金色の獣、彼方に向かう

著者 :
  • 双葉社
3.50
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本棚登録 : 712
感想 : 122
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575237467

感想・レビュー・書評

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  • 今年一冊目は恒川光太郎。最近読める作家さんが少なくて、今作家読みしてるのはこの人だけ。本当はもっと開拓したいけど乱読して探す時間がない。こまった。それはさておき覚書感想。

    段々慣れてきたのできっとこれも後味悪い、という覚悟の元読み進める。良い話だなて思わないんだからねー。


    ・異神千夜
    オムニバスストーリー、物語の根幹であり始まりである、元寇の頃の話、主人公の仁風は対馬の生まれ、幼少の頃才能を買われて南宋の商人の養子となり、大陸を渡る商人への道を歩み始める。数年は順風満帆の暮らしだったが、18になる頃、蒙古の侵略によって、仁風は捕虜となり、故国日本を攻める蒙古軍のスパイとして働くことになってしまう。恩人を惨めにも殺し平和を壊した蒙古の手先になり、故国に危機を運ぶ役割を担ってしまった仁風だが、生きるために、仮面を被って言いなりになることにする。同じスパイチームとして集められた面々、そのなかに美しい女性が一人、彼女は蒙古に故郷を滅ぼされた巫女鈴華で、その身にイタチによく似た神の化身窮奇を身に宿しているという。
    話は先へ、蒙古を裏切り多大な損害を与えてしまった仁風チームは日本に取り残されるはめとなる。チームの責任者を殺された面々は途方にくれるが、それでも生き延びようと見知らぬ土地を生きる場所を求めて徘徊する、その頃には既にチームの主は窮奇の宿る鈴華になっていた。鈴風は不思議な力で男たちを操り、山中の市村を襲撃、老若男女すべてを惨殺、ただ安心して生きるためという目的を掲げ、手段を選ばないそのやり方に一人正気を保って、否定した仁風は逃げるように鈴華の元を逃げる。
    数年後、やはり危険な鈴華を野放しにはできず、仁風は痕跡を追い、鈴華を殺害した。だがその頃には既に窮奇は、その娘の身体に移動しており、異大陸の神はこの日本で生き続けることになるのだった―――。

    元寇の描写こわい。ぐろい。

    ・風天孔参り
    吸い込まれると跡形もなく存在が消える風天孔というものが存在する。
    その穴に飛び込んで綺麗にさっぱり自殺していく人々の話。
    いじめで加害者の同級生を殺しその後の偽りの人生に疲れ切った女、
    風天孔を代々案内する役目を持つ男・・・彼らは躊躇いもなく吸い込まれていくのだった。


    ・森の神、夢に還る
    たまにある綺麗なほうの話。
    説明が難しいというか・・・まあはい。巨大鼬が済む森で殺された女の子が、都会に出る女のこに乗り移って、その死の真相を暴き、再びやすらかに眠るお話。ね、暗くない。


    ・金色の獣、彼方に向かう
    表題作。賢い鼬ルークをめぐるやっぱりどこか不思議で怖くて、気味の悪いお話。猫の墓堀人が一番気になった。穴には何が住んでるのかそこにはいるとどうなるのか・・・存在が不思議だ。猫の墓堀人が自分の穴に消えた日の朝。
    ―目が覚めたとき、大輝はこの土地から何かが去ったのを感じた。窓から見える草原世界は、かつての魔法じみた精霊界との境界ではなく、ただの川沿いの野原だった。
    寂しいような哀しいような不思議な気持ちに囚われて、大輝は泣いた―p251


    今回も普通に面白かった。
    こういう普通に面白いお話書く人いないのかな~

  • 幻想と恐ろしさの入り混じった世界観がなんとも素敵な一冊です。

    この本には四編の短編が収録されています。それぞれ筋書きも登場人物も違うお話なのですが、全編に共通する言葉が一つだけあります。それは『鼬』。
    物語の端々に影をちらつかせる鼬にどきりとさせられました。

    四編とも良い話なのですが、中でも一番の私のお気に入りは『異神千夜』だったりします。
    舞台は鎌倉時代、ちょうど元寇辺りのお話です。
    ネタバレ防止の為詳細は省きますが、最後の方の『富も名誉もいらぬ。我らは深山での密やかな隠棲を求める』という様な文に惹きつけられました。

    恒川光太郎さんの本は、この謎めいた不思議な雰囲気がなんとも堪らない作品だと思います。

    なんだか支離滅裂なレビューになってしまいましたが……以上です。
    まだお読みになられていない方は是非とも。

  • 鼬をめぐる物語集。

    恒川ワールドは健在です。
    今作は、ホラーな味付けの話が多かったように思います。

    面白かったけど、個人的にこれっていうお気に入りの話がないので、星は少なめです。
    さらっと読むにはいいかな。

  • 鼬のような神の使いが絡む短編集。
    元寇の頃に巫術師と共に日本に渡った金の国の神『窮奇』の使い、鼬のような小動物『リリウ』が時代を超えて生き延び、短編4作全てに登場すると思っていいのでしょうか。はっきりとは言い切っていないけれど多分そう解釈して問題無いと思うのですが…。

    渡来した話の1作目以外は戦後以降の現代の話ですが怪とか妖と言ったモノがひそかに人間の生活の近くに息づく感じに迫られました。
    ホラーなのでしょうが嫌なエグさとかグロさは殆ど無く、綺麗な物語と言う印象を受けました。

  • 歴史もののような冒頭部分。
    恒川光太郎は「どこかへ向かう」話が多い気がする。
    風天孔参りについて。
    こういう、日常のすぐ隣に非日常がある話は好きだ。世界にはまだ自分が知らない世界がある。風天孔参りも全くフィクションじゃないかもしれない。
    月野優は、商売の才能があったかもしれない。料理の才能もあったかもしれない。でも彼女は、それらは全てそこに留まるための手段でしかなかった。目的があると、まわりのことに目がいかない。彼女がここにいることが楽しいと強く思えていたなら....と考え、やっぱりこれで良かったんだ。と思える最後。
    道はたくさんあるが、これでいい、これしかなかったとおもえるラストが多い。みんな笑顔でハッピーエンドじゃないところが恒川光太郎の良いところ。それぞれの登場人物が、この結末で良かったと思っている。読んでる最中は「なんで」「おかしい」と思わせ、読み終わりに「ああ、これで良かったんだ」となる。後読感は、爽やかでしかしあれこれ考えさせるそんな本だった。

  • ファンタジーに分類されるのかもしれないが。日常生活に溶け込んだ異世界の話。
    違う次元に属するモノへの畏れを持ち続ける、という姿勢は賛成だ。

  • 他作品よりもファンタジー色が薄まった分、ホラー色が濃く出ている気がします。異神千夜は最後ゾクッとしました。
    あと、今回嫌な人物が多かったような(笑)(作者の書き方が上達しただけかも)「風天孔参り」の主人公とか「金色の獣~」の女の子とか、好きになれなかったため読後モヤっとしました。

  • 恒川ワールドを堪能。
    やっぱすきだわー。

    金色の獣、表紙、迫力。一瞬獣の奏者の王獣をイメージ、けど
    もっとなんらかの意志が強い、感じ。

    それぞれのおはなしが、関係あるような、ないような、
    時代も登場人物も全く違うのだけれど、なにか同じ生き物(?)の気配が
    そこここで、する。
    一番初めのがやっぱ一番こわいかな。全員、武装、のシーンとか
    ぎえーって感じ。んでもってラストがざわざわする。
    その後の底辺をこの不安なざわざわ感がずっと続いている。

    好きなのは風天孔参りの話。
    恒川さんの、この歩くネタ、が好き。
    ただみんなで歩き続ける話、とかあったよなー。
    あとこの世ならざる道を歩いていく話とか。
    その世界感とゆーか、かもしだされる空気感とゆーか、
    なんか不思議で、すこしぞくりとするような。
    うう、ツボだわー。
    ごちそうさまでしたー。

  • 不思議と秋になると読みたくなるのが、恒川作品です。
    一年近く積んだままでしたが、もっと早く読んでおけば良かった!
    …とは思ったのですが。

    ふとした瞬間に現れる異世界、もやもやっとした哀しい怖さ。
    やっぱりこれは秋に読むのが一番相応しい気がするのです。

    「異神千夜」は、この作家さんには珍しい鎌倉時代のお話。
    蒙古襲来で、元の間諜として板挟みになる日本人の青年。
    鼬のような不思議な生き物の存在が、自然に同居しています。

    そして続く短編集も、時代は違いますが微かな繋がりがあって。
    樹海の中に時折現れる<風天孔>や、人に乗り移るモノ。
    さすがだな、と思わせてくれるホラーファンタジー短編集でした。

  • 元寇のはなしは入り込むまでに時間がかかった。どれも雰囲気は好き。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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