ピリオド (双葉文庫 の 3-4)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575508239

感想・レビュー・書評

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  • 宇津木葉子40歳。離婚して5年。
    フリーカメラマンとしてけっして安定しているとは言い難い生活を送っている。
    仕事上の要領の良さも身につけ、声がかかった仕事は断らず、不安や孤独を感じながらも一人暮しを続けている。
    不倫関係だが一応付き合っている男性もいる。
    そんな葉子のもとに長野に住む甥の彰彦、姪の理菜が相次いで訪れる。
    彰彦は受験のため、理菜は実家から逃げるために。
    理菜の追い詰められた心を思うと、胸が締めつけられるように痛かった。
    葉子だけが自分を救ってくれるような気持ちになったのも当然のような気がする。
    完璧な人間なんてどこにもいない。
    不器用だったり、人とうまくコミュニケーションが取れなかったり、感情を伝えることが苦手だったり。
    思うような自分になれなくて、こんなはずじゃなかったと誰かにせいにしたくても現実は目の前にあって、苛立ちが募るときもあるかもしれない。
    でも、どんなに諌められても叱られても、最後まで味方でいてくれる人間さえ傍にいれば人は前を向いて生きていけるんじゃないだろうか。
    理菜が葉子に聞いたひと言。
    「…味方で、いてくれる?」
    理菜から逃げずに、真正面から葉子が向き合ってくれたことが嬉しかった。
    良かったね、もう一人で全部抱え込まなくてもいいんだよと。
    これほど極端ではないだろうが、志乃のような人間は案外多いように思う。
    おとなしくて、目立たたなくて、弱そうに見えて、支えがないとダメになってしまいそうだけど、結局は自分の思い通りにしてしまう人間。
    芯が強いという表現もできるだろう。
    でも、我が強いという言い方もできる。
    長所は欠点でもある。
    いろいろなことが重なり、いろいろなことが終わっていく。
    葉子はその流れの中で、自分自身と向き合っていく。
    彼女の心理描写がとくに印象深い。
    派手さはまったくないけれど、心に残る物語だった。

  • まあまあの時間をかけて読んだけれど、その割に得たものは少なかったかなー、と思います。
    もちろん、文章は読みやすかったですし、テンポもよかったんですが、最終的に疲労だけが残った感じがします(^_^;)

  • 久しぶりの乃南アサさん。わたしはやっぱりすきだな。実家の事、結婚の事、いろいろある今だから尚更なのか。主人公嫌いっていう感想多くて意外だった。実家の事、帰る場所って思った事ないなあそういえば。



    二人で築くべきものが何もない関係では、こうして火種を探し回るより他に、長続きさせる方法はないのだと思う。

    理由は何であれ、女が、それまで持ち続けていた何かを捨てるという決断を下すことが、どれほどのエネルギーを費やし、敗北感や喪失感を抱え込まねばならないか、葉子にはよく分かっている。

    可能な限り働き続け、月に何度かは銀行の通帳を眺めて、誰も待たず、誰にも待たれずに日々を過ごしていくだろう。これまでがそうだったように、その生活が、果てしなく続く。それが良いことなのか、自分の望みなのか、それで満足なのか。そして、やがて一人で死んでいく、それが自分の人生なのだろうか。

    男に限らず、たとえどんな相手との関係であっても、自分の孤独を癒すための材料に過ぎないという程度に受け止め、常に冷静であるべきだと、いつの間にかそう自分に言い聞かせていた。

  • ウダウダ考えすぎる主人公が、ウダウダしながらジワジワ面倒に巻き込まれるっていうやたら厚い本。

    ウダウダ考え続ける主人公に不健康だなぁ。と。

    甥。姪との関係。

    兄嫁と兄。

    とにかく、人間関係にウダウダとウダウダウダウダ。愛人にもウダウダしてるうちにやたら面倒に巻き込まれてさらにウダウダ考える主人公。

    こんなウダウダした主人公を描き切る乃南アサもすごい。

    驚くほど、
    まいっか!が、ない人。笑笑

    びっくりする、まいっかだらけのわたしにしてみたら、こんないつまでもウダウダとなんだっつんだよ。と思いながら最後までウダウダ読みました。笑笑

  • 自分と他者との関わり、その自己評価と他者からの評価とのすれ違い、考えさせられる。

  • 話の内容が分からず読みました(裏のあらすじを見てもピンと来なかった)。
    長くて読んでて辛い作品。登場人物全員嫌な奴。
    甥・姪をよく自分の部屋に置いておけるな、と思ってしまった。仕事行ってる間に部屋漁られたら嫌だよな、と思っちゃう。

  • ひとりの女性が駆け抜けた明暗。

    離婚し、愛人として過ごす女性カメラマンの葉子。

    故郷を捨て、上京し、結婚もするが夫に逃げられ、心を寄せた杉浦も妻の殺害容疑をかけられる。

    また兄の子供たちが上京し、自分の隙間を埋めるかのように甥、姪の面倒まで見ることに。

    孤独では生きていけない葉子は、愛人、甥姪の存在などを頼りにしながら、周囲の人間の死を見送っていく。

    所詮、人間なんて一人では生きられない存在なのか?

    誰にでも降りかかりそうなエピソードが葉子に降りかかり、それを一つずつ終わらせていく生きざまに共感。

  • なんだか、淡々と話が続き、盛り上がることもなく終わってしまう。

  • 殺人事件や兄の末期ガンなどによって、主人公の身辺に様々なピリオドが直面してくる。

  • 2016 01

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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