森に眠る魚 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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レビュー : 302
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514643

作品紹介・あらすじ

東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通して心をかよわせるが、いつしかその関係性は変容していた。-あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎ合い、それぞれが追いつめられてゆく。凄みある筆致で描きだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。渾身の長編母子小説。

感想・レビュー・書評

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  • この小説は、1999年に東京の文京区で起こった幼女殺害事件をモチーフにしていると言われている。
    当時、自分の子どもも殺されたお子さんと同じくらいの年齢だったので、ニュースや新聞を注視していた記憶がある。

    そして本書。まぁ、本当に「子育て」という呪縛に絡めとられた母親達の姿を、恐ろしくリアルに、それぞれの心情の一つ一つを細やかに拾い上げている…うーん、流石としか言いようがない。

    そして、どの母親の気持ちも分かってしまう。
    皆不安なのだ。
    これでいい、うちはこうなの、と腹を決めてもどこか不安になる。
    それまでは、月齢で子どもを見ていたのに、幼稚園に入るといきなり横並び。
    生まれ月で差があるのは当たり前と思っても、やはり他の子と比べてしまう…などなど。
    自分で選んだ友だちではなく、子どもを介してできた友人だからなのか、自分のことならやり過ごせても、それが子どもとなるとそうはいかないものなのだ。

    子どもが幼稚園の頃の一時期を、東京の武蔵野エリアで過ごした。
    緑が多く、のんびりした所だと思っていたらとんでもないかった。
    国立、私立ともに小学校が結構あり、お教室には行かないけど、国立はとりあえず受けるという人も多く、皆教育熱心だった。
    いずれまた転勤になると、他人事でいられたので良かったが、当事者のお母さん達は本当に大変そうだった。

    しかし、この母親の苦悩と苦労を、後に子どもがどれだけ感謝するものなのだろうか…。
    2020.6.21

  • 女性は話を聞いてもらいたいし、共感してもらいたい。
    傷ついている時ほど、孤独を感じている時ほどその思いは強くなる。
    それによって救われた過去があって、「この人なら分かってくれる」「この人ならば」と依存してしまう気持ちはよく分かる。
    しかし、子供を通しての付き合いという限られた狭い世界の中では、純粋な「友達」ではいられない。
    分かち合う事が出来て、つらい胸の内を明かせるのは良いが、憧れや羨む気持ちがささいなきっかけで嫉妬や劣等感に変わる。
    そしてそれはなかなか拭えない。
    育ってきた環境が違えば価値観のズレは生じる。
    経済力によっては選択肢が増える事もある。
    そういった現状で比較し出すと関係性はややこしくなるが、そうしてしまうのは人間の性だろうか。

    現代日本の子育て事情という閉鎖的な世界を女性ならではの視点で描かれた、とても闇の深い小説だった。

  • 1999年に起こった「文京区幼女殺人事件」(通称:お受験殺人事件)を題材にした小説であり、数年前のドラマ「名前をなくした女神」の原作になった小説。

    女同士のドロドロを描かせたら角田光代さんの右に出る者はそうそういない、といつも思う。
    探り合ったり、貶め合ったりしながらも、実際顔を合わせたときには何事もなかったように笑顔で振る舞う。崩れるギリギリのところで保たれる関係。
    その裏側にあるのは不安や嫉妬。というのは、学生時代から子どもを持つ親に変わっても、変化することはないものなのかもしれない。

    未婚で子どももいない私が読んだ第一の感想は、ママ友って面倒くさい…というものだった。自分自身だけの人間関係ならば多少孤独を感じても平気だけど、自分の振る舞いが子どもの人間関係にも影響を及ぼすと思うとそういうわけにはいかない。
    幼稚園や小学校の受験は田舎に住む私には身近ではないけれど、都会に住んでいて子どものお受験に励む母親というのは実際たくさんいるのだろうし、そんな中でママ友同士のトラブルというのもたくさんあるのだろう。
    幼稚園や小学校に通う立場である子どもは蚊帳の外で、実際は親同士の戦争であるというのが滑稽だとも思う。
    子どものためを思うから幼稚園から良い所に行かせたい。それは愛情なのかもしれないけれど、そのために子どもに苦しい思いをさせるのは果たして。自分が誇らしくありたいから子どもを良い所に行かせたいだけではないのか?
    そういう感情ってはっきりと線引き出来るわけじゃないから難しい。
    健康で育ってくれれば、とは思っていても、出来の良い子どもに育てば誇らしく思うのは当然だろうから。

    まだ幼い子どもを持つ5人の女性、それぞれの目線で描かれていく連作のようなつくりの小説。年齢も、立場も、生い立ちも、家庭の経済状況も、当然みんな違う5人。
    違うから子育てに対してもそれぞれ違う考え方を持っているはずなのに、関わり合うことで影響を受け合って、最初は友好的だった関係がだんだんと変化していく。
    ほんの少しのズレやすれ違いが思い込みに変わって、緩やかな雪崩のように関係が壊れていく恐ろしさ。大袈裟ではなく身近にありそうだからこそゾッと背筋が寒くなる。

    でもいつも思うのは、角田さんの小説には“ひかり”を感じる。
    ドロドロしていて痛々しくて恐ろしくても、その先にはまだ未来があるんだと思わせる不思議な力強さがある。
    実際は殺人事件にまで至ってしまった出来事が、小説では…。

    容姿、年齢、夫、経済状況、そして子どもの出来に至るまでが嫉妬の要素になる“ママ友”。その中で本当に信頼出来る関係を築くのは不可能なのだろうかと、考えてしまった。

  • こわかった〜〜
    ちょっとしたホラー小説。

    今はLINEやSNSがあるからこの小説よりももっとママ達は生きづらいだろうと察する。

    自分よりも何百倍も大事であろう子供のことだと他人と比べてしまうのはどうしようもないだろうなぁ。
    登場人物の5人の母親達は狂ってるようでまともだと思う。人間そんなもんだよなー。
    でも男の人が読んだら”バカらしい”の一言で終わりそう。

  • 未婚男性なので登場人物に共感は持てなかったが、
    結婚をし、母親になるって事はATフィールドを強固にする可能性大なんだな、怖気がした
    タイトルの森が社会と雑多な意識、魚が閉じられた世界と歪んだ自我って事なのかな

  • 5人の女性のうち、一部似たような人で最初誰が誰だか区別が難しかった。
    人間いいところもあれば悪いところもあるけど、悪いところ悪すぎ。
    ドロドロし過ぎててやもやした。
    みんなアホっぽい。

  • 読了日2010/06
    過去に本当にあった事件を題材にして書かれた本。
    ママ友の微妙な関係を、女性の外には出したくない醜い内面をズバッと書いてあって、面白かった。
    そして、私も一応ママの端くれなんで、興味を持って読み進みました。

    他人の心の中なんてわかんないけど、女ってみんなこんな妬みや嫉妬でいっぱいなのかな・・ちょっとショックだった。
    憧れと嫉妬は紙一重だし、人を見下すといことを自分では気がつかないうちにやってしまってるのかもしれないなぁ。

    この本を、今からママになる人が読んだら、きっと恐ろしくなるだろうなぁ(笑)
    公園デビューだとか幼稚園ママのお付き合いだとか、メディアでも騒がれてた時もあったけど、
    世の中、ママ友関係でこれほど追いつめられてしまう母親がたくさんいるのかなぁと思うと怖くなるなぁ。。
    実際、友達は幼稚園ママ時代、リーダーママ主催のお茶会で、父親の年収順に席を座らされたり、お茶会の幹事を要領よくやらないと、母親として失格と言わんばかりの避難の嵐だったりと・・・壮絶な体験をしたらしい。。
    こんな世界が身近に本当にあるとは・・とビックリしました。

    子育ては孤独だから、ママ友を作ることは大切だけれども、子どもをそっちのけにして、ママ友の関係に執着しすぎて、そのことしか考えられなくなってしまって、子育ての悩みよりママ友との関係の悩みの方が大きくなってしまうなんてバカバカしいと思ってしまうけど・・

  • 5人の幼子がいる母親が知り合い、ママ友になり、ずっと一緒に子育てをしていこうと約束するが、お受験、家庭の格差、様々な違いが5人それぞれが恨み妬み闇となって行く。何年か前の東京で起きた事件がモチーフなのは読めばすぐわかる。
    前回「砂漠(伊坂幸太郎)」のレビューの中で、女の友情は難しい、と言うようなことを書いたが、やはり今回もこの本を読んで思った。特に子供を通した、ママになってからのママ友は関係を深めたらあまりよろしくないのである。気持ちは同じ母として大変よくわかる。母親なんて我が子のことになれば、アホにでも鬼にでもなれるのだ。赤子の時から一挙手一投足に一喜一憂し見守ってきたのだから。目的が、子供の為、と言いながら自分の為に変わっていないか、迷走しながら母親は日々過ごしている。…かも。(笑)
    追記。個人的にママ友という言葉は好きではありません。

  • 前半までは5人のママ友達がそれぞれの個性はあるものの
    分け隔てなく楽しく過ごしているかのように見えて
    一瞬羨ましい関係のようにも思えました。
    ところがある一人の男の子の小学校受験をきっかけに
    それまで関心のなかったママ友達に異変が起き始める。
    そして受験だけでなく一人が妊娠したことによっても異変が起きはじめ
    徐々にグループ内の関係が崩れはじめます。
    楽しいママ友がいっぺんにして互いに比較したり、探り合ったり、
    憎しみあったりしてここまでも関係が崩壊していくのかと
    思ってしまいました。
    互いに比較して嫉妬の塊になっていき、
    しまいには自分で自分を苦しめてしまっている状態になり
    後半部分でのお祭りに行く女性の怪しい行動には狂気を感じ、
    女性の心理描写があまりにも鬼気迫る思いがして
    読んでいて苦しかったです。

    女性は物心ついた時から男性にはない独特の世界があり、
    それは学生時代だけのことだと思っていましたが、
    大人になってもいつの世代になっても抜けることはなく、
    それによって人間関係が難しいと思わざるおえなくなってしまいます。
    この中のママ友達も学生の時に苦い経験があるからこそ、
    また同じような経験はしたくないからそこそこの付き合いをと
    思っていたと思っていましたが、結局はまた同じようなことを
    繰り返されてしまったというのはやりきれなさを感じます。
    他人と比べると人は不要は不幸を背負いこむ。
    人は人、自分は自分、その線引きをしっかりさせて
    日々を送りたいと思っていても
    ママ友となると自分だけではなく子供を交えての交際となると
    難しいのだなと思いました。

    角田さんは以前の作品でも女性の心理描写やママ友達の会話が
    とても細かく表現されていて、特に今回も会話の部分では
    とてもリアルでまるでどこかの立場端でも聞いているかのような
    リアル感で吸い込まれました。

    登場人物のどの女性もそれぞれの過去に辛い過去があったり、
    今もなお人には言いたくても言えない悩みがあったりしても、
    ママ友の前に出ると明るく気丈に逞しくふるまってしまい
    それが余計にいらないトラブルの火種になってしまうのかとも思ったりしました。
    誰が悪いとかそうゆうことではなく、
    とにかく人と比べることでこんなにも苦しく辛くなってしまう
    人間関係というのは嫌だなと思っていまいました。

    核家族で少子化という昨今で同じ年頃の子どもを持つ主婦は
    同じような境遇の人と出逢えたらどれだけ心強いものかと思います。
    けれどせっかくのママ友も些細な事からどこかボタンを掛け違いで
    こんなドロドロとした人間関係になってしまって、
    親同士だけでなく子供まで嫌な思いをさせてしまうのは残念なことだと思います。

    私は子供がいないのでママ友付き合いという経験が無いですが、
    時にはそんな関係が羨ましくも思ったりもしましたが、
    このような事に巻き込まれしまうとしたら
    そんな経験をしなくて良かったのかなとも思えたり、
    女性の独特な世界感を改めて難しいなと思わされてしまいました。
    けれど自分の価値観と合ったり心地良い人と出会えることも
    あると思うので、そのような場合にはママ友という枠を超えて
    人生の友になれるかと思います。

    読みやすく現代の女性の心を鷲掴みしていて
    女性の日頃に対する本音も細かく描かれているかと思います。
    女性の心の深い闇を知るには読み応えがありお勧めな作品かと思います。

  • 東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通して心をかよわせるが、いつしかその関係性は変容していた。…あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎ合い、それぞれが追いつめられてゆく。凄みある筆致で描きだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。渾身の長編母子小説。

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著者プロフィール

1967年、神奈川県生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。著書に『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)、『紙の月』(柴田錬三郎賞)など多数。

「2020年 『ちょこっと、つまみ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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