犬がいた季節

著者 :
  • 双葉社
4.21
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本棚登録 : 6926
感想 : 665
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243253

作品紹介・あらすじ

1988年夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。「コーシロー」と名付けられ、以来、生徒とともに学校生活を送ってゆく。初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら…。昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の逡巡や決意を、瑞々しく描く青春小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • さて、唐突ですが、高校時代のことを思い出してみてください。あなたの一番思い出に残っていることは何でしょうか?

    このレビューを読んでいただいているみなさんの年齢層はマチマチです。同じ高校時代といってもそこに浮かび上がる景色は全く違うものになるでしょう。しかし、その内容こそ違えど、そこには、辛かったあの時、悔しかったその時もある代わりに、楽しかった、そしてかけがえのない幸せを感じた、そんな思い出もたくさん詰まっているはずです。私たちはそんな時代を、そんな場所を三年間で駆け抜けて今日までを生きてきました。しかし一方で高校という場所は私たちが離れた後もそこに存在し続けています。そしてその場では、卒業してその場を去った私たちの代わりに新しく新入生を受け入れて…ということが毎年繰り返されています。

    『桜の花が咲き終わると、新しい制服に身を包んだ生徒がこの学校に現れる。そして三度目の桜が咲く頃、彼らは次の場所へ向かう』

    そう、桜の花が別れを演出するとともに、新しい出会いをも演出していく、その繰り返しの場所が高校でもあります。では、そんな場所に留まり、ずっとその場から繰り返しの年月を見守り続ける視点があったとしたらどうでしょうか?そんな視点の主からは、そこにどんな景色が見えるのでしょうか?そして、三度目の桜が咲く季節までを見守り続けた対象が旅立って行く、その瞬間に視点の主は何を思うのでしょうか?

    『コーシロー、元気でね。私のこと、忘れないでね』と旅立つ、彼ら彼女らを見送る桜の季節。『卒業後もときどき顔を出してくれることもあるが、ほとんどの生徒は二度とここには現れない』と、そこに留まり続ける視点の主から見た卒業生たち。そして『ユウカもコウシロウも、おそらくもう来ない。わかっているけれど、ここで待ち続けてしまう』と、そこに留まり続ける視点の主の心持ち。

    この作品は『この学校で暮らし始めて、長い時間がたつ』と、高校に留まり続ける犬の視点から、18歳を駆け抜けていく彼ら彼女らの青春の光と影を見る物語です。

    『シロー、シローという声に応えて尻尾を振ると、いつも頭を撫でてもらえた』という幸せな記憶。『ごめんね、シロ。うちじゃやっぱり飼えなくて』、『悪く思わないでね…優しい人に拾ってもらいな。ね、シロ』。シロと呼ばれて尻尾を振り、『取っておいで!』と投げられたボールを追いかける。でも、ボールをくわえたものの『振り返ったが誰もいない』というその場。慌てて『あたりを走り回ったが、嗅ぎなれた匂いもない』というその場。そして『歩き疲れてよろめいたとき、身体が宙に浮』きました。『おいおい、危ねえな、この犬、線路に入ろうとしてるぞ』、『子犬?子犬にしてはちょっと大きいかな』という人の声。『女があごの下をくすぐった。その手のやわらかさに、わずかに尻尾を振る』、そんな中『パンのニオイ…』がします。そして場面は変わり、『英語と数学の成績は悪くない。あと少し他の教科も頑張れば、もう一ランク上の大学が狙える』と担任に言われるも『その「あと少しの頑張り」ができない』と思うのは主人公の塩見優花。『苦手科目を克服するための計画表を作った』ものの『予定は未定』という夏休みを送る優花は『勉強しないのなら店を手伝ってほしい』と祖母に言われ『自宅一階にあるパン屋の手伝いを』します。『家の手伝いをするという名目で、自分は勉強から逃げていた』と終わってしまった夏休み。『こら、塩見。ちゃんと聞いているのか?』、『聞いてます。…いいんです、先生。私、高望みはしません』、『では志望校は変更なしで』という会話を終え職員室を出た優花。『校内順位、九十八番。全国順位は見る気にもなれない』と思う優花は『三重県四日市市』にある『八稜高校』という『県内有数の進学校』に通っています。『背伸びはしない。肩の力を抜いて、自分らしくいられる場所がいい』と思う優花は『夏休み前まで部長を務めていた美術部』の部室に向かいます。すると『おいおい、コーシロー』と『よく通る男の声が響いてき』ました。『美術の教員で、部の顧問でもある五十嵐聡の声』。『私、看板作りの手伝いに来たんですけど』と部室に入った優花は『あれ?犬?』と『早瀬光司郎の席に白い犬がい』るのに気付きました。『まだ小さくて、なぜか砂まみれ』という犬を見て『どうしたんですか、この犬?先生の?』と訊く優花に『部室に来たら、光司郎の席にこいつがちょこんと座ってたんだ』と答える五十嵐。『塩見さんも呼んでみな。コーシローって呼ぶと、こいつ尻尾を振るんだよ』と言うのは生徒会長の藤原。そうこうしていると『遅くなりました』と『灰色の作業服を着た』用務員の蔵橋が現れました。『これがその犬ですか。どれ…オスですね。ちょっと口を開けてごらん』と『上あごを押さえると、犬は素直に口を開いた』という状況に『飼い犬ってことか。じゃあ飼い主を捜すか。貼り紙でも作ろう』と言う五十嵐。そして、『コーシローと呼ばれると尻尾を振る白い犬は、美術部の部室の一角にケージが設けられ、保護されることになった』という展開。その日『家に帰った優花は、画用紙に「ワンちゃんの里親募集」と大きくペンで書』き、『鉛筆で犬の絵を描』きました。そんな優花がコーシローと触れ合いながら、来るべき大学受験、そして卒業へと向かう18歳の半年が描かれていきます…という第一話〈めぐる潮の音〉。冒頭のコーシローの過去の記憶から始まり、全編を通して実質的に主人公を務める優花の人となり、そしてこの後に続く物語へのおびただしい伏線がそこかしこに埋め込まれた印象深い物語でした。

    2021年本屋大賞にノミネートされたこの作品。『シロー、シローという声に応えて尻尾を振ると、いつも頭を撫でてもらえた』というまさかの犬視点から物語は始まります。そんな物語は、昭和63年4月から平成12年3月という12年間が主軸に描かれ、最後に令和元年の夏が最終話として物語をまとめています。『昭和から平成、そして令和』という三つの元号を駆け抜けるかのように描かれる物語の主人公を務めるのはパン工房の娘で高校三年生の塩見優花。そして、犬視点として登場するコーシローです。『コーシローは、昭和49年から60年までの12年間、実際に学校で暮らしていました』と、三重県ご出身の伊吹有喜さんが語る通り、コーシローにはモデルとなった犬が実在するようです。しかし、この作品とは描かれる時代が少し異なります。『時代は1988年から2000年の12年間に変えました』と続ける伊吹さん。その理由を『どこか不穏で、ざわめいていた昭和と平成の境目の年に始まり、20世紀が21世紀になっても日常に変わりはないのに、再び時代の境目にいるように感じた年で終わり、というのを書きたくて』と語られます。このレビューをお読みいただいている方の年齢層はマチマチだと思いますが、伊吹さんが語られるこの12年間を、伊吹さんと同じような年代で駆け抜けられた方には、その意図がどことなくわかるのではないでしょうか。元号と西暦の違いはあれど、わずか12年という短い期間に世の中が大きく変化した”あの時代”。伊吹さんはそんな”あの時代”の感覚を作品の中で、歌や、その時代を象徴するモノ、そして出来事に重ねて鮮やかに描写していきます。そんな中から幾つかを各話ごとに抜き出してみました。
    ・第1話: めぐる潮の音 昭和63年度
    『光GENJI「パラダイス銀河」が流れてきた。祖父たちが見ている紅白歌合戦の中継だ』
    『一月に入って今上天皇が崩御し、昭和六十四年は七日間で終わった』
    ・第2話: セナと走った日 平成3年度
    『今年は中嶋悟が引退を表明し、鈴鹿でのレースは最後だ』
    『東京の女子大生って、やっぱジュリアナ東京とか行くのかな。お立ち台? なんか高い所に立って、扇子振るの』
    ・第3話: 明日の行方 平成6年度
    『オリックスのイチロー、二百十本安打達成』
    『久美ちゃん、神戸で地震があったんだよ。震度6。お祖母ちゃんと連絡つかないの』
    ・第4話: スカーレットの夏 平成9年度
    『「たまごっち」という名前のキーチェーン付きのそのゲームは、今年に入ってから女子高生を中心に大ブームとなっている』
    『去年からこの男と経済的な援助を受ける関係の交際をしている』
    ・第5話: 永遠にする方法 平成11年度
    『ラジオからもの悲しげなタンゴのメロディが流れてきた。「だんご3兄弟」という童謡だ』
    『ノストラダムスが予言した危険な七月は、地球規模では無事に過ぎた』
    …と、ごくごく一部をご紹介しましたが、いずれも”あの時代”をまさしく象徴するものたちが、決して過去の振り返りではなく、各話の中でリアルに注目を浴びる様が実に自然に描かれていきます。また、秀逸だと思ったのが、その時代を象徴する音楽の選び方です。単にヒット曲を選んだというよりは、その物語の場面の描写と絶妙にリンクしていきます。『ラジオから一九九八年のミリオンセラーが流れてきた。スマップの「夜空のムコウ」だ』という文章に続くのは、『外を見ると雨はすっかり止み、月が輝いていた』と印象的に展開するシーン。まるでその場に流れるBGMかのように、主人公たちのいるその背景に音楽が流れる、そんな情景が目に浮かぶような絶妙な選曲のセンスが光ります。そう、1969年生まれの伊吹さんが実体験された20代から30代の”あの時代”。まさしく主人公である優花と重なる時代を生きてこられた伊吹さんならではの説得力のある”あの時代”の描写に終始魅せられ続ける読書。伊吹さんと同じ年代の方には、頭の中がすっかり”あの時代”にタイムスリップしたかのような感覚を味わえる作品なのではないかと思いました。

    そして、そんな物語でなんといっても欠かせないのは、書名にも登場し、視点まで移動する犬のコーシローです。小説を数多く読んできて、”猫視点”の物語には幾つか出会ってきました。そんな中でも最も有名なのは、有川浩さん「旅猫レポート」でしょう。『吾輩は猫である。名前はまだ無い』から始まるその物語のレビューに私はこんな一言を記述しています。

    “この本はヤバイやつや!電車で読んだらあかんやつや!” ー 有川浩さん「旅猫レポート」さてさて氏レビューより抜粋 ー

    そして、「犬がいた季節」という意味ありげな書名のこの作品には、”犬視点”が登場し、物語を読み始めて早々に、上記した「旅猫」の注意事項を思い出した私。冒頭のシーンを経てコーシローは、八稜高校の生徒たちが組織する『コーシロー会』によって生徒から生徒へと世話係が毎年引き継がれていきます。『この学校で暮らし始めて、長い時間がたつ』というコーシロー。『子どもの頃はこの世界のことをよく知らなかった。しかし、教室の片隅で毎日授業を聞いているうちに、しだいに人間の言葉や、この世界の仕組みがおぼろげながらわかってきた』というコーシロー視点が挟まれながら進む物語は、一方で各話に別途主人公となるべき人物が登場し、18歳の青春を生きていきます。勉強に、恋に、そして進路に悩む彼ら彼女らの青春。そんな彼らに訪れるのが高校卒業という一つの時代の終わりと次の時代の始まりを象徴する時代です。高校を卒業し、その次へのステップへと進むことになる18歳とは、ある意味で人生の大きな分岐点でもあります。そんな時代に身近で、社会で何か大きなことが起こると、そのことをきっかけに人生の先に見えていたものが変わることだってあります。『神戸を中心に一月末の時点で五千人以上の死者を出し』、『東京の複数の地下鉄に毒物のようなものがまかれ、たくさんの乗客が病院に運ばれている』、そんな出来事をリアルに見聞きし『お祖母ちゃんは幸せだったんだろうか』というような思いを抱けば、それは18歳の心を大きく揺さぶるのは当然のことだと思います。そんな風に、各話の主人公たちはそれぞれの時代に、それぞれに一生懸命に、その18歳という青春を駆け抜けて行きます。そんな中でこの作品は彼ら彼女らが駆け抜けていくのを見やる、犬のコーシロー視点を絶妙に織り交ぜていきます。構成メンバーが毎年どんどん入れ替わっていく様を一歳ずつ歳を取りながら見続けるコーシロー視点の物語。眩しい青春を駆け抜けていく彼ら彼女らを毎年見送っていくコーシロー視点の物語。そんな物語は後半にいくにしたがって『犬の寿命ってどれくらいだ?』という高校生たちの会話が登場し、『最近、昔ほど鼻が利かなくなった。耳も同じだ』とコーシロー自身に老いの自覚があり、そして『コーシロー、少しよろよろしながらグラウンドを横切ってました。足腰弱ってきたのかなあ』と、その瞬間が近づいていることを予感させながら物語は続いていきます。コーシローは歳を取るのに、コーシローの世話をする高校生たちは人は変われど歳を取らないという対照的な姿が印象的な高校という物語の舞台。そんな物語は、これ以上書かずとも、そもそも書名が語る通りの瞬間へと静かに、そして着実に進んでいきます。

    そう、
    “この本はヤバイやつや!電車で読んだらあかんやつや!”

    止めどもなく涙が溢れるその読書。あまりに優しく、心地よいまでに軽やかに、そして透き通るように美しく紡がれるその物語。しかし、そんな物語は令和元年に舞台を移した最終話〈犬がいた季節〉で私の予想を大きく上回る一段上の結末へと展開していきます。予想された悲しみの結末を上書きする、あまりの幸福感に満たされるその物語は、私の悲しみの涙を喜びの涙に一瞬にして変えてしまいました。

    ああ、小説を読むって、なんて幸せなことなんだろう!胸いっぱいの幸福感に包まれながら本を閉じました。

    “ページをめくれば、18歳のあなたがいる”、というキャッチコピーがつけられたこの作品。その中には、まさしく”あの時代”の空気が、温度が、そして匂いが封印されていました。誰もが通過していく18歳の青春。そんな彼ら彼女らの姿を同じ場所に留まりながら見続けてきたコーシローの姿を描いたこの作品。『元気でね、という言葉を聞くと、長いお別れが来る。この間もたくさんの卒業生に撫でられながらこの言葉を聞いた』と、高校生たちの青春を見続けてきたコーシロー。その12年間という時代の中では時代によって色々なモノが色々なコトが移り変わっていきました。そんな中でたくさんの出会いとたくさんの別れを経験してきたコーシロー。

    『見えていたものが見えなくなるとき。それは新しいものが目に映るときー』

    18歳の青春を駆け抜け一歩ずつ大人になって行く高校生を見続けたコーシローの物語は、そんなコーシローを大切に思い続けた優花が大人の階段を一つずつのぼっていく物語でもありました。そして、そんな優花が大人になってそこに見たもの、感じたもの。それは、時代が移り変わっても決して変わることのない、”あの時代”を駆け抜けた優花の思いの先にあるものでした。そして、まさかの幸福感が待つその結末に、冷たい涙が温かく変わる瞬間を感じる物語。

    ああ、いいなあ、この作品、ただただそう感じました。

    伊吹有喜さん!こんなにも、こんなにも深い感動をありがとうございました!

    そして、ページの中に、18歳の自分を確かに見つけました!

    • さてさてさん
      ダイちゃんさん、コメントありがとうございました。
      犬を飼われていたのですね。私は直接には飼ったことはないのですが、動物の登場する小説はとても...
      ダイちゃんさん、コメントありがとうございました。
      犬を飼われていたのですね。私は直接には飼ったことはないのですが、動物の登場する小説はとても好きです。
      私はご覧の通り女性作家さんの小説ばかりになっていますので、それ以外が未知の世界です。ダイちゃんさんの本棚見せていただくとビジネス書の他に山崎豊子さんの作品を見つけました。「沈まぬ太陽」。これは思い切り私の読書範囲に入るのでレビューを楽しみにさせていただきます。
      引き続きよろしくお願いします!
      2021/08/16
    • ゆうさん
      さてさてさんこんばんは。懐かしい切ない高校の頃をもうはるか昔なのに思い出し温かくなりました。飼っていた黒柴を思い出し涙しました。さてさてさん...
      さてさてさんこんばんは。懐かしい切ない高校の頃をもうはるか昔なのに思い出し温かくなりました。飼っていた黒柴を思い出し涙しました。さてさてさんの感想を読んでまた感動がよみがえってきました。ありがとうございました。
      2021/08/20
    • さてさてさん
      ゆうさん、コメントありがとうございました。
      高校時代を切なく思い出させてくれる、そういう思いに駆り立ててくれる作品ですね。ありがとうございま...
      ゆうさん、コメントありがとうございました。
      高校時代を切なく思い出させてくれる、そういう思いに駆り立ててくれる作品ですね。ありがとうございました。
      2021/08/20
  • 自分の青春がみずみずしく、あたたかくよみがえる作品です。「18才の春、どんな思いで故郷をあとにしたのだろう。」故郷の駅、ボストンバッグひとつ、上り電車を待つ。初めて一人暮らしをはじめたころを思い出します。「明日の行方はこの手でつかむのだ。」友人たちと夢に向かって努力してた頃が目に浮かびます。「どこに行けば(栄光の)列車にのっていけるのだろう。」自分は一体何者になっていくのか。自分探しもしていました。「見えていたものが見えなくなるとき、それは新しいものが目に映るとき。」次々と新しい体験や人に出会い助けられ成長してきました。そんな忘れていた当時の思いを甦らせた点で優れた作品だな、よくこんなこと描けたなと思いました。エンディングもすごくよくて、たくさんの時代を「コーシロー会」の高校生たちと走り抜けることができました。犬もずっと飼っているので、コーシローよかったです。
    とても爽やかな読了感です。

    • みんみんさん
      ちゃたさん♪こんにちは〜!
      犬好きにはたまりませんね笑
      ちゃたさん♪こんにちは〜!
      犬好きにはたまりませんね笑
      2022/08/24
    • ちゃたさん
      みんみんさん、こんにちは~

      犬✕青春でよい本でした!
      読後感もよかったです。

      みんみんさん、こんにちは~

      犬✕青春でよい本でした!
      読後感もよかったです。

      2022/08/24
  • ほんのり胸が温まる作品でした。
    高校の中でみんなで飼っている白い犬のコーシロー。みんなの気持ちが分かっていつも寄り添ってくれている。なんだか、関口尚さんの『ブックのいた街』を思い出しました。
    昭和から平成と、コーシローと過ごした高校3年生たちの目線で綴られる短編集。
    生徒たちがコーシローと過ごせるのは高校生活の3年間。3年経つと皆卒業して別れがやって来る。
    そして、それぞれの短編の高校3年生の主人公たちも恋心を抱いた相手や友情を育んだ相手との別れの時が来る。
    あー、高3ってそういう時なんだなぁ、としみじみ思いました。卒業後の自分の進む道に悩み、一人で進んで行くんだなぁ、地方の高校生なら尚更、家族とも離れる決心もしなくてはいけないんだなぁ、と。
    もうすっかり大人な私は高校生活の話を読んでキュンキュンしつつも、最後の章で大人になったみんなの姿になんだか一番うるっときたかもしれません。

  • 去年1年間ずーっと読みたいと思っていた作品です。
    別れと出会いの季節でもある、卒業・入学シーズンの今、タイミングよく読むことができました。

    「あー、よかった。」こういう気持ちがじ~んとする物語は好きです。

    時代背景は、最近読んだ「鎌倉うずまき案内所」「平成音楽史」と同じ、昭和から平成、そして令和。

    自分の学生時代はこの物語よりもずっと昔ですが、高校時代だけでなく小学校~大学の頃の思い出がよみがえりました。
    今でもすぐに頭に浮かんできた人は、きっと好きだったに違いありません。

    平成時代は社会人だったので、この物語に登場する懐かしい出来事は学生時代とは結び付きません。
    平成初期に高校生だった人が読むと懐かしさが倍増するでしょうね。

    このころのF1グランプリは欠かさず見ていたので懐かしかった。
    私のお気に入りは、ナイジェル・マンセルでしたけど、盛り上がってましたね。
    F1大好きな後輩と、マクラーレン・ホンダの紅白マシンの展示を観に行ったことも思い出しました。

    クリスマスの時期に流れていたJR東海のCM、山下達郎の例のメロディの中ホームを走る牧瀬里穂。
    主人公のユウカは、牧瀬里穂に似ているという設定はずるいですよね。
    爽やかで純粋なイメージが一瞬にして出来上がっちゃいました。

    昭和のメロディだなと感じた「夜空ノムコウ」が流行ったのは1998年だったのか。とか、
    1999年は、コンピュータの2000年問題対策の取りまとめ役で忙しかったことなどが脳裏に浮かびました。

    主人公のユウカは、学生の頃好きだった人と30年後に学校の記念行事で再会します。
    実は両思いだったが、お互いに気持ちをうまく伝えきれないまま卒業してしまった。
    相手は世界的にも有名な人になっている。
    自身は平凡に年を重ねただけと思うと、恥ずかしさで引いてしまう。
    でも、気持ちは30年間(お互いに)変わってはいなかった。

    昭和の最後で出会い、平成は離れ離れで、令和の最初に再会する。
    ユウカの令和の年表に書き加えられる未来が想像できるラストに感動です。

  • いい話だ…

    昭和の終わりにとある高校に迷い込んだ白い犬コーシロー。学校で飼われることになり、生徒会長を中心に「コーシローの世話をする会」が結成される…

    以来、平成の前半を生徒たちとコーシローが過ごした日々を綴る。

    1990年代に青春時代を過ごした人たちにはドンピシャの作品。
    BOOWY、アイルトン・セナ、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、たまごっち、ノストラダムスの大予言…
    僕はドはまりました。

    基本人間目線でストーリーは綴られていくが、コーシロー目線で書かれている部分がある。きっと犬ってこういう風に人間を見て思っているんだろうな…と妙にリアリティを感じた。

    ー 花の香りは、人が恋したときの匂いに似ている

    コーシローは人が恋したときの匂いがわかる。
    でも、人は好きな人が目の前にいても、時におくびにも出さず、気持ちをやり過ごす。
    コーシローはそれを焦ったく思う。
    時には、好きな人に話かけるキッカケすら作ってやる(笑)

    早瀬と優花の恋がじつに焦ったいんですよ、これが(笑)
    でも、いいんだよなぁ。

    2021年本屋大賞第3位。

  • 昭和から令和にかけて、県内有数の進学校・通称ハチコウで過ごすことになった迷い犬コーシローと、その時々の3年生の織りなす物語。

    すごく染みるお話でした!

    出てくる学生たちと私とでは、学生当時置かれている境遇も好きなものも、感じていることも違うのだけど、なんだか懐かしい…と感じさせてくれる。

    その時代時代の大きな出来事や流行っていたものとかも丁寧に描写されているので、余計にそう思うのかな。

    青春時代というのはおしなべてまぶしく思い出されるけれど、高校3年生っていうのはまた特別ですよね。大人と子どもの狭間であり、より広い世界に出ていく前の最後の濃密な1年。

    この作品を読むことで、自分自身のその1年間のことも思い出して、なんだかぎゅ~っとなりました。

    • 1Q84O1さん
      高校三年生なつかしい〜
      そして楽しかった(#^.^#)

      この作品気になって本棚には登録してますが図書館でいつも貸出中なのでまだ未読です…
      高校三年生なつかしい〜
      そして楽しかった(#^.^#)

      この作品気になって本棚には登録してますが図書館でいつも貸出中なのでまだ未読です…
      2023/01/09
    • mochimochiさん
      ぜひぜひ読んでみてください!

      もうほんと色々当時のことが蘇ってきて、恋しさやらせつなさやら心強さやら(え)感情が大忙しになりますよー!
      ぜひぜひ読んでみてください!

      もうほんと色々当時のことが蘇ってきて、恋しさやらせつなさやら心強さやら(え)感情が大忙しになりますよー!
      2023/01/09
    • 1Q84O1さん
      遠い空を あの日眺めていた
      やりかけの青春も 経験も そのままで
      永遠を夢見ていた あの日を今、
      もう2度とくりかえさずに〜♪

      これも懐か...
      遠い空を あの日眺めていた
      やりかけの青春も 経験も そのままで
      永遠を夢見ていた あの日を今、
      もう2度とくりかえさずに〜♪

      これも懐かしいw
      2023/01/10
  • 青春真っ只中の高校時代にスポット当てたあれこれ。
    犬のコーシローは中心ではないものの、いろいろな生徒に絶妙に絡んでおり、各話どれもが良かった。伏線回収などもきれい。
    40代の自分としては、過去を懐かしむ部分も楽しめた。

  • 本屋大賞3位、読友さん6人既読。流石の内容だった。犬のコーシローが起点となり、高校生がコーシローと関わりあい、卒業・桜のシーズンに別れを告げる。高校生の心の揺れ動きは様々で、恋、友情、家族愛、そして登場人物ががコーシローの死後に集結する。しかし、コーシローが中心なのは変わりない。今回、全6話とても良かった。理由は進路が全然違う登場人物が悩み、苦しみ、最後には自分で進路を決めていく。この清々しい決断は個々の成長を意味しているのだろう。失敗も多々あるが、問題ない。コーシローが「ワン」と吠え称えてくれるはず。⑤

  • 青春だなーと思いました。高校生は大人の入り口、友達と羽目を外したり、少し冒険じみたこともしたり。勉強に部活動に熱が入った高校時代ではなかったけれど、自分なりに確かにあったあの頃を思い出し、幸せな気分で読むことができました。
    優花と光司郎の淡い恋でキュンとしていたら・・。わけありの詩乃と鷲尾の切ない恋。二人の気持ちが通った瞬間、流れるスピッツの「スカーレット」。あなたの歌声に勇気づけられ、あの子は列車に乗っていった。見守るコーシロー。これは外では読めない(涙)。
    セナと走った日、すごく良かった。こういう友情ってあった、と思い出す。その時期限りだったけど一緒に行動して楽しくて、相手を思いやったこと。
    男子って、自転車で遠出したくなることがあるんだな。うちの息子も同じようなことがあったから。
    近県なので、わかるところも、懐かしい場所もあり、不思議な気持ちで読みました。風景が自然と浮かんでくる。
    高校卒業は大きな分岐点だった、どうしてるかなーと、同級生の顔が浮かんだ。
    いつも優花の匂いを探していたコーシロー。
    うちの犬は私の匂いをわかってくれてるかな。

  • 一匹の犬・コーシローが見守る高校時代。
    毎年桜の季節になると思い出す、あの頃の自分…アオハルだなー。
    青い季節を懸命に駆け抜ける高校生達の姿は眩しすぎてクラクラしてきた。
    自身の高校時代の思い出と照らし合わせ、くすぐったいやら恥ずかしいやら。
    あの貴重な3年間は、自分の殻を破り巣立つための準備期間。
    笑って泣いて怒って悩んで、大人ぶって子供ぶって、とまさに怒濤の3年間。
    けれどみんなそうやって自分の道を決め大人に向けて進んでいく。

    12年という長い期間を高校で暮らしたコーシローは、高校生達の瑞々しいアオハルを見守り続け、巣立ったみんなの帰りをいつまでも待っていてくれた。
    そんなコーシローの無償の優しさがじわじわ伝わってくる。
    高校3年間という限られた青春時代とともに、平成という一つの激変の時代を振り返る連作短編集。
    メインの二人と歳が近かったので、出てくる出来事や流行りの物にいちいち反応してしまう。
    とても懐かしい読書となった。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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