猫鳴り (双葉文庫)

制作 : ヌマタ マホカル 
  • 双葉社
3.31
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本棚登録 : 3595
感想 : 572
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575513783

作品紹介・あらすじ

ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。そして20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた…。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。

感想・レビュー・書評

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  • う〜ん…ツラい…
    うちは、猫ではないけど、犬が老犬の域に達してる。
    この間、この子の親犬に会いに行ったけど、父親犬は、もうオムツして、ヨボヨボで…
    うちの犬も、後ろ足が弱ってきて、ウンチするとひっくり返ってしまう…
    (後ろ足用ハーネス購入)

    自身の親の時に言われたけど、QOL(Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」「生命の質」などと訳され、患者様の身体的な苦痛の軽減、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味)
    が大事なんやな。
    ただ、生きているだけで、しんどいだけなら、治療なんかせんと、自分自身でいられる時間を大切にする。

    口では言うけど、今まで、共に生きてきた友が逝く訳なんで…悩むしツラい…
    うちも、そう遠くない時期にそういう選択を迫られる。
    でも、結論は出ていない…

  • 少し暗い話だなーと思いながら読んだ。少女の頃のアヤメがなんとも可愛げがなく、とんでもない子を想像してたら、第二部のアヤメは謎過ぎて謎過ぎてもうワケ分からなかった。なのに結婚したって…えーーー!誰と?!と気になってしまった。まさか行雄ではないよね。

  • ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。そして20年の歳月が過ぎ、モンは最後の日々を迎えていた…。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。

  • 「猫」と書いてあるだけで手にした『猫鳴り』は、その気軽さに反して衝撃的な内容でした。重くて湿っぽいし、目をそむけたくなるような後ろ向きな感情や心理をこれでもかというくらいに炙り出してくる。とくに最後の章は、年老いた主人公と猫が過ごす最後の時間を濃密に描いていて、生きることの先に自然に在るだけの死をゆっくりと丁寧に見せてくれる。厳粛に命と向き合う境地に至る人間の心模様と、静かなのに力強く際限ない筆致は、見事としかいいようがないのですが、何度か心が折れそうになった。

  • 静かな作品である。
    そして、常に死が隣にある作品である。
    一方で、生の話である。
    即ち、沼田先生の作品である。

    生まれてすぐに捨てられた猫「モン」の生を時間軸として、その周りに生きた人間の、命の葛藤を描いた作品である。

    この作品は3部構成である。

    1部。生まれて間もなく飼われて、速攻で捨てられた猫「モン」を拾ったのは、我が子を流産した信枝である。今にも死にそうな猫と、既に死んでしまったお腹の子と、それでも生きている自分。生の意味を見出せない信枝の荒んだ心と、ただ生きようとする「モン」の物語。生の誕生にまつわる葛藤がある。

    2部。思春期、生の発露としての暴れ出す暴力性を持て余す少年行雄と、成獣となった「モン」の動物としての野生が対比される。生のエネルギーと、その圧倒的な制御不能感についての葛藤がある。

    3部。信枝の死後に残された夫、藤治が、老年の「モン」を看取るまでの物語。既に妻を亡くし、死を知っているはずの藤治が、「モン」の死に向かう姿に狼狽し葛藤を抱えているのに対し、一方の「モン」は全てを受け入れいるかのように見える。

    つまり、命の起こり、命の頂点、命の消滅、すべてのステージにおいて、猫を通じて救われる人々の物語である。

    以下、3部より。
    あまりに良い。

    『自分もモンも衰えて、余分なものをずいぶん失くしてしまった。余分な、役にも立たない、たくさんの美しいもの。
    若くて、そういうものが周囲にひしめいていて、同時に欲望の作り出す黒々とした影も立ち込めていた頃には、たとえ実態は狐火であるとしても〈希望〉の明かりがどうしても必要だった。そんなときもあった。
    だが今は希望もなく欲望もない。ただ見通しの良い平坦な道が、最後の地点に向かってなだらかに伸びているだけだった。それもまた悪い気分ではない。死はある日突然に襲いかかるのではないだろう。なぜなら藤治は、自分が端っこの方からすでにごくわずかずつ死にはじめているような気がするからだ。それもまたいいではないか。うまくできている。なんだか浮き上がりそうに身軽だった。』

  • 表紙に惹かれて購入した小説。最終章でわんわん泣いた記憶がある。読み終わって数年経った今、もう一度読みたい本。

  • 全く猫派じゃない自分だが、沼田さんの作品だったからという理由だけで読んだ。
    お腹の子を亡くした後に出会った猫のモン。
    夫婦が空気のような存在になる時間の経過のように、モンが最後の時を静かに迎える描写が良かった。
    読後に我が家の2階の窓からふと、目の前の駐車場を見ると、愛車の下から黒猫の足だけが見えていた。滑稽な様に思わずスマホで写真をとってみた。 
    気がつくと猫と目があっていてニヤケていた自分に驚いた。

  • 評価は別れそうだけど、本当に、ひっさしぶりに本読んで号泣。まさしく号泣。
    これは、間違いなく生き物と暮らしているかいないか、また、暮らしていても、別れを経験しているかどうかで感じかたがガッツリ変わってくるでしょう。
    もう、読むの辛すぎた。
    なんて本書きやがる、と思った。
    レビュー書きながらまた泣けてきた。
    ああ駄目だ。
    せめて2部で夫婦とモンの幸せだった頃の事をもっと見たかった。
    3部からも、書かれていない月日が、なんだかんだ幸せだったんだろうという事は伺えるけれど。。。
    とにかく、この本の薄さに油断してはいけない。
    感動と呼ぶべきかどうか解らないけど、ふいにザックリやられる。
    しばらくは、再読しないほうが身のためという気がした。

  • 飼い猫、飼い犬の死が近づいた時、どんな治療をするか…悩んで悩んで…死んだ後もあれで良かったのか?間違ってた?と後悔ばかりのペットロス(u_u)

    後半とてもリアルな看取りの内容で涙…

    天国の愛犬に逢いたくなっちゃいました(/ _ ; )

  • 現代文の教科書に載っているようなお話だった。
    薄くて読みやすいかなと思ったけど、本人たちの会話は少なくて、心理描写が多く物語が何も進んでいないように感じた。短編集で少しずつ繋がっているかんじは好きだけど、この文章から何を読み取ればいいのか考えさせる系は、まだ未熟だからか難しかった。

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著者プロフィール

沼田 まほかる(ぬまた まほかる)
1948年、大阪府生まれの小説家。女性。奈良県在住。読んだあとイヤな後味を残すミステリーの名手として、「イヤミスの女王」という称号で語られることもある。
寺の生まれで、大阪文学学校昼間部に学ぶ。結婚して主婦になり、母方祖父の跡継ぎを頼まれ夫がまず住職となるが、離婚を経て自身が僧侶になる。50代で初めて長編を書き、『九月が永遠に続けば』で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞、56歳でデビュー。
2012年『ユリゴコロ』で第14回大藪春彦賞を受賞し、2012年本屋大賞にノミネート(6位)。それを機に書店での仕掛け販売を通じて文庫の既刊が売れ出し知名度を上げた。
代表作『ユリゴコロ』は2017年9月23日に吉高由里子主演で映画化。同年10月、『彼女がその名を知らない鳥たち』も蒼井優・阿部サダヲ主演で映画化された。他の代表作に、『九月が永遠に続けば』、『猫鳴り』、『アミダサマ』。

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