メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語

  • 双葉社
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本棚登録 : 282
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575315585

作品紹介・あらすじ

シングルマザーの著者が子供を育てつつ最低賃金のメイド(清掃員)として働き、貧困、社会の偏見、DVを振るう元パートナーや経済的自立を阻む恋人、それら全てが低下させる自己肯定感に苛まれながらも作家になる夢と自らの解放を叶えていく様子を描いた自伝的作品。発売早々全米ベストセラーとなり、オバマ前大統領の2019年推薦図書にも選出。NETFLIXで映像化決定。

感想・レビュー・書評

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  • 村井理子さんの名前を知っていたので手に取った。
    表題どおりの本だけど、睡眠時間を削って読んだ。

    シングルマザーではない私にもわかりみがすぎる一冊だった。女性、育児、就労、貧困、差別、プライド、孤独、家族、、、いろんなことを考えた。
    ステファニーの実家も家族不和で、それぞれ新しい家族がいて、祖父、父、母、みんな経済的に余裕がなく、ステファニーのことも、ミアのことも、ほとんど助けてはくれない。助けて、と言える近親者の不在はステファニーを孤独にした。
    お母さんにもお母さんが必要なんだ、という言葉で涙が出る。
    あとがきにも号泣してしまった。


    育児の中身は、人によってあまりに違う。
    おとなしい子、親の言うことを聞ける子、と、そうでない子の子育てでは親の手間暇や心理ストレスは何倍も違うだろう。しかも作者はたった一人で、お金を稼ぎ、子供を育てないといけないのだから、苦労は並大抵ではない。

    育児は大変だけど、助けてくれる人が身内にいればかなり楽になる。
    祖父母に預ければ済むところを高いお金を払ってイマイチな保育園にいれるのは辛かったはず。特に保育園の別れの場面が辛さが胸に残った。
    子供と一緒に幸せに生きるためにこの道を選んだのに、子供に苦しめられる場面も多かったはず。

    最後に子供とのカビだらけのアパート時代を、幸せな思い出にできてよかった。(実家から離れた土地での育児専業の私にも近い感覚があった。発達凹凸の多い長男の1歳、2歳時代は本当に苦しかった。経済的な心配がなかったことで自分を守れたのかもしれない。毎日狭い家で一緒に過ごし、外では孤独に苦しんだ。多動や他害の大きい長男とでは、友達親子を作る努力をしたが虚しい結果に終わった。当時の夫は仕事で多忙で精神的に擦り切れていて、夫の休日も長男の存在がストレスを限界まで高めていたと思う。幼稚園プレスクールが始まるまで毎日死にたかった。その長男は私にとって、死ぬほど面倒くさいクライアントであり、私の生活を破壊したモンスターだったけど、苦しい時代を二人で過ごした戦友でもあった)

    アメリカらしいと思えたのは、離婚(そもそも未婚か)した男性にも二週に一度は子供を預ける義務&権利があり、それを粛々と続けている点。
    日本ではこれが難しいと聞く。父親に預ける時間に、子供と父親が心中した事件もあった。
    この、子供を預けられる時間をステファニーは、子供ミアの心配をしながらも、勉強や読書にあてることができた。日本のシングルマザーはそれすらないはず。まあどっちがいいかは状況次第だけど。

    ステファニーがいろんな家を見ながら、その住人の生活や為人を想像するのが面白い。私もタウン誌のポスティングをやった時期があり、それを思い出した。玄関しか見えなくても住んでいる人の個性があり、気配が感じられた。掃除はさらに内部で汚いものと対面する仕事だから、奥底にある人柄が見えたと思う。

    ステファニーを最初に人間として扱ってくれた、ヘンリーがロブスターをくれる場面、おばあちゃんみたいな老女がお茶と食べ物とおしゃべりをくれた時間は、読んでいて嬉しかった。

    シングル親子の幸せな生活を作るための社会制度はいろいろある。
    でも完全なものではないし、自分が落ちぶれていると感じてしまうのは辛い。
    子供を持つことで貧困になるか、dvに耐えるか、の選択肢を迫られる世界では、少子化の理由がはっきりわかる。
    女が、男と社会を信用しなくなったら少子化が生まれる、と聞いた。
    貧困の苦しさは、常に忙しかった、常に緊張と不安だった、孤独だった、選択肢がなかった、というあたりでよく分かる。引っ越しの連続、大事なものを所有できなくて処分する辛さ。

    貧困は、シングルマザーに限らず、誰もが陥る可能性はある。
    社会に余裕がないと弱者にしわ寄せがいく。教育はそこから抜け出る一つの方法なのは間違いないけど、個人の努力や運に左右される世界は苦しい。

  • ルシア・ベルリンの「掃除婦のための手引き書」がとてもよかったので、似たような書名の本を手に取る。先入観との落差に少々眩暈のような感覚を覚えながら読み通す。

    2019年に元米国大統領が推薦している理由は、"A single mother's personal, unflinching look at America's class divide, a description of the tightrope many families walk just to get by, and a reminder of the dignity of all work." つまり格差社会の現実と全ての仕事に対する尊厳への気付きを期待して読むことを薦めるというもの。読んだ印象もまさにその通りと思うものの、本書はルポルタージュと呼ぶには中立的な視点での記録ではないし、小説と呼ぶには著者に起きた様々な出来事の鮮度が余りに高過ぎる。

    例えば、この本は優れてポスト・グローバル的な社会を覆う雰囲気を映し出している、と言ってみれば、この本が米国での評判を得たことの理由となるのだろうか。付け加えて言えば、最終的に著者が努力によって社会の底辺から抜け出ることが出来たという事実が極めてアメリカン・ドリーム的であることは無視出来ないだろう。その典型的な構図が、ひょっとしたら、ノン・フィクションでありながら書き記される事実の認識という思考過程を滑らかに行わせない小さな違和感の元なのかも知れない。

    フィクションは思考の抽象化を助ける。ひょっとしたら逆の意味でステロタイプな思考パターンなのかも知れないが、社会の在り方に対する無力感の描き方として、例えば「真夜中のカーボーイ」のジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンの二人組のことを、比較としてぱっと思い浮かべる。ハリー・二ルソンの歌う「Everybody's Talkin'」の明るい歌声が悲しく響くように、物語の中で振り上げた拳の落としどころが無いことが描かれることによって、社会に対する強烈な連帯感は生まれる。その時、初めて社会の仕組みが変わるような力を人々が持ち得る。それが文学の力であるように思う。

    もちろん、それはドラマツルギー的仕組みの話で、その仕組み自体が良い悪いということではない。それを利用して民主的でない運動を扇動することも当然ながら可能であることは先日の米国の騒動を見ても明かな通り。因みに「真夜中のカーボーイ」は1969年公開。その前年の1968年は、五月革命、キング牧師暗殺、ロバート・ケネディ暗殺、ウッドストック開催。

    本書の中で、他者の評価が主人公の置かれた状況の浮き沈みで如実に変わるのを自己中心的と呼んでしまうことには抵抗はあるが、一つひとつのエピソードがどれも蕾のまま開花しないような印象を残すのは他者の視線があまりに描かれない為ではないか、とも考えてみる。世の中には露悪的に意地悪な人もいるだろうけれど、誰もが他人を出し抜こうとして行動するばかりとも思えない。ひょっとしたら彼の国は既にそんな考えは通用しないほどに格差の壁が高くそびえているのかも知れないけれども。

    "Everybody's talking at me / I don't hear a word they're saying / Only the echoes of my mind"("Everybody's Talkin'" by Harry Nilsson) 

  • 清掃会社から派遣され、家庭の掃除をする。
    ハウスメイドというそうだ。
    本書はタイトルの通り通り、このハウスメイドとして働きながら、一人で娘を育てる女性の手記である。

    日本でもお掃除サービスが家庭で利用されるようになってきた。
    解説を読むと、アメリカではかなりの家庭が掃除をハウスメイドに任せているとのこと。

    その仕事は肉体的にも精神的にも過酷だ。
    もちろん、大変だろうと予想していたが、それ以上だった。

    何より読んでいてつらいのは、お金がないということが、どれほど人の尊厳を傷つけるのかということだった。

    たしかに、衣食住、医療に対する補助はある。
    著者は懸命に各種の制度にアクセスして、何とか娘との生活を続けようとするのだが…。
    例えば、フードスタンプを利用してスーパーで支払いをしようとする際、周囲の人から煩わしそうな顔をされたりする。
    ステファニー自身も、かごの中の食品が補助以上の贅沢なものだと見られないか気にしている。
    日本でも生活保護を受ける人へのバッシングがあったりすることを思うと、何と言っていいか分からない気持ちになる。

    アメリカは自己責任の国だけど、失敗してもチャレンジができる、といわれる。
    ステファニーは、苦労の末、奨学金で大学卒業を果たし、再チャレンジで成功した実例といえる。
    けれど、貧困層から這い上がれる人は少数で、再チャレンジの実効性はどれくらいあるのだろう?

  • シングルマザーで人生絶望の主人公が日常のことや考えをブログに綴っていたものをまとめた本でした。

    この著者の場合はシングルマザーになってしまって、人生どん底でも自分なりに自分の道を模索しながら少しずつでも切り開いていってる感じは少しですが感じ取れました。

    もしかしたら同じような境遇(アメリカと日本ではまったく違うけれども)の方には勇気づけられたり、今がツライ時には私なんかよりはもっと大変な人がいると思わせてくれるかもしれません。

    けど、読みながら同時にどうしてシングルマザーになってしまったのか?シングルマザーにならないようにどうするべきだったのか?というところも考えさせられたのはありました。

    結局、自分たちが責任も持てないのに子供を作ってしまったことが、自分を貧困へと追いやった部分もあるでは?と冷徹ですがそう思ってしまいました。

    仕方なく、シングルマザーになった方もいると思いますが、シングルで子供を育てながら生きていくというのは今の時代はやはり大変なんだなと、そして子供を産んで育てること自体が今の時代では贅沢なことなのかもと感じずにはいられない本でした。

  • 貧しさの連鎖。そこから抜け出すには強い意志と前を向く力。守るべき大切なものの存在。辛い思いをしながらも自分の夢に向かう姿がまぶしい。バラク・オバマ絶賛の本。アメリカだけの話ではない。

  • 頑張って1/4くらい読んでみたけど
    ギブアップ

  • この本に出会えて良かった。
    それは断言できる。

    ハッピーエンドで良かったねと手放しで喜べるサクセスストーリーではない。
    その過程で、ステファニーとミアがいつ終わるか分からない地獄を味わい続けたことは事実だから。
    収入を中途半端に上げると支援が手薄になり、かえって生活が苦しくなるというのは、まるで蟻地獄のようだと思った。

    明日は我が身。
    消化にはまだまだ時間がかかりそう。

  • 村井理子さんの翻訳本。途中、著者にこれでもかと降りかかる困難は、読むのが苦しくなるほど。福祉を利用する人達への偏見は、どこも同じなのだなと思う。

  • 翻訳、読みにくい。一つ一つのエピソードが断片的過ぎて、没頭できない感じ。
    ただどうしようもなく貧困に落ちてしまう、そしてその日暮らしの中で負のスパイラルに陥っていく心境がよく理解できた。そういう人をどう救うのか、社会の力が試されているということなのかも。

  • アメリカの格差社会の凄まじさが衝撃的。苦しさに負けずに、大学の単位を取得し、子どもにはオーガニックのものを食べさせるよう努力するなど、意識の高さを保ち続けたことに感服する。

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著者プロフィール

ステファニー・ランド

28 才でシングルマザーになり、誰の援助も得られなかったために子供を産んで早々ホームレスとなったのち、メイド(家庭内清掃員)として働く。その経験をもとに書いた本作は全米で話題となり、バラク・オバマ前大統領が毎年発表する2019年の推薦図書リストにも選出された。現在も引き続き、女性の貧困問題や不十分な社会保障などに対して声を上げる文筆家として活動中。

「2020年 『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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