さらさら流る

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 871
レビュー : 142
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240528

感想・レビュー・書評

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  • 物語の始まりは、とても爽やかでした。
    菫と光晴が、大学の飲み会の帰りに、東京の地下を今も流れる暗渠をたどりながら歩くシーンが、とても心地良かった。
    ところが、そこから先は…

    温かな家族と友人に囲まれ、恵まれた環境で生きてきた菫と、
    生い立ちから、屈折したものを抱えている光晴。

    光晴に撮らせてしまった自分の裸の写真が、ネットに流出していたことを知り、
    世間知らずだった自分の甘さが招いたことと、菫が自身を責める場面は胸が痛んだ。

    菫がつらい気持ちを隠して、なるべくいつもの自分でいようと努力している姿を、
    なぜそんな写真を撮らせたのかと批判する職場の先輩(女性)にも腹が立った。
    こういう場合、被害者にも非があるように言われることも多いけど、これは違うと思う。
    菫は強引な光晴に押し切られた形だったし、
    すぐに消してと頼んだのに、消したと嘘をついた光晴はひどいと思う。

    不注意からとはいえ、写真が流出したのは光晴の責任なのに、
    今一つ罪の意識が薄いというか…、
    それは彼の境遇のせいではないように思えた。
    それと、男女の性差もあるかもしれない。

    両親と、親友の百合、菫の周りは温かい人ばかり。
    何より弟・幹夫の飄々とした明るさに気が休まる。
    彼の作った文房具の歌「モノグラムワン消しゴムのうた」どんな歌詞なんだろう。

    人の本質は非常時に現れるというけれど、
    突然の嵐になぎ倒されそうになりながらも、立ち向かった菫の芯の強さを見習いたい。

  • ある日菫は、元彼に撮られた自分の裸の写真がネット上で拡散されていることに気づく。ネット上で自分の裸の特長を揶揄するコメント、社会の「写真を撮らせる女が悪い」という風潮に傷つくが、友人の百合と共に立ち向かう。

    柚木さんの本を読んで、いろんな人の感想を見ると「嫌な気持ちになった」とか「読み返したくはならない」といった感想が必ず一つは見つかるのはなぜなんだろう。
    多分、描かれる女性やそれを取り巻く世界にリアリティがあるからだと思う。
    ①裸を撮らせる女が悪いという世間
    ②女の羞恥や恐怖が最高のスパイスになるという男の欲望
    この二つが私は怖いと思いました。
    この小説にはこれらのことに対して、「それは違うんじゃないか」と反応する登場人物が出てきます。

    ☆元彼の光晴が働く塾の生徒の言葉
    p.224 「みんな、お酒の席で、笑い話にしようとするじゃん。女の人にひどいことしたとか、裏切ったとか。あんなの、笑えないよ。全然おかしくないよ」

    ⇒これはかなり共感できました。私自身、ネタにされる側だったのでお酒の席の笑い話にされていると知った時は、菫のように「身体がバラバラ」になった感覚に陥りました。自分の身体がじぶんのものでないような。私はこんなにも苦しんでいるのにそれを堂々と話す男が信じられなかった。


    ☆友人 百合の言葉
    p.82「あんまり言いたくないけど、日本はそういう風潮を増長させるところがあるよね。嫌がっている女の子を性的に貶めるのが堪らないっていうやつ。そういうのにぐっときちゃうのは男だから仕方ないって、開き直ってあい空気もあるよね。」

    ⇒ここで漫画やアニメの例が出されたのには驚きました。小さい頃にみたアニメでは無意味にヒロインの服が破れたり脱がされたりするが、男の子は許されて当然。という展開が多かったという例。
    確かになぁと思いました。欧米の子供向けアニメでは見ない、日本特有のストーリー。こういうことが日本人の思想に根付いているからレイプとか写真の流出があっても「女が悪い」という意見が出てきてしまうのではないでしょうか。


    だいぶ前にみたニュースですが、女子大学生が飲み会の後に男子学生の家へと向かい、そこで複数の男子学生に性的暴行を加えられたというもの。生々しい事件でよく覚えています。このニュースに関してのツイートがテレビの下の方に流れてたのかな?その辺はあんまり覚えてないけど、誰かが「女の子のほうも遊んでたから自業自得」とか「不用心だ」とかいう意見を発信していたのに、心を痛めたのを覚えています。悪さをした男達のほうが絶対に悪いのに。

    菫もこういう社会の目と戦っているんだと思って、この小説を最後まで読みました。そしたら友人の百合だったり、家族のみんなが本当に強く支えて最後まで一緒に戦ってくれていた。感動しました。
    百合は、菫が誰にも話せず一人で抱え込んでいる状態の時、その心の変化を見逃さず「ちゃんと話してよ」とまっすぐ問題と向き合っています。
    なかなかこんな友達いないです。本当にすごい。

    それと比べて写真を流出させた元彼は自分のことしか考えず、テレビか新聞かで読んだ出来事のように他人事として受け止めています。ほんとにクズ、だけど本当にこういう人はいる。この男に執着していた菫から、自分の在り方を認めることのできる菫に成長するまで、目が離せませんでした。

    他人ごとじゃないなぁというストーリーだったので、かなり私の心に残った作品です。

  • こういう心配を今の若い子たちはしなきゃならないのだな、と。や、中年の人たちも同じかもしれないけど。
    柚木さんがとがってない女性を描いた!とびっくりしながら読んでいたのだけど、リベンジポルノの被害者となった主人公菫が、その最初のふんわりとした優しいイメージに反して、自分の力でしっかりと向き合っていく姿に、やはり柚木小説の主人公だな、とほっとしたりして。
    菫から見た光晴と、光晴から見た菫、その微妙な差が少しずつ広がっていくのは悲しいけど致し方ない。恋愛なんてそんなもんだろうし。でも別れ際と別れた後の自分の気持ちをきちんと処理する力をつけなきゃね、男も女も。
    それよりなによりプレイベートであるべき恋人同士のヒミツの写真を悪気なく拡散していく第三者たちの行動が恐ろしい。

  • 明るい太陽の下、
    愛情いっぱいに育ってきたような女性と
    母に愛されず屈折した子供時代を送ってきた男性。
    恋人どうしだった二人が別れた後
    リベンジポルノが起きる。

    その仕打ちがどれだけ卑怯で残忍なことか、
    どれだけ女性の尊厳を踏みにじる行為か
    今まで気がつかずに過ごしてきたかもしれない。
    『写真を撮らせるなんて、愚かなことをするから・・・』くらいのことを言っていた自分が恥ずかしい。
    この本を読んだ人は、もう
    リベンジポルノ=他人事だと二度と思わないだろう。
    女性だけでなく男性にも読んで欲しい一冊でした。

  • 「本屋さんのダイアナ」を読み、柚木さんの紡ぐ物語に引き込まれ、「Butter」、「さらさら流る」を続けて読んだ。
    女性の生き方、生き辛さがテーマの根底にあるのかなと思う。
    どの物語も中心となる登場人物は、中高時代を一貫教育の女子校で過ごしており、そこで築いた価値観や人生観が、それ以降を過ごす大学や社会の価値観、こうあるべきと漠然と押し付けられる目線とズレていることへの気付きと戸惑いが描かれている。柚木さんも一貫女子校をご卒業なので、ご自身の経験を投影されている面もあるのではないかと思う。
    このさらさら流るも、初々しい幸せ初恋物語?と思わせる書き出しから、家庭環境やそれだけではないそもそもの人間性の違いから、2人は別れることになり、被害者と加害者という立場に大きく変わってしまう。
    菫のように、打ちひしがれても友情や家族に支えられて立ち向かう勇気を持てたらいいけれど、現実はそうはいかないのだろう。だからこそ、柚木さんはこの本を書かれたのだと思う。前二作も含め、#Me tooにも通じる内容で、フェミニズムの波を感じる。

  • かつて恋人に撮られた裸の写真がネットに流出しているのをみつけた、という話。
    題材としてはわりと好きなんだけど、なんせこの主人公の菫のことが最後まで好きになれなかった。私自身の問題だけど、こういうこれまでの人生陽の当たる場所以外歩いたことありませんみたいな子、現実でも心底苦手なんだ。
    だからどちらかというと光晴に肩入れしながら読んでしまいました。
    義理の母親に軽蔑され拒絶され続けてきたかわいそうな男の子。まるで暗渠のような人生。
    そういうものを理解してくれなそうな菫の無垢さ、明るさにどうしようもなく惹かれ、そして同時に腹の底で苛立たざるを得ない気持ちが痛いほど分かった。
    この写真流出が、周囲に愛され守られ支えられ生きてきた菫が初めて直面した大事件なのであれば彼女は本当に恵まれた人生を歩んでる。
    バラバラになってしまった自分を、親友の百合に裸体を描いてもらうことでまた一つに採り集め自分らしさを取り戻したみたいなラストが気に食わない。
    持って生まれた才能のような強さって何?それを持っている自分を許すって何?
    地盤が違うんだ。土壌が。根幹が。
    菫のそれが、まっとうでまっすぐな本来の強さだってことは知っているけれど、そんなことを改めて突き付けられてちょっとショックでした。
    と、だいぶ個人的な熱の入った感想になってしまったけれど…小説そのものはとても読みやすく前向きになれる良作だと思います。

  • 大学生になってすぐ付き合い始めた男の子と最初にしたことは、都内の暗渠めぐり。
    そして10年経ち、2人はとっくに別れていたのだけど、ネットに流出した写真を見つけたことから、主人公の苦悩が始まる。

    19歳と28歳が交互に描かれ、あの頃の自分と、今の自分、付き合っていた時間、家族や友人、職場の同僚との関係。事件をきっかけに主人公がいろいろと悩み、乗り越えていく姿が書かれています。

    地下に隠された川と人の奥底にあるコンプレックス、その先の海や未来へと歩を進めることができるのか。
    立場や育った環境、考え方によって感想が分かれそうな一冊だと思います。

  • 20171109予約
    うーん期待したほどではなかったかも。

  • そのときは、その人が1番、とっても大切と思って付き合っているんだろうから、別れた後に思いもよらないことが起こったら失望しちゃう。
    なんで、こんなことされなきゃいけないの? そんなくだらない人だったのか…などとは思いたくないけどね〜。
    こんなつらいことからなんとか前を向いて行こうとする、それを支えてくれる家族や友人がいる。いいな。
    相談できる人がいるって救われるな。
    自分が行動すれば、なんとかできる、なんとかなるんじゃないかと思えた。

  • さらさら流る
    とても美しい装丁

    リベンジポルノがテーマだと知り同性として興味を持ち読む


    主人公薫は情緒あふれた豊かな情愛と自由を持つ両親と音楽を愛する弟と暮らす幸せな少女

    大学で知り合った光晴と交際に発展するが
    4年後別離したが、昔に撮らせてヌード写真が流失したことで話が展開していく

    ここまでは、光晴に惹かれた気持ちや別れた理由が薄すぎてわかりづらかった

    しかし、これは序章で、物語の時系列が現在と過去が混ざりながら進むための作りだった

    ヌード写真が流失した事で全てが足元から崩れていく薫
    なぜ、写真を撮らせたのか
    歪んだ性欲に消費される自分
    社会的な立場
    家族をも巻き込みあれほど慈しんでくれた
    両親を悲しませる苦しさ
    そして心無い同僚の叱責の言葉

    どれもとてもリアルに描かれてる
    被害者となった薫はまず、自分を責める
    光晴との素晴らしい思い出ごと失くしたくなくて
    責めきれない薫
    それは弱さと言うには余りにも酷で
    光晴を選んだ自分、仲良く過ごした家族まで
    否定し自虐することにもなる

    そこを読み取らせる文章がある

    かたや加害者光晴は、自分の落ち度で画像が流失したが、自らは手を出してないという事実でどこか反省の色が薄い
    自己中心的な性格や、嗜虐に興奮する癖、
    幼さの目立つ人間性が克明にかかれてる

    心に深く傷を負った女性が、それを見つめ
    一歩づづ前に進むまでの苦悩が心に伝わった
    苦しくもがきそれでも生きる
    ふてぶてしいまでの強さの小さい種火を懸命に燃やそうとする薫がいた

    18歳の薫は何も怯えがなかった
    真夜中に男性と歩くことを
    それを堂々と正確に親に説明できるを
    毅然さを持って対処した

    それを失わせる社会の歪んだ醜い性欲
    性暴力被害者の本当はない落ち度をなじる事で性犯罪の罪を軽くしようとする汚い詭弁

    私達、女性が両手を大きく広げて自由闊達にこの世界を闊歩できる時間が限られてることを思い知った

    多くの女性に今の自分たちの奪われた自由をそのままでいいのかと問いかける強い本でした

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著者プロフィール

柚木麻子(ゆづき あさこ)
1981年、東京都生まれの小説家。立教大学文学部フランス文学科卒業。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞し、2010念二同作を含む初の単行本『終点のあの子』を刊行。2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞小説部門受賞。2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞受賞、直木賞候補に。2017年『BUTTER』で直木賞候補。2019年、『マジカルグランマ』が第161回直木賞候補となる。

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