隅田川心中

  • 双葉社 (2021年2月18日発売)
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本棚登録 : 74
感想 : 7
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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243765

作品紹介・あらすじ

浅草で働く大隅一郎は、喫茶店の店主・小川からアルバイトの咲子の相談に乗ってくれと持ちかけられる。「父親の借金返済のために愛人にしてほしい」と咲子に言われて心を躍らせる。同衾を果たした末に、「あなたの子供を産みたいの」と懇願されてしまう――もう一度だけ恋がしたくなる、大人の暴走特急恋愛小説!

感想・レビュー・書評

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  • 浅草を舞台に、全編に〝昭和の香り〟が横溢する小説である。

    64歳で一人暮らしの男と、32歳だが少女のような容姿の女の、恋とも呼びにくい〝いびつな関係〟の物語。
    2人が最後に心中することは冒頭に明記されるので、そこまでの道筋を味わう小説といえる。

    男の名が「一郎」で、女の名が「咲子」。
    著者は初エッセイ『下級国民A』で「さくらと一郎」の「昭和枯れすゝき」を印象的な形で引用していたが、本作もどこか「昭和枯れすゝき」を彷彿とさせる。

    もしかしたら、当初はヒロインの名を「さくら」とし、それはあまりにあからさまだからということで咲子に変えたのかもしれない。そんなことを想像させる。

    この咲子のキャラ造型が、じつに赤松作品らしい。「薄幸な女」の色香を描かせたら、この作者の右に出る者はいない。傑作『ボダ子』もそうだった。

    骨子その他は意図的に昭和っぽい本作だが、コロナ禍がストーリー上重要な役割を果たしたり、いまどきの「貧困女子」の暮らしぶりがリアルに描かれたりと、細部はアクチュアルだ。
    古い革袋に新しい酒を注いだ趣があり、古風な部分と現代性のミクスチャーが不思議な味わいを醸し出している。

    一郎の愚かしさが随所で黒い笑いに結びつくなど、表面的な暗さ・湿っぽさの中に、したたかな毒気のスパイスがきいている。

    終盤、2人がのっぴきならない立場に追い込まれていくあたりの展開は、やはり『ボダ子』を思い出させる。

    読む前に想像したよりもずっとヒネリが利いていて、面白い小説だった。

  • 何とも嫌なムード、キモいというかおぞましいというか、そこが最高にグッド⤴です。赤松利市らしい作品です!

  • ちょっと無理だった。

  • 05月-03。3.0点。
    バブル崩壊で破産した主人公、行きつけの喫茶店でバイトの女の子から「30万円で助けて欲しい」とお願いされ。。。

    相変わらずの転落小説。ロクデナシの描写が上手い。今回も一気読みした。

  •  終にその時が訪れました。
     射精です。

     結婚せずに男独り、バブル前にゴルフ場に就職し、いまは経済産業省の天下り団体に行って昼寝して帰り、昼飯には浅草の喫茶店「アゼリア」でナポリタンを食べる。
     そんな毎日を繰り返す64才、大隅一郎が出会ったのは、いわゆる貧困女子、咲村咲子34才。
     ろくでなしの親父に金をせびられた挙げ句、借金の肩代わりに裏ビデオの出演を強要される彼女の身の上に同情どころか恋した挙げ句に結婚まで突き進む。

     年の差カップルが出会ってから心中まで、一郎の迂闊さを軽妙に描きながらも、その裏では一旦足を踏み入れたら抜け出せない裏社会の不合理が描かれる。

     
     一郎のありえない馬鹿さ加減に笑ってしまうが、小金を持った老人、しかも所帯を持ったことがない男が、いい年になって夢を持つと勘違いしかねないのです。
     そんな展開はありえないと思いながらも、この著者はそんなことで転落人生を送っていたことも事実なので、ありえないとも言えない話。

     人物同士の会話以外は、第三者視点のナレーション。
     まるで活動弁士の話の進み方のようだ(実際を見たことないけど)。

     軽妙なストーリー展開で読みやすいのに、後味が悪い。
     独り身おっさんの悲哀が染み出す一冊。

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著者プロフィール

赤松利市
一九五六年、香川県生まれ。二〇一八年、「藻屑蟹」で第一回大藪春彦新人賞を受賞しデビュー。二〇年、『犬』で第二十二回大藪春彦賞を受賞。他の著書に『鯖』『らんちう』『ボダ子』『饗宴』『エレジー』『東京棄民』など、エッセイに『下級国民A』がある。

「2023年 『アウターライズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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