- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575508031
感想・レビュー・書評
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H29.8.26 読了。
・以前読んだ「正義のミカタ」に続いて、本多孝好作品2冊目。短編集。
個人的にはあまり期待せずに読み始めたが、次が気になるような書き方に引き込まれてしまった。
お気に入りの作品は『蝉の証』『瑠璃』です。特に瑠璃に出てくるルコさんの天真爛漫な少女時代からの大人に成長していく過程の苦悩には、共感できる部分もあった。
また、本多孝好氏の別な作品も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
犯人不在の殺人というのかな・・・
実際に手を下したわけではない。
意図すらしなかった死もある。
人間が普段被っている皮を一枚めくってしまえば
その下の顔はこんなにも暗いのか。
『眠りの海』
少女を事故死させてしまい、自殺を図るも死に損なう男の前に現れた少年・・・どこか見覚えがあるその姿は・・・・
『祈灯』
目の前で妹が事故死した事実を受け止めきれず、「死んだのは姉」として妹になりきる「幽霊ちゃん」。その真意は・・・
『蝉の証』
孫を名乗って老女から金を巻き上げる女。若い男に金を払って女子高生をつけまわさせる老人。老人ホームの怪。
『瑠璃』
初恋の、奔放で自由なルコからの謎かけ。
どうして人は人を好きになるのでしょう。アリクイを好きになっても仕方ない、ウォンバットの方がよっぽどいいかもしれない・・・
『彼の棲む場所』
どうしても許しがたい人間に出会ったとき、どう振舞うか。
聖人君子なんていない。潔癖なまでに正しい人物なんてやっぱり胡散臭い・・・ -
何かを失ってしまっている人たちのお話が5つ。
どこかで微妙につながってるような雰囲気の短編集です。
恋人である自分の生徒を死なせてしまって自分も死のうとする先生
目の前で車にひかれた妹として生きる幽霊ちゃん
死期を悟って女子高生のストーカーを頼むおじいさん
おもしろい答えを探したほうが勝ちというなぞなぞで遊び、変人で瑠璃色の目をしたルコ
殺人の欲求と妄想が止められないエリート大学教授
ネガティブな思想をぶちまける割には、印象的で魅力的な登場人物が多くて、意外と読後感も悪くない。
軽くさっぱりした語り口だからか。
「瑠璃」がとても好き。
ルコもよいが、姉の結婚式のところがよかった。 -
帯に(このミスの)「2000年版第10位」って書かれてるからたぶんその頃に買って読んだ小説。
覚えてないものだな、ってかるく感動した。笑
再読だけどそのくらい新鮮な感覚で読めた。
五つの短編集。
タイトルの通り、不在の誰か、にまつわる物語たち。静かに死の匂いが漂う。
ミステリ風ではあるものの、はっきりきっぱりと謎解きというよりは、もしかしてこういうことだったのではないか、みたいな余韻の残る謎解きに留まっているところが、この小説に限ってはとてもよかった。
誰かの死に対する後悔をするのは傲慢なことなのかもしれないけれど、悔いることもあるし、引きずったまま生きることもある。
そこから抜け出すきっかけに出会う人もいれば、抜け出せないまま生きていく人もいる。
いちばん初めの「眠りの海」とラストの「彼の棲む場所」がとくに印象に残った。
健全すぎるからこそ、一度きりの過ちから逃れられなくなってしまう。そういう恐ろしさを感じた。 -
23歳で発表した処女作「眠りの海」で小説推理新人賞受賞、本作は受賞作含む5作品を収録。
たしかに、「眠りの海」「祈灯」は新人らしからぬ文章力(例えば、『僕は手のひらを握りしめた。そこにある一本の線が本当にその人の運命を決めてくれるのなら、僕は今これから神を崇拝したっていい』祈灯)など才気あふれるきらめきを魅せるが、「蝉の証」では逆に大袈裟な修辞が鼻につく。
しかし、文庫発売から5年足らずで40刷43万部というのもすごい。 -
私的夏の1冊。何度でも読みたくなる。切なくて脆くて。
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人の死や孤独の意味、むなしさが短いセリフで語られている。
著者のインタビューで「読者1人1人がそれぞれの見解で読めるような小説づくりを心がけている」という言葉があったが、その通りだと思った。
短いセリフの奥に、どんな心情や意味が込められているのか、最後まで明確な答えは与えられていない。
短編6集で成る本で、自殺がテーマの物語が多い。
結局自殺する理由は本人にしか分からず、その死を悲しみ、後悔し、自責の念にかられる人は必ずいるのだというメッセージが込められているような気がした。 -
死にまつわる5つの短編集でデビュー作との事。村上春樹風の斜に構えた言い回しの会話が気になった。思春期をとらえた「瑠璃」は良かった、ルカの死が悲しすぎる。
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人はなぜ人を好きになるのでしょう。
−−−アリクイを好きになっても報われないから。
こういったルコとの謎々のやりとりは、二人だけの秘密の遊びみたいで素敵だった。
「死」がテーマに絡んでくることが多い作者さん。
私が死んだら誰かがこんなふうに私のことを考えるのだろうか、とか色々考えた。
著者プロフィール
本多孝好の作品





