- 本 ・本 (450ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575514643
感想・レビュー・書評
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1999年に起きた
「文京区幼女殺人事件」をモチーフにした作品
5人の「母親」が出会い、語らい
そしてどんどんズレていく
誰もが「彼女」になりうる危うさを抱えて
もがいて、逃げて、苦しむ
以前、母から言われた言葉がある
「自分の子育てがそれで良かったのかどうかは、娘や息子がその子どもにどう向き合っているかで感じる」
何とも子育てって途方もなく息が長い
そして途切れることなく続く
5人の母親に共感できる部分はない
ただひたすらに
子どもたちの幸せを願いながら読んだ
再読 -
この小説は、1999年に東京の文京区で起こった幼女殺害事件をモチーフにしていると言われている。
当時、自分の子どもも殺されたお子さんと同じくらいの年齢だったので、ニュースや新聞を注視していた記憶がある。
そして本書。まぁ、本当に「子育て」という呪縛に絡めとられた母親達の姿を、恐ろしくリアルに、それぞれの心情の一つ一つを細やかに拾い上げている…うーん、流石としか言いようがない。
そして、どの母親の気持ちも分かってしまう。
皆不安なのだ。
これでいい、うちはこうなの、と腹を決めてもどこか不安になる。
それまでは、月齢で子どもを見ていたのに、幼稚園に入るといきなり横並び。
生まれ月で差があるのは当たり前と思っても、やはり他の子と比べてしまう…などなど。
自分で選んだ友だちではなく、子どもを介してできた友人だからなのか、自分のことならやり過ごせても、それが子どもとなるとそうはいかないものなのだ。
子どもが幼稚園の頃の一時期を、東京の武蔵野エリアで過ごした。
緑が多く、のんびりした所だと思っていたらとんでもないかった。
国立、私立ともに小学校が結構あり、お教室には行かないけど、国立はとりあえず受けるという人も多く、皆教育熱心だった。
いずれまた転勤になると、他人事でいられたので良かったが、当事者のお母さん達は本当に大変そうだった。
しかし、この母親の苦悩と苦労を、後に子どもがどれだけ感謝するものなのだろうか…。
2020.6.21 -
テレビドラマ「名前をなくした女神」を彷彿させる小説であった。
このドラマは、当時ママ友が「怖いよ〜」と夢中になっていて、勧められて観ていた。
今度は逆にそのママ友に、この本を教えた。
ドラマの原作ではないらしいが、調べているうちに、1999年に起きた事件に辿り着き、色々と考えさせられた。
子供のことやお受験が絡むと、ママ友(女性)は怖いなぁ〜〜。
特に容子さんみたいな人に関わりたくないと思った。 -
まさに自分も誰かのママ友で、ママ友を持つ身。
この本はママ友はもちろん、ママとしての自我がリアルでゾッとする。
登場するママたちの渦を巻くような心の中、ママ友へのザラっとした感情、それを封じ込めて笑顔を貼り付けるところ。パパ友ではないであろう、ドロドロなのにキラキラで、楽しくもあるし、どっと疲れる日常が書かれている。
私もそうだよ、人には言えないけど同じように感じて嫌になることがあるよ、と、共感すること多数!
女ってただでさえ難しいのに、子供の母という共通点だけで繋がるややこしさ。これはもう苦行というかホラーだと思う。
コロナの影響で保育園行事が縮小したり、みんなで集まってイベントする機会が減り、家族だけで過ごせたこの3年は楽だった。
今年度はどうなるかな。戦々恐々としている。
解説も良かった。 -
小さな子供を持つ5人の母親のお話です。
仲の良いママ友だった母たちですが、子供のお受験を意識し始めた頃から、関係性が一気に崩れていってしまいます。
誰だって、自分の子供が他の子より劣っているなんて認めたくない。
幼い子供の成長は千差万別だし、まだまだ隠れた才能が沢山あるだろう子供たちを一律に比べること自体がおかしいと思うのですが、
"劣っている子の母"のレッテルを貼られたくないという焦りから、狂気じみた行動までも取るようになってしまう。
思うに、育児をするお母さんたちは、ずーーーっと大きな不安と孤独感を抱えているのではないかと思います。
誰も正確を教えてくれないし、皆と一緒だから良いという訳でもない。
これで良いのかな、間違ってなかったかな、という心配がいつもあって、だからこそ、周りと比べて少しでも我が子が劣っている所を見つけると、不安で不安でたまらなくなってしまのではないでしょうか。
…なんてことを、まだ結婚も出産も経験していない身分で書いてしまいました。笑
いや〜、それにしても母親たちのどす黒い感情がリアルすぎて苦しい小説でした。
ママ友、怖いなぁ。。。 -
仲良しだった何人かのママ友たちの関係が、小学校受験によって崩壊していく話。
話に出てくるママ友たちは、それぞれが何か(男女関係だったり過去の自分だったり)に満たされない想いを抱えている。そこに小学校受験の優劣がつけこんでくる。受験に受かったからと言ってそれらが満たされるわけでもないのに…。
受験でなくとも、誰かと比べて優劣をつけて安心したくなる気持ちは理解できる。だからこそ自分にも起こり得そうな気がして怖くなる話だった。
最後は未来が見える終わり方で良かったと思う。 -
どんなホラーやサスペンスよりもゾクゾク怖かった。
1人の人間として必要とされたいのに、子どものおまけのような存在として扱われるってやるせない。 -
本文を読み終わるまで不快だった。
子供のことをまるで考えていない母親しか出てこない。自分のエゴを満たすためにお受験をさせ、他と比較して優越感を得ようとする諸々。
しかし、解説を読んでまた違った視点が芽生えた。「人の親も人である」ということ。子を産んだ瞬間から母親になるわけだが、「母親のプロ」など存在しないこと。誰しもが手探りで子供の幸せの為に奮闘し、戦友を募り、共闘したいと願う。受験戦争という代理戦争では、一度火がつくと取り返しのつかない冷戦状態となる。
それにしても、登場する5人の母親達の心理はどうしようもなくアンビバレントな状態が続く。価値観の違いによって、自分の今まで正しいと信じてたものが信じれなくなり、正しくないと切り捨てたかったことに執着するようになる。
自分の母は一体どういった心理状態だったのか、それを確かめられずとも、こうした疑似体験によって、感覚を理解することはひとつの親孝行の形だと勝手に思う子のエゴ。 -
1999年の文京区幼女殺人事件をモチーフとしていることを後で知り驚いた。幼稚園でのママ友たち4人は、最初は学生時代のようなノリで和気あいあいと付き合っていた。小学校受験をきっかけに、じわりじわりとその関係にヒビが入っていく。
子育て中の母親の孤独って、こんなにしんどいものなのかとびっくり。なんだろう、これって母親だから、というより、相手のものをほしがったり人と比べたり、もともとそのようなタイプの女性たちが出逢ってしまったから生じた亀裂ではないかと思ってしまった。
狂気に駆られていく、その内面の描き方が凄まじい。
著者プロフィール
角田光代の作品





