母恋旅烏 (双葉文庫 お 23-3)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575509809

感想・レビュー・書評

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  • 旅芸人の父を持つ家族6人の爆笑物語。
    家族それぞれの視点で一家の悲喜劇が描かれている。

    自ら独立して劇団を旗揚げした父であったが、失敗に終わりレンタル家族なる新手の仕事を家族全員で引き受けるところから話しは始まる。

    何をやっても上手くいかない父であるが、かつての師匠のお見舞いから事態は急転する。

    ボンが出て行ってからのくだりは痛快極まりない。

    何故か突然母が・・・。

    朗らかな気持ちになる作品であった。

  • 前半と後半で一気に展開が変わる。視点が変わるので雰囲気を掴みやすかった。前半の面白展開から後半は結構な人情感で読みやすかった。

  • 私はだいたいいつも本は二度読みするのだが、これはあまりの濃さと暑苦しさに、二回読む気になれなかった本である。(褒めてます)


    『母恋旅烏』 荻原浩 (双葉文庫)


    いやーほんとに暑苦しかった。(だから褒めてるんだってば)
    笑いと涙と、何よりこのパワーはすごい。


    花菱一家は、旅回りの大衆演劇を生業としていたが、今は“レンタル家族派遣業”なる怪しい家業を営んでいる。

    父・清太郎、母・美穂子と、三人の子供・太一、桃代、寛二。
    そして、桃代の子・珠実。
    このレンタル家族は、劇団をやめてからの清太郎の何十番目かの仕事である。
    美穂子いわく、「サイコロを振るような人生」。
    ハチャメチャでうだつの上がらないダメ親父が、家族を巻き込み、「行てまえー」てなもんでグイグイ道標のない我が道を突き進んでいく。
    が、結局どれもうまくいかず、大衆演劇の世界に再び舞い戻るのだが……


    この小説の半分は、次男の寛二の一人称で語られている。
    寛二には知的障害があるらしく、特殊学級に通っており、17歳なのだが言葉遣いは小学生のようだ。
    だが、それがかえって先入観なく物事を見ていて正直で、芝居の場面の説明などは、本当に目の前で見ているような気持ちになって感動する。


    さて、一度飛び出した「大柳団之助一座」に舞い戻り、紆余曲折のあげく、崖っぷちで清太郎が一世一代の賭けに出た芝居、「母恋旅烏」。

    これがまたいいのよ。
    寛二の語り口がすごくいいし、大衆演劇の外連味たっぷりの化粧や衣裳や照明や、大げさなセリフ回しにすっかり引きずり込まれて、清太郎が血まみれで微笑む場面でうるっときてしまったりして。


    さて、清太郎は団之助から独立して、「花菱清太郎一座」を旗揚げすることになる。
    めでたしめでたしのはずだったが、なななんと、美穂子さんが家を出て行ってしまう。
    なんで !?
    しかもこのタイミングで !?


    家を出ていたもののとりあえず戻って来た太一と桃子が入り、花菱清太郎劇団のお披露目公演が行われた。
    このシーンはね。
    涙なしには読めんかったね。

    「四谷怪談」の宙乗りの場面。
    お岩役の太一を吊っていた二本のワイヤーのうちの一本が切れてしまうのだ。
    それに合わせ、太一と伊右衛門役の桂木さんが、台本にはないセリフを喋り始めるシーンがもうすっごく感動!

    恨みつらみの四谷怪談が、二人の機転で優しいラストシーンに変わり、客席を感動の渦に巻き込み幕を閉じる。
    劇団員が一丸となり、花菱家の子供たちが全員出演したお披露目公演は、大成功をおさめた。

    ああ、そうか。
    これは子供たちの物語だったのだなぁと、読み終えて思った。

    ダメ父が奮闘してひと花咲かす話でも、父親の素晴らしさを再発見して家族が再生する話でもない。
    最後に輝くのは、親父ではなく子供たちなのだ。
    出て行った美穂子さんが、結局最後まで帰って来なかった理由も頷ける。


    「お~い、美穂子~。帰ってこ~い。」

    と、清太郎が座長挨拶で妻に呼び掛けているのも何だか微笑ましく、それはそれでOKなんじゃないかと思う。
    この夫婦はこの夫婦で、揉めたりよりを戻したり勝手に好きにやっとればよいのだ。


    歌謡ショーで、寛二が「潮来笠」をモノマネで歌う場面がよかった。

    「いままでぼくは人に笑われてばかりいて、それはぼくを馬鹿にして笑っているのだということに、なんとなく気づいていたけれど、舞台の上では違う。舞台の上のぼくを笑ってくれるのは、ぼくのことを少しかもしれないけれど、好きでいてくれるからだ。いまここにぼくがいることを、喜んでくれているからだ。ぼくが生きていることを、ま、ええやん、と思ってくれているからだ。」

    うるうる。

    適材適所に置かれたら、人はこんなにも輝く。
    よかったなぁ寛二くん。
    清太郎だって、舞台に立つ姿はめちゃかっこいいのだ。


    師匠の団之助の、「おめおめとのぉ」というのが面白かったな。
    この団之助さんのキャラクターはなかなか魅力的だ。
    早くから寛二の才能を見抜いて、自分の名前から一文字取って、寛二に芸名をくれるんですよ。
    器がでかい。(そしてねちっこい)

    あと、桂木さんもいいね。
    女形の時に、男っぽい声で「あいよっ」とか言うところとか好きだなぁ。


    かくして、演劇の端っこをちょびっとかじったことのある私にとっては、ワクワクドキドキ、笑えて泣けた、すごく楽しい物語なのでありました。

  • 面白く泣いて笑って考えて。良かった!

  • レンタル家族の話かと思いきや、メインは大衆演劇の話だった。元大衆演劇一家の花菱家のゴタゴタ騒動。荻原さんらしいユーモアや、ほろ苦い後味も悪くないと思うんだけど、いろいろな意味で思ってたのとはちょっと違う話だった。28ページ目で唐突に明かされる寛二の設定。ここのところがどう読み進めていこうかと、不意打ちに問われるようで悩ましい。装丁はたぶん長女の桃代だろうが、雰囲気が良く出ていてこれは好き。レンタル家族と大衆演劇がブツ切れになっている印象はあるが、全体的には楽しめたかな??悩ましいけど。

  • 著者:荻原浩(1956-、さいたま市、小説家)

  • レンタル家族派遣業というけったいなビジネスを営む花菱家は、元は大衆演劇の役者一家。父・清太郎に振り回される日々に、ケンカは絶えず借金もかさみ家計は火の車。やがて住む家すらも失い、かつてのよしみで旅回りの一座に復帰することになったのだが…。はてさて一家6人の運命やいかに!?

  • 前半はいつもの笑いの冴えが見られず少々冗長。どうなる事かと思いましたが、後半で一気に盛り返しました。
    もっとも、これまでのようなスラップスティックは少し影を潜め、人情物の方向に進んでいるように見受けられます。全体の雰囲気は浅田次郎風で、それはそれで大好きなのですが、余りに似過ぎるのは心配な気がします。

  • 夢ばかり追いかけて裏目裏目に出る父さん
    現実を見据えたい母さん
    ぼーっとした兄ちゃんと
    気の強いねぇちゃんと赤ん坊
    そしてボク

    レンタル家族なんてけったいな仕事をしてた我が家
    喰い詰めて頼った先は、父さんが昔いた大衆演劇の一座

    優しい気持ちになれる1冊です
    評価分かれるようだけど、私は大好き!
    やはりこの作者さんはうまいなぁ

  • レンタル家族派遣業を自営業で営む花菱家。
    6人で働くもののいつもトラブル続きでうまくいかず、借金が膨らんでいく。

    父の清太郎は元は大衆演劇の出身、家を失いかつての師の元へ出向くともう1度大衆演劇をやってみないかと持ち掛けられる。

    そこまでが全422ページ中の191ページまでのあらすじ。
    ここで断念してしまった。
    父、清太郎の甲斐性のなさが読んでいてしんどくもう読めないと本を閉じた。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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