこにあるだけなのですね。
人はただそれに、そのときどきの自分の状況を当てはめて、反面教師のようにそれらに思いを映すだけなのだ、などと思ったりしたのでした。
人と寄り添うようにそれらは存在しており、ときに近づきときに姿を隠す。ありえないものではなく、目に見えないだけのものなのだ、と信じさせられるような、それらの体温を感じるような描き方が本当に巧い、と思いました。 -
4作の短編集。
恒川さんはデビュー作が衝撃的すぎたゆえに、なかなかそれ以降の作品で納得のいくものに巡り合えず。
今回は秀作ぞろいだと思うけど、期待が大きいが為に☆3つ。
4作の中では、「森の神、夢に還る」がよかったかな。
鼬を登場させたのは中々おもしろい。 -
2020.12.26
面白かった!スイスイ読めた。
4編を繋ぐのは「鼬」「雷獣」「稲光山」。
金色の獣ってライオンか麒麟のような生き物かなって想像してたけどイタチだったのね。
「異神千夜」
約100Pとボリュームあるお話だったけれどこういうお話は好き。少し金色機械に通ずる世界観だった。
鎌倉時代の元寇の頃、ある男の幼少期から現在までを偶然知り合った僧侶に自分の半生を語る話。
鈴華ととリリウから全ては始まったのね。
「風天孔参り」
4編の中で一番好き。
風天孔とは雷獣が巻き起こす神風なのだろうと思う。神風によってここではない何処かへ行きたいと願い、日夜歩き続ける人々。
岩さんは案内人になったんだろうな。
以前読んだ「真夜中のたずねびと」の中の「夜行の夜」に似ているなと思った。
「森の神、夢に還る」
サクラとナツコがごっちゃになって最後のほうはどっちがどっちなのかよくわからなくなってしまった。
テツはどうやって鼬行者になったんだろう。
あまり好みではなかったのでさらっと流し読み。
「金色の獣、彼方へ向かう」
千絵、ああいえばこう言うめんどくさい子だし友達いなそうって思いながら読んでたけどかわいそうな境遇すぎた。樹海に眠る古寺の廃屋で白骨化していた父は鈴華に仕えていた者たちの子孫?鈴華の子孫?なのかな?
ルークはなんで大輝と千絵の間を行ったり来たりしていたんだろう。千絵にはルークと一緒に幸せになってほしい。 -
昔中国大陸からやって来た『神』にまつわる話。時代をこえて関係していることがわかる。
神は何故日本に住み着いているのか気になった。
現実世界と隣あっている不思議な世界、恒川ワールドが伝わる一冊。 -
装幀:水戸部功
装画:大島梢
http://www.cov-inkk.com/ -
教訓のない、ただただ幻想的な物語に引き込まれる。
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最初の話だけ