- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575244649
作品紹介・あらすじ
近未来の日本、悪名高き独裁政治下。世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。足を踏み入れたら最後、イメージの渦に吞み込まれ、もう現実には戻れない――。最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!
感想・レビュー・書評
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ざらざらとした違和感。月の企みに困惑する「そして月がふりかえる」。現実と夢の狭間を月がファジーにする「月景石」。月に呪われ、月に誘われ、月に祝福される「残月記」。どれも極上のファンタジーでホラーでSF。
良い本に出会いました。 -
表題作は文句なくおもしろい!
月にまつわるファンタジー的作品3編を収録。
それぞれが全く独立した作品で、長さは長めの短編〜短めの長編といったところ。
この作品集のコンセプトに慣れるのには、なかなか時間がかかった。
一編目の「そして月がふりかえる」は正直読み進めるのがつらくて(作品の批判をしているわけではないですよ。たぶん個人的に精神状態とか、この作品を読むのに適さない時期だったんだと思います。)リタイアしそうになったので、オーディブル聴き放題の力も借りて読み進める。
二編目の「月景石」までの評価は3。
本屋大賞ノミネートの理由がわからなかった。
しかし、3遍目のタイトル作「残月記」、これが素晴らしかった。文句なしに5点!
200ページを超える近未来ディストピア小説。
地震災害、独裁国家の誕生。致死性の感染症の蔓延…
なかなかリアルに日本の将来を描いているような気がして、とても落ち込ませてくれます。
「残月記」一編でも、十分単行本として成立すると思う。だから、「残月記」を一編目に持ってきたほうが良かった気がするけど、一番最後にしたこの構成の狙いはなんだろうな?
ちょっと、わからなかった。 -
小説推理2016年2月号そして月がふりかえる、2017年7,8月号月景石、2019年4月号〜7月号残月記、の3話を2021年11月双葉社刊。3話とも月が出てくる。脈絡のない不思議というか不気味というかそういうファンタジー世界の話で、同調できないまま終わってしまった。驚きがありインパクトもあったが心地良さとは無縁でした。
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想像を超える世界観だった。
全三編「月」がテーマの異世界の物語。
どれも夢のなかのような不思議な感覚と恐怖感をおぼえる。
「残月記」は特に強い衝撃を受けた。
近未来の日本で月昂という感染症にかかった青年の話。
独裁政治下。月昂にかかった者は収容され隔離される。男は剣闘士、女は勳婦として生きる選択ができる。剣闘士として生きることを決意した青年は、勳婦になった一人の女性を愛するようになる。
特殊な状況だからこそ二人だけの世界ができあがったんだろうとも思う。
純粋な愛の物語。愛する人のために懸命に生きる姿が心に残った。 -
さすが本屋大賞ノミネートということで、かなりの読み応えでした。
3編すべて「月」と「人間」の奇妙な関係の物語です。
みなインパクトがありましたが、タイトルの「残月記」は長編がゆえのおもしろ要素がたくさん詰まっています。
内容は辛いものなんですけど。
世の中の進化によって、こんなことは解決できるんじゃないかと思うのも、あまり期待してばかりではいけないのでしょうか。
歴史は 繰り返す。
近頃、二度と繰り返さないとの決意が揺らいじゃいませんか。 -
浮遊感が続く一冊。
月がまるで地球を飲み込むような、人たるものを飲み込むような不思議な三つの物語は読後もしばらく地に足がついていないようなそんな浮遊感の余韻が続く。
月に時間を盗まれ左右されていくような展開は何とも表現できない。
怖さよりもただ不思議な時間を貪りたくなる。
表題作が描く世界は残酷さの森に根を張るかのような愛、嘘偽りのない純粋な愛が沁みた。
それは誰も土足で足を踏み入れることさえも許されない、月が閉じ込めた永遠の愛。
最近、敢えて眺めるのを避けていた満月。
今ならちょっと眺めても良いかなって思える。 -
「そして月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
自分の中では、「そして月がふりかえる」の世界観に驚いた。
自分は何も変わっていないのになぜ受け入れてくれないのだろうか?
つい、ちょっと前までは普通の家族だったはずなのに。
月に魂が奪われたわけでもないだろうに…
どうにもならずにすんっと終わる。
「月景石」枕の下に入れて眠ると信じられない摩訶不思議な世界を見てしまう。
これは、どうなんだろう。
やっぱり、悪い夢なのか。
表題作でもある「残月記」なんだけど、どうも自分の中では受け入れられない世界なのである。
消化できずに読了。