ひとさらいの夏 (双葉文庫)

  • 双葉社
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  • 本 ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575513721

感想・レビュー・書評

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  • H30.7.23 読了。

    ・さえない人生を歩んでいる女性たちが主人公の短編集。
    どの短編ももやもやした終わり方だが、その中でも「ひとさらいの夏」「蜘蛛」が面白かった。
     あまり明るくない話題の話が多いのに、不思議と読み進めてしまいたくなる文章を書く作者を凄いと思う。

  • 冨士本由紀『ひとさらいの夏』双葉文庫。

    さわや書店の文庫Xの仕掛人の復刊熱望作品ということで、重版を機に購入。

    7編から成る短編集。いずれも女性を主人公にしており、何とも言えない嫌な後味を残す救いの無いサスペンスフルな短編ばかりである。イヤミスのような、ある種の寓話のような短編集であるが、もろ手を挙げて絶賛出来るという作品ではない。

    『氷砂糖』。主婦の日常を舞台にした小さなサスペンスといったところだろうか。偶然再会した昔の男は自分を忘れてしまったのか。日常生活という呪縛から逃れようとするかのような主婦の迷走…

    『ひとさらいの夏』。恋人に裏切られ、2,000万円もの借金を抱えることになった41歳の女。偶然出会った15歳の少年の純粋な心に触れるうちに…

    『田螺と水面の月』。パチンコにハマる野越弓子は樽元武司と出会い、恋に陥る。束の間の恋の行方は…不幸な女たちに救いと夢を与え続ける樽元…

    『僻む女』。人の幸せを妬むオンナが味わう恐怖は…同級生で女医となった瑞穂に有らぬ疑いをかけたことから、とんでもない事態に陥る多可子。

    『亜種幻想』。何とも言えない閉塞感と絶望感…その呪縛から解放される時。上司の鞘木と不倫関係にある曜子は同僚の水島が鞘木に執拗な虐めを受けるのを見ているうちに…

    『蜘蛛』。脳梗塞の後遺症で寝た切りになった母親を介護する杏子。自らの自由も、幸せをも掴み取れぬままに無為な日々を送る杏子…

    『コンドル』。失職し、なかなか再就職を果たさないダメ夫と暮らす枝里はマクシミリアム・リーブスというアメリカ人と知り合うが…

  • 初めて読む作家で、本屋の平置きで手が伸びました。内容的にはアラフォー女性の願望とも、妄想とも取れる作品が多く、女性読者は共感するのかな?と思いながら読みました。

  • 初読の作家さん。イヤミス…?そんな気はしなかったな。いままで読んだイヤミスの中では上品な方だと思う。どれもきれいな終わり方だった。7つの短編のなかで、「氷砂糖」「ひとさらいの夏」はちょっとドキドキした。

  • 7編からなる短編集。
    突然悪夢のような負債をしょい込んだ女。
    長い間待ち続けた真実の恋が現れた。
    王子様は15歳。お姫様は41歳。
    表題作「ひとさらいの夏」は
    どこか懐かしく、若いころに観た映画を思い出しました。
    いやーな気持ちになるのだけれど
    それだけではない何かを持った作品。
    「亜種幻想」が秀逸。

    冨士本由紀さんの他の作品も読んでみたい。
    そんな気持ちになります。
    Twitterで書店員さんおススメ作品でした。

  • ドロリと濃厚でいつまでもまとわりつくような、決して快いとは感じられないがかといって憎悪する類のものでもない、そんな情念がすべての作品の底に敷き詰められている。
    理屈で説明しきることは到底叶わない男と女の業が非常に高い共感度を以て描かれているので、読者は登場人物たちの言動や物語の進行を理性では拒みつつも、脳幹の部分では認めざるを得ない、そんな思いに囚われる。
    出てくるのは皆、自分であり自分の家族であり、身近にいる誰かなのだから。
    そしてここに著されているのは、おそらくは女性作家にしか書けない感覚なのだろう。

  • *不倫相手の男のために悪夢のような負債を背負った41歳の女の家に、15歳の少年が転がり込んできた。二人とも現状の生活が袋小路に入った状況は似ており、出会いは奇異でも、すぐに心が寄り添っていく。非難の声。二人の行く先に未来はなく……表題作など、女性心理を見事に掬いとった傑作短編集*

    女性ならではの寂しさや歪み、どろりとした濃い情念…そんな一筋縄ではいかない情景がとても巧みに描かれています。
    一見救いがないように思えますが、どこか清々しく潔いのは、やむ無く手放したものに安堵しているからでしょうか。
    決して心地よい読後感ではありませんが、不思議とあとを引く、大人にお勧めしたい濃厚な作品。

  • どれもこれも、ここにはない何かを渇望する女性たちの物語。

    なかでも『亜種幻想』の渇望感はひどい。人を死に至らしめるほどに。

    わたしという人間に、ほかの可能性を密かに望み、請い生き続けなければならない全ての人へお勧めしたい。

  • 全7編の短編集。全編女性が主人公で女性の願望、妄想、嫉妬、空想に共感ポイントが見つかってドキッとさせられるかも。

  • 全てハッピーな話ではないし、どちらかといえば暗いものが多いのだけれど、どこか希望というか明るさが感じられるのが不思議。人はみんな弱いのだけれど、その中でも希望があり、希望というのはすべて生きている上で幸福な結果となるわけでもない。でも、どこかで希望の光が射す時に、人は生きていく勇気が出てくるのかもしれない。

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