優しい音楽 (双葉文庫 せ 8-1)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575511932

感想・レビュー・書評

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  • 「優しい音楽」
    電車を待っているタケルは千波と運命的な出会いをする。千波の思いとは……。
    「タイムラグ」
    ある日深雪は、不倫相手の娘を預かることになって……
    「がらくた効果」
    章太郎の恋人、はな子がある日「拾ってきちゃった。」ものとは……
    それぞれ、何か秘密をはらんでいる書き出しで、そこからめくるめく展開が待っています。そして、明かされていく秘密。それでいて温かな気持ちになる読後感。
    まさに瀬尾ワールド全開といった中編三作です。

    でも、そこには人の死であったり、許されぬ恋であったり、或いは努力が無に帰してしまって、なお走り続けなければならなかったりと人生のシビアさも存在します。瀬尾さんは実は人間の嫌な部分やどろどろした部分を知っている。そうして尚、温かい話にしてしまえる筆致に凄みがあると思います。瀬尾さんは中学校の先生もされていたと言うことで、子どもたちや世の中のいい面だけでなく負の場面も度々味わっていると思います。でも、そんなことは素知らぬふりで、数々の温かい物語にしてしまう。そこに実力を感じます。

    それにしても、これほどの力がありながら、教員採用試験に30を越すまで受からなかったことに驚きます。そして、超過酷な先生という仕事と作家という二足のわらじをはいていたことに更に驚きです。こんな先生、私も習ってみたかったなぁ。
    登場人物、とりわけ若者の心理描写が巧みなのは、先生という経験の賜物であり、数々の名作に遺憾なく発揮されています。
    折に触れて読みたくなる作家さんです。


    • ちゃたさん
      しかのなっちゃんさん

      ちゃたと申します。
      フォローありがとうございます。瀬尾さんの作品、読みやすくてコンプリートしてしまいました。「強運の...
      しかのなっちゃんさん

      ちゃたと申します。
      フォローありがとうございます。瀬尾さんの作品、読みやすくてコンプリートしてしまいました。「強運の持ち主」だけは設定がありえなさすぎて挫折しちゃいました。でも、良作が多いと思います。今後ともよろしくお願いいたします(^o^)
      2023/04/19
    • しかのなっちゃんさん
      ちゃたさん、こんばんは。お返事ありがとうございます。素敵なコメントが多く、読んでみたいなぁ、と思う作品がたくさんありました。強運の持ち主は、...
      ちゃたさん、こんばんは。お返事ありがとうございます。素敵なコメントが多く、読んでみたいなぁ、と思う作品がたくさんありました。強運の持ち主は、占いというよりも、会話からその人の心を読んで、アドバイスしていくというあたりが、私はおもしろかったです。これからも、素敵なコメント読ませてくださいね。
      2023/04/19
    • ちゃたさん
      しかのなっちゃんさん

      そんなそんな、過分なお言葉ありがとうございます(^-^;
      こちらこそ、しかのなっちゃんさんのレビュー楽しみにしていま...
      しかのなっちゃんさん

      そんなそんな、過分なお言葉ありがとうございます(^-^;
      こちらこそ、しかのなっちゃんさんのレビュー楽しみにしていますね。
      奈良は最高ですよね。いつか奈良にいきたいなぁと思ってます。
      2023/04/19
  • 瀬尾まいこさんの短編集。
    "優しい音楽"、"タイムラグ"、"がらくた効果"の3話。どれも普通にはあり得ない話ながら、ほっこりするストーリーばかり。

    特に、"タイムラグ"では、不倫相手の平太が夫婦で旅行に行く間、その子供を預り、挙げ句、その子と一緒に平太の実家に行って、結婚に反対されていた妻の味方をすることになるという、まさかの展開にビックリ。
    "がらくた効果"は、ある日突然、同棲相手のはな子が、ホームレスの佐々木さんを連れて帰り、しばらく一緒に住むうちに、二人の関係がよい方に変わっていく話。
    リアリティーはないが、なぜか優しい気持ちになれるのは、瀬尾まいこさんならでは。



  • 安定のあったかさ満載の瀬尾まいこさんの短編集。
    台風による尋常じゃない暴風に怯えて眠れない夜にもほっこり。。。
    その中でも優しさMAXの「優しい音楽」は、奇妙な二人の恋の行方にハラハラしながらも、心地いい着地がホロリとあったかい涙を誘う。
    夫婦の記念旅行中、娘を預かってくれと愛人に理不尽なお願いをされ、断りきれない「タイムラグ」の主人公、深雪。不倫相手の子と愛人が同じ時を過ごす中でありえない連帯感が生まれ。。。とんでもなくドロドロな状況そっちのけで、それぞれの確かな繋がりが随所に感じられてなぜか否定できず、やはりほっこり。
    リストラされ離婚され、公園で野宿していたおじさんを拾い、奇妙な同居生活を始めるカップルの話、「がらくた効果」
    どれも男女の恋愛にとどまらず、とても自然体に人を慈しみ生きる姿が描かれている。
    さらっと一晩で読めるので、心すさむ夜にオススメ。

  • 短編が3作です。

    『優しい音楽』
    表題作です。
    僕は駅で、突然知らない女の子にじっと見つめられたので、声をかけました。
    次の日もまた、彼女は僕を探していて・・・。
    タイトルそのまま、お話し全体が優しい音楽で、泣きそうになりました。

    『タイムラグ』
    結婚していて、八歳の娘もいる平太と付き合って2年になる深雪。
    平太と奥さんの旅行中、娘の佐菜を預けられる羽目になりますが・・・。
    これも、なかなか素敵なお話しです。

    『ガラクタ効果』
    物を集めるのが好きなはな子と一緒に暮らし始めて1年になる章太郎。
    ある日家に帰ってくると、また突然はな子が「拾ってきちゃった」と言い出した。
    さて、はな子が拾ってきたものとは・・・。
    もー、笑いました~~~。うけました。爆笑しました。
    最後はちょっぴり寂しくなりました。

    とっても、ハートフルな3篇のお話しでした。

  • 3つの短編から成る短編集。
    久しぶりの瀬尾まいこさんだったけど、やはりすいすい読める言葉選びと、読後にふんわり温かな世界が広がる感じがする素敵な作家さんだなぁ。

    3つの短編はいずれも少し不思議な印象から始まるのだけど、読み進めるうちにまんまと著者の術中にハマってしまうというか、変なことを変と思わないようになってしまい、世界観に巻き込まれる。終わり方も余韻があっていいな。

    一文字や二文字の賀詞は目上から目下に使うもの、という知識は知らなかった。

  • 3つの短編集です。どのお話も、登場人物は、どうにもならない現実に悩んだり、苦しんだりしています。でも、人と出会い関わり合って、次への一歩の背中を押してもらって、前へ進んで行きます。瀬尾さんの書かれる本は、お話の設定が、ちょっと現実ではありえないんじゃないか、というものが多いです。今回もそうでした。でも読んだ後、あたたかい、優しい気持ちになれるので、ついつい読んでしまいます。「がらくた効果」のお話は、同棲中のカップルの会話のテンポがよく、おもしろくて、漫才みたいでした。

  • お兄ちゃんフルートふけなかったんだよ、っていうところが、心を打った。いくら顔が似ていても同じ人には成れないし(当たり前だが)、同じ人になってほしいわけでもないし、でも似てるな、見てたいな、って思ってしまう気持ちは、きっとわかる。その気持ちにこたえようとする紳士の話し。

  • 瀬尾まいこはまちがいない
    読んで必ず「よかった」って思わせてくれる

    短編三篇
    どれも不思議なようでリアルなようで
    読み終わってふわー

    食べる描写がうまいよねえ
    登場人物をつなげていく

    文章もあたたかくていいな

    ≪ 文庫本 読み終えただけ 身が軽く ≫

    ≪ 

  • 久しぶりに読み返しました。
    少し苦くもほっこり、ほのぼのな短編3つ。

    「優しい音楽」
    「タイムラグ」
    「ガラクタ効果」

    登場人物の関係性がどんなに歪でも妙に優しい気持ちになれる。瀬尾さんの力だなぁと思います。
    さっぱりとしているのに愛情に溢れている。不思議な感覚です。

  • 3つの短編集で、心温まる瀬尾まいこさんワールドでした。

    其々の物語での人間模様が、時に面白く、時に切なく、時に愛おしく感じられ、優しく温かな気持ちになりました。

    瀬尾まいこさんの作品では、登場人物がとても生き生きと魅力的に感じます。また、人と人との繋がりにおいて新鮮で粋な見せ方をされるので、心地よくその世界に引き込まれます。

    私は特に「タイムラグ」と「がらくた効果」が好みでした。
    もっと他の作品も読んでみたいと思います。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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