贖罪 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
3.60
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本棚登録 : 10971
レビュー : 1002
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575515039

作品紹介・あらすじ

取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない4人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになる──これで約束は、果たせたことになるのでしょうか?

ベストセラー『告白』の著者が、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味を問う、迫真の連作ミステリが双葉文庫で文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 『喜怒哀楽』、人間が持っている基本的な感情を表すと言われる言葉です。一日の終わりに今日一日を振り返ってみて、どの感情に支配されていた時間が長かったのかを考えてみます。喜びや、楽しみの時間が多くを占めていたなら、その日はとても幸せな一日だったと言えるでしょう。哀しみに支配されている時間が長すぎると精神的には危険信号が灯る場合もあります。そして、怒り。他の感情と違ってこの感情は、自分の内だけの問題に留まらず、他人に影響を及ぼしてしまうこともある最も危険な感情です。人の怒りのピークが維持される時間は6秒と言われます。この6秒をコントロールする術-アンガーマネジメント-。でもこれに失敗すると、相手を深く傷つけ、その怒りをコントロールできなかったがために、その後の自分自身に取り返しのつかない未来を、哀しみを連鎖させる人生の分かれ道になってしまう分岐点となることもあります。

    『東京から転校生でやってきたエミリちゃん。お父さんが足立製作所の重役をしている』という彼女と友達になった4人。おとなしいけどしっかりしてる紗英、みんなの中で一番がんばって頼りになる真紀、スポーツがよくできて足の速い晶子、工作が得意で器用な由佳、そして何にでも積極的でみんなをリードするようになるエミリ。そんな5人の前に突然現れた一人の男。『おじさん、プールの更衣室の換気扇の点検に来たんだけど、うっかり脚立を忘れてしまったんだ。ネジをまわすだけなんだけど、肩車をするから、誰か一人手伝ってくれないかな』これが現代の小学校4年生だったらどうでしょうか。こんな言葉についていくかはわかりません。でも彼女たちは従った。そして、その先に悲しい光景が広がりました。

    残された4人。悲しい光景を前にした4人が手分けしてとった行動、役割、それによって彼女たちにそれぞれの後遺症を残します。『おとなになったら殺される。生理が始まったら殺される 。無意識のうちに自分のからだに暗示をかけ続けていた』、『事件のあとの生活?身の丈以上のものを求めると不幸になる』、『わたしのいるところで、子どもが殺されてはいけない。わたしが守らなければならない。今度こそ、しっかりしなければいけない』しかし、それぞれが心に深い傷を負ったのは単に悲しい光景を見ただけではありませんでした。

    娘が無残に殺された現実。その現場にいながらきちんとした目撃証言さえできなかった4人を責める殺された彼女の母親。彼女らをわざわざ呼び出し、怒りの感情に任せて『あなたたちは人殺しだ。犯人を見つけるか、わたしが納得できるような償いをしなければ、復讐をする』と言い放ったこと、これが後遺症を決定的なものにしたのでした。

    湊さんと言えば衝撃的なデビュー作である「告白」が一番に浮かびます。この作品はそんな湊さんの3作品目にあたります。「告白」と同じように登場人物が順番に登場してひたすらに長く語って、その中から次第に真実が浮かび上がってくるという構成も同じです。でも随分と受ける印象は異なりました。この作品では、連鎖ということが一つ大きな主題になってくるように感じました。怒りが頂点に達してコントロールできなくなり、取り返しのつかない行動として現れてしまう、それがまた次の怒りの感情を生んでいくという負の連鎖です。そして、書名どおりの『贖罪』の日々だけが残った。『贖罪』の人生を生きていく他ない人たちが残った。

    湊さんらしい、うぐぐ、と後味の悪い結末。小説の世界のことではありますが、怒りの感情をコントロールできないことでこれだけの負の連鎖を巻き起こすというのも、人生とても怖いものだと改めて思いました。

    とても読みやすい文章であるが故に、後味の悪さがストレートに自分の気持ちに入ってきてしまいましたが、終章のお陰でちょっと救われ、最悪な気分に落ち込むことは免れました。でも、逆に『贖罪』ってなんだろうといつまでも余韻の残るそんな作品でした。

    • トミーさん
      先日湊かなえの
      エッセイを読みました。作品とは違う
      生の湊かなえがいろいろとわかりもっともっと湊かなえが好きになりました。
      ぜひ「読まれたか...
      先日湊かなえの
      エッセイを読みました。作品とは違う
      生の湊かなえがいろいろとわかりもっともっと湊かなえが好きになりました。
      ぜひ「読まれたかもしれませんが」読んでほしいな。山猫珈琲。
      この題は湊かなえの好きなものだそうです。
      2020/03/27
    • さてさてさん
      トミーさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      エッセイはあまり読んだことがなかったのですが、先日読んだ三浦しをんさんのぐるぐる♡...
      トミーさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      エッセイはあまり読んだことがなかったのですが、先日読んだ三浦しをんさんのぐるぐる♡博物館にハマりまして、エッセイの面白さを知りました。おすすめいただいた山猫珈琲も是非読んでみたいと思います。
      どうもありがとうございました。
      2020/03/28
  • ある事件に関係する一人ひとりの独白を連ねた著者らしいイヤスミ感満載の本作。設定が強引で盛り込み過ぎなところもあるが、圧倒的な心理描写力とその筆致に引き込まれる。○○は罪を償えるのか...。衝撃のラストが待っている。

  • 学校に現れた作業着姿の男。見知らぬ大人にも警戒することのない人懐こい少女たち。一人が連れて行かれ、いたずらされ、変わり果てた姿で見つかった。

    都会から来たお金持ちの美少女エリカの事件は、彼女と一緒に遊んでいた4人の少女の運命にも暗い影を落とすこととなった・・・。

    捕まらない犯人を恐れ、大人になったら殺されると自己暗示をかけるうち、25歳を過ぎても初潮を迎えない女

    その後の捜査にも役立てず、エリカの母親になじられたことから存在価値を見失い、償いのために教師になった女

    可愛いものに憧れながらもそれが似合わない外見に過度のコンプレックスを抱く女

    病弱な姉に母を独占され、構ってもらえない寂しさから警察官に憧れた女

    田舎に馴染めず、愛娘も失い、少女たちに呪いのような言葉を投げてしまう女

    救われない女たちの悲劇と男たちの異常性、やっぱり・・・後味悪いのが湊さんだなぁ。。

  • 「湊かなえ」らしい作品といえる。コアなミステリーファンには全く響かないと思うが、『告白』と同様、世間一般には高い評価を受けることは間違いない。全体を通して救いようがないほど重苦しく、一人称での独白によって構成されると点では、これもまた『告白』と似ているが、インパクトという点ではやや劣る。一方、誰もが持つ様なコンプレックスを発端として女性の心理描写を展開させたら、おそらく彼女の右に出るものはいないのではないか。

    追記:彼女の作品には、歪んだ男ばかりが登場し無慈悲というか冷酷非情な扱いばかりされているが、作者自身が、男性に対して強烈なコンプレックスがあるのではといつも疑念を抱いてしまう。

    • ぱんださん
      追記に同感です。
      追記に同感です。
      2013/01/29
  • 題名を見て買った本

    小説の内容で長い手紙や演説など一方的に話が進む読み物はあまり好きではない。なぜか読みにくい。

    この本は5人の登場人物がそれぞれの視線で語りかけるような内容だったので、読み始めは読みにくそうな内容だなと思ったが、それぞれの考えや行動が細かく書かれていてなぜかすらすらと読んでしまった。

    ラストはバッドエンドみたいな感じだったが、なぜかすっきりした気分になれた小説でした。

  • 読了:2018.3.21

    「告白」でデビューしてから、3作目の作品。
    今回も湊かなえの得意な形。一つの事象を複数の人物目線で全く違う捉え方・影響の仕方を書き出して行く。読み進めるうちに少しずつ情報が増えて、小さな伏線と回収を繰り返す。それぞれが微妙に違った捉え方をしていてそれが時間の経過と共にその人物の人生に大きく影響を与えていく。特に今回は子供のピュアゆえの捉え方・影響が面白い。幼少期のトラウマ書くのほんと上手よね。
    個人的な感覚だけど、湊かなえ本人のタイプではない性格の人物の心理描写が少し雑だったような気もする。

    ピュアゆえの残酷さと更衣室はふと東野圭吾の放課後を思い出した。もちろんその残酷さが誰かに向くか自分に向くかの違いはあれど。

    小泉今日子を筆頭に豪華キャストでドラマ?映画?やったみたいだけど、予告はイマイチなかんじが…。見た人に感想聞きたい。
    ------
    ◆内容(BOOK データベースより)
    15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言ったーあなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は!?特別収録:黒沢清監督インタビュー。

  • うわぁ。すごぃな。と、思わさせられました。
    湊かなえのそれぞれの人間たちの立場からの視点の描き方がすごい。

    被害者、加害者、被害者遺族くらいまでは割とどんな本でも描くことはあるけど、現場に居合わせた女の子たち4人の心情や、その後の心の移り変わりなど。

    こんな風にそれぞれがそれぞれの思惑の中にいた。という一つの事実は、事件云々と関係なくそれぞれの人生に影響を受けるんだな。と。

    同じ記憶が見つめる人間が違うだけで、こうも左右する。ということ。自分に置き換えると、娘の視点も去ることながら、身近にいる人間たちそれぞれにそういう視点がある。ということに改めて気がつかされました。

    そして、湊かなえのそうまでして登場人物全てへの生き方、思い、考え、思考を表現しきるところに、事件以上の衝撃があります。

    一章づつ小分けにして、それぞれの心情が吐露されるその瞬間に、ゾクゾクさせられる一冊です!!!!!!!!

    上手い!!!!

  •  無関心という大罪。 確かに、自分の大切な人に何か不幸が起きた場合、何より腹立たしいことは、被害者に対する関心の低さだろう。 被害者が感じた恐怖や苦しみや絶望に想像を馳せないということ。 その怒りは、加害者だけでなく、周りの全てに向けられる、その気持ちはわかる。 ただ、そんな大罪を責められるほど、周りの全ての不幸に想いを馳せている人なんているわけがないから、僕らは皆罪深く、許し合わなきゃいけないらしい。 と言っても、互いの罪深さを盾に開き直っちゃいけないわけで、やっぱり他人の不幸にはできるだけ共感し、自分の不幸に共感されないことを、できるだけ許さなきゃいけない。 罪も、感情も、イチかゼロじゃなくて、グラデーションだから。

     独白形式だからこそ輪郭がハッキリするそれぞれの無関心。 手法とテーマがばっちりハマってました。

  • 1番印象に残ったのが、都会育ちの麻子(エミリの母)。

    悪気はないのに、人を傷つける怖さ。恐ろしい。

    しかし、何ごとも自分で判断せずに、直接本人に聞く勇気を持つ事って大事だなと思った。

    事実は小説より奇なりっていうし。

  • この人の本は初めて。部類としてはミステリーなのかな?
    あまり考えずに買って読み始めたが
    その心理描写にのめり込んでしまいました。
    ホラー映画の「見たくないけど見たくなる」ように次の章を読まずにいられなくなる本。
    もう少し救われるような内容が欲しかったので★5つならず。

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著者プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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