森に眠る魚 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 4669
感想 : 410
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514643

作品紹介・あらすじ

東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通して心をかよわせるが、いつしかその関係性は変容していた。-あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎ合い、それぞれが追いつめられてゆく。凄みある筆致で描きだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。渾身の長編母子小説。

感想・レビュー・書評

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  • この小説は、1999年に東京の文京区で起こった幼女殺害事件をモチーフにしていると言われている。
    当時、自分の子どもも殺されたお子さんと同じくらいの年齢だったので、ニュースや新聞を注視していた記憶がある。

    そして本書。まぁ、本当に「子育て」という呪縛に絡めとられた母親達の姿を、恐ろしくリアルに、それぞれの心情の一つ一つを細やかに拾い上げている…うーん、流石としか言いようがない。

    そして、どの母親の気持ちも分かってしまう。
    皆不安なのだ。
    これでいい、うちはこうなの、と腹を決めてもどこか不安になる。
    それまでは、月齢で子どもを見ていたのに、幼稚園に入るといきなり横並び。
    生まれ月で差があるのは当たり前と思っても、やはり他の子と比べてしまう…などなど。
    自分で選んだ友だちではなく、子どもを介してできた友人だからなのか、自分のことならやり過ごせても、それが子どもとなるとそうはいかないものなのだ。

    子どもが幼稚園の頃の一時期を、東京の武蔵野エリアで過ごした。
    緑が多く、のんびりした所だと思っていたらとんでもないかった。
    国立、私立ともに小学校が結構あり、お教室には行かないけど、国立はとりあえず受けるという人も多く、皆教育熱心だった。
    いずれまた転勤になると、他人事でいられたので良かったが、当事者のお母さん達は本当に大変そうだった。

    しかし、この母親の苦悩と苦労を、後に子どもがどれだけ感謝するものなのだろうか…。
    2020.6.21

  • まさに自分も誰かのママ友で、ママ友を持つ身。
    この本はママ友はもちろん、ママとしての自我がリアルでゾッとする。

    登場するママたちの渦を巻くような心の中、ママ友へのザラっとした感情、それを封じ込めて笑顔を貼り付けるところ。パパ友ではないであろう、ドロドロなのにキラキラで、楽しくもあるし、どっと疲れる日常が書かれている。

    私もそうだよ、人には言えないけど同じように感じて嫌になることがあるよ、と、共感すること多数!
    女ってただでさえ難しいのに、子供の母という共通点だけで繋がるややこしさ。これはもう苦行というかホラーだと思う。

    コロナの影響で保育園行事が縮小したり、みんなで集まってイベントする機会が減り、家族だけで過ごせたこの3年は楽だった。
    今年度はどうなるかな。戦々恐々としている。

    解説も良かった。

  • テレビドラマ「名前をなくした女神」を彷彿させる小説であった。
    このドラマは、当時ママ友が「怖いよ〜」と夢中になっていて、勧められて観ていた。
    今度は逆にそのママ友に、この本を教えた。
    ドラマの原作ではないらしいが、調べているうちに、1999年に起きた事件に辿り着き、色々と考えさせられた。

    子供のことやお受験が絡むと、ママ友(女性)は怖いなぁ〜〜。
    特に容子さんみたいな人に関わりたくないと思った。

  • 小さな子供を持つ5人の母親のお話です。
    仲の良いママ友だった母たちですが、子供のお受験を意識し始めた頃から、関係性が一気に崩れていってしまいます。

    誰だって、自分の子供が他の子より劣っているなんて認めたくない。
    幼い子供の成長は千差万別だし、まだまだ隠れた才能が沢山あるだろう子供たちを一律に比べること自体がおかしいと思うのですが、
    "劣っている子の母"のレッテルを貼られたくないという焦りから、狂気じみた行動までも取るようになってしまう。

    思うに、育児をするお母さんたちは、ずーーーっと大きな不安と孤独感を抱えているのではないかと思います。
    誰も正確を教えてくれないし、皆と一緒だから良いという訳でもない。
    これで良いのかな、間違ってなかったかな、という心配がいつもあって、だからこそ、周りと比べて少しでも我が子が劣っている所を見つけると、不安で不安でたまらなくなってしまのではないでしょうか。

    …なんてことを、まだ結婚も出産も経験していない身分で書いてしまいました。笑


    いや〜、それにしても母親たちのどす黒い感情がリアルすぎて苦しい小説でした。
    ママ友、怖いなぁ。。。

  • 仲良しだった何人かのママ友たちの関係が、小学校受験によって崩壊していく話。

    話に出てくるママ友たちは、それぞれが何か(男女関係だったり過去の自分だったり)に満たされない想いを抱えている。そこに小学校受験の優劣がつけこんでくる。受験に受かったからと言ってそれらが満たされるわけでもないのに…。

    受験でなくとも、誰かと比べて優劣をつけて安心したくなる気持ちは理解できる。だからこそ自分にも起こり得そうな気がして怖くなる話だった。

    最後は未来が見える終わり方で良かったと思う。

  • 読み終えると胸が重くなる。嫌な気持ちにすらなるのに、どんどん読めてしまうのは登場人物それぞれ生々しくて現実に起こり得る話しだから。
    少しの気持ちのズレと相手への期待が思っていたのと違うと感じた時に人は今までと同じ事でも気になりだし許せなくなる。人の弱さと闇が描かれている。

  • 1999年の文京区幼女殺人事件をモチーフとしていることを後で知り驚いた。幼稚園でのママ友たち4人は、最初は学生時代のようなノリで和気あいあいと付き合っていた。小学校受験をきっかけに、じわりじわりとその関係にヒビが入っていく。

    子育て中の母親の孤独って、こんなにしんどいものなのかとびっくり。なんだろう、これって母親だから、というより、相手のものをほしがったり人と比べたり、もともとそのようなタイプの女性たちが出逢ってしまったから生じた亀裂ではないかと思ってしまった。
    狂気に駆られていく、その内面の描き方が凄まじい。


  • 後半に進むにつれ胸が締め付けられ、軽く吐き気を覚え、読み進めるのが苦しかった。自身の子育て時代を思い出す。散々、話し合いもしたし、歩み寄ろうと譲歩もしたが、そうそう思い通りになんてならないものなんだよね...。ラストは好みでした。

  • 女性は話を聞いてもらいたいし、共感してもらいたい。
    傷ついている時ほど、孤独を感じている時ほどその思いは強くなる。
    それによって救われた過去があって、「この人なら分かってくれる」「この人ならば」と依存してしまう気持ちはよく分かる。
    しかし、子供を通しての付き合いという限られた狭い世界の中では、純粋な「友達」ではいられない。
    分かち合う事が出来て、つらい胸の内を明かせるのは良いが、憧れや羨む気持ちがささいなきっかけで嫉妬や劣等感に変わる。
    そしてそれはなかなか拭えない。
    育ってきた環境が違えば価値観のズレは生じる。
    経済力によっては選択肢が増える事もある。
    そういった現状で比較し出すと関係性はややこしくなるが、そうしてしまうのは人間の性だろうか。

    現代日本の子育て事情という閉鎖的な世界を女性ならではの視点で描かれた、とても闇の深い小説だった。

  • リアルで怖い。
    他人は他人、自分は自分と思っていてもついつい比べてしまう。
    しょうがないことだとは思うけど、自分の身に置き換えてみると、怖い。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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