少女 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514834

作品紹介・あらすじ

親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら、死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く-死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 人が死ぬのを見てみたい、という少女達の高2の夏休み。一夏の経験。
    湊さんデビュー2作目。久しぶりの再読。
    夏休みに「人が死ぬところを。。」というイヤミス的な始まりだけれど、その年代特有の思考や感覚の心の声的な表現がうまいなと思わせます。
    二人の少女達は、一人は介護施設のボランティアへ。一人は、小児科朗読ボランティアへ。
    最初読んだ時は、少女達の行動が交互に書かれて、言動の区別が曖昧に思えて確認しながらでしたけど、湊さんは、小説の中にちょとした区別を準備されていてそれを掴むとストーリーが続きやすくなります。
    彼女達は、小児科に入院している少年達の願いを叶えるため奔走します。それに伴って幾つかのトラブルにも遭います。
    夏の経験は、彼女達の友情を復活させて、将来についても考えるようになります。相手の気持ちにも一歩踏み込める。ちょと大人になりました。
    そして、良いお話だけにしない湊さんは一線を踏み越えてしまった別の少女達の崩壊までを加えます。

    10年程前だとイヤミス!という感じだったけど、その後、後味悪めの作品がいろいろでてきたので、むしろ良い子達だと思ってしまった。

    • 1Q84O1さん
      湊さん読んだことないんですよ…
      なぜだか…
      特に理由はないですが…w
      湊さん読んだことないんですよ…
      なぜだか…
      特に理由はないですが…w
      2024/02/09
    • ひまわりめろんさん
      逆に何を覚えてんのよ!っていう
      逆に何を覚えてんのよ!っていう
      2024/02/10
    • おびのりさん
      私もレビューしながら次読んでるから、人の事は何も言えず。
      私もレビューしながら次読んでるから、人の事は何も言えず。
      2024/02/10
  • 人が死ぬ瞬間を見てみたい少女2人が、それぞれの視点で回想・展開されていく物語。

    読後『おみごと』の一言。

    登場人物それぞれの存在、行動、言動という点が、ストーリーの進行とともに線に繋がっていく伏線回収が気持ち悪くて気持ちが良い。

    唯一、死の瞬間を見たいと言うお題目が陳腐に感じられたことが残念だったくらいだ。

    しかしながら相変わらず性懲りも無く、この著者が女性に持たせるカラッとした残酷さには、震えるほど惹かれる。

  • 吊革に掴まっていなかったらひっくり返るところだった。乗っていた電車が人身事故を起こし、ホームの中程で急停止したのだ。ホームに入っていた前方車両まで誘導され、電車を降りた時、線路を覆うシートの隙間から生々しい真っ赤なものが見えた。あれから何年という以上の時が過ぎたのに頭から消えない赤い色がある。

    『子供なんてみんな、試験管で作ればいい。選ばれた人間の卵子と精子で、優秀な人間だけを作ればいい。』という衝撃的な遺書から始まるこの作品。冒頭から取り憑かれたように『死』について語られていきます。『このまま生きていくのって、ちょっとムリっぽい。リセットするね。バイバイ。』転校生の紫織に見せられた彼女の親友が残したという携帯メールの遺書から、『死』そして『死体』に興味を抱く由紀と敦子。

    『見たい、死体を。いや、紫織が見たのが死体なら、わたしは死ぬ瞬間を見てみたい。紫織が親友なら、わたしもそれくらい身近な人で。』死に近い子どもがいると考え小児科病棟に朗読のボランティアに赴く由紀、それに対して『老人ホームなら体の弱いお年寄りばかりいるんだろうし、死体を見ることができるかもしれない。死体を見て、死を悟る。』と老人ホームにボランティアに赴く敦子。『身近な死』に接するためにそれぞれ動き出す二人。あることをきっかけに関係がギクシャクし出した二人。『由紀抜きで死を悟らなきゃ、意味がない。』とさらに心が遠ざかっていきます。

    物語はこの二人の視点が交互に入れ替わりながら展開していきます。『寝る前にパソコンを開いて、「学校裏サイト」をのぞくのが習慣』になっている敦子。この『学校裏サイト』が物語の中で大きな意味を持っていくことになりますが、敦子は『裏サイトなんか気にしない自分になりたい。あたしも強くなりたい。そのためにはやっぱり、死を悟ってみたい。』と、あくまで『死』に固執します。そして、何重にも張り巡らされた伏線が、一時、心の遠ざかった由紀と敦子の間に巧みに絡み合い、身近な人も巻き込みつつ最後に劇的に回収されていきます。

    結末が近づくにつれ、一見、めでたしめでたしで爽やかに終わるのかと思いましたが、湊さんはそうは結着させません。まさかの更なる伏線回収が待っていました。ぐぐっと極めて後味の悪い読後感。ただ、もしかすると主人公である由紀と敦子のキャラクターをどう読んだかで、ある意味の爽快さを感じる方もいるかもしれない読み手に任された読後感とも言えます。人はよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるという意味を持つ『因果応報』。この言葉が敦子の記憶に蘇ります。確かにそうかもしれない。それが自然なのかもしれない。でも、そう考えれば考えるほどに、私にはどっしりと重いものを背負わされたような嫌な読後感が襲ってくるのが感じられました。

    核家族化が進み、というような論調さえも歴史を感じるくらいに家族が分割されてしまった現代社会。身近な人の『死』から学んでいた何かを学ぶことができなくなってしまった時代。『自殺ほどつまらない死に方はない。もっと生きることにどん欲な人の死を見てみたい』『死は世界から退場することだ』『「死」に触れ、「死」を超えた世界を知りたい』と単純な興味から、純粋な好奇心から、『死』というものに、高校生の少女たちが惹かれてしまうのも、全ての生物が避けられないものとして恐れ感じる本能なのかもしれません。本当は身近なものでもあるはずの『死』というものについて、日本人は特に忌み嫌って遠ざけているように思います。この作品でも人身事故の場面が登場します。反動として、この感想冒頭の私自身の記憶が蘇りました。幾ら遠ざけてもやってくる時は突然に、それが『死』なのかもしれません。まさか、日常の読書の数時間に渡って、こんなにも『死』について考えることになるとは思いませんでした。

    作品としては、色んなキーワードてんこ盛りなのと、あまりに上手く繋がりすぎるストーリー展開に若干の違和感もありましたが、最後の書店員さんによる解説を読んでとてもスッキリしたものも感じました。この辺り、まだまだ自分の読み込みが足りないなとちょっと反省もした作品でした。

  • 少女達はその後..なムフフな妄想読者が止まらない。是非本作を楽しんだ後、あとがきまで読んでもらいたいです。
    また年月が経ったら読みたいなぁ。

  • 主要な登場人物は、高校2年生の由紀と敦子…2人の間には親友でありながら見えない壁のようなものを抱えていた…。それぞれ人の死に関心を持ち、夏休みに由紀は小児科病棟に、敦子は老人ホームへボランティアに行くことことになった…。

    なんだろうな…命がすごく軽く扱われているのに正直いい気持ちはしなかったです。こんなんでいいの??そう思いながらも、でも読む手は止まらず一気読みです(^^;)。でもどこかで、前に読んだことがあったのかのかもしれない…初めて読む気がしなかったなぁ~。なんか、こうなるんだろうなってところでエンディングだったりしました。でもこの2人の友情はこの夏休みを経て、より強いものになったってことは間違いないと感じました。

  • 最後 全てが繋がり面白かったが
    主人公2人の視点、切り替えが分かりづらかったかな…
    あっ…これ敦子ね…
    ん?…あ…コレは由紀ね…
    と自分が読み取らないといけない感じでした

    【死】に興味をもった思春期の子達の話だけど
    個人的に【死】を軽く取り扱い過ぎてて嫌だなぁ…とずっと思った作品…そこに変に友情も入れてくるから…なんか嫌だなあ…と感じて読んでしまった

  • ゆ、歪んでる……めちゃくちゃ歪んでる。
    どうした若者よ、と言いたくなる。

    不幸や劣等感すらも美化するような、ネガティブで皮肉いっぱいのドラマ。二人の主人公は、大人にもなれず、子供でいることも許されない複雑な思春期の中で、自尊心を守り、何かに救いを求めて苦悩する。

    冒頭と最後に書かれた遺書に至る経緯に、作品の独自性がある。残酷に割り切り、差別や偏見、いじめやネットの掲示板での陰湿な書き込みの闇を感じずにはいられない。一方で友情は輝きを失わず、他者の犠牲は正当化される。

    読了。

  • 読み始めはキツイかった。。。

    人が死ぬ瞬間を見てみたい。(by由紀)
    死体を見たい。(by敦子)

    これって中二病の女子高生の話??
    冒頭からネガティブオーラ満載で、いつまで彼女ら二人の戯言が続くのかと不安になりました。
    (ちょっと選書をミスったかな、と)

    でも、そんな心配ご無用でしたね。

    ”昴の父ちゃんを、ここに連れてきてほしい”(抜粋)
    小児病棟でバイトをしている由紀に少年がお願いをします。

    ここから一気に登場人物が動きだし、表に出てこなかった人間関係のつながりが見え始めてくるのです。
    世間は狭いですね。
    自分とは全く関係ないと思っていた人物が実は知り合いのおばあちゃんだったり、友人の探していたお父さんだったり。
    人を無下にはできません。
    何より恐ろしいのは三条ホームのおやじ。
    脇役なのにも関わらず、強烈な印象を残しましたが、まさかの展開。。。
    人間関係が二重・三重に張り巡らされていて、伏線の回収が本当にすばらしくて綺麗でした。
    ラストの遺書も最高です。

    この美しい伏線回収を楽しむために、中二病少女の戯言があると言っても過言ではありません。
    (ホントきつかったのだよ、前半部分)

    とは言え、学生の頃って、どこにも逃げ場がないから視野が狭くなってしまうんですよね。一度嫌な目に遭うと、どんどん疑心暗鬼になって、誰も信用できなくなる、といったドツボにはまってしまう。(敦子を見て、自分も似たようなところがあったと思い出しました)
    本を読みながら、学生特有のキツさをちょっと思い出しました。しみじみ。

  • うーん、、、面白い…!!解説にも書いてあったけど、本当に一筋縄ではいかないストーリー展開。
    大人になる直前の高校生ならではの友情と自意識、禁忌への憧憬、時に冷徹な排他性…etc.とにかく沢山のことがこの300ページあまりに盛り込まれていて、飽きる暇もない。
    全てを知ったあとだと、本当に「因果応報」ということで巡り巡っているのが分かる。

  • 個人的に湊さんの作品は初めて手に取りました。
    無邪気な悪。
    気づいていないだけで身の回りにありそうな話。
    因果応報なら自分たちに返ってくるね。
    友情・依存・愛情いろんな形があるけど、
    人は一人では生きていけない。
    怖いものだけど、必要なもの。
    読みやすかったです。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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