マンガの創り方: 誰も教えなかったプロのストーリーづくり

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575300574

感想・レビュー・書評

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  • 動機(モチーフ)と発想(アイデア)を混同してはいけない

    発想の5条件
    ①発想段階でモチーフだけに引きづられて描かないこと
    ②何らかの制限を設けること ex. 時間制限をする、空間制限をする、
    ③ジャンルとパターンの引き出しを持つ
    ジャンル…恋愛もの、アクションもの、ホームドラマ、旅もの
    パターン…成長もの、勧善懲悪、ボーイミーツガール、目標に向かって、巻き込まれ型、追いかけっこ型
    パターンは、自分のアイデアを乗せる乗り物。自分の見たものがどういうパターンのストーリーなのかを頭にきちんと入れておく、そうすると、アイデアをポッと思いついたときに「ああ、これは巻き込まれ型でいけるな」とか「勧善懲悪型のアイデア」だなとか、そのアイデアにふさわしいパターンを思い浮かべることができる
    日常生活の中に異物が入り込んでくることによって、その日常がパッと動き出す
    ④インスパイアされること
    インスパイアされに自ら出かけていく
    ⑤トッピング
    自分ではピンと来ているけれども何か物足りない場合はトッピングを考え、アイデア補強する。ある違う種類のアイデアを混ぜる

    プロットを立てる
    プロットの4要素 状況・登場人物・事件・結末
    プロットを作るには、人物を外的・内的に「転がして」みる。外的な動きと内的な動きを組み合わせながらプロットを作っていく
    外的な動き ex.人物が喧嘩したり、乗っている車が事故を起こしたり
    内的な動き ex.喜怒哀楽、心の動き
    「転がす」ための4つのポイント
    ①対立を作る 日常生活を描いたのものでは、「対比」を作る
    ②テーゼとアンチテーゼ
    ③因果律
    ④危機
    ベクトルを見つける ex.秘密を設定したらそれがバレる方向へプロットを転がしていく、片思いが成就する
    ベクトルはマイナスから始まったらプラスへと働かせ、プラスになったらまたマイナスへと働かす
    「転がす」「動かす」という時には必ずある方向性を持った力が働くのだということを覚えておく
    最初から文章としてのプロットを作ろうとしないで、思いついたことを箇条書きにしていく。
    箇条書きで思いついたことをとにかく「出だし」「展開」「クライマックス」「結末」とそれぞれについて思いつくままにいっぱい書いていく。そうすると、その中から自ずとプロットが見えてくるので、その選択、あるいは組み合わせをして、自然なプロットが見えてくるまで色々と考えてみる

    ストーリーを組み立てる

    一体誰の視点なのか?
    読者に「おや?」と思わせる仕掛け
    読者が右脳で処理できるようなゲームを仕掛けて「おやっ?おやっ?」と思わせ、そのゲームが「何だ、そうだったのか」と解けたときには、左脳に説明しなければいけなかった情報がきちっとインプットされているという風にファーストシーンは仕組まなければいけない
    「感情移入」にための情報の出し方

    「起」で登場させた人物たちを絡めて対立や葛藤を作り、ぶつかり合い、もつれ合うように組んでいき、「転」の部分のクライマックスに向け、事件を起こして積み上げていく。
    2つの大きな流れ
    本流 主人公と敵役(相手役)が絡む流れ
    支流 主人公以外の人物が起こす流れ どういても主人公の側からだけだとうまく行かないとき、ちょっと出てくるだけの脇役を使って事件を起こす
    伏線を張る、わざと省略して後で謎解き、サスペンスを仕掛けるなど、読者の興味をそらさないで読み続けてもらうテクニック
    強弱をつける、静かなシーンが2つ続いたら3つ目には何か動のシーンを入れる
    伏線を張るテクニック…自分が「起」の場面で描いたこと、あるいは「承」の1コマ目で描いたことをひっくり返すように次のシーンを作っていき、いかにも伏線を張っていたかのように見せてしまう→ひっくり返せる所がないかという意識を常に持つ
    「3の力学」…登場人物は最低3回は出す。伏線もそうだが、2回、3回、伏線をひっくり返していくことによって、前に描いた人物、1回出てきた人物がまた次に出てきて、その場面同士、人物同士が影響し合い、響き合い、対応しあって緊張が生まれたりして場面や人物がつながっていく。「物語は小宇宙のようでなければならない」
    ドラマには「力学」が働いていなければならない…2の力学=伏線・ひっくり返し、上昇と下降、フリとオチ
    転結
    テーマの抽象化・普遍化
    テーマは抽象的なものになる。日常からの解放とか、ペットは自然のままが幸せとか、言葉で言うと何ともつまらない。そのテーマをそのまんま訴えるのではなく、そういう抽象的なテーマを読者に実感させる・信じさせる・共感させることが大事。そのためには、言葉で読者を説得しようとするのではなく、イメージで伝える、ポエムのようなモノローグにして情感に訴える、あるいは語り口を工夫してテーマを表現するといったことが必要になってくる

    ネームを作る
    ネームの要素
    ①モンタージュ
    ②視点 主観カットか客観カットか
     登場人物が出てきたら必ず主観に移る
    ③カッティング(場面転換)
    短編の場合は必要なこと以外は一切描いてはいけない
    モンタージュの原則…シーンの目的を第一に考える
    カッティングの原則…印象づけたところで切る
    起の演出の工夫
    ①構図の選択…ロングショットで場所、人物の関係を絵で説明
    ②芝居と語り口の工夫…会話だけのシーンを退屈にさせない
    ③セリフ&モノローグの工夫…ベタな説明を絶対にしない
    主観・客観の切り替えで、説明をできるだけ省く
    純粋情報の描き方、余計なものは書かない
    承の演出の工夫
    シーンの目的に集中…印象を残したところでカット
    アップの使い方…多用は禁物。ここぞというところで使う
    伏線の張り方…フリとオチを組み合わせていく
    転結の演出の工夫
    隠すのが演出 ネームは箱書きの説明ではない
    内面の動きがドラマを動かす
    読者の興味を引っ張り続ける
    カットするからドラマが成立する
    コマ割りの計算…一番いいところで一番いい絵を
    決めゼリフの発見…テーマに直結するセリフの工夫
    クライマックスシーン…そこに導入する細部の工夫と計算
    説明でアクションを殺さない
    秘密の明かし方…描かずに読者の創造力に委ねる
    読者にカタルシスを与えて締めくくる

    ネームの推敲 読者の立場に立って見直す
    箱書きの説明を面白く演出していく
    普通の日常会話では出て来ないような言葉をあえてセリフの中に入れて、読者に印象付けをする ex. ブラックリスト、スパイ
    目的のセリフの明確化
    動きがない時は、無理にでも動きを作り出す ex.ラジオ体操
    怒りの表現を背景で強化していく→どこで会話が行われれば面白いか
    起承は、無駄を削る。クライマックスは、逆に詳しく、丁寧に書く
    読者にエモーションを与える動きを演出する ?を作る
    「泣かせ」の公式 受動から能動へ自ら変化したときに起こる

  • 漫画を描く上でとても参考になる。シナリオの組み立て方からネームの描き方まで丁寧に説明されている。
    図書館で借りて読んだが手元に置いておきたくなった。絶版なのが惜しまれる

  • モチーフを持ち、アイディアを加えプロットにしていく所から、ネームへと描いていく方法がとても良く書かれています。映画の脚本をもとにマンガのストーリーを勉強された筆者が、その技術の全てをこれからの若き漫画家たちに記した一冊です

  • 名著。理論でマンガを描いている人の作品は、安定感が違う、その理由がわかる。伏線、起伏、オチ、ストーリー作りに必要なものは、あらかた揃ってる。

  • 『そばもん』は最初の何冊かは家にある。『どんぐりの家』は昔読んだ。その山本おさむの『マンガの描き方』。
    アイデアを「面白い」と読者が感じるストーリーにするまで、すごく丁寧に書いてある。
    なにより、高橋留美子ってすごい、と改めて思う…。

  • 物語を「画」「コマ」に変換、割り振る部分に重点を置いて解説している。一ページあたりの密度を高めるために随分苦心があるらしい。読んでいてどうにも「バクマン。」の登場人物達が頭に浮かんで仕方がなかった。

  •  日本が世界に誇るエンターテイメントコンテンツの方法論について具体的な例をあげて解説している。マンガについて、なんとなく面白い、つまらないという感想しかもてないようでは、少し芸がないなと思っていた人は必読。
     的確な批評ができるようになるひとつに指標が提示されているので有益であろう。

  • 分厚くて詳細です。ノートを取ろうと思ったが結局取っていない。丁寧で詳細に説明していますが、新たに学んだこと、特別にインスパイアされるものはなかった印象でした。だから、ノートを取らなかったのだと思う。労作なんですけどね。

  • 合言葉は「プロなら、ベタなパターンで仕上げてんじゃねーよ」。

    画法技術には殆ど触れないものの、とにかく説明が丁寧です。多くのかたが賞賛するのも頷けます。
    むしろここまで詳らかに説明しなければ理解できないほど、新人マンガ家のストーリー制作力が落ちているんだろうか?と不安になりました。

    この本をネタ元に、したり顔にマンガ解説するプチ評論家がたくさんオンラインには居そうです。
    なんだか最近とみに増えたましたね、マンガ評論。

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