- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575237641
作品紹介・あらすじ
日々の生活の中でたまった鬱を、日々の生活の中でいかに散ずるか。「物」を買い、使い、その機能に一喜一憂する私たちの姿を余すことなく描く。笑いの中に毒を仕込む。
感想・レビュー・書評
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バイ貝。buy買。
文体と展開だけでここまで面白いのが凄い。あと、読後は町田節が劣化して伝染るので、作文時は注意が必要。
お詫び書なんぞをしたためる前には読んではならぬ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
働きながらカネと鬱をため、カネを使うことでそれらを減じる
という理論をもとに、○○円分の鬱がたまったので買い物をして○○円減らし……と計算してグチグチする本。
カネと鬱のバランスを取りながら一喜一憂する主人公
しかし彼の買い物はなかなか成功しない。
そんなことを考えても絶対ろくなことにならないだろう…と思いながら見守っていると、
案の定、主人公はエンドレス“鬱たまるカネ使う”のどつぼにはまっていく。
情けなくも必死な姿、そして静かに終わるラストの数行に、人間の悲しさを感じるけれど、
まぁ過去作品と比べてしまうと『夫婦茶碗』や『きれぎれ』ほどの切羽つまった状況ではなく
「お前は自分から頭を突っ込んでは悲劇ぶってるだけだろ!」と少し醒めてしまった。
ただ中毒性のある奇怪な言い回しにはあいかわらずニヤニヤしてしまった。
「哀しみの国でジャンキーのぬらりひょんが腹を刺されて苦悶しているような感じ」ってどんなやねん。 -
今回も痛快な語り口であっという間に読了。
エッセイとは知りつつも町田世界にぐわしと捕まりどっぷりと浸りきった。
くっだらないなぁなどと思いつつも一緒に鬱に打ち勝たんと
自分自身を省みすれば、大なり小なり、町田氏とそう変わらんことに
腹を立てたり浮かれたり、物事を深く慮ったり。
鬱を購買意欲で金銭的に量ってみてもせん無い事と知らせられるだけ。
そんな由無し事を改めて文章にしてそれを尚且つ上梓できる、町田氏に
☆五つ。
私はキライじゃありません。 -
日々の暮らしの中で降り積もる鬱を、適切にお金を使うことで効率よく解消しようと苦心する話。
ストレスを買い物で発散することって確かにあるなと興味を持ったけど、著者の鬱をお裾分けされてしまったような心持ち。
‥うぅむ、しまったなぁ。
ぐだぐたした語りは好きなのだけど、それにグチグチが加わってイラッとする箇所もちらほら。
中華鍋と格闘する辺りは面白かった。
自分の中の鬱を金額に換算して、その鬱を解消してくれる買い物を思案するのだけど、それが悉く失敗して鬱は膨れ上がっていく。
考えすぎでどんどん訳分からないことになっていってますよ、とツッコミ続けることになる。
この本から、鬱を金額に換算したり、鬱の解消を目的にお金の使い道を考えるべきではないと学んだ。 -
なにを読まされているのかわからない気持ちにもなるけど、読んでいる間は楽しい。難しい言い回しもよく知ってるなあと感心するけど、難しい言い回しも駆使して、買い物に失敗し続ける話を書く。
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これってエッセイだったのね!とレビュー見て知る。てっきり小説かと…いやでも小説仕立で書いてるし。
町田さんの作品は『源氏物語〜九つの変奏〜』(であってるかな)の『末摘花』しか読んだことなくって、それが面白かったから「町田康」の名前を覚えた。今回の作品は、う〜ん判断に困る。「うわぁ面白い!」ってわけでもないし「あーつまらない」って言うわけでもない。
一言表すなら「苦笑」
まず最初に読んで文章固いなと思い、「私」は女性やと…
やたらに理屈をこねる…じゃないけど笑いどころが理屈っぽいのは『銀魂』に近しいかもしれない。これが町田節ってやつ?
エッセイにしては虚構じみてる、いやでも文章で表す自体が虚構も含まれるわけで、そもそも小説とは虚構だし、小説家はウソつきと本文でもあるし…
なんて考えが頭の中でぐるぐる。
この作品は一体何なのだろう。私の中でどの分類にも属さない新しいジャンルに入ってしまった。
☆も2と3の間をうろうろしていて評価しづらい。☆2なら「つまらない」だし☆3なら「普通」だし。う〜ん。その中間をうろうろしてんだけどなー。
町田康、謎である。
そして「鬱」という単語が1ページであんなに出てきたのも始めて(笑)
エッセイは作者に近いもの、作者の中味に触れられるものと考えてるからこの作品は作者像が不透明だと感じるんだろうな。
町田作品を読んでいけば作者に近づけるかな? -
「ドストエフスキーは、貨幣は鋳造された自由である、と書いた。心の底、腹の底からその通りであると思う。カネ、銭を遣うとき我々はなにものからか解放されている。なぜかと言うとカネを稼ぐとき我々は、確実になにかに縛られているからで、カネを稼いでいると自らの中に鬱が蓄積してくる。その鬱を散ずるために我々はカネを使うのである」。
ハハッ! 冒頭から強烈。町田康『バイ貝』の世界に引き込まれる。 -
町田節炸裂。例によって何度も笑った。著者によると、テニスとは「そうして意地悪に翻弄されて、相手は右往左往、やがてやり損なって打ち返すことができなくなり困惑したり消沈したりする様を見て喜ぶ、というスポーツなのである」。そんな定義あるかえ! 星4つは「告白」「宿屋めぐり」が卒倒するくらい面白かったから。
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"くっすん大黒"以来の町田康ですが、相変わらず意味不明な文章と訳わからない笑いが混在し楽しめた。"ばい貝"とは"Buy買"と思われます、消費する事でストレス解消するつもりが数百円の草刈鎌に始まり中華鍋、デジカメとどんどんエスカレートして行く様はまさに鬱なる行動かも知れない。
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生きていくために働く。働くと鬱が溜まる。鬱を解消するためにはお金を使う。そうすれば鬱が解消され勤労意欲も湧いてくる。
という単純な連鎖が成立している前提で、エッセイとして話は展開していく。
実に下らない話を長々と面白おかしく、作者独特の世界観で書き綴っています。思わず笑ってしまう場面があちこちにあり、くだらない、と思いながら楽しく読みました。
結局最後まで同じトーンだったので、途中からは少々飽きがきてしまいました。また、最後はあまりにあっけなく終わってしまい、何だか寂しかったです。かと言って、どんな結末が満足なのか自分でもわからないのですが(笑)