- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575240306
感想・レビュー・書評
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特撮雑誌の編集者をしている神部実花。彼女は過去に特撮に関わりながらも消息不明となっている人を探し出すことから、「人捜しの神部」と呼ばれている。
面白いキャラクターは登場するものの、残念ながら月村作品にしては、いま一つだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
消息不明の大物映画人を捜し出し、不可能と思われたインタビューを成功させる―“人捜しの神部”の異名を取る女性編集者・神部実花は、上司からの無理難題、読者からの要望に振り回されつつ、持てるノウハウを駆使して今日も奔走する。だが自らの過去を捨てた人々には、多くの謎と事情が隠されていた。次号の雑誌記事を書くために失われた過去を追う実花の取材は、人々の追憶を探る旅でもあった…。
何も特撮がらみにしなくてもと思う。モデルになっている人物や事件が想像できてしまうだけに。 -
まあまあって感じかな?
業界の中の話っぽいのが読めるのは面白かったし、最後の話を封印する封印作品の秘密なんかは少しぐっときたけだ、それくらいかなー? -
★それが私の仕事ですから(p.308)
・まったくマニアではないけど特撮好きではあるのでとても楽しいです。そのコアな世界を題材にした、これはミステリの一種だろうと思います。
・人捜しの名人である女性編集者の粘り。人捜しは人から人を辿ること。
・消息不明の伝説の特撮技術マン、佐久田政光を捜すがどうしてもすぐに道が途切れてしまいたどり着けない。
・表向きフィルムの消失で幻の回となっている特撮シリーズ「アースノイド」第三十一話に登場した子役は引退し消息不明。そしてなぜ幻となったのか。
・天才イラストレーター長沼洋之助は亡くなっているらしいがいつどうして死んだのか誰も知らない。
・シーズンの途中で演じている女優が亡くなったレディ・ミラージュのヒーロースーツとマスクが見つかった。果たしてその真贋は?
・印象的だった外国人エキストラのジャネット・アンドリュースから預かったままになっていた彼女の腕時計を返したいと願う特撮監督。
・「海底魔神の復活」ポートレートに写る十一人を捜しだし許可を得ねばならなくなった。ギョーカイ人でなさそうな人も多く雲をつかむようなクエスト。
▼簡単なメモ(すごく人名の多い作品でクリエーターが重要なジャンルなんやなあと思いました。これでも全員は抽出してへん)
【アースノイド】正式には「我らが故郷アースノイド」という特撮シリーズ。大手出版社である優等館と提携していた。石楠花プロ制作。その第三十一話「谷間の百合は星のくず」(広石健一郎脚本、大河内重則監督)は再放送もされずDVDにもなっていない幻の作品。ぼくらの世界の「ウルトラセブン」封印回みたいなものか?(ウルトラセブンは子どもの頃リアルタイムで観てたのでいくらか記憶は残っており今考えてみて造形はたしかに子どもには怖かった記憶があるけど内容はむしろ公開すべき作品だろうと個人的には思ってます。)
【アイリーン・バークリッジ】ジャネット・アンドリュースと親しかった。日本人のナツメダと結婚して今も日本にいるはず。
【赤田南平/あかだ・なんぺい】天外プロダクションの社員。
【阿川遼一/あがわ・りょういち】特撮好きが集まるパブ「ミステロンズ」のマスター。
【石川鉄五郎】画家。少年誌や幼年誌の挿絵を手がけていた大家。
【宇宙恐竜ゼーラドン】宝塔映画で企画されていた劇場用作品だが社内の派閥抗争のあおりをうけ瓦解。
【宇喜多護/うきた・まもる】あまりおおっぴらにできないグレーゾーンのアイテムを動かしてクリーンにするアイテム・ロンダリングを行うブローカー。特撮への愛は特にない。
【海野友彦/うみの・ともひこ】造形師。数多くの特撮現場を経験してきている。現在の肩書きは造形美術専門学校の校長。神部実花が信頼している人物。
【大河内重則/おおこうち・しげのり】特撮監督。鬼才と呼ばれる。
【大坂菊恵/おおさか・きくえ】特殊技術のベテラン大坂旭(おおさか・あきら)の娘。
【大芝謙助/おおしば・けんすけ】黎砦社編集部長。天然ボケ系で基本的に役に立たない。いつも何か本を読んでる。『横光利一全集』、コンビニ本の漫画、『別冊スクリーン』、『世界恋愛名詩集』、『ヒッチコック映画術』、『エーゲ海に捧ぐ』、復刻版『のらくろ二等兵』。あれー、ぼくも読んでるのが多いんやけどぼくもこの人みたいなタイプなの? うーん、そうかもしれへんなあ。
【織田平一/おだ・へいいち】宝塔映画の特撮監督。佐久田政光をギョーカイに引き込んだ。
【海底魔神の復活】泰東映画(たいとうえいが)の作品。すでに倒産してスミエダ映画の倉庫に資料が埋もれていた。
【葛城正純/かつらぎ・まさずみ】葛城プロダクトワークスを興し大勢の弟子を輩出した。「超空戦士ミライザー」のヒーロースーツとマスクの造形を手がけた。
【鹿能義正/かのう・よしまさ】純枝書房取締役でマルチメディア部門統括本部長であるお偉いさん。元特撮マニアで特撮雑誌をやりたくて純枝書房に入社した。父の鹿能義輝は優等館の有名編集者。
【河合次郎】宝塔映画のプロデューサー。
【神部実花/かんべ・みか】主人公。黎砦社(れいさいしゃ)が発行する『特撮旬報』編集長。実質一人で作っている。「人捜しの神部」と呼ばれる。
【国広勝/くにひろ・まさる】特撮監督。マニアから制作側になった。長沼洋之助とコンビを組んでいた。
【佐伯丈治/さえき・じょうじ】「地球要塞の青春」でサード助監督を務めていた。ジャネットを捜している。
【榊山半太郎/さかきやま・はんたろう】デザイン事務所「山半企画」を経営。
【酒田眞吉/さかた・しんきち】「ワールドマン」のオリジナルマスクを作った。
【佐久田政光/さくた・まさみつ】伝説的な特撮技術マン。消息不明で多くの人が探したが見つかっていない。「流星マスク」という有名な作品にも関わっていた。
【佐々岡】優等館の新人だった頃「アースノイド」へのクレームを受けた。
【汐原由紀/しおはら・ゆき】「超空戦士ミライザー」で「レディ・ミラージュ」を演じた、「日本アクション俳優塾」の女優。イメージ的には志穂美悦子さんか。
【宍戸金司】イラストレーター。
【シドニー・ウィリアムズ】「アースノイド」幻の第三十一話に黒人兵ウイリー・ロビンソン役で出演した。
【篠ノ井昭太郎/しののい・しょうたろう】不遇だったといえる特撮監督。神部実花を可愛がってくれた。《人は誰だって道の途中でくたばるんだ。それでも歩き続けるのが大事なんだよ。》p.44
【石楠花プロ】特撮の名監督だった幡山剛史(はたやま・たけし)が設立した。現社長は孫の幡山浩三郎(はたやま・こうざぶろう)。しつこい神部実花は嫌われている。
【ジャネット・アンドリュース】本名はジャネット・ウッドワード。「地球要塞の青春」第二十二話「星降る夜の恋人」のミス・マーガレット役で出演した留学生だった女性。
【新川廣/しんかわ・ひろし】濤映版権管理部部長。
【田黒加世子/たぐろ・かよこ】「海底魔神の復活」に出演していた。当時、モダンダンスの第一人者だったらしい。
【天外プロダクション】外国人タレントの多くが所属しておりエキストラの斡旋を行っていた。
【特撮雑誌編集者】《失われた夢の残滓を追い求めるのが自分の仕事だ。》p.242
【徳島銀司/とくしま・ぎんじ】殺陣師中垣甚五郎の一番弟子。
【中垣甚五郎/なかがき・じんごろう】殺陣師。
【長沼洋之助】情熱のイラストレーター。
【西木正/にしき・ただし】恋愛映画のムックや書籍を担当している。他の会社に引き抜かれることが決まっているようだ。
【楡耕作/にれ・こうさく】フリーライター。傍若無人な態度であちこちで衝突している。
【野村朔一/のむら・さくいち】殺陣師中垣甚五郎最後の弟子と言われる。
【橋本慶子】石楠花プロの受付をしている女性。社長に嫌われている神部実花には素っ気ない。
【幡山佐代子/はたやま・さよこ】石楠花プロの当時の社長幡山鉄夫の娘。「アースノイド」幻の第三十一話撮影現場に来ていたらしい。
【東清太】テレビ局NTV(富士放送)の専務取締役。若い頃「アースノイド」制作にかかわっていた。
【飛騨甚太郎/ひだ・じんたろう】黎砦社の編集者。会社公認の変人。不定期出勤で許されているのだからたぶん能力はとても高いのだろう。
【筆丘三太/ふでおか・さんた】漫画家。
【ブレスレットマン】神部実花が好きだった特撮もの。
【ほおじろプロダクション】端役やエキストラを供給している。
【丸尾良樹/まるお・よしき】元喫茶店経営者。漫画好き。
【萬田沙織/まんだ・さおり】宝塔映画の著作権管理部。
【三坂洋二郎/みさか・ようじろう】三陽プロを興した。「超空戦士ミライザー」のレディ・ミラージュのスーツとマスクをつくった。すでに死去している。
【南ハルタカ】アダマンテ画廊という美術関係の古本屋を経営。
【三輪誠一】一流の造形師。
【八重樫修/やえがし・おさむ】アルバイト。
【山内謙太/やまうち・けんた】東工大教授。大芝とは大学の同期。
【山辺美紀子/やまべ・みきこ】むかしの映画「天空の快鳥」に主演した女優だったが今は引退しているようだ。
【優等館】大手出版社。学年別の雑誌を出しているということなのでモデルは小学館か? 特撮の写真を多く秘蔵している。
【黎砦社/れいさいしゃ】出版社。神部実花が編集長をしている雑誌『特撮旬報』を発行している。 -
普通に面白かった。小品だけど、読んで良かった。ハードなものからこんなハートウォームなものまで書けるって、月村了衛ほんとすごい職業作家ですね。
自分の仕事に誇りを持って、叩かれても叩かれてもあきらめずに前へ進む特撮界の女神 神部実花に叱咤激励されました。 -
この作品は、少し変わっている。不思議な作品だ。しかも特撮物がそのテーマだ。しかも何十年も昔の時代の人探しをするのが主人公雑誌編集者の神部実花の仕事だ。かなりマニアックな作品だが、面白かった。1日もかからずに読み切った。最もこれぐらいの作品にはそれほど時間をかけても仕方がない。
しかし、月村了衛氏の作品としては珍しく人を殺す事がない作品だった。 -
著者にしては珍しい、ライト・ミステリーな作品でした。
6作の短編はどれもそれなりに面白かったですが、これまでに読んだ著者の作品と雰囲気が違うので、誰か別の著者の本を勘違いして読んでいるんじゃないかと思いました。(^^; -
悪くない。ただ、知的な興奮は多くは期待できない。何故なら主人公がひたすら頑張り続けるのを見守るのみだから。特撮界隈に然程興味が持てなければ尚更のことだ(ウルトラシリーズはひと通り見て育ったけれども)。作者の熱い特撮愛は十二分に伝わってくる。
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特撮の世界を舞台にした、人が死なない、けが人すら出ないミステリー。出版社勤務の主人公が、雑誌の特集記事を作るため、過去の様々な作品作りに携わった人たちを探し出す。ただそれだけの話しなのだが、ものづくりを仕事にしている人にはいろいろ感慨深い、いい話だった。
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特撮専門誌の女性編集者が雑誌編集のために調査する話。月村了衛らしくない落ち着いたストーリー。