どうしてわたしはあの子じゃないの

  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243475

作品紹介・あらすじ

閉塞的な村から逃げだし、身寄りのない街で一人小説を書き続ける三島天は、ある日中学時代の友人のミナから連絡をもらう。中学の頃に書いた、大人になったお互いに向けての「手紙」を見つけたから、30才になった今開封しようというのだ――。他人との間で揺れる心と、誰しもの人生に宿るきらめきを描く、感動の成長物語。

感想・レビュー・書評

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  • 理想ばっか語るヒモ男に愛想尽かして放りだすシーンが決まっていて凄い話の始まりを予感したんですが、30歳から中学生時代の話に飛ばされてからの展開が田舎の閉塞感に息が詰まりそうになりました。
    3人の中学生のそれぞれのパートですれ違う思いに、憧れ、嫉妬、大人との距離感に村に伝わる伝統行儀を散りばめて青春を回顧するストーリーです。
    ロックしてるなぁって感じるのは天の選んだ生き様なんですけど、中学の時から憧れを追いかけて今だに小説を書いてるところ。自分にないもの持った人には憧れを感じてしまう。
    ミナと藤夫にも色々あって言えないでいた思いを3人が知ることができたって、そんなに美しいものじゃなかったけど受け止める事ができるぐらい大人になってたってところは終わった感ありました。
    それと、移住して半年で東京に帰っちゃった五十嵐さん。そんな事情があったのかって全容を把握できたのは読者だけってとこが手軽な優越感に浸れました。

  • すごくストレートな題名が気になり手に取りました
    着々と寺地さん作品を読み進めてますー!


    田舎で暮らしている天、ミナ、藤夫の物語


    まずは田舎の体質がすごーーーーく嫌。
    ムカムカしながら読んでました

    特におじさんども!!

    ムカつくーーー!!笑


    それに対する3人の考えも
    ほとんど自分に向いていて
    みんなグルグル悩んでます


    中学生のころの自分を思い出しました
    誰とも違う自分になりたい
    違う場所に行けば変われるはず
    そんな思いを私も持っていたな…


    でも結局
    どこに行っても私は私だし
    私になれるのは私しかいない
    それを伝えてくれる一冊でした


    全体的に負の感じが続いてて
    まぁ後半はちょっとずつ
    晴れ間が見えたような展開だったけど
    もうひと展開欲しかったです

    そうしないところも寺地さんの魅力だったりしますけどね笑


    大人は泣かないと思っていたも同じ舞台なんだとか(^^)
    読んでみようとおもいます!

  • 私も遠い昔、あの子になりたいと思った事がありますね^_^

  • なんで自分はあの子じゃないのか

    そんな嫉妬 羨望 後悔

    悩みがあるのが自分だけだと思う

    井の中の蛙状態ですが

    その必死さが伝わり

    とても愛おしく見えます





    結果的に 30になった自分たちは

    思い描いた自分とはかけ離れ

    たいしたものにも

    なれてないんですが



    当時頑張った自分

    それからの自分を

    肯定的に 優しく見つめられる

    そんな自分に なれているんです

    それがとても清々しく

    読んでいても嬉しい


  • 小さな村で、窮屈な中で過ごす子供たち。
    いや、窮屈なのは小さな村で過ごす子供たちだけではなく、都会で暮らす大人もみんな、多かれ少なかれ、窮屈な日常を過ごしているはず。

    どうしてわたしはあの子じゃないの

    人を羨む気持ちを持つのも、きっと子供だけじゃない…

    でも、結局は、誰もがずるい心を持って、誰かを羨んで生きていってるんだと思う。

    親も選べないし、子供も思ったようには育たないし。

    それでもみんな生きて行く。

  • 今や彼方に去ったアオハルを懐かしく甘酸っぱくほろ苦く思い返せる年齢になって、とっても腑に落ちるし頷けるし共感も出来る作品でした♪

    佐賀の辺鄙な山奥の過疎の村で三者三様の環境にあった三島天(テン)吉塚藤生(フジオ)小湊雛子(ミナ)の友達三人、中学時代と三十路になったそれぞれの独白スタイルで物語は展開して行く。
    自己主張のかたまりのようなテン イケメン過ぎて自己嫌悪さえ覚えるフジオ 周囲に合わせ過ぎる性格のミオ の三人が大変上手く描けていてその気持ちのすれ違いや思い違いがイイ感じです!
    決して抜きん出た秀でた者は一人も登場しないのも好感が持てます。
    やはり魅力的なのは天然だけど男前なテンの役どころ、そして短期間で村移住に失敗した五十嵐も大事な一章が任されていて これがなかなか宜しい。

    どんなに他人を羨んでみても比べてみてもつまりは自分は自分である と言う結論に何時何処でどんな風に気づくのか?の命題が随所で提起されていて今更ながらに もって瞑すべし!でありました。

    舞台と言い方言と言い民族伝承芸能と言い 身近なのがとても親近感を覚える一作でもありました♪

  • 寺地はるなさんの長編小説。
    肘差村という田舎の村を背景に、そこで育った天、ミナ、藤生の3人の成長と恋愛模様を描いた群像劇。

    タイトル通り、一方通行の恋愛感情や家庭環境の違いから生じる「どうしてわたしはあの子じゃないの」という嫉妬や羨望の感情が、中学生時代の3人の間で静かに交差する。
    ただし、3人とも決してその感情をむき出しにはしない。そこに見えるのは、今の関係性を壊さないよう努める自制心と、現状を変えることはできないという悟りと諦め。
    自分の気持ちを相手にぶつけたり押し付けたりすることがないので、読みながら彼らの心の機微に集中することができる。

    閉鎖的な環境で苦しい気持ちを抱えるのは子どもたちだけではない。村で生まれ育ちそのまま大人になる者。村で生まれて外へ出ていく者。村の外から村に移り住む者。それぞれがそれぞれの境遇と事情を胸に抱えており、中学生時代の3人の視点だけでは見えなかった部分が、大人になった3人に加え、五十嵐や遠藤さんの目線で語られるのも良かった。
    特にp210 五十嵐の心情
    "「これでよかった」と「こんなはずでは」という両極端な思いを、いつも左右の手のひらにのせて、天秤にかけている。天秤は常に水平を保っているけど、今後なにかのはずみで「こんなはずでは」が傾いたら、俺はいったいどうするつもりなのだろう。"
    誰もが抱える心の矛盾の描写が胸に響き、印象の悪かった五十嵐の素顔に好感が持てた。
    またp273〜遠藤さんが語る神様の話
    "「でも神さまは、そんなせこいことを考えるもんやろうか」人間がみんな弱くてずるい生きものだと神さまはきっと知っている。その弱くてずるい生きものが考えることや、やらかしたことに、いちいち目くじらを立てて罰を与えたりはしないんじゃないのか。そんなみみっちい、短気な親父みたいなことをするのだろうか。"
    遠藤さんのおおらかさも相まって、読んでいて温かい気持ちになった。

    あと、なんといっても、清水優香の嫌味に対する天の反撃が痛快で最高。やはり、強くて真っ直ぐな女の子、大好き。

    たとえわだかまりがあっても、年月を経て再会したら、天、ミナ、藤生のようにまた元の関係性に戻れるのかな。現実がそう上手くいくとは限らないけれど、中学時代の友達と一切の親交を絶ってしまった私にとっては微かな光となる作品だった。

  • どうしてわたしはあの子じゃないの
    誰もが1度は思ったことがあるんじゃないかな。

    子供ながらに閉鎖的だなと思う田舎で育ち、
    天の父親まではいかないけど暴力的な父親を持ち、
    早く大人になってここから出たい!
    都会に出て好きなことをたくさんするんだ!
    と思っていた私も何度も思ったことがある。

    ミナのお母さんが五十嵐とのやりとりで言っていたように、
    いくら場所を変えても、わたしはわたしにしかなれない。
    それがすごくしっくりと、私にはまった。
    同時に、とっくに治っていた昔の傷に薄く薬が塗られたようだった。

  • 中学時代のことを思い出しました。
    「家出する」と言って荷物まとめていたら
    母が泣きながらとめたこと。
    「わかってあげられなくて…」
    とどまることにした私。
    (「どうぞ」と言われたらどうなっていたことか…)

    数年後母がその時のことを笑いながら話したので
    まだ笑い話にできなかった私は
    刃物のような言葉で母を傷つけたものです。
    それ以来、母がこの話題に触れたことはありません。

    今は「父が頑張って働いてくれたおかげで私たち母娘は
    何不自由なく暮らせる、お酒がパワーになったんだな」と。
    (自分も父のようなタイプだし)
    大晦日の今日あらためて天国の父へ感謝の言葉を伝えたい。

    この本の内容を知らずに、母に先にまわしました。
    黙って返してくれた母も、きっとあの時のことを
    思い出したに違いない、と思いました。

  • これは、大人が読んでも、子供が読んでも、心に刺さる箇所が多い本だと思います。

    誰でも、自分以外の人間を、羨ましく思う気持ちはあると思います。その人みたいになりたいとか、その人に近づける様に努力しようとか、前向きな気持ちは、とても良いと思います。しかし、それと同時に、ねたみや、蔑みなど、ドロドロとした感情も持ってしまうこともあります。このモヤモヤとした、心に巣くう嫌な気持ちを、この本は、上手に文章にしています。とても上手い。誰もが持っている気持ちなので、グサグサと心に刺さります。子供の頃から、今までの、自分が傷ついた言葉、傷つけてしまった言葉の数々。この本を読んでいると、忘れたかったその時の光景が目に浮かび、心が苦しくなりました。

    この本の登場人物、天のように、自分に正直に生き、相手に素直な言葉を言える人間。藤生のように、いざとなると、自分を守ることに動いてしまう人間。ミナのように、人に嫌われることが怖くて、当たり障りのない会話をし、本当の自分を出さない人間。私達は、この3人の性格を合わせ持っていると思います。大人になっても、人付き合いや、自分なりに生きることは、難しいもの。この本に巡り会えて良かったです。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ、大阪府在住。2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。『今日のハチミツ、あしたの私』が勝木書店グループ「KaBoSコレクション2020」金賞を受賞、2021年『水を縫う』で河合隼雄物語賞受賞。『彼女が天使でなくなる日』『大人は泣かないと思っていた』『カレーの時間』『ガラスの海を渡る舟』『川のほとりに立つ者は』『こまどりたちが歌うなら』『いつか月夜』『雫』など著書多数。

「2025年 『そういえば最近、』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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