罪人が祈るとき

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240825

感想・レビュー・書評

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  • すごくせつなくなってしまう、考えさせられる話でした。

    中学生の息子茂明を壮絶ないじめを苦にした自殺で亡くし、翌年妻も息子の自殺を苦に亡くした父親、風見啓介。
    彼はピエロのペニーとなって、茂明を自殺に追い込み、高校生になってもいじめを続けている、竜二、直紀らのいじめを受けている時田祥平を助けます。

    「私はペニー」
    「私が殺してあげる」。
    私は作者がなぜこんなに酷い、連鎖するいじめといじめを苦に自殺した中学生の話を執拗に書くのだろう。むごい話だと思いつつ読んでいました。

    いじめというものはいじめをする相手が死ぬまでなくならないものだという作者の考えはよくわかりました。連鎖するいじめに和解はないんだという絶望感を感じました。

    そしてペニーは竜二と直紀を殺します。
    息子のために。そして祥平のために。
    そしてペニーこと風見は死刑判決を受けます。

    祥平の叫んだ「僕がペニーの息子になるから、行かないで」と「本当の罪人は誰ですか」という言葉が心に残りました。

    この作品にはいじめられた生徒、いじめた生徒の父親が何人か出てきますが、本当の優しさをもっていたのはペニーだったと思いました。

  • 小林由香さんのデビュー作の「ジャジメント」を読んだ時も苦しかったが、こちらの作品もまた....。
    いつの時代も、どの年代にもいじめる人間と、いじめられる人間が存在する。
    いじめによって息子を自殺で亡くした風間と、いじめにあい、相手を殺して自らも死のうと考えていた祥平が出会う。
    祥平が死のうとしていた風間に向かって「僕がペニーの息子になるから、行かないで」の叫びのシーンには涙がこみ上げてきた。
    ー本当の罪人は誰ですか?

    • まことさん
      泰悟さん。おはようございます。

      いつもいいね!ありがとうございます!
      泰悟さんもこの本読まれてましたね。
      レビューを書いてから泰悟...
      泰悟さん。おはようございます。

      いつもいいね!ありがとうございます!
      泰悟さんもこの本読まれてましたね。
      レビューを書いてから泰悟さんのレビューを再度拝見して、同じところを引用していたことに気づきました。
      やっぱり、あそこは泣けますよね。
      すごくせつない物語でしたね。
      泰悟さんのこれからのレビューも楽しみにしています。
      2021/06/06
    • 奏悟さん
      まことさん、初めまして。

      いつもいいね!ありがとうございます。
      本の世界だけでなく、日常的にいじめで自殺のニュースをよく目にしますね。
      そ...
      まことさん、初めまして。

      いつもいいね!ありがとうございます。
      本の世界だけでなく、日常的にいじめで自殺のニュースをよく目にしますね。
      そういう私も、同級生がいじめで自殺した経験があり、他人事とは思えないのです。

      ペニーワイズのペニーでも、こちらは随分、人間味のあるピエロですよね(^_^;)

      小林由香さんの、「ジャジメント」もかなり気持ちが抉られますが、おすすめです。

      まことさんの丁寧なレビューに優しい人柄を感じ、いつも勝手に癒されています(笑)
      これからもよろしくお願いします。
      コメントありがとうございました(*^^*)
      2021/06/06
    • まことさん
      泰悟さん。

      いじめで、同級生が自殺されていたとは、さぞかし悲しい経験でしたね。
      『ジャジメント』はちょっと怖そうだと思っていましたが...
      泰悟さん。

      いじめで、同級生が自殺されていたとは、さぞかし悲しい経験でしたね。
      『ジャジメント』はちょっと怖そうだと思っていましたが、読んでみようかと思います。
      こちらこそ、これからもよろしくお願いします(__)。
      2021/06/07
  • 何故、風見が死刑にならなくてはならなかったのか。この怒りを誰に向けたらよいのか。風見の息子は同級生からのいじめにより殺害された。1年後、妻も自殺する。その同級生はさらに別の同級生をいじめ、売春斡旋まがいなことをし複数の被害を受けている。被害者の会で被害者にカウンセリングを行う風見。そこで見つけたいじめの実行犯2人を風見は殺害する。風見はその後自殺を図ろうとした時、風見に助けられた少年から言われた絶叫は「僕があなたの息子になる!」。風見は死刑執行までの間、独居房で後悔し、謝罪し、いま何を思うのだろうか。

  • 説明
    内容紹介
    自殺を決意した少年と、息子を自殺で亡くした父親──。
    同じ空を見上げたとき、ふたりはなにを祈るのだろうか。
    涙なくしては読めない感動のラスト!
    衝撃のデビュー作『ジャッジメント』に続く、初の長編ミステリー。


    デビュー作『ジャッジメント』に続き いろいろ考えさせられる作品だなぁと思いました。
    もし自分が息子を自殺で亡くした父親・風見啓介と同じ立場になった時どうするだろうかと考えてみるけど 答えが出ません。
    人は生まれた時はみな平等とよく言いますが 私はそうだとは言えないと思っているし 人はみな改心出来るという事を前提に今の裁判は行われているけど 改心しない?出来ない?人もいるんじゃないかなぁと思っています。
    ただこの本のラストを読んで 人生で1人でも〝あなたに出会えて良かった〟と思ってくれる人がいたなら それはもう自分は生まれて良かったと思えるんじゃないかと...

  • いじめがエスカレートし、命の危険すら感じる毎日を送る祥平。
    ある日、いつものように竜二に金を脅し取られそうになり、金を渡す気がないことを告げると竜二にナイフを向けられる。
    そこに突然現れたピエロが彼を救う。
    そのピエロとは、、、


    いじめは、いじめられる側にも問題があると言われることもあるが、この本では全くそのような要因も感じられず、ただただ恐怖を感じる。
    壮絶ないじめに誰にも相談できず絶望する主人公。
    彼の前にペニーというピエロが現れたことで、彼はどれだけ救われたことだろう。
    結末ではホロリとしてしまった。
    ぐっと引き込まれて、あっという間に読み終わってしまった。
    スピード感があり読みやすい作品だった。

  • すごくすごく…良かった。

    学校でのイジメで自殺した息子と、それを追って死んでしまった妻。傷心どころでない壊れたペニーと、まさに今イジメを受けている少年と。
    二人とも絶望的な状況なのに実の親子以上に思いやる様子が、ストーリーの後半からラストに向かって迫り上がっていく。
    イジメはダメだ。でもきっとなくならない。我が身の保身しか考えていないキョーシが子どもの痛みを感じられる訳がない。偏見と言われても構わない。この偏見を覆すキョーシとやらに一度もお目にかかった事がないからだ。

  • 罪人が祈るとき

    個人的にこのお話がとても好きです。
    表紙のピエロの涙から既に胸が苦しくなります。

    今、つらくて助けを求める人
    助けを求めて続けている人

    手を差し伸べる人、
    手を差し伸べられる人、
    どちらもが相互につながっていて

    どうか救われて欲しい、
    と願わずにはいられません


  • 初読み作家さんでした。
    なんともやるせない気持ちになりましたが、読んで良かった。

    この世の悲劇や不幸の形は、星の数ほどあれど、若い子どもを、しかもいじめで亡くした親の気持ちはいかばかりか…と考えると、子を持つ親は平静ではいられない。そして、時々感じる、人は人を裁けるのか?ということも改めて考えました。
    いっぱいいっぱい、色々なことを考えながら読んで、ラストは涙でした。

    なんだか辛くて長々と書けませんが、心に残ったフレーズを少しだけ。

    ーーーーー

    誰かを失ってからできることは後悔ばかりだ。

    もしかしたら有名な画家も、誰かひとりのために絵を描いていたのかもよ。この絵はどうしてもこの人に見せたいっていう相手がいてさ。だから名画なのかも。

  • 私は昔、感受性豊かな子どもだった。常に世の中の善悪や、社会の矛盾について考えているような人間だった。それが年を重ねるにつれ、あまり物事を深く考えることがなくなっていった。

    この小説は、そんな私にもっと考えろと問題を突きつけてくるようだった。同世代のこの作家はきっと未だに物事を深く考え、常に世の中の仕組みに悩んできているのだろうと想像する。

    物語は、2人の人間の目線で進んでいく。1人は息子がイジメにより自殺し、奥さんがその1年後に自殺した中年の男性。
    もう1人は母親が男を作って出て行き、父親は不倫相手を家に連れ込み、家族にはいらないものとされ、学校でもイジメにあっている少年。

    その少年がイジメにあっている現場にピエロのペニーが現れ、その窮地を救ってくれる。その少年の唯一の心の拠り所は、そのピエロとの時間だった。ピエロは、少年をイジメている人間を殺してあげると約束する。

    ピエロの登場により、サスペンス一色だった物語にミステリ要素が加わり、面白みが増していく。ピエロは一体誰なのか。

    私は、もし自分の子どもがイジメにあい、自殺するようなことがあったらその相手を法に委ねることができるだろうか。この物語に、1人の記者が出てくるのだが、その彼が言うことが正しいことなのかもしれない。いや、正しいことなのだろう。でも。

    それにしても、悲しい物語。なんだか全員の気持ちがわかるようで、自分の気持ちがどこに落ち着けばいいのかわからなくなる。でも、イジメは絶対にいけない。どんな事情があっても。そして自殺も。自分を殺すだけでなく、自分を想ってくれる人の心も殺してしまう。

    この物語は、復讐という暗く、悲しい物語ではあったが、ピエロと少年の関係は素敵だった。パントマイムのシーンは秀逸で、ペニーが自殺しようとするところをパントマイムで必死にロープを引くシーンでは涙が出そうになった。
    良い小説を読んだという読後感に包まれている。

  • 子を持つ親として、ものすごく辛いテーマ。
    いじめで息子が自殺、心を病んで妻が後を追う。遺された自分は真相を知るため息子の同級生の元を訪ね歩く。
    一方でいじめに遭っている真っ最中の子ども。二つの悔しさが何かに導かれるように交差し目的へと突き進む。
    復讐は正義か。罪を憎んで人を憎まずは誰のためなのか。もし自分なら、とどうしても考えてしまう。自分がいじめられていたら。自分の子どもがいじめによって死を選んだら。自分ならどうするか。いじめで同級生を死に追い込んだ当人が言う。いじめられていたとしても帰る場所があれば死ななくてすんだんじゃないか。それは親にとって一番つらい言葉。きっとそれをずっと背負って生きていくのだろう。自分を強く責めながらも、やはりいじめた張本人を許すことはできないだろう。どんな方法をとっても、復讐しようと思うだろう。その復讐による「死」は誰がどうやって償うのだろう。償うべきか、という問いはあるとしても。

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著者プロフィール

1976年長野県生まれ。11年「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞。2016年、同作で単行本デビュー。他の著書に『罪人が祈るとき』『救いの森』がある。

「2020年 『イノセンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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