ギフト (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514735

作品紹介・あらすじ

その少年に目が留まった理由は、ただ一つだった。こぼれ落ちる涙を拭おうともせずに、立ち尽くしていたからだ。それもホラー映画の並ぶ棚の前で。しかも毎日。-ある事件がきっかけで、職を辞した元刑事の須賀原は、死者が見えるという少年・明生と、ふとした縁で知りあった。互いに人目を避けて生きてきた二人。孤独な魂は惹かれ合い、手を結んだ。須賀原と明生は、様々な事情でこの世に留まる死者たちの未練と謎を解き明かしていく。ファンタジック・ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 死者が見えるという少年と元刑事の須賀原。前も上も向かず、ただただ人目を避け誰とも交流しようとしなかった2人。交通事故死した老婆、虐待死させられた犬、ずぶ濡れのままの少女、エゴイストな女、それから須賀原が職を辞するきっかけとなった14歳の亡き少年。彼らの願いや未練、この世に残したかった想いを聞き叶えるストーリー。大どんでん返し!のような場面はない、ずっと一定の波が押し寄せては引いていくを繰り返しているのだが、少年や須賀原の言動やふとした時の正直な表情や気持ちに焦点を当てると見えるものがあるはず。どこに、誰に、注目して読み進めるかで読後の感想が大きく変わる本。彼らにとってのシックスセンスと同じように。
    ずっと誰かに助けてほしかった、信じてほしかった、話だけでも聞いてほしかった。孤独は怖くて寂しいから。それを知ってる少年と須賀原だったから、死者たちも変われたのではないだろうか。どこかでまた彼らが幸せに暮らせていることを願う。

    何が「ギフト」だったのか、もう少しゆっくり考えてみようと思う。

  • 死者が見える少年。もし見える人がいるなら聞きたいことがある。
    死者が見える少年と影のある男の2人で物語が進んでいった。人それぞれにドラマがあり生きている。組み合わせや内容が新しく、スーッと心に入っていく物語だった。

  • 死者が視える少年と悔やみきれない刑事。

  • 幽霊が見える少年と過去にとらわれた元警官のお話。
    幽霊が見える人が、その幽霊の未練を聴いて解決してあげるというお話はありがちだけど、これはもっと生きてる人間寄りというか……。二人は死んだ人たちのために、と考えて行動しているけれど、その結果、残された生きている人間のほうが一番救われているような……。死んだ人間の未練や恨みを晴らしてそれで終わり、じゃなくて、そのあと残された人たちがどう生きていくかまでちゃんと考えさせられる話だと思う。
    それにしても、少年の能力は「贈り物」というより「呪い」の様でもあるけれど、自分の能力の及ぼす影響を恐れて萎縮してしまっていた少年が、たとえそれがつらい選択だったとしても、自分の足で一歩前に進もうとした時点で、「贈り物」だと思えるようになるのか……。
    あ、そっか
    お互いが、自身ではそうと思わずに、お互いを救っていた少年と元警官の出会い自体が「贈り物」だったのか

  • 死者が見える少年と絶望した男の死した人助けの物語。
    死んでしまってるので、多少は救われるがやるせなさの残る解決でしかないのが悲しい。
    映画のタイトルが出てくるがあまり効果的ではないですね。また、文書がくどくて自分には馴染めませでした。
    あまり共感できないし。
    ギフトという、タイトルの必然性も今一歩分からない。

  • 「傍聞き」と一緒に新聞広告に載っていたこの本、皆さんのレビューを読んでも結構評判良かったので買ってみた。
    ある事件がきっかけで退職した元刑事・須賀原と死者が見える少年・明生。互いに人目を避けて生きてきた二人が、ふとしたきっかけで知り合って、交通事故死した老婆、虐待死させられた犬、池で水死した幼女…、様々な死者に会い、それらのこの世に残した思いを鎮め、そして自らの生き方に方を付ける。
    最初の話がちょっとクドクドして読みにくく、3番目の話も扱っている題材がちょっとイタくて、ウ~ンと思ったところはあるけれど、死者の思いを叶えたところから、話がもうひと転がりするところがなかなか深くて、それに加えて、人を思いやる、風が肌を撫でるような柔らかな気持ちの描写がなかなか心地良くてジンとする。
    最終話、退職のきっかけとなった事件で死者となった少年とその両親の、それまでのそれぞれの思いが解きほぐれていく様に、親子というものの絆の深さがよく出てて、ちょっと泣けてくる。

  • 死者が見える少年と、心に傷を負った刑事の織りなす、少しだけ温かい、悲しい話。
    嘘ばかりつく女の話や事故にあった老婆の話は引き込まれたが、それ以外はあまり。

  • 『映画の中での幽霊のほとんどは、怖く哀しいか、優しいかの両極端に描かれている』

    確かに…!
    その点、本書はかなり人間的な幽霊も描かれており、
    特に自分を見失っている女性は印象的だった。

    本書で触れられている幽霊映画の数々も観てみたくなった。

  • 最初は、なんか暗いホラー的な話かなと思ったけど。
    最後はちょっと泣いてしまった。
    途中辟易とした人はいたけど、ここまで行かなくてもこういう理解に苦しむ人はいるし、人から見たら自分もそうなのかもしれないと思ったり。
    全て思い通りに行かなくても、行動し続けて解決しようとする。
    2人が選んだ道もそうだし、凄く良い本だった。
    2021年上半期最終日だけど、今年1だな。

  •  怨念を残して死んだ死霊が見える特異能力をもつ少年と知り合った元警察官の物語。いくつかのエピソードと最後に被疑者を死なせてしまった本人の過去が連作で綴られる。設定は魅力的で感動的な物語になりそうなのに、いかんせん著者の力不足はいかんともしがたく、この手のファンタジーの大家恩田陸や、似た構成の名作ツナグを書いた辻村深月と比べるのは酷としても、各エピソードの不出来さは読むに耐えない。同じ著者の警官や消防士シリーズはまだマシだったので身の丈に合わない素材を選んでしまったのかも。

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