魔法がとけたあとも

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 152
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575241754

作品紹介・あらすじ

妊娠した。周りは正しい妊婦であるよう求めてくる(「理想のいれもの」)。鼻のつけ根にある大きなホクロ。コンプレックスから解放される日が来た(「君の線、僕の点」)。中学生の息子に髭、自分の頭には白いものが(「彼方のアイドル」)。誰もが経験しうる、身体にまつわるあれこれ。そこから見えてくる新たな景色を、やわらかな眼差しで掬いとった短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 「自分の身体」がテーマの短編集ということに気付いたのは読んだ後で、読んでいるときはタイトルの「魔法がとけたあと」感が何ともエグいな~と思った。自分の思い通りにいかないジレンマが痛々しく、ちょっぴり切ない。こういうもどかしさ、確実に自分も経験があるものばかりだからだ。
    なかなかに苦々しい描写もある一方で、ほどよく甘い。小道具の使い方も絶妙だなといつも思う。印象に残ったのは、「理想のいれもの」で妊婦の志摩がハマるシチュエーションCD、「花入りのアンバー」で美鶴が仕込む果実酒(飲んでみたい…!)などだ。カバー絵には、ストーリーに登場する小道具が色々ちりばめられていることに気付き、読了後にじっくり見るのも楽しかった。
    それぞれに面白い5篇だったが、一番好きなのは「彼方のアイドル」かな。アイドルのライブ場面の臨場感がもう最高で!年ごろの息子との距離感の取り方に対する難しさも…身につまされるところが多くてあれこれ考えさせられた。そして、ジワリと泣けた。
    奥田作品、これからも追いかけていきたいです。

  • 最近どハマり中の奥田亜希子さん。


    「理想のいれもの」
    シチュエーションCDの魔力恐るべし。
    「花入りのアンバー」
    インスタ映え狙いの元女将さんが素敵すぎる。
    「君の線、僕の点」
    ホクロってなんで出来るんだろう。
    「彼方のアイドル」
    ダッフルコーツのイメージが難しい……(笑)


    空回りが続くと、突然、どうしようもなく全て放り出したくなる時がある。
    それがいつまでも続くわけではないのに、刹那、その無力感めいたものに支配されてしまった時のような、そんな息苦しさが蘇った。

    一番最後に入っていた「キャッチボール・アット・リバーサイド」がまだ苦しく残っている。
    かつて、野球部のエースとして特別視され、成績も優秀だった友人の千晃。
    そんな彼が今や面影もない姿で目の前にいる。
    元妻からのDVの跡をまだ身体に残す千晃を前に、大悟もまた、妻とのすれ違いの生活を思う。

    傷付いたから傷付けても良いわけではなく。
    傷付いたとて、治るかは分からない。
    お互いの望みのすれ違いの中で、どうしてこんなにも傷付き合ってしまうんだろうな。

    何に対して「間違っている」と言えばいいのか、分かりにくい、だから苦しい。
    けれど、傷付いた友人を放ってしまうような物語でなくて良かった。
    キャッチボールをして、微笑みあえる、そんな物語で良かった。

    どの短編も、そういう、苦しんだけれど、あぁ良かった、と思えるストーリーが用意されている。

    『魔法がとけたあとも』というタイトルは、どんなイメージで付けられたんだろう。
    恋人とか夫婦とか家族とか。
    そういう形における、理想のイメージって「魔法」ってことなんだろうか。
    一定時間が経って、形としての持続は出来なくなって、でもそれでも世界は続いている。

    つまり、ある種の癒着をして原型を留めないような、いや、破綻して二度と結ばれないような、思い切って離脱するような、そんな様々な、自分の在り方は、それでも続いていくのだな。

  • 魔法という言葉に表された個人が囚われている思い込み、コンプレックスなどがなくなる連作短編集。
    シチュエーションCD、アイドルファン、元カレへの執着の話が面白かった。
    シチュCDとアイドルについてはかなり詳しく細かく語られていて、多分作者やかなり近しい方にハマってるケースがあるんじゃないかと推測。
    ⭐︎理想のいれもの
    ⭐︎花入りのアンバー
    ⭐︎彼方のアイドル
    この作者さんは今後チェックしていこう!

  • しっくりいっていない、社会や生きる日々への何かしらの不適合の感覚…。それは自分の病であったり、容姿へのコンプレックス、或いは仕事、恋愛、家族等々、それらを通じて、納得できない事柄に自分自身がどん詰まりを感じることではないだろうか。何故自分だけ、どうしてうまくいかない?と。

    そこで絶望してしまったり、何かを閉じてたり、諦めたりと、自ら複数の選択肢を絶ってしまうことは他人事ではない。

    短編5編、とても日常的な題材で、それぞれの主人公たちが、諦めかけた選択肢を取り戻す様子が明るい。ちょっと出来過ぎ感と、センチメンタルで甘い印象だが、ちっちゃな心のささくれを上手に描ける作家さんだ。

  • 短編集。日常的の一部を切り取った話で、話の中に出てくるささいな葛藤、ジレンマがうまく書かれてて、読みながら「あーわかるなぁ」と共感してしまう。いい意味で結末が後に残らず、シュワっと蒸発していく感じ。

  • 短編集でサクサクと読めました。

  • *昨日までの自分と、今日からの自分。世界が変わっても、私はここにいる。私たちの身体に起きた、あれこれ。そこから見えてくる、新たな景色とは―。爽やかな共感と希望をもたらす五編*

    誰にでも起こりうる、日常に点在する憂いや悩みを切り取ったような短編集。それだけに、共感し過ぎて胸が痛くなる場面も多々・・・けれど、魔法=呪縛?思い込み?そういうものから解き放された時、新たな世界があたたかいものになるといいな。そんな風に思えるお話たち。

  • 装丁と題名に惹かれて読み始めた。
    特に「彼方のアイドル」と「君の線、僕の点」が好きだった。みんな見た目やコンプレックスに戸惑ったりコンプレックスがあったりするんだよね。
    生きていく過程で見た目や心に変化はあるものの
    所々で自分を振り返って 自分を肯定したり、気づきがあったり。そうやって生きていくって大切。
     

  • 短編集。どの話も良かった。
    旅先に持ってきた梅酒。一緒に飲んでくれる人がいて救われた。ホクロとか。自分ではとっても重要なことでも外からみれば大したことでないというのはよくあるんだろうな。
    深く悩み過ぎずほどほどに。そして気分を変えて次の一歩を踏み出せるようになりたいもんだ。

  • 理想の入れもの、花入りのアンバー、君の線僕の点、彼方のアイドル、キャッチボールアットリバーサイドの短編5本。
    主人公達がそれぞれかけられた魔法?に気づく瞬間は、読んでいて胸がすかっとした。あとタイトルが秀逸。タイトルネーミングとしては、きみの線僕の点が特にすき。美味しい梅酒が飲みたいなあ。

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著者プロフィール

奥田亜希子

1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部卒業。2013年、「左目に映る星」ですばる文学賞を受賞しデビュー。『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』など著書多数。

「2020年 『愛の色いろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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