破滅の王

著者 :
  • 双葉社
3.44
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本棚登録 : 441
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240665

感想・レビュー・書評

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  • 新型肺炎感染に耳目をひきつけられているなかでの読書となった。15年戦争の中で石井の731部隊のしたことは知っていたが、人間がどう振る舞うかはその人の人間性による。すばらしい主人公だった。

  • 主人公である宮本氏の功績や徳のある人がらを主軸に、第二次世界大戦中の「R2v」を巡る攻防が展開される。最初のうち「王」の意味が分からなかったが、やがてこの恐ろしい細菌を使って目的に向かう面々の姿が明らかになると、その目論見が見えてくる。史実を使った小説で、灰塚などノワールものに出てきそうな濃いキャラクター。映画の断片を見ているような気分だった。最後に登場人物の後日の履歴があり、興味深かった。

  • ★★★☆☆

  • 28:めっちゃ熱かった。科学と正義、そして戦争。科学の進歩が危険と表裏一体であると知ってなお、研究を進めることが人類全体の幸福に繋がると信念を抱く科学者たちがめちゃくちゃ格好良く、けれどその信念がいかに脆く、詭弁となりうるかも同時に描かれる。たまらん……すき……。
    宮本の「我々は、作り出したものに対して、責任を取り続けなきゃならないんです」っていうのが、ほんと今のあれこれにじわっとくる。

  • 第二次世界大戦の前後で開発された細菌(R2v)をめぐる群像劇。細菌兵器として使われる恐れがあるR2vを日本と中国、ドイツなどが奪い合うような廃棄しあうような戦いがある。戦争が引き起こす狂気により、細菌の恐怖を感じつつも、細菌ひとつに振り回される関係者の姿は滑稽でさえある。人が戦闘であれ細菌であれ、たくさんの人が死ぬことを滑稽であると表現するのは良くないことと認識はしている。人の生き死にをかけた戦争が悪いのだ。

  • 731部隊の話は、過去何度も耳にした事があるが、ここまで詳細に書かれているとは・・。
    登場人物がほぼ実名なのも驚いたのと、部隊所属の研究者が戦後大手メーカーや有名大学で重職についている事実には震えが来た。

    薬害エイズ宜なるかな・・


    戦時下の満州を舞台に、新種のビブリオ菌・R2v(通称キング)を巡り、各国の細菌兵器開発の思惑に科学者の怨念が絡まり事態はカオスへ・・。
    軍人・灰塚が科学者・宮本を従え、キングの正体を探る中二人の間に生まれる奇妙な友情。

  • 今回の候補作の中で一番印象に残ったのは本作でした。
    とはいえ、手放しで絶賛できるかというとそうでもなかったりするのですが。

    まず気になったのは、人類が滅亡するかもしれないというスケールの大きな話の割には、真須木という科学者がR2vを作った動機がやや安直に感じられた点です。
    人間なんて所詮その程度ということなのでしょうが、個人的には物足りなく感じました。
    また、全体的に説明調の部分が多いところも、スリリングな展開の勢いを削いでいる印象です。
    いっそのこと歴史的事実なんか全部無視して、もっと大胆な筋書きにしてもよかったのではないかという気もしました。

    とはいえ、戦時下における個人の矜持、そして科学者としての倫理はどこまで国家に対抗できるのかというテーマは現代にも繋がるものがあり、とても興味深く読めました。
    日中戦争下の中国という、一歩間違えばネット民から袋叩きに遭いかねないような舞台を選んでいますが、不特定多数の読者を意識してでしょうか、とても丁寧かつニュートラルな立ち位置で描かれており好印象です。
    史実と創作の融合についても、これぞプロのお仕事という感じで違和感のない仕上がりになっています。
    最後に描かれるサプライズについては、人によって評価は分かれるところかもしれませんが、私はあの形でいいと思いました。何のことか気になる方は、是非読んでみてください。

  • 第2次世界大戦前後の支那、満州を中心に、日本人の関わりを描きつつ、新種の細菌にまつわる兵器開発と阻止の重厚な読み応えのある展開。
    前半は、時代や土地の状況がなかなか入ってこず、読むのに時間がかかったが、中盤以降はテンポよく読めた。
    18-82

  • 太平洋戦争中、中国で生体実験にまで手を染めて細菌兵器の開発を行っていた731部隊がモデルとなっている。そんな恐ろしいことをするのは、私たち普通の人間ではない怪物だろうと思いたいが、この作品にもあるように、当時の日本、しかも軍の絶対服従の空気の中で、仕方なく従っているうちに壊れていってしまった人が多かったのかも。真須木のとる行動は、最近読んだ「アメリカンウォー」の主人公を思い出させる。世界への深い絶望が、彼らに同じような行動を取らせるのか。

  • 未来系のSFであるオーシャンクロニクルと違い、第二次世界大戦中の中国における細菌兵器の話なので、その災厄の重さがよりリアルに感じるが、どうしようもない状況の中で、思惑の異なる人々が交差する様子はオーシャンクロニクルと同様面白い。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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