- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575238099
作品紹介・あらすじ
「次は女の子を産むわ」そう宣言して産み分けに躍起になる妻。「本当にどうしても女の子を産まないと駄目なのか」妻の意志に、違和感が濃くなってゆく夫。お互いに心揺れる日々を過ごすなか、新たな命を授かる。果たして、その性別は?そして、夫婦がたどった道は-(表題作)。男女の日常に生じたさざ波から見える、人間の愛おしさ、つよさ-。深々とした余韻が胸に響きやまぬ傑作五編。
感想・レビュー・書評
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初読の作家さんが最近続いてるが、まだまだ知らないだけで巧い作家がわんさかいるんだな〜、と途方に暮れる。
全く時間が足りないじゃないか。
読みやすい文章で女版荻原浩といった感じ。
そこに女性目線から描かれる男女間の性差が作品全体を覆っているのが、この作品の核となっている。
5篇の短編が綴られる。
どうしても女の子が欲しい妻を描く表題作は見事。笑あり涙あり、結末も最高。
それと、カフェを経営するゲイの主人公を描いた「リボン」が良かった。チクチクと胸に刺さる感じがいい。
もしかしたら男性は苦手な人が多いかも。
露骨な表現はないにせよ、居心地が悪く感じるかもしれない。
その居心地の悪さの原因が分かってくれる男性ならまだまだ改善の余地あり(笑)
帯を書いているのが宮下奈都さん。
うん、これは当たりだ。
通じるものあり! -
星は3.5です。
(4は高すぎなのでw)
お初の作家さんでしたがとても読み心地の
いい文章だなーと思った。
と同時に改めて作家さんてすごいなあと。
なんで自分とは違う性や年齢、職業の人の
心模様をまるで自分の事のように書けるのかと。
各章、ちょっと、しり切れとんぼというか
「あれっ?そこで終わり?」
という感じで終わるのがちと残念かな。
起承転結の「結」がない感じ。
まあ、それでも楽しく読めました(上から目線w)
今後リピートしたい作家さんです。
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夫婦、姉弟、親子など、様々な人間関係の中でつづられるちょっと悩ましいお話いろいろ。
表題作が面白かったです。
産み分けに対する賛否両論はあるのでしょうが、そこに向かう妻の熱意と、それに応える夫が愛おしく思えました。
最後の展開には、思わず笑いが出てしまうほど。
にぎやかで幸せな家庭が目に浮かびます。
他、主夫と働く妻、弟を愛しすぎる姉と母、同性愛のカフェオーナーとニューハーフ、乳がんの妻を看取った老齢の男性の話が続きます。
どれも、じんわりと浸みる話ばかりでした。 -
5つの短編小説からなっています。
登場人物や事件が、結構自分の身近にあるもので、でも当事者ではない自分には本当の気持ちはわからないわけで、そんな彼らの心の動きが描かれてて、とても面白かったです。
最後の『わたくしたちの境目は』は著者とかけ離れた年齢の男性の気持ちが描かれていましたが、朝比奈あすかさんにはわかるのでしょうか?
これは読んでいて切なかったです。
どのように結婚したかということはあまり問題ではなく、結婚してから長い間積み重ねてきたものがとても大事なんだと思いました。 -
5編から成る短編集。なんか一つ一つ濃かったなあ。でも、どの作品にも、わかるかもって感じるところがあった気がする。なんだか読み終わったあと不思議な気分。全体的に終わりが爽やかに描かれていて安堵。
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「次は女の子を産むわ」そう宣言して産み分けに躍起になる妻と、妻の決断に淡い違和感を抱く夫。そして新たに宿した子供の性別は…? 男女の日常に生じたさざ波から見える、人間の愛おしさや強さを描いた五つの短編。
「ある男女をとりまく風景」は一組の夫婦が終わりを迎えるまでの物語。結婚して仕事を辞め家に入ったマスミと、営業に接待に毎日忙しく働くジュン。結婚当初は大学進学や留学を目指していたマスミだが、主婦らしいのんびりとした生活に呑まれそんな意欲をとうに失っていた。そんなマスミに対して苛立ちが募ったジュンは、ついに家を出る。そして二人が話し合いの為再開した席で、物語が全てひっくり返る事実が明らかになる。本当に「やられた!」との一言に尽きる。私の固定観念を再認識させられた。
どの物語も男女の関係が危うくなる瞬間を描きながらも、最後は温かな気持ちに包まれる。夫婦であっても別々の人間であり、互いに完全にわかりあえることはない。そこに悲しみが生まれるきっかけが潜んでいる。それでも気持ちが通じる瞬間や幸せを共有できる瞬間に希望を抱いて、寄りそって生きていくのだろう。 -
「産み分け」「出生前診断」「主夫」「子離れできない母(姉)」「同性愛」「乳房再建」など、旬のテーマ満載の中編集。
朝比奈さんの小説は、ぐいっと迫ってくるところがたくさんあって好きです。
自分が母であり、妻であり、娘でもあるからでしょうか。
この本では、「男性とは」「女性とは」という既成概念の揺らぎのようなものを感じました。
それにしても、どうしても女の子がほしい、とか、次は跡取り息子がいい、とか、ちょっと贅沢な悩みだよね~、と私は鼻白んでしまいます。子どもを授かることができるだけで、ありがたいことなんじゃないの? -
ジェンダーをテーマにした5編からなる短編集。
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軽くテンポのよい文体ながら、読後うーんと唸って考えさせられてしまうような意表をつく作品でした。
短編ゆえなのでしょうが切り口は1つです。傷は浅いと思っていても、あとでじわじわと効いてくる。
そんな切れ味の鋭い洒落た話ばかりだったと思いました。
それにしても人間というものは、心の深部に刻まれた性差についての観念から逃れられないものなのでしょうか。
見方を変えれば、その観念を無垢な子供に刻みつける社会を変えることは不可能なのでしょうか。
背から下ろすことのできない十字架。5話目の初子さんのさり気ない言葉の数々。印象深かったです。 -
人々の生きづらさが切実に描かれている短編集。
表題作『憧れの女の子』は、女の子を産むために奮闘する夫婦の物語。私は、まだ結婚出産の経験がないが、母と娘の関係の心地よさを知っているため、いざ子供を産むとなると主人公のパートナーのように「女の子が欲しい」と思うのだろうなと何となく思った。
私の利用図書館にも朝比奈さんの本てほとんどないです・・・。
今後に期待でしょうか。
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私の利用図書館にも朝比奈さんの本てほとんどないです・・・。
今後に期待でしょうか。
荻原さんはいろんな作品を書きますからね。
最初に手に取る作品が肝心かも!
ちなみに私は「明日の記憶」からでした。
他の作品とはだいぶ毛色が違うことに後々気付く事になりました(^_^;)