森に眠る魚 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 364
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514643

作品紹介・あらすじ

東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通して心をかよわせるが、いつしかその関係性は変容していた。-あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎ合い、それぞれが追いつめられてゆく。凄みある筆致で描きだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。渾身の長編母子小説。

感想・レビュー・書評

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  • この小説は、1999年に東京の文京区で起こった幼女殺害事件をモチーフにしていると言われている。
    当時、自分の子どもも殺されたお子さんと同じくらいの年齢だったので、ニュースや新聞を注視していた記憶がある。

    そして本書。まぁ、本当に「子育て」という呪縛に絡めとられた母親達の姿を、恐ろしくリアルに、それぞれの心情の一つ一つを細やかに拾い上げている…うーん、流石としか言いようがない。

    そして、どの母親の気持ちも分かってしまう。
    皆不安なのだ。
    これでいい、うちはこうなの、と腹を決めてもどこか不安になる。
    それまでは、月齢で子どもを見ていたのに、幼稚園に入るといきなり横並び。
    生まれ月で差があるのは当たり前と思っても、やはり他の子と比べてしまう…などなど。
    自分で選んだ友だちではなく、子どもを介してできた友人だからなのか、自分のことならやり過ごせても、それが子どもとなるとそうはいかないものなのだ。

    子どもが幼稚園の頃の一時期を、東京の武蔵野エリアで過ごした。
    緑が多く、のんびりした所だと思っていたらとんでもないかった。
    国立、私立ともに小学校が結構あり、お教室には行かないけど、国立はとりあえず受けるという人も多く、皆教育熱心だった。
    いずれまた転勤になると、他人事でいられたので良かったが、当事者のお母さん達は本当に大変そうだった。

    しかし、この母親の苦悩と苦労を、後に子どもがどれだけ感謝するものなのだろうか…。
    2020.6.21

  • テレビドラマ「名前をなくした女神」を彷彿させる小説であった。
    このドラマは、当時ママ友が「怖いよ〜」と夢中になっていて、勧められて観ていた。
    今度は逆にそのママ友に、この本を教えた。
    ドラマの原作ではないらしいが、調べているうちに、1999年に起きた事件に辿り着き、色々と考えさせられた。

    子供のことやお受験が絡むと、ママ友(女性)は怖いなぁ〜〜。
    特に容子さんみたいな人に関わりたくないと思った。

  • 仲良しだった何人かのママ友たちの関係が、小学校受験によって崩壊していく話。

    話に出てくるママ友たちは、それぞれが何か(男女関係だったり過去の自分だったり)に満たされない想いを抱えている。そこに小学校受験の優劣がつけこんでくる。受験に受かったからと言ってそれらが満たされるわけでもないのに…。

    受験でなくとも、誰かと比べて優劣をつけて安心したくなる気持ちは理解できる。だからこそ自分にも起こり得そうな気がして怖くなる話だった。

    最後は未来が見える終わり方で良かったと思う。

  • 小さな子供を持つ5人の母親のお話です。
    仲の良いママ友だった母たちですが、子供のお受験を意識し始めた頃から、関係性が一気に崩れていってしまいます。

    誰だって、自分の子供が他の子より劣っているなんて認めたくない。
    幼い子供の成長は千差万別だし、まだまだ隠れた才能が沢山あるだろう子供たちを一律に比べること自体がおかしいと思うのですが、
    "劣っている子の母"のレッテルを貼られたくないという焦りから、狂気じみた行動までも取るようになってしまう。

    思うに、育児をするお母さんたちは、ずーーーっと大きな不安と孤独感を抱えているのではないかと思います。
    誰も正確を教えてくれないし、皆と一緒だから良いという訳でもない。
    これで良いのかな、間違ってなかったかな、という心配がいつもあって、だからこそ、周りと比べて少しでも我が子が劣っている所を見つけると、不安で不安でたまらなくなってしまのではないでしょうか。

    …なんてことを、まだ結婚も出産も経験していない身分で書いてしまいました。笑


    いや〜、それにしても母親たちのどす黒い感情がリアルすぎて苦しい小説でした。
    ママ友、怖いなぁ。。。

  • 読み終えると胸が重くなる。嫌な気持ちにすらなるのに、どんどん読めてしまうのは登場人物それぞれ生々しくて現実に起こり得る話しだから。
    少しの気持ちのズレと相手への期待が思っていたのと違うと感じた時に人は今までと同じ事でも気になりだし許せなくなる。人の弱さと闇が描かれている。

  • 女性は話を聞いてもらいたいし、共感してもらいたい。
    傷ついている時ほど、孤独を感じている時ほどその思いは強くなる。
    それによって救われた過去があって、「この人なら分かってくれる」「この人ならば」と依存してしまう気持ちはよく分かる。
    しかし、子供を通しての付き合いという限られた狭い世界の中では、純粋な「友達」ではいられない。
    分かち合う事が出来て、つらい胸の内を明かせるのは良いが、憧れや羨む気持ちがささいなきっかけで嫉妬や劣等感に変わる。
    そしてそれはなかなか拭えない。
    育ってきた環境が違えば価値観のズレは生じる。
    経済力によっては選択肢が増える事もある。
    そういった現状で比較し出すと関係性はややこしくなるが、そうしてしまうのは人間の性だろうか。

    現代日本の子育て事情という閉鎖的な世界を女性ならではの視点で描かれた、とても闇の深い小説だった。

  • 後半に進むにつれ胸が締め付けられ、軽く吐き気を覚え、読み進めるのが苦しかった。自身の子育て時代を思い出す。散々、話し合いもしたし、歩み寄ろうと譲歩もしたが、そうそう思い通りになんてならないものなんだよね...。ラストは好みでした。

  • リアルで怖い。
    他人は他人、自分は自分と思っていてもついつい比べてしまう。
    しょうがないことだとは思うけど、自分の身に置き換えてみると、怖い。

  • 角田光代ワールド全開。本来絶対的存在である我が子(と自分自身)を、次第に「比較」の中でしか愛せなくなっていく女たちの狂気がリアル。完全なフィクションとして接しないと引き摺り込まれるので注意。

  • 物語に出てくる女性たちと同じくらいと思われる年齢だった頃の自分を思い出す。
    後悔が大半をしめるので、読後は気持ちが沈んだ。
    登場する女性それぞれに共感する部分があり、人物が細やかに描かれている。
    人は縛りの中で生きているんだとあらためて感じたが、その縛りは自分で作っているものではないかとも思う。
    この物語を通して、自分の生き方を考えさせられた。

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著者プロフィール

1967年生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。著書に『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)など。『源氏物語』の現代語訳で読売文学賞受賞。

「2022年 『にごりえ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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