仏果を得ず (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 4789
感想 : 549
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514445

作品紹介・あらすじ

高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜になる。以来、義太夫を極めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝をつかんでいく-。若手大夫の成長を描く青春小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 高校の修学旅行で文楽を観て、その世界に魅了された健は研修所経て大夫として舞台に立ちつつ修行を続けていたが、ある日、師匠から、腕は良いが特定の相方を持たない三味線の兎一郎と組むように言われる。
    稽古を重ねるうちに、二人の信頼関係が深まる様子や、健がボランティアで文楽を教えている小学生、ミラちゃんのお母さんである真智と恋に落ちるも、なかなか進展しない様子が描かれていて、文楽を知らなくても、面白く読めた。

    そして、文楽そのものへの興味もわいてきた。そんなに人を虜にする舞台を1度観てみたい。

  • 祝・文庫化☆

    健こと健太夫(たけるたゆう)は文楽の研究所を出て、義太夫を語るプロの技芸員として修行中。
    師匠の銀太夫に、三味線の兎一郎と組むように言われる。気難しい兎一に振り回されながらも、成長していきます。
    「女殺油地獄」の与兵衛の妙な色気の秘密など、面白かったです。
    仮名手本忠臣蔵の勘平腹切の段は、すごく盛り上がります!
    旅行も多い健は、ラブホテルの一室に住んでいるんですが、管理人の誠二とは友達。
    恋愛に悩む健に誠二の言う「幸せにしたろとか、助けてあげんとか、そんなんは傲慢や。地球上に存在してくれとったら御の字、ぐらいに思うておくことや」ってのは、決まった相手のいない人間のセリフだが〜悩みすぎる人には、けっこう良い忠告かも。

    単行本は、2007年11月発行。

  • 仏果、というと仏教の信心をよくして極楽に行けるとか、イッタとかそういう成果の事だったと思うが、それと、この表紙(文楽?)とどないにつながるのか、裏を読むと若い義太夫のストーリーらしいので、とりあえず興味のあるエリアなので躊躇なく購入、そして忘れて放置していた積ん読ブツ。読みました、めちゃめちゃ面白かった。なんで早く読まんかったんか、後悔するほど面白かった。今まで数冊読んだ三浦本の中で一番好み。演目も有名どころの誰が読んでも場面がパッと浮かぶのが使われているところも良いと感じます。マニアな演目でしかも自分の好きな演目がでてきてたら、とも思いますが、それだと多くの人に共感が得られないでしょうし。ともかく、女殺油地獄から仮名手本忠臣蔵でしめ、健大夫の育っていく様子とと兎一郎との関係。そして芸の肥やし。健太夫が住んでいるのが生玉寺町の寺に囲まれたラブリーパペットというラブホテル。管理しているのがいんげはんとこの息子といういろんな因果の絡む、非常に魅力的な場所と人物。このロケーション設定は唸りました。すばらしい。竹本義太夫の墓から四天王寺さんの境内抜けて20分ぐらいでしょうかねぇ、国立文楽劇場からもめちゃ近いし。そして、語る男女の機微を考えるのにすばらしいところ。出来過ぎでラノベ感すら漂うほどですが、この出来過ぎが心地いい。

    >仏に義太夫が語れるか。単なる器にすぎぬ人形に、死人が魂を吹きこめるか。
    勘平は最後の力を振り絞って絶叫する。
    「ヤア仏果とは穢らわし。死なぬ(繰り返し)。魂魄この土に止まつて、敵討ちの御供する!」

    忠臣ならざる全ての人々が忠臣蔵の主人公になるという、健の解釈が爆発するシーンが良いですねぇ。SF的ではありますが、文楽てものすんごくSFというか3Dアニメ的なので、とてもよく表現されてると感じます。面白かった。

  • 文楽という一般には馴染みの薄い伝統芸能の世界を、若手男子の成長物語という展開で馴染みやすく仕立てた、どことなく漫画調の娯楽小説。

    物語を語る太夫(たゆう)、楽を奏でる三味線、一体の人形を3人がかりで操る人形遣いが揃って成り立つ芸術である文楽。
    一対一で演じることも多い太夫と三味線は、特に相性が重要で、生涯これと決めた相棒を持つことも多い。

    30歳の若手太夫である健(たける)は、5月のある日、師匠で人間国宝でもある銀太夫(ぎんたゆう)から、腕はいいが変人と名高い若手三味線弾きの兎一郎(といちろう)とコンビを組むように命じられる。
    6月の公演はすぐ目の前。健は渋々ながら、命じられた演目を兎一郎と練習しようとするけども…。

    毎回演目が変わる度に、現代人からしたら、なかなか理解しがたく突拍子もない、時に不条理ですらある行動をとる登場人物たちの気持ちを理解し、なんとか役になりきって語ろうと奮闘する健の姿を、文楽では有名な八つの演目を各章のタイトルとして採用し、演目のあらすじを簡潔に盛り込みながら、巧みに描いています。

    健がたどり着く解釈が正しいのかどうかは私にはわかりませんが、この解釈には納得できるものが多く、おかげで、文楽に馴染みのない層にも楽しめるようになっています。
    そんな健を、なんだかんだで見守る、兎一郎はじめ、みんな一癖も二癖もあるある銀太夫師匠や兄弟子たち。彼らの近すぎでもなく遠すぎでもない適度な距離感は好ましいです。

    若者を主人公にしているせいか、恋愛要素もあります。ただし、これに関しては必要だったのかは微妙なところ。
    演目の登場人物たちの一見不可解な行動の裏に秘められた深い心と、健の悩める心境を重ねるための演出の一つだとはわかるのですが…。
    二度会っただけの若い男が住んでいるラブホテルに押しかけていきなりコトに及んじゃう小学生の子を持つ母親って、魅力的で芯があるどころか、色々な意味で心配ですけど…としか思えなくて…。結局最後まで読んでもそれは変わらず。

    読む前に想像した以上のものは出てこなかった、全体の軽い展開も、ちょっと寂しいです。

    でも、文楽初心者に文楽の世界を垣間見させる仕組みとしては、この軽さ具合がかえってとっつきやすくていいかもしれません。お約束の安定感みたいな感じでしょうか。

    ちなみに、私自身、全く造形がないながら、偶然過去に何度か文楽を劇場に観に行ったことがあるのですが、見事な演目は、まるで酔いしれるように恍惚とした素晴らしい時間が味わえますので、まだ経験したことなくて興味のある方は、一度劇場に足を運ぶことを強くお勧めします。

    特に、太夫と三味線をメインとしたこの小説ではあまり取り上げられていませんでしたが、見事な人形の動きは、本当に官能的で見惚れるほど美しく、一見の価値ありだと思います。

  • 文楽・人形浄瑠璃をほとんど知らないのでその世界を垣間見れたようで面白かった
    演目などわからないので動画観ながら読みました
    日本の伝統芸能はかっこいい

  • 文楽という新世界を開かせてくれた!
    主人公の健が義太夫の芸の道を悩みながらも猛進する姿がすがすがしかった。
    現実の恋と人形浄瑠璃の世界のどうしようもなく人間くさい恋がうまく合わさって健が語りながら主人公になりきっていくところが素晴らしかった。
    師匠をはじめ個性的な人々がみんな愛らしい。
    文楽ってちょっと敷居が高かったけど、昔も今も変わらないんだなと思った。観に行ってみよっ!

    • 九月猫さん
      mao2catさん、はじめまして九月猫と申します。
      フォローしていただいてありがとうございます。

      この本、おもしろそうですね。
      文...
      mao2catさん、はじめまして九月猫と申します。
      フォローしていただいてありがとうございます。

      この本、おもしろそうですね。
      文楽、大好きなので、ぜひ読んでみようと思います。

      mao2catさんは萬斎さんの本のレビューを書いておられるし、狂言がお好きなのでしょうか?
      わたしは狂言も好きなのですが、生では茂山狂言しか見たことないんですよね。
      和泉流狂言もいつか生で見てみたいです。

      「大阪本町住み・猫飼い・HNがmao」という友人がいるので、なんだかmao2catさんには勝手に親近感が湧いてしまいました(* ̄∇ ̄*)
      こちらもフォローさせていただきましたので、これからよろしくお願いします♪
      2013/02/13
    • mao2catさん
      九月猫さんはじめまして。私が先にフォローさせていただいたのにごあいさつもせずにすいません。

      私はこの本を読んで文楽に興味を持ち、何回か文楽...
      九月猫さんはじめまして。私が先にフォローさせていただいたのにごあいさつもせずにすいません。

      私はこの本を読んで文楽に興味を持ち、何回か文楽を観に行きました。
      本を通していろいろ趣味が広がるので楽しいです。

      狂言も去年観に行って今ハマり中でございます。
      特に萬斎さんがステキすぎて、もうメロメロです(笑)
      私は茂山狂言はまだテレビでしか観たいことがありませんが、今度東西狂言があるので、観比べるのも面白そうですね。

      こちらこそよろしくお願いします。
      2013/02/14
  • 面白かった!文楽は一度見たことがあるだけでも、充分楽しめる。
    ただ、演目が健の気持ちと重なるので、知っていたら楽しさ面白さもグッと違うのかもしれない。
    文楽って重くておかたいイメージだったけど、登場人物がゆるいので、たいへん身近に感じた。
    「油地獄」の与兵衛が「女にモテそうなヤンキー」とか言われてるし!

    「小学校三年生の女の子に、甘いって言われた。やっぱり俺、世話物を語るのに不向きなのかもしれない。」なんて言ってる健が、どんどん成長していくのを見守ってくのが楽しい。

    「登場人物はすべて、舞台のうえで精一杯に、それぞれの生を生きているだけ。本当にそうだ。そして、そんな彼らを生かす難しさといったらどうだ。」
    「そうだ、このひとたちは生きてる。ずるさと、それでもとどめようのない情愛を胸に、俺と同じく生きている。文字で書かれ音で表し人形が演じる芸能のなかに、間違いなく人間の真実が光っている。」
    「だが、この場内で本当に生きているのは、不思議なことにいま死にゆかんとする早野勘平ただ一人だ。命を持たぬはずの勘平の人形だけが輝きを放つ。」
    どんどん健が成長していく様子がうれしい。あ、また時代を伝える系?こういうのに本当に弱い。
    これまでの300年とこれからの300年、もちろん変化もあるだろうけど、受け継がれていくもの思う。

  • 文楽って、人形浄瑠璃と全くのイコールでもないんですね。演目は歌舞伎とだいぶ重複するのでまあ分かるけど、あとはサッパリ。新しい世界で面白かった。「竹本」が「笹本」は捻りがないなあと思ったけど、「桐竹」が「檜竹」は捻り過ぎでは(笑)。

    初の作者だったけど巷の評判から察するに、ディープな芸道小説路線を狙う気はサラサラ無さそうだし、赤江瀑や皆川博子といった豪華絢爛ゴージャス系要素も皆無。あくまで文楽の世界へようこそ、の入門編ね。近藤史恵の今泉文吾シリーズ読んだ人が続編待ってるヒマに文楽もいかが…?って感じかしら(笑)

  •  「仮名手本忠臣蔵」が好きだと言う健に兎一郎は「長生きすればできる」と言う。何とも無責任な!と思ったけど、兎一郎という相三味線と生涯をかけて芸を極めることになる健は、「大丈夫です。長生きしますから」と答えるんだよな。カッコいいと思う。長生きはカッコ悪いみたいに言う人もいる。かつてのオイラもそうだった。きっと自分になにができて、なにがしたいのかがわからなかったんだと思う。いまは若い頃よりやりたいことがたくさんある。若い頃みたいにはできないことも増えてきたけど、それでもやりたい。そんなふうに暮らすことが素敵だと素直に思えるようになった。健の長生きは加齢によってさらに芸が昇華されるということだけど、オイラが長生きしたいのはこんな楽しいこと止められない!っていう理由だ。楽しいことばかりじゃないし嫌なこともたくさんあるんだけど、それを味わえるのも生きているからだ。
    ”金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない”
    まったく同感である。でも、誠二は健にとってある意味、生き仏かもしれないな。
    健が真智さんとミラちゃんと幸せに暮らせることを切に願う!

  • 関西にいると文楽ってやや身近だったりします。
    これは文楽バカの若者と先輩、師匠さんたちのお話。もちろんヒロインさんもいてます。

    夢中になれるものを見つけて、真剣に取り組んでいく、
    苦しくもあり、楽しくもあり、美しくもあり。
    私は、しをんさんの描く若者(たち)が大好きです。
    20180831

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著者プロフィール

三浦しをん

一九七六年東京生まれ。二〇〇〇年『格闘する者に○』でデビュー。〇六年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、一二年『舟を編む』で本屋大賞、一五年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、一九年『ののはな通信』で島清恋愛文学賞及び河合隼雄物語賞、『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。その他の著書に『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『木暮荘物語』『政と源』など。『ビロウな話で恐縮です日記』『本屋さんで待ちあわせ』『ぐるぐる 博物館』などエッセイ集も多数。

「2021年 『愛なき世界(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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