できそこないの世界でおれたちは

著者 :
  • 双葉社
3.36
  • (2)
  • (3)
  • (4)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 84
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240870

作品紹介・あらすじ

パンク歌手として世に蔓延る嘘や欺瞞と闘った日々も今は昔。40代半ばとなった吉永は、下請けコピーライターとして、養育費の支払いに四苦八苦する毎日だ。ある日、今や紅白歌合戦に出場するほど出世(堕落?)したかつての相棒から久々に電話がかかってきて――。たとえ中年と呼ばれる歳になっても未熟さと決別できない、すべてのできそこないたちに送る、永遠の青春小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 子どもの頃にかけられた、『お勉強しないとちゃんとした大人になれませんよ!』という暗示、、、
    これは『ちゃんとした』大人になれなかった人々の物語だ。
    世の中との妥協を良しとせず、俺流を貫いて来た人たちもいつか歳をとる。
    間もなくやってくる冬を前にキリギリスだって
    己の帰し方行く末に思いを馳せたりするのだ。
    お前たち、いくつになっても馬鹿だな~!と思いながらも
    どうかそのままで、最後まで駆け抜けてくれと
    願わずにいられないのでした。
    文章になれないと少し読みにくいのだけれど
    愛しい奴らの物語です。

  • 色々な描写に「それ知ってる」と既知感が湧くなぁと思っていたら、作者は俺と同い年みたい。生きてきた時代背景が似ているということだったのか。

    フリーのコピーライター中年おっさん吉永が主人公。なんとも冴えない、ウジウジしてて、フワフワした生き方のおっさん。若い子らからみたら「こいつらバブル世代が日本を住みにくくした老害」と言われそうな…

    とはいえ、人の道に外れた生き方をしているわけではないのだが、ちょっと恥ずかしく情けなく思えてくる。きっと俺も吉永と同じような浮ついた人生を送ってる部分があるからだろうなぁ。

    ストーリー自体は凡庸な中年の青春やり直し小説。ストーリーに柱がないなぁ…と思っていたら、この作品は何かの続編(後日譚)らしい。前篇を読んでいれば、色々と回収できたのかも知れない。前篇を読むかどうかは留保だが。

  • もうすぐ50になる、もとパンクロッカーであり現フリーのコピーライターのシロウの青春物語。

    とくに何か大きな事が起こるわけではないが、回りにいる魅力的な友達との楽しく、時には悲しい青春物語。
    面白かった。皆が幸せでありますようにアレルヤ!

    ってな感じ。星3.5

  • 四捨五入すると50歳のシロウのお話。
    最初読み辛いかもと思ったけど、言い回しが面白くて笑いながら読んだ。いくつになっても楽しみながら私も生きたい!

  • 吉永シロウはもうすぐ50歳。昔バンドをやっていて、今は下請けコピーライターをしている。バンド仲間だった(通称)ドラムは今では紅白に出るようなバンドにいる。昔タイで知り合ったさっぱりしていてキュートな久美ちゃんにメールしても2年も返事がない。やはり昔すきだったバー・アラバマのママ、ヒロ子さんにも会ってない・・・久しぶりにヒロ子さんに会いに行き、とんでもないところで、久美ちゃんに再会する・・・

    これは思わぬ収穫。他の所で、一つの文が長すぎると批判されてたけれど、全然問題ない。AだからBになったけど、Cのような論理の展開とか、感情の展開が3つの文になっても、1つでも、リズムが良ければどっちでもいい。

    自分の人生はこんなことで良いのかと悩んでみたり、あるいは悩むのをサボって一時の快楽に耽ったりする男の話を他人事とは思えない。他人事だと思えないから面白いのではなく、面白いのに別の調味料が加わった感じがする。

    自分の事がよく分からなくなったり、厭世観が強くなったりする、いわゆる「中二病」的な病。それが一度で済めばいいけれど、またいい歳してビョーキったりする。そのビョーキをネガティブに描かずに、笑えるポジティブに変える。そんな小説だった。

  • 読むたびに焦燥や狂騒が込み上げる。青春に挫折しそこねた大人たちのやりきれなさを他人事とは思えなくて、過ぎ去った日々とこれからの日常に思いを馳せる。うまく負けること、転がることの難儀さ。かつてクラッシュはrebel waltzを歌ったが、桜井鈴茂の描く哀惜はクラッシュよりももっと懐が深い。生きていく日々に少しづつ蓄積されていくままならなさを、この小説は控えめに慈しんでいるようだ。

  • 内容紹介(ネット転載)
    パンク歌手として世に蔓延る嘘や欺瞞と闘った日々も今は昔。
    40代半ばとなった吉永は、下請けコピーライターとして、
    養育費の支払いに四苦八苦する毎日だ。
    ある日、今や紅白歌合戦に出場するほど出世(堕落?)した
    かつての相棒から久々に電話がかかってきて――。
    ジャズをかけないジャズバーの店主、パラグアイにとんずらした元コールガール、
    前科者のおかまバー経営者など、個性豊かな仲間たちと繰り広げる、
    愛と笑いと涙の物語。たとえ中年と呼ばれる歳になっても未熟さと決別できない、
    すべてのできそこないたちに送る、永遠の青春小説。

    自分と同じくらいの年代かあ。中身はなんも変わらないけど少しずつ見た目と社会的な評価が変わって行って、いつの間にやら立派な中年になりました。
    だけど、みんな胸に持ってるキラキラした夢や、ギラリとした夢は表に出さないけどあるはず。
    この本なかなか良いですよ。状況変わって疎遠になった仲間たちが少しずつ関わって今を作るなんて夢あるじゃないですか。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1968年生まれ。明治学院大学社会学部社会学科卒業。卒業後は、音楽活動ほか職歴多数。同志社大学大学院商学研究科中退。2002年『アレルヤ』で第13回朝日文学新人賞を受賞。他の著書に、『終わりまであとどれくらいだろう』『女たち』『冬の旅』『へんてこなこの場所から』『どうしてこんなところに』がある。

「2021年 『探偵になんて向いてない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜井鈴茂の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×