43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層

著者 :
  • 双葉社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575313239

作品紹介・あらすじ

2015年2月20日、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で13歳の少年の全裸遺体が発見された。事件から1週間、逮捕されたのは17歳と18歳の未成年3人。彼らがたった1時間のうちに、カッターの刃が折れてもなお少年を切り付け負わせた傷は、全身43カ所に及ぶ。そこにあったあまりに理不尽な殺意、そして逡巡。立ち止まることもできずに少年たちは、なぜ地獄へと向かったのだろうか――。著者初の少年事件ルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • 船戸結愛ちゃん虐待死事件に怒りがおさまらなかった。
    同じ怒りを感じたのが、2015年の上村遼太くん殺害事件だった。
    本書の著者・石井光太氏の本は以前読んだことがあった。
    ギリギリの取材を重ねて書くジャーナリストである。
    上村くん事件の本は他にもあるようだが、著者への信頼から本書を購入した。
    2015年2月20日未明、上村遼太くんは3人の少年によって43回も刺され、2回川を泳がされ殺害された。凍える身体と朦朧とした意識の中で、多摩川の河川敷を23.5メートルも這って生きようとした。
    この事件の背景を知りたかった。
    加害者はどういう生い立ちなのか。上村くんはなぜ殺されたのか。殺害までの経緯を知りたかった。
    この事件は、社会からこぼれてしまった少年が、その喪失感を埋めるように、同じような生い立ちの年下の少年を殺したものだった。「社会からこぼれる」といっても、その発端は家庭にある。上村くんの両親も離婚し、母親は新しい恋人をマンションに引き込んでいた。加害者である少年Aは体罰といじめ、少年Bは離婚と貧困といじめ、少年Cは放任の中で育っていた。4人とも家庭環境が悪すぎる。
    しかし、人を殺す理由にはなるはずもない。上村くんが殺される理由にもなるわけがない。
    加害者の3人は悲しいほどコミュニケーション不在であった。信頼できる人がいない。信頼ということが分からない。人間は人の間でしか生きられない。人間関係の中でしか自分を保てない。その空虚を埋めるには、弱い者の上に君臨するしかないのだ。まるで、弱肉強食の畜生のように。
    船戸結愛ちゃん虐待死事件の構図も同じように思えてならない。逮捕時、父親は無職であった。

  • 記憶に新しい川崎の事件。あまりに凄惨な殺害の状況に、読んでいて胸が苦しくなった。ご遺族がこれを知ったら、終盤に記されているような心境になるのも無理はない。その辛い苦しみは、当事者でなければ到底感じ得ない厳しいものであることは想像に難くない。
    罪を犯した者がたとえ少年であれ、罪は罪として、しっかり刑罰を受けなければならないことに反論の余地はない。それでも、加害者となった彼らが、なぜそういう道を辿ってしまったのか、そこに焦点を当て解明しようと努力することも忘れてはならないと思う。
    生育歴から、人を信頼し人間関係を築く術を学ぶことができず、自分を受け止めてくれる心の拠り所も居場所もなかった彼ら。おそらく彼らを育てた両親も、その生育歴のなかで似たような問題を抱えていたはずだ。この問題は世代連鎖しやすく、時に人として道を外れてしまう原因の一つに充分なり得る。社会の中で真っ当に生きていけるだけの人間関係を構築する能力を育む環境が、あらゆる人に不可欠である。家族の社会適応能力、家族関係や経済力、教育、さらに学校や地域など家族以外の身近な大人の存在等、生育の環境は、本人の元々の性格に加えて様々な要素が複雑に絡み合い、人としての成長に影響を及ぼす。どうやったら適切な環境を担保できるのか、そのために何をしなければならないのか、社会保障制度の問題、教育の問題、コミュニティのあり方や一般市民の意識など、様々な視点からこの問題を捉えなければならないだろう。
    今の社会では自己責任論や厳罰化の風潮が強いが、私にはそれは間違っていると思えてならない。犯罪の責任を個人に負わせるだけでは何の解決にもならない。その根底に存在する、個人の努力だけでは解決できない社会構造の問題をどうにかしない限り、同じようなことがまた繰り返されてしまう可能性は否定できない。

  • 事件当時もとても胸が痛かったが
    この本を読み、あまりに凄惨で胸が苦しくなった。

    あとがきにあったように上村君の母親から話を聞く事ができず、父親の話だけなので もしかしたら少々偏りがあるのかもしれない。
    それでも父親の気持ちを思うと なんて言葉にして良いのかわからなくなる。

    あの時ああしていれば、、とか あの時こうだったら、、
    という不幸があまりにも連続で。
    それで大切な少年の命が奪われてしまったのだから
    辛すぎます。

    特に加害者達が別件で 保護観察中であったのが
    なぜ、、と残念でならないし
    それを避けられているというか
    そこまで重要視されてないのが私も疑問に思う。

  • 真実は1つだが、それぞれの見解が違う。まだ若い命が、こんなくだらない理由で散ってしまったこと、社会の闇に沈んでいく気分だ。人を育てるとは…と考えてしまう

  • この本を読んで、一般のメディアや週刊誌での表現は浅くて表面的なものだと知った。
    ただのいじめっこ・いじめられっこの関係でない。
    望みの持てない家庭環境に置かれ、拠り所を家の外に求めた。彼らの理解者となれたのは学校ではなく、同じ境遇にある彼らの集まりだった。

    どんな境遇にあったにせよ、人の命を奪った罪の重さが変わるわけではない。ただ、きっと結果として起きた事件に至るまでの過程で、小さな罪が積み重なっている。その罪の罰のすべてを、最終結果の加害者だけが背負っただけでは何も解決しないのだとおもう。

  • 他人事だからとか、関心がないとか、つらすぎて読みたくないとか言う理由でこの作品から遠ざかる人もいるだろう。
    それはその人の自由である。
    でもできるだけ多くの人に読んでもらいたい。
    読むのがつらいと言って逃げないでほしい。
    私たちはあまりに社会の表面的なことしか知らない。メディアは組織の不祥事や芸能界のスキャンダルばかり報道しているが、もっとメスを入れなきゃならない部分があるだろう。
    エリートと社会からはみだした者たちの二極化が進むことに大いに危惧を感じる。もっと大人たちは真剣に今の若者と向き合うべきだと思った。
    そして私たち大人がこの事件の重大性を深く受け止めなければ、上村くんのような第二第三の犠牲者が出てくるに違いないと戦慄を覚えた。

  • 加害少年達も、過酷な家庭環境で育ってきたことがわかるルポ。加害の背景に差別や暴力、虐待がある。遼太くんの命を奪ったことは取り返しがつかないけど、罰して終わりにはしてほしくない。加害少年達の家庭にも被害者である遼太くんの家庭にも、たくさんの綻びがあり、どこかでこうなる前に防げたのでは、と思ってしまう。そうして教訓を生かしていくことくらいしかできない。

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著者プロフィール

1977年、東京生まれ。著書に、アジア諸国の障害者や物乞いを追った『物乞う仏陀』、イスラームの性や売春を描いた『神の棄てた裸体』、世界の貧困層を豊富な写真と図で解説した『絶対貧困』、スラムや路上生活者のむきだしの姿を描いた写真エッセイ集『地を這う祈り』、釜石市の遺体安置所における極限状態に迫ったルポ『遺体』、被災地で刻み込まれた忘れられない光景を綴った『津波の墓標』など多数。

「2018年 『絶望の底で夢を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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