1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 197
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240412

感想・レビュー・書評

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  • せきしろという人を全く知らずに読むという行動を起こしましたが、それが功を奏したか物凄く心がキリキリしました。コミニュニケーション能力が低い男の子が、高すぎる自意識に振り回されて、今の自分は本来の自分ではない、でも何をしたら良いか分からない。友達は出来ない、出来ても心を開くなんて事は考えられない。

    居場所が無いまま東京で漂うせきしろは、1リスナーでしかなかったラジオへの投稿に全てを注ぎ込むのでありました。
    自分はこういう自己破滅的な行動に出られる性格ではないのですが、元々内向的で友達も出来にくい人間で、暗黒の高校時代を送る自意識過剰の少年だったので、妙に分かる部分が沢山あって背筋がひやりとしました。
    自伝的な本なので成功者が書いているのに、胸にノスタルジーではなくて痛みが・・・。
    最近読んだ本の中で、「明るい夜にかぎって」「ハガキ職人タカギ」という2冊がラジオへの投稿をテーマにしているものがありましたが、どれも青春だなあと思わせるものだったのに対して、この本は胸苦しくなる時間の浪費をとうとうと書いています。これもまた人生・・・。個人的に好きな本です。

  • 同じ「ハガキ職人もの」では、少し前に「笑いのカイブツ」というキョーレツなのを読んでしまった。これはせきしろさんが書いたのだから、あれとは違うだろうと思っていたのだけど、いやまあ、これもかなりのものだった。

    強い自意識を持つ若者を吸収する場が、かつての社会にはもっとあったような気がする。ラジオでハガキを読まれること以外に。

  • すんごくじりじりした。
    夢の話なんかおもしろくない(って最近読んだどの本かでも言ってたけど)って、わたしはけっこう夢の話好き。するのも好き。きくのも好き。夢の話がおもしろいんじゃなくて、不毛な話を夢中にしてる人、おもしろい。

  •  何かを好きになって、それがいつまでも好きなのは自分だけというパターン。楽しいことがあって、それをずっと楽しんでいると、いつしか誰もいなくなっている状態。「私」はその感覚を芥川龍之介の短編から『トロッコ』状態と例える。
     深夜ラジオにハガキを投稿することが生活の中心だった「あの頃」。採用ゼロで悔しさから寝付けず、ネタを考え続け、いつしか夜は明け、世の中が動き出す。窓越しに青く澄んだ朝焼け空。ガラスに反射するぼんやりとした顔。どうしようもなさが愛しい、自伝的小説。

  • 高校を出て北海道から上京した青年。友人とお笑いをやろうと考えていたが、友人は一年で早々と足を洗ってしまう。
    東京には知り合いがいない。けれど、青年は深夜ラジオでネタを読まれることに喜びを覚える。

    自分にノルマと締切を課して、ハガキを送り続けた青年はネタを読まれる常連になっていた。
    ラジオ番組のイベントで知り合った他の常連、ドグラマグラと親交を深めるが、彼にネタを盗まれてしまう。
    青年のネタを使ったドグラマグラは構成作家になった。青年は何にもなれなかった。彼や、お笑いをすぐにやめた友人が登場する夢を青年は見る。夢のなかで青年たちは楽しい遊びをいつまでもやめない。

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    過ぎていった過去をいつまでも思い続け、手に入らなかったものや人にずっと片思いし続けるような小説。感傷的なだけでなく、合間合間にユーモアが差し込まれるが、そういった面白さも語り手の物悲しさを引き立てていて、とてもよかった。こういう本と出会いたくて、いろんな本を読んでいる。

    著者のせきしろさんのこれまで人生をベースに描かれた小説ではあるが、せきしろさんの人生はこの後も抜群に面白い。
    大学に入り、教育実習をすっぽかして逃げ出してしまうせきしろさんは最高に愉快な存在であり、どこまでも感傷的だ。

  • せきしろさんという方を知らずに読みました。文章力は凄まじいんだけど、厨二病をずっとひきずってしまっているような感じがしてしまった。母親からの仕送りをほぼ葉書代に使ってしまうなんて。価値観は人それぞれですね。この時代はメールとかツイッターとか使ってるんだろうか?
    自分に一度は共感してくれた友人とは本音をいいあえずフェードアウト。盗作の川東はクズだけだ、大学に行きたいんだと打ち明けた北上は責めなくてよかったんじゃないのかな。

  • 「笑いのカイブツ」ほどブッ飛んではいないにしろ、こちらも中々の生活ぶりだった。
    結局救いがあろうがなかろうが、熱中するものが見つかる時、それまでの人生を合わせてもなお足りない濃度の何かを感じてるんだろうなぁ。

  • ずっとラジオを聴き続けてきた。エアーチェックに心を踊らせ、常連たちの投稿に腹を抱えて笑った。ハガキも出した。不採用を繰り返し、初めて読まれた時の感動は忘れられない。そして今もラジオを聴き続けている。そんな僕らにとって最高の青春小説であり、恋愛小説だったりする本著。背中の痒い所を優しくかいてくれる感じで良い。ラジオは僕らをキラキラさせてくれる。 昔も、今も変わらず。

  • 放送作家でもある著者の自伝的小説。上京し芸人を目指すも相方は学業に専念、目的をなくした主人公はラジオ番組のネタ投稿を中心に生活が変わる。その時代の空気と孤独と虚しさ、行き場のない怒りが漂っている。‬

  • 深夜ラジオが大好きで毎週聴いているので、自分の中でかなりハードルを上げてしまいました。

    特に目立った展開もなく、救いもないので
    個人的にはもやもやしてしまいました。

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著者プロフィール

作家、俳人。1970年、北海道生まれ。A型。北海道北見北斗高校卒。主な著書に『去年ルノアールで』『海辺の週刊大衆』『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』『たとえる技術』『その落とし物は誰かの形見かもしれない』など。また、又吉直樹との共著に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『蕎麦湯が来ない』などがある。

「2022年 『放哉の本を読まずに孤独』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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