未来

著者 :
  • 双葉社
3.45
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本棚登録 : 2888
感想 : 333
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240979

作品紹介・あらすじ

"「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという……。『告白』から10年、湊ワールドの集大成!待望の書き下ろし長編ミステリー!!"

感想・レビュー・書評

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  • 『ねえ、大人章子。わたしはこのピンチを一体どうやって乗りこえたのですか?』

    時の流れは一方向のみです。過去から未来へと流れるのみ。これは万人にとって同じです。記憶力にも左右されますが、過去のことはなんでも語れるはずです。でも、どんなに頑張っても、どんな方法を使ったとしても未来を語ることは現代の科学技術ではできません。机の引き出しの中に”あの機械”を隠し持っていますとか、雷のパワーで怪しげな車と共に未来へ!行けるなんてスクリーンの向こう側だけの夢物語です。でも、自分が未来に行くことができなくても、未来の自分がそこに生きているという情報を得られるだけでもそれは画期的なことだと思います。未来の自分が過去の自分にアドバイスをくれるその瞬間。次から次へと私たちを襲うピンチの数々。そんなピンチをどう乗り越えたかを全て知っている未来の自分。もちろん、未来を知ることができるということは、必ずしも良いことばかりではありません。不幸のどん底にいますなんて、未来の自分に言われたら、もう生きていくのも嫌になるでしょう。しかし、今が不幸の真っ只中にいるとして、未来の自分がそこに幸せに生きているということを知ることができたなら、それだけでも人は生きる希望をそこに見出すことができるように思います。

    この作品は、『わたしは二〇年後のあなた、三〇才の章子です』という手紙を受け取った主人公の物語。『あなたの未来は、希望に満ちた、温かいものである事を伝えた』いという未来の自分から届いた手紙に返事を書き続ける主人公・章子の物語です。

    『高速バス乗り場には、大型バスが一台停まっている。バスの乗車口前には、長い列ができている』と、深夜バス乗り場に『暗い顔をして』座る彼女の姿を見つけたのは主人公の佐伯章子。『あ、あの、あのね、あたし…』と彼女が語ろうとするのを制し『余計な話は、しなくていい。バスに乗ろう』と二人はバスに乗り込みました。『ゆっくりと動き出した』バスの中で『もう、大丈夫。何も考えずに寝ればいい』と言う章子に目を閉じた彼女。『薄暗い田舎道を走る』中、『まるで、今のわたしたちのようだ。だけど、暗闇がずっと続くわけではない』と思う章子は、『内ポケットから封書を一通取り出し』ました。『一〇才の章子へ』と始まるその手紙には『こんにちは、章子。わたしは二〇年後のあなた、三〇才の章子です』と驚愕の文章が綴られていました。『これは未来からの手紙。あなたはきっと、これはだれかのいたずらではないかと思っているはず』と、章子の心情を見透かすようなその内容は『大好きなお父さんをなくしたばかりのわたしをからかうなんてひどい、とおこっているかもしれません』と、父を亡くしたばかりという章子の心情を察した上で『しかし、これは本物の未来からの手紙なのです』と、強く言い切っていきます。そんな手紙には、本物であることの証として『東京ドリームマウンテン三〇周年記念』と記載のある栞が同封されていました。今年が一〇周年であり、三〇周年という記載はまさしく未来の証。そんな手紙は、入院中の父親が退院の暁には、家族で『ドリームランドとマウンテン』へ旅行に行こうと楽しみにしていたこと、そして、父親が亡くなった時のことなど、家族でなければ知り得ない内容が書かれていました。『人生は自分自身で切りひらいていくもの』であり、『未来など、知らない方がいい』と書くその手紙は、『それでも、わたしがあなたに手紙を書く事にしたのは、あなたの未来は、希望に満ちた、温かいものである事を伝えたかったからです』とその目的に触れます。『章子、二〇年後のあなたは、むねをはって幸せだと言える人生を歩んでいます』と未来の章子の姿を語るその手紙。『悲しみの先には、光差す未来が待っています。それを、あなたに伝えたくて』と希望ある未来を伝えるその手紙は、『がんばれ、章子!この手紙が、あなたの人生のささやかなエールとなりますように』と締め括られていました。その手紙を受け取ったのは『小学四年生の終わり、三月末のこと』。『「佐伯章子様」と黒いペンで書かれ『住所も差出人の名前もなく、切手も貼られていなかった』その手紙を見た時、母親が『この手紙を残して、家を出ていってしまったのでは』と一瞬思った章子。しかし『ママが一人で外に出ていけるはずがない。だって、今のママは人形なのだから』という母親は『窓辺を向いたお気に入りの籐椅子に座り、どこか遠くを見』つめるだけの日々を過ごしていました。そして『開けてビックリ!まさか未来の自分からの手紙だったとは』と驚いた章子は『未来の自分に』手紙を書くことにしました。『三〇才の、大人章子へ』という書き出しから始まる手紙は『手紙をありがとう…おたがい、がんばろうね』と続けます。そして、そんな章子が未来の自分へ向けて激動の日常を書き続けていく物語が始まりました。

    漆黒の表紙の地に金色の「未来」の文字が浮かび上がるとても印象的な表紙が目を引くこの作品。『ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分』という内容紹介の言葉に書かれる通り、この作品は主人公である小学五年生の佐伯章子に『こんにちは、章子。わたしは二〇年後のあなた、三〇才の章子です』という手紙が届いたところから始まります。『住所も差出人の名前もなく、切手も貼られていなかった』ことから『郵便で届いたものではない』と即座に思う章子は『ママが書いたものではないか』と考えますが『椅子に座ったままぼんやりと一日を過ご』すだけの『人形』のような母親がそんなことするはずがないと思い至ります。そして、『信じているあいだは、この手紙は本物の未来からの手紙だ』と、詮索することをやめた章子は、その手紙に返事を書くことにしました。もちろん投函はできないため『サンタポストのように、未来ポストの場所が分かるまで、手紙は木箱に入れておく』と、書いた手紙を手元に置き続ける章子。もしあなたが未来の自分からとされる手紙を受け取ったとしたらどうするでしょうか?単なるイタズラと一笑に付したくもなりますが、そこに家族しか知り得ないような事が書かれていたとしたらどうでしょう。巧妙なイタズラと考えていく選択肢ももちろんあると思いますが、この作品の章子は、敢えて本物と信じることにして、返事を書いていきます。そんな章子が書く手紙のみで綴られていくのが〈序章〉に続く〈章子〉という章で、この作品の総ページ数の半分近くを占めます。作品の中心部分が子供の章子から大人の章子への手紙で全て占められるというその構成はまさに圧巻です。せっかくですので手紙の数を数えてみました。
    小学五年 11通
    小学六年 9通
    中学三年間 17通
    と、合計37通にもおよぶ10代の章子から30歳の章子に宛てた手紙の数々。湊かなえさんには、まるまる一冊を手紙だけで構成した「往復書簡」という作品があります。あの作品は56通の手紙だけで作品が構成されていました。この作品はこの章のみであり、それに続く章は手紙ではなく普通の文体で展開します。しかし、この作品のインパクトは、数、量というよりは”自分から自分への手紙”であるという点にあると思います。そんな手紙は『大人章子へ』と相手が大人であることを意識し、どこか他人行儀な部分もありましたが、次第にそんな垣根が取り払われていくようになります。『おみやげ買って来るからね、なーんて』、『大人章子もがんばって!』と明るく手を振るような表現が登場する一方で『メチャクチャむかつく事がありました』、『モヤモヤする事があります。イライラする事があります』と、10代の章子が抱える不満を30歳の章子に聞いてもらおうとするかの表現までが記されていくその手紙。そんな手紙を書くことを『大人章子、やっぱり、書くって大事ですね。思いを形ある物に変えて、体から出すと、スッキリしました』と前向きに捉えていく章子。そんな章子は、30歳の章子から手紙が届いた時、つまり大好きだった父親が亡くなった時が『今が一番悲しい時なのだ。これを乗り越えれば、私は幸せになれる』と思っていました。しかし、そんな章子を不幸な出来事が次から次へとこれでもか、と襲っていきます。『今の私はあの頃より不幸』と読み進めるのが辛くなる物語がひたすらに章子の手紙によって記されていくその物語は、それが”自分から自分への手紙”であるが故に、つまり、心の内全てを曝け出せる相手=自分宛が故に、それを読む読者には耐え難い心の叫びが伝わってくるのを感じました。それが単行本448ページのほぼ半分を使って展開する構成を取るこの作品。「往復書簡」ともまた違う手紙という形式を効果的に用いた湊かなえさんならではの作品だと思いました。

    そんな手紙という形式のインパクトが強いこの作品ですが、後半の構成もまた特徴的です。〈エピソード1〉から〈エピソード3〉という三つの章では、〈章子〉の手紙の中に登場した人物、事件の裏側が、それぞれの章に一人ずつ登場する主人公の第一人称視点で語られていきます。手紙という形で物語を語るにはメリットとともにデメリットがあります。前者は上記したとおり、”自分から自分への手紙”ということでの素直な内面の描写によって、主人公の揺れ動く心の様を細かく追えることです。これは、主人公への感情移入にも大きな力を果たします。その一方で、主人公が見える範囲でしか物事が見えないという点がデメリットとして生じます。多くの人物が登場しても、彼らの内面は主人公視点の手紙から伺うことはできません。主人公的には強い印象がない人物など、主人公のことを深く思ってくれていたとしても、その人物は大きくは取り上げられません。さらには、手紙上では、結果論としての一つの事象だった事ごとの裏側にまさかの物語が存在していたとしてもそれが手紙で語られることはありません。それが故に、これら後半の章は、手紙だけで構成された〈章子〉を読んできた読者に、それまで見えなかった衝撃的な事実が次から次へと突きつけられ、最後に全容が全て明らかになるという劇的なまでの構成となっています。そして、章子の手紙では見えなかった舞台裏には、〈章子〉の内容以上に、これでもか!というくらいに、もう嫌になるくらいに、マイナス思考な空気感に満たされた物語が存在しました。イジメ、引き籠り、DV、モンスターペアレント、児童虐待、AV出演強要、近親相姦、親殺し…と、もう目を逸らしたくなるような内容が怒涛のように押し寄せる物語。読んでいて吐き気がしてくるほどの強烈極まりない”イヤミス”の世界が執拗に読者を襲います。そんなそれぞれの物語の主人公たちは『人は期待するから失望する。だから、失望させた相手よりも、期待した自分が悪い』と、どん底へとどこまでも落ちていくような壮絶な人生を歩んでいきます。これらの章で主人公となる人物が誰であるかは、即ネタバレになるためここに書くことはできません。しかし、これらの人物たちはこの作品の全容を読者に明らかにするためには欠かせない存在でした。そして、主人公の章子、三つの〈エピソード〉の主人公たちが生きた人生の先に、物語を先に進めるための〈終章〉が描かれます。この〈終章〉は、冒頭の〈序章〉の先に続く今の章子の物語であり、ここに湊かなえさんの”イヤミス”系の作品らしく雲間から光が差しこむような瞬間が描かれます。ようやく訪れる平穏な未来を遠くに見やる静かなその結末。しかし、あまりにも壮絶に繰り広げられた物語から、自分の気持ちを戻すにはこれではとても足りません。う〜ん、小説を読んだだけでここまで自分の気持ちが落ち込まされてしまうのか…となんとも言えない感情に包まれながら本を閉じました。

    『つらい状況の中では、「何を言っても変わらない」という気持ちになってしまうこともあるかもしれません』と語る湊かなえさん。この作品で描かれた主人公・章子、そして章子に色んな形で関わりのあった登場人物たちに共通していたのは、どうしようもない状況に追い込まれ、一人思い悩む日々を送っていたことでした。『悪いのは私、と呪文のように自分に言いきかせ、どんな暴力も抵抗せずに受けとめていた』という主人公たち。そんな主人公たちに、『勇気を出して声を上げてみることで、誰かが手を差し伸べてくれるかもしれない』と語る湊かなえさん。『人は誰かと関わることによって、救われたり、救ったりしながら生きています』と続ける湊かなえさんが描くこの作品。あまりに壮絶な、あまりに救いのない、そしてあまりに不幸な出来事の連発に、読者の気持ちまでどん底に引き摺り込んでしまう陰惨なまでの世界が描かれたこの作品。沈鬱という言葉に満たされた暗黒世界に一筋の光差す瞬間を垣間見るその結末。『私、生きてるんだよね?あんたの年まで』と30歳の自分に問いかける14歳の章子。”大丈夫だよ、章子、大丈夫”、と、もう読者の私が声をかけてあげたくてたまらなくなる思いに苛まれた、”イヤミス”の極み、ここにあり!という作品でした。

    湊さん、いくらなんでも”イヤミス”が過剰すぎませんか、この作品。
    読後、自分の気持ちを普通に戻せないです…。

    • piron2さん
      さてさてさん、私がここにコメントしなければならなかったのに、私のレビューにコメントくださりありがとうございました。
      さてさてさんのレビューは...
      さてさてさん、私がここにコメントしなければならなかったのに、私のレビューにコメントくださりありがとうございました。
      さてさてさんのレビューはいつも面白くて、私もさてさてさんみたいに書けたらなぁと羨望の眼差しで読ませていただいております。それからアイコンの由来も教えてくださってありがとうございます。印象に残るすごくかわいいアイコンだと思います。
      さてさてさん、文もアイコンもセンスありすぎです!
      「未来」は相当重たそうな内容ですね。私も小説の内容に引っ張られて気分が落ち込むことが多くありますので、「未来」は体調を整えて、元気な時に読みたいと思います。
      2021/08/12
    • さてさてさん
      piron2さん、コメントありがとうございました!
      お褒めいただきありがとうございます。ますますやる気を出して10,000字位のレビューを書...
      piron2さん、コメントありがとうございました!
      お褒めいただきありがとうございます。ますますやる気を出して10,000字位のレビューを書きたいと思います…というのは単に迷惑ですね…。
      さて、私は一人の作家さんの小説を三冊ずつ連続で読んで…という繰り返しを飽きずに、真面目に(笑)続けているのですが、piron2さんも読まれた「サファイア」とこの「未来」は、全然違いました。断然「サファイア」がお勧めです。この作品はイヤミスの横綱という感じで、こちらの気持ちまでやられそうになりました。ただ、逆にいうと”たかが”一冊の小説でそんなことができる力というのは凄いと思いました。気持ちに余裕が”超”おありの時に是非お試しいただければと思います。ただ、再読したいのは断然「サファイア」ですね。
      引き続きよろしくお願いいたします!
      2021/08/12
  • 「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。
    送り主は未来の自分だという……。

    父を亡くしたばかりの十歳の少女・章子のもとに、
    三十歳の章子が書いたという〈未来からの手紙〉が届く。
    その手紙に励まされた十歳の章子は〈大人章子〉に向けての
    返事という形で日々の日記を書き始める。
    意地悪なクラスメート、無気力だったママの変化、担任の先生の言葉
    ……辛い出来事があっても、〈未来からの手紙〉に記されていた
    あなたの未来は、希望に満ちた、温かいもの〉という言葉を支えに頑張ってきた章子。
    しかし、中学に入った彼女を待っていたのは、到底この先に幸せがあるとは思えない事態だった……。
    相次ぐ災厄が、章子の心を冒していく。私は幸せになるんじゃなかったのか…。


    未来の自分から手紙。
    その時幸せでない子供はその手紙に希望を抱く…。
    その気持ちがヒシヒシと伝わってきた。
    その未来の自分へ届くはずのない返事を書くという形式で
    物語は進んでいく。
    未来からの手紙ってどういう事なんだろう…?
    ワクワク期待しながら読み進めました。
    最初は日記の様な章子の一人語り。
    その後は視点が変わり語り手が変わり
    謎が少しずつ繋がってゆく。
    親との死別・虐め・DV・貧困・暴力的虐待・性的虐待
    ストーカー・精神崩壊・AV強要出演・自殺・放火・殺人…。
    これでもかって容赦なく辛い話、苦しい話が延々と続き
    気持ちが引きずり込まれてとっても苦しかった。
    正直読むのが嫌になった。
    でもこのお話がどこに続いていくのか、気になって
    読むのを止める事が出来なかった。
    湊さんの筆力のなせる業なのかな。

    人の数だけ、暮らしがあり、人生がある。
    この本に登場する子供達は周りの大人たちによって苦しめられている。
    本当に悪魔の様な大人が沢山登場して嫌になった。
    一人で抱えてはいけない、分担すればいい。
    自分にとって重い荷物でも、当事者以外にとってはそれ程重くないかもしれない。
    そして、自分がほんの少しの勇気を出して助けを求めれば
    未来は開かれるのかもしれない…。
    さぁ叫ぼう、未来の為に…。
    そんなラスト…未来への希望の光が見えるようなラストになっていた。
    でも、暗すぎる酷すぎる環境を読み続けたせいか、
    そんな明るい未来を感じ取れなかったのは残念です。

    ただ、章子に話してた父親の言葉はとても素敵なものが多かった。
    心に響きました。

    装丁がとっても素敵だった。
    黒地に金の題字、題字の字体もとっても綺麗♪

  • 完全なる黒湊。しかしハードカバーに記された金色の「未来」の文字。最後は少女たちにとって救いのある結末だったと信じたい。「10歳の章子へ、こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。」で始まる。最初の200ページが大人章子への返信。内容は章子自身へのいじめ、DV、母親のうつ病、母親と担任の恋沙汰、身売り。章子の反吐が出る程の生きにくさをこれでもか!と描写した。章子の父親が何故母親を守りたかったのか?この真相が理解でき、この輪廻する不条理に言葉がない。不条理を突き詰めた完成度は極めて高かった。

  • 私が10歳の時、30歳の自分からの手紙が届いたら。
    もしもその時、自分の今に希望が持てなかったとしたら、その手紙が見せてくれる「未来」はきっと心の支えになっただろう。その光に縋りついただろう。
    10歳の章子から30歳の章子への手紙、少しずつ少しずつ彼女の毎日を読むことが苦しくなってくる。でも、あの未来からの手紙があるじゃないか、きっとこのあと光り輝く日々がやってくるに違いない、きっと、きっと…
    章子、同級生の亜里沙、篠宮先生、良太、それぞれの語りによって見える全体像。
    吐き気がするほどこの世界にはくずのような大人ばかりだ。最低で最悪だ、いや、そんな言葉では言い表せない。悪魔という言葉さえ甘い。なんなんだ、なぜみんなこんなに苦しまなければならないんだ。
    眉間にしわを寄せながら読み続ける。こんな最低な大人たちは生きている意味なんてない。

    罪は償う必要がある。確かにそうだろう。けれど、償う必要のない罪だってあるんじゃないか。
    いくつもの後悔と、いくつもの犠牲の上の、最後の選択としての「罪」ならば、私はそれを認めたい。
    10歳が選んだ生きるための罪ならば、それを認めたい。

  • 大人になった自分から届いた手紙に返事を書いていく形で話が展開していくのを読みながら、章子に訪れる様々な辛い出来事に心が痛み、林先生もおばあちゃんも他の大人もみんな味方になってくれるようで実は自分のことしか考えてない、大人なんてみんなこんなもんなのか?本当に味方になってくれる人はいないのか?と絶望的になりました。亜里沙が手を差し伸べてくれた時には「よかった」と思ったのですが、まさかその亜里沙まで大きなものを抱えていて、さらにその亜里沙に手を差し伸べてくれていた智恵理までもが…という救いのなさに何とも言えず、この先どうなってしまうのだろうと思いました。良太と森本兄妹の物語も衝撃で、それが章子の話につながった時に「そういうことだったのか」と驚きでした。大事な人だったり突然やってきた手紙だったり、支えになるものを見つけた者にはどんな形かはわからなくても「未来」は待っているのだから、それを見つけた彼ら彼女らの「未来」が明るいものであってほしいと願うばかりです。

  • 湊かなえワールドの集大成との惹句に惹かれて読んだけど、ちょっと好みでなかった。初めは頭も良くて健気な女の子の物語が展開するので興味津々に読み進めている内に、次々と酷い要素がこれでもか と続いて来て終章で止めを刺された 笑。

  • 湊さんの小説は大好き。
    これもさくさく読み進められたけど、辛い内容。
    こんな怖い話は、読みたくないと思ってしまうほど。

    この世の中、いろんな事件が毎日のようにおきる。
    でもそれをなかなか身近には感じられない。

    でも壁一つ隔てただけの、隣の出来事かもしれない。知らないだけで。

    自分だけで悩んじゃいけない、もっと声を大にして今の状況を訴えないと。
    自分の未来は自分でつかみ取らないと。
    泣いてちゃダメだ。

  • 「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。
    送り主は未来の自分だという……。『告白』から10年、湊ワーールドの集大成!
    待望の書き下ろし長編ミステリー!!

    こちらの本ですが実は、私が湊かなえを知り、また、愛読するようになった「一冊目」の本です。それまでは巡り合わせのご縁がなく知らなかったんですが「タイトルに惹かれて」購入。いざ本を開き読み進めてみると、「あ、これは未来の自分とのタイムリープ系なのだな」と彼女の作風を知らない私は思ってしまいました。
    しかし、章を追うにつれ、DVや近親相姦、親殺しの計画と実行、自殺や公務員がAV出演の過去などの公序良俗に反するようなネタがこれでもかというほど盛り込まれており、自分の心がどうにかなってしまうのではないかという危険を感じつつも、今後の展開で「未来」が切り開かれていくのではないかという淡い期待を抱きながらあっという間に読み進めてしまいました。

    結末は...ここでは伏せておきますが、、、、
    「私はこの作品がきっかけで湊かなえの虜になりました。」

  • 10歳の章子に20年後の未来の自分から手紙が届く。自分に起こったことを返信する。自分や友達、身近な人にDV、父娘相姦、自殺等が語られる。読みだしたら止まらないのはさすが湊かなえ。心理をうまくとらえてるなあ。よくまあ心の闇をこれだけ描けるなと。しかし、読んでてしんどい。否応無く一方的にやってくる運命、負の力、それはその人のせいではない。苦しむだけの人に救いになる人が身近にいたらと思う。その声に正面から受け止めねば。誰もが話を聞くようになればね。誰もが苦しいんだ、誰もがね。

  • 私の中で、久々のヒット作でした。
    よくある田舎のシングルマザーあるあるの駄目男にハマるお母さんの話かと思いきや。

    でも、こういう子供たち身近にいた。
    悲しいかな。
    友達同盟を結んでその親にみんなで抗議しにいって、先生にめちゃくちゃ怒られた。
    でも、大人って大人ってだけでなんで威張るんだろう?権利があるんだろうって納得いかなったなぁ。

    多くの子供たちがこのような経験をしなくていい世の中になって欲しいです。

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著者プロフィール

1973 年広島県生まれ。2007 年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビュー。本著は、「2009 年本屋大賞」を受賞。12 年「望郷、海の星」(『望郷』収録)で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。16 年『ユートピア』で山本周五郎賞受賞。18 年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門にノミネートされた。その他の著書に、『少女』『高校入試』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『落日』『カケラ』などがある。

「2021年 『ドキュメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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