- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575238648
感想・レビュー・書評
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あー、もう、本当に大満足の一冊。
身体のすみずみにまで太古の息吹が行きわたった。
二千七百年前、なんていうともう想像もできないほどの大昔と思うのだけど、親の親の親の…と30回繰り返すだけでたどり着いてしまうんだね。そう考えると、意外と近い気がする…
教科書でさらりと習うだけの縄文時代から弥生時代への変遷。それはある日突然がらりと変わるわけではなく、何年も何十年も何百年も、かけて少しずつ入り混じり行きつ戻りつしつつ移り変わっていったものなのであって。
そしてそこには今の私たちと変わらない人と人のいさかいと心の交流があったのだ、ということに改めて気づかされた。
二千七百年前にそこにいたであろう一人の若者の成長と苦悩、そして死は、「日本人の進化」、というだけでなく、国とは、国籍とは、人種とは、という今の私たちがさらされている大きな問題をも突きつける。
私たちは私たちが思っているよりもはるかに大きな世界をこの身体の中に抱えているのかもしれない。
先日の新聞で、精神病院が空いた病室、もしくは病棟全てを使って退院患者の住居とする、というのを読んで思った。
『二千七百年』に描かれている「自分や自分の所属するムラと違う文化を否定する」もしくは「自分と見た目の違うヒトを受け入れない」という問題は、今も変わらず存在していて、そこに今の日本の限界というものがあるのかもしれない、と。
島国に生きる私たちが、世界の中で平和的に生きていくために考えなければならないこと、それを考える機会をこの一冊は与えてくれた。 -
あっおぅ‼︎ロマンだなあ〜〜‼︎
山田風太郎賞を受賞しているんですね。古代のお話…ということで、今まで何度か手に取り、後回しにしていましたが、いやいや読んで良かった!荻原浩さんにハズレなしです。これ、映像化して欲しいなあ〜〜。
物語は、現代と古代を行き来しますが、ほとんどは古代です。
私はラスト5行で涙が滲みました。(涙もろいのです)
2,700年前が本当の本当にどうだったか?というのは誰にも分からないことだけれど、今作での描かれ方は、かなりリアリティを感じます。と共に、とても面白いのが“言葉“ 。
これから読む方にはお楽しみでもあるので、あまりネタバレしませんが、たとえば、犬がヌー、兎がミミナガ、など(ちなみに、これはとても分かりやすい例)に始まり、食べ物や植物、色々なモノの名前が出てきて、「う〜〜ん、これは何のことだろう?」と考え考え読むのも面白かったです。
そうそう、ちょっと前に、FBで「Gパン」と文の中で書いたら、お友達から「今どき珍しい」と言われ(^^;;「ジーンズ」…いや最近は「デニム」と言う〜なんて話もあったけど、こんなに短いスパンでも言葉ってどんどん変わるんだから、そりゃあ2,700年も経ったら、同じ言葉の方が凄い!って感じですよね。
上巻は少し時間かかりましたが、下巻はもう止まらず‼︎
特に、クマとの戦いのあたりからは、ノンストップでした。
もちろん、本の後ろに参考文献はいっぱいありましたが、まさに『骨は語る』であり、骨から、これだけの発想で紡がれる物語。圧倒的な面白さ‼︎ さすがだなあ、荻原浩さん!
印象に残ったところを少し。
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一人の人間が、生まれてから死ぬまでの人生の長さを、まあ天寿を全うしたとして、仮に九十年としましょうか。これを二倍にしただけで、もう江戸時代になる。五倍で戦国時代。十倍なら平安時代だな。つまり、人が人生を三十回くらい繰り返せば、二千七百年くらいになっちゃうんですよ。
すべてを知ろうとしてはならない。悪しき精霊は、なにもかもを知り、すべてを得ようとする者の心に忍び寄る。だが、ウルクは知りたかった。すべてを。
命令や役目を何も与えられず、めざすところもわからず、寒さや空腹や渇きに追い立てられることもなく、大切なことに分別を働かせるのは、思っているよりも難しいことだった。自分で考える。自分で決める。自分で自分を動かす。
ピナイの人々は、常に神が自分たちを見守っていると思いこんでいるのだろうが、世界がとてつもなく広いことを知ったウルクには、神々がちっぽけな人間ひとりひとりをきちんと見届けているとは思えなかった。
歴史をつくっているのは国家や政治や経済じゃない。歴史は恋がつくっているのだ。
何の努力もせずに手に入れられる戸籍を誇ったって、自分自身は一センチも前に進めない。
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むかし、たつみや章の『月神の統べる森で』という本を読んだことがありまして…あの本も縄文から弥生への過渡期を舞台とした作品ですごく面白かった記憶があるので、今回の荻原作品もすぐに入り込めました。今作も異文化が触れ合う時の戸惑いやら喜びやらも描かれてて良かったんですが、うーんちょっと物足りなかったかな?言わばウルクとカヒィの最後は冒頭でもう分かっているわけだから安心して読めるんだけど、もうちょっとウルクたちの暮らしとか冒険も見ていたかったなぁ。いやぁでも荻原流・古代版ボーイミーツガール、面白かったです。☆4・5
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縄文人と弥生人、歴史の中でしか見たことのない表現だけど、彼ら・彼女らもまた日々を精一杯いきていた。
涙があふれる。
現代の物語が挿入されていたけれど、もっと長くて内容があってもよかったのに~あまり丁寧にかいたら、フィクションじゃなくなってしまう事柄だから?想像を広げられる小説で、出会えてよかった。 -
人を魅了するものは災いのもととなってしまう運命なのか。
米、それはとても甘くて美味しい食べ物。
たくさん収穫するには、それなりの土地も必要。
ただ、その土地を手に入れるには権力も必要か。
あたしなら持ち帰ろうとせず、土地に馴染もうと安易な方法を選択しそう。 -
ウルクの厳しい旅の様子に手に汗を握る。2700年前が本当にこんな状況だったのだ、と心底思えるほどの臨場感。
そして弥生人たちの集落にたどり着いたときのウルクの気持ちや戸惑いがそのまま伝わってくる。
どうして人と人の間に階級があるのか、なぜ人に向けて弓をひくのか、「イクサ」ってなんだ、などなど、ウルクの疑問がとても新鮮なのだが、次第に悲しくなってくる。2700年たっても人は何も変わってない。
ウルクたちは弥生人のような争い方はしないだろうが、迷信にとらわれ、小さく小さくなって暮らしている。知識があることの良さを知らない。
ウルクとカヒィの行く末は、もうとっくにわかっていることなのだが、それでもその詳細は最後まで読まないとわからない。そして、最後まで読んだ時、哀しさと同時に希望もまた感じられたのであった。
読み応えのある素晴らしい作品だったなあ。 -
なんやこれ
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縄文時代や弥生時代の小説は初めてで、こんな感じかぁ~て、でも、陽の色のクムゥの習性が上手く書けてて題名はとっても素敵だし、ドンドン読み進めて行けました。