Missing(ミッシング) (双葉文庫)

  • 双葉社 (2001年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784575508031

みんなの感想まとめ

人間の内面に潜む暗い側面を描いた短編集で、登場人物たちの複雑な感情や葛藤が鮮やかに表現されています。物語は、何かを失った人々の姿を通して、彼らの苦悩や成長を描写し、読者を深く引き込んでいきます。特に『...

感想・レビュー・書評

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  • H29.8.26 読了。

    ・以前読んだ「正義のミカタ」に続いて、本多孝好作品2冊目。短編集。
     個人的にはあまり期待せずに読み始めたが、次が気になるような書き方に引き込まれてしまった。
     お気に入りの作品は『蝉の証』『瑠璃』です。特に瑠璃に出てくるルコさんの天真爛漫な少女時代からの大人に成長していく過程の苦悩には、共感できる部分もあった。
    また、本多孝好氏の別な作品も読んでみたい。

  • 犯人不在の殺人というのかな・・・

    実際に手を下したわけではない。
    意図すらしなかった死もある。

    人間が普段被っている皮を一枚めくってしまえば
    その下の顔はこんなにも暗いのか。

    『眠りの海』
    少女を事故死させてしまい、自殺を図るも死に損なう男の前に現れた少年・・・どこか見覚えがあるその姿は・・・・

    『祈灯』
    目の前で妹が事故死した事実を受け止めきれず、「死んだのは姉」として妹になりきる「幽霊ちゃん」。その真意は・・・

    『蝉の証』
    孫を名乗って老女から金を巻き上げる女。若い男に金を払って女子高生をつけまわさせる老人。老人ホームの怪。

    『瑠璃』
    初恋の、奔放で自由なルコからの謎かけ。
    どうして人は人を好きになるのでしょう。アリクイを好きになっても仕方ない、ウォンバットの方がよっぽどいいかもしれない・・・

    『彼の棲む場所』
    どうしても許しがたい人間に出会ったとき、どう振舞うか。
    聖人君子なんていない。潔癖なまでに正しい人物なんてやっぱり胡散臭い・・・

  • 何かを失ってしまっている人たちのお話が5つ。
    どこかで微妙につながってるような雰囲気の短編集です。

    恋人である自分の生徒を死なせてしまって自分も死のうとする先生
    目の前で車にひかれた妹として生きる幽霊ちゃん
    死期を悟って女子高生のストーカーを頼むおじいさん
    おもしろい答えを探したほうが勝ちというなぞなぞで遊び、変人で瑠璃色の目をしたルコ
    殺人の欲求と妄想が止められないエリート大学教授

    ネガティブな思想をぶちまける割には、印象的で魅力的な登場人物が多くて、意外と読後感も悪くない。
    軽くさっぱりした語り口だからか。

    「瑠璃」がとても好き。
    ルコもよいが、姉の結婚式のところがよかった。

  • 帯に(このミスの)「2000年版第10位」って書かれてるからたぶんその頃に買って読んだ小説。
    覚えてないものだな、ってかるく感動した。笑
    再読だけどそのくらい新鮮な感覚で読めた。

    五つの短編集。
    タイトルの通り、不在の誰か、にまつわる物語たち。静かに死の匂いが漂う。

    ミステリ風ではあるものの、はっきりきっぱりと謎解きというよりは、もしかしてこういうことだったのではないか、みたいな余韻の残る謎解きに留まっているところが、この小説に限ってはとてもよかった。

    誰かの死に対する後悔をするのは傲慢なことなのかもしれないけれど、悔いることもあるし、引きずったまま生きることもある。
    そこから抜け出すきっかけに出会う人もいれば、抜け出せないまま生きていく人もいる。

    いちばん初めの「眠りの海」とラストの「彼の棲む場所」がとくに印象に残った。
    健全すぎるからこそ、一度きりの過ちから逃れられなくなってしまう。そういう恐ろしさを感じた。

  • 23歳で発表した処女作「眠りの海」で小説推理新人賞受賞、本作は受賞作含む5作品を収録。
    たしかに、「眠りの海」「祈灯」は新人らしからぬ文章力(例えば、『僕は手のひらを握りしめた。そこにある一本の線が本当にその人の運命を決めてくれるのなら、僕は今これから神を崇拝したっていい』祈灯)など才気あふれるきらめきを魅せるが、「蝉の証」では逆に大袈裟な修辞が鼻につく。
    しかし、文庫発売から5年足らずで40刷43万部というのもすごい。

  • 私的夏の1冊。何度でも読みたくなる。切なくて脆くて。

  • 人の死や孤独の意味、むなしさが短いセリフで語られている。
    著者のインタビューで「読者1人1人がそれぞれの見解で読めるような小説づくりを心がけている」という言葉があったが、その通りだと思った。
    短いセリフの奥に、どんな心情や意味が込められているのか、最後まで明確な答えは与えられていない。
    短編6集で成る本で、自殺がテーマの物語が多い。
    結局自殺する理由は本人にしか分からず、その死を悲しみ、後悔し、自責の念にかられる人は必ずいるのだというメッセージが込められているような気がした。

  • 『MISSING』 本多孝好 (双葉文庫)


    いやー複雑だわこれ。
    (そういえば前にもこの作者の他の本でこんなこと書いたような気がするな)
    人の心の回路って、どうしてこんなに複雑にできているんだろう。
    この小説は、そんな言葉で説明のできないものをそのまま箱詰めしたような短編集だ。

    一作一作に違った重さがある。
    逃げたくなる。
    ああいやだな。これを読んでしまうと、何だか自分の持っている重いものと向き合わなきゃいけなくなるじゃないか……

    つまり何というか、しんどいのだ。
    空気が薄いと知っていて山に登るような。
    でも、しんどいのが分かっているのに、道すがらの風景の美しさに魅せられて登ってしまう。

    ストーリー自体は重いのに、そこに広がる情景の異常なほどの澄んだ感覚は何なのだろう。
    作者が描き出す音と光と空気は、清廉な言霊になってどこか読む者を惹きつける。
    これがデビュー作だということに素直に驚かされる。


    一編目『眠りの海』は、第16回小説推理新人賞受賞作だが、ミステリーというよりはファンタジーホラー的な不思議な物語である。
    私はこれが一番好きだ。
    五編中、一番すんなりと受け入れられる感じ。

    崖からの飛び降り自殺に失敗した主人公が、焚火にあたりながら“少年”と話をしている。
    この“少年”については、方言らしきもので話すこと以外、服装や背格好、年齢などは何も書かれていない。
    なぜだろう……
    そんな微かな違和感が、何とは気付かないまでも、物語の最初から読み手の気持ちに影をさす。
    それは、主人公の「私」が“少年”の正体に気付くラストシーンに繋がっていく。

    「私」と「京子」の本当の心は、最後まで決して交わることはなかった。

    「あるがままの他人を受け入れられない自分と、あるがままに他人に受け入れてもらえない自分」

    「私」の苦しみをそっと覆い包むように優しい、でも同時にとても悲しいラストシーンだった。


    『祈灯』は、妹を事故で亡くした姉が自分の存在を心の中で抹殺し、死んだ“妹”を名乗って生きている、という話。

    しかし彼女は“おかしくなっているふり”をしていただけだったのだ。
    親への仕返しと、自分に課した償いの果てにあったものとは何だったのか。

    ハッピーエンドではない。
    登場人物の誰もが何も答えを持たない。
    じゃあ彼女はどうすればよかったんだろう。
    街の灯りを見て“祈る人”と“呪う人”がいる、というくだりは、すうっと背中が寒くなるような気がした。


    『蝉の証』は“死”がテーマの話だ。

    癌で余命いくばくもない老人が、誰かの記憶に自分の存在を残したいと思う。
    あるいは孫に騙されて死んでいった人は、嘘だと分かっていながらそれでも孫の記憶に自分を留めておきたかった。

    決して間違ってはいない。
    けれども、その中にある目に見えない小さな棘が、「僕」の気持ちに引っかかってしまう。

    「あんたにはわからないよ」と言う祖母。

    「そうだね。僕にはわからない」

    そう、私だってわからない。読み終えた今でも。
    読後のもやもやは、五編中この作品が一番だった。


    『瑠璃』は、「ルコ」という女の子と「僕」との物語である。

    ルコは、退屈だからという理由で高校を辞めたり、突然プラリと旅に出たり、早朝の学校に忍び込んでプールで泳いだり、自由奔放で魅力的な女の子だ。
    しかし、時の流れとともに、つまり大人になっていくにつれて彼女は、彼女自身と彼女の中にある自分との乖離に怯えるようになる。
    何だか村上春樹の小説に出てくる女の人みたいだなと思ったらやっぱり……みたいな結末だった。

    私がもう少し若かったら、好きな作品だったかもしれない。
    自殺を正当化することはできるかもしれないが、美化するのは違うんじゃないか。
    実在感がなく儚い妖精のような女性像って男性の憧れなのかな、なんてちょっと冷めた目で見てしまった。
    これは、ルコの人生を描いているというよりは、ルコという少女が大人になって命を絶つまでの、様々な感情がつくり出す傷を刻み付けられて大人になっていく「僕」の物語なのだろう。


    最後の『彼の棲む場所』はすごかった。

    穏やかで人当たりがよく聡明な大学教授が抱える心の闇が怖い。
    黒いものを心の中に持った危険な自分を抑えながら生きていくのと、すべてを吐き出して社会的な犯罪者になるのとでは、本当はどちらが彼にとって幸せなのかが分からなくなってしまった。
    これからの彼の人生に待ち受けているものは何なのか。
    読み終えた後も「サトウ」の視線が付きまとうような、何とも言えない気分になる話だった。


    あるべきところにない。
    いるべきところにいない。
    欠落している。

    タイトルの「MISSING」はそんな意味を持つ。

    登場人物たちの抱える精神的な欠損は、そのどれもが解決されないままそこにある。
    比較的まともな(というと語弊があるが)“語り手”が、彼らを客観的に見ているという構図が多いのは、そこに“救い”を見出そうとしているのか、それとも単なる“逃げ”か。
    作者の意図はどこにあるのか。


    透明感のある文章の心地よさと表裏一体の重苦しい闇。

    まるで硝子のように美しさと脆さと危うさを持った一冊だった。

  • 死にまつわる5つの短編集でデビュー作との事。村上春樹風の斜に構えた言い回しの会話が気になった。思春期をとらえた「瑠璃」は良かった、ルカの死が悲しすぎる。

    • ぷいさん
      瑠璃よかったね。
      瑠璃よかったね。
      2022/07/02
  • 人はなぜ人を好きになるのでしょう。
    −−−アリクイを好きになっても報われないから。
    こういったルコとの謎々のやりとりは、二人だけの秘密の遊びみたいで素敵だった。

    「死」がテーマに絡んでくることが多い作者さん。
    私が死んだら誰かがこんなふうに私のことを考えるのだろうか、とか色々考えた。

  • 全体的に静かな「喪失」の物語。話としては『蝉の証』『瑠璃』が面白く、気持ちの良い不確かさのようなものがあとに残ります。最初から話の先が読め、しかもそれが裏切られなかった『眠りの海』。『彼の棲む場所』は、人の世の哀しさを背負っており、心の深淵を覗いてしまった(あるいは覗かれてしまった)ようで背筋が寒くなります。どの作品も読み終えるとタイトルや装丁のイメージがピタリとくる。著者のほかの作品も読んでみたい。

  • 一言で表すのであれば『愛と寂しさ』という印象。

    個人的に『蝉の証』が好きでした。
    一人で死ぬのは怖くない、でも誰からも忘れられるのはすごく怖い。私もこれはすごく感じ。誰か一人でも年に一度でも一秒でもでもいいから思い出してもらいたい。
    そして感動話で終わらせるのではなく、"冗談じゃね。"と思う主人公はとっても好き。

    『瑠璃』も『祈灯』もとっても好きでした。

  • 私の社会的欠落を助長した オートリバース 言い得て妙 公立高校教師の愛敬ね 有り体に言うのなら 漆黒の海 モノクロの写真にすれば映えるような光景だった 祈灯 その非が専ら父にあること 嫌らしい想像をしているだけだ 恋愛あり友情ありの一番豪華絢爛な時期の人間を 禁忌 病院を出て見上げた空には刷毛はけで描いたような白い雲が一筋流れていた 偲んで 慈しむ 悼む 理解の範疇を越えた生き物 一本道に次々に落とし穴が掘ってあるようなもんよ 食蟻獣みたいに想像力が貧困なんだ お前が先んじるのは許さん 「彼等にとって、知識とは職業であって、人生を豊かにする為のものではないんだ。自分が知っていなきゃいけないことを知っていればそれでいい。好奇心も向上心もありゃしない。そんな輩に人間的な面白みがあるはずないし、耳を傾けるに値する言葉を吐けるわけがない。実際、彼等と話すくらいなら百科事典をひいていた方がはるかにましだね。間違いもないし、もったいぶったりもしない。ついでに息も臭くない」 言い淀んだ彼は 不純同性交遊は禁止されていなかった ポンテオ・ピラト ゴルゴダの丘で処刑を許したローマ総督

  • 本多さんの作品には【喪失】が根源的なテーマとして根付いている印象を受けていたが、本作を読むと処女作からそのテーマは全くぶれていないことが伺える。収録作品(最後の作品は例外)に共通するのは【無償の愛】への渇望。社会や常識という括りの中では『甘え』の名でいとも容易く断罪される『ありのままの自分を愛して欲しい』という純粋で無垢な欲求。描かれるのはその満たされることのない思いに苦悩する人々。淡々と進む物語は登場人物の【死】を以てしてもなお淡々と進む。安易な美化や感動を挟まず、物語は傷を残したまま静かに幕を閉じる。

  • 「死」に対してタブーとされやすい人間の心理を丁寧に描いています。共感出来ないのに、なぜか憎めず親近感がわいてしまう登場人物達。
    物語も日常の中で起こりえるほんのひとコマを切り取ったような状況描写で進んでいきます。
    短編集ですが、1つ1つの話に個性かかんじられ飽きずに次から次へと読み進めたくなります。
    読み終わった後は何とも言えない気持ちになりますが、それが醍醐味の1冊だと思います。

  • MOMENT」「WILL」が印象的な著者の初期の短編を納めた1冊。ミステリ+ファンタジー的な風味と切ない読後感は一連の作品にも通じている。最近の著書の方がこなれているというか、完成度が高いきはするものの、独特の語り口と構成の巧さは癖になる魅力がある。特に気に入ったのは「眠りの海」と「瑠璃」どちらも主人公の少女のキャラが非常に印象的だ。

  • 2018/3 3冊目(通算35冊目)。「死」や「別れ」をテーマにした短編集。良かったのは、救いのあるラストの「眠りの海」、ルコみたいな女性が小さな頃自分の身の周りにいればいいなと思った「瑠璃」の二つ。心情部分を丁寧に書いてあるのはいいが、その部分に共感できない自分がちょっと悲しい。感想はこんなところです。

  • 読了

  • すごーく期待して読み始めたせいか、ちょっと物足りない感じでした(c" ತ,_ತ)。

    短編ばかりだったからなのか?あまり入り込めず。ただこの著者の本に出てくる登場人物たちがとても淡々と飄々としているのが、私的にとてもツボ。

    冷酷とか無神経とかそういう見方もできるような気もするけど、どこか憎めないそんなクールな人が大体登場する。

    身近な人間が死のうが、迷おうが、自分の生き方がブレない感じ。でも、強い意志によるものじゃなく、自然に任せてるけど、迷わない。そんな登場人物たちがどーも好きです。私。

    それで、内容がどうあれどうも夢中になってしまいます。もちろん、内容もちょっと不思議な感じで面白くはあるんですが、そこよりやはりこの淡々とした人間たちが私を夢中にさせてくれます。

  • 何かを失くしてしまった人たちの物語。


    「このミステリー~」の10位ランクインだそうだけど
    この本はミステリーに分類したくないな。


    登場人物がみんな色っぽい。
    透明感と影のバランスがたまらなくいい。


    『瑠璃』が一番好き。


    「夏はどうしてこんなに気持ちいいでしょう」
     ルコと一緒にいるから、なんて答えはさすがに言えなかった。
     僕が答えずにいるとルコは自分で答えた。
    「気持ちいい季節を夏と名付けたから」
     僕の勝ち、と僕は思った。


    このやりとりだけで小説の印象がとてつもなく綺麗になった。

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著者プロフィール

1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1994年「眠りの海」で小説推理新人賞を受賞。‘99年、『MISSING』で単行本デビュー、「このミステリーがすごい! 2000年版」でトップ10入りするなど高く評価され、脚光を浴びる。以後、恋愛、青春小説を超えた新しい静謐なエンターテインメント作品を上梓、常に読者の圧倒的支持を得ている。その他の作品に『正義のミカタ』『MOMENT』『WILL』『魔術師の視線』『君の隣に』など。『dele』では原案と脚本を担当し、山田孝之と菅田将暉主演でドラマ化された。

「2021年 『チェーン・ポイズン <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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