家族 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
3.48
  • (4)
  • (11)
  • (13)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 96
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575515855

作品紹介・あらすじ

ホームレスの男が盗み目的で住宅に侵入し、認知症の老女を殺害したとして逮捕された。男はこの事実を認め、裁判員制度での裁判がはじまった。裁判員のひとり谷口みな子は、自身の経験から、この事件を老女の息子の依頼による殺人ではないかと疑っていた…。大いなる家族愛を描く、感動の法廷ミステリー。テレビドラマ化作品、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • どんどん高齢化社会になっていく日本、年配者に「自分の存在が家族に迷惑をかけるのでは?」なんて思わせない取り組みがますます必要になるのでしょうね。介護も家族だけで担っていてはストレスが溜まる事でしょう。自分が高齢になった時を想像しても、家族に負担をかけていると感じたらどうしようもなくせつなくなると思います。

    認知症の女性が死を選んだのも、ホームレスの男性があえて自分の罪を重くするような事を言ったのも、どちらも家族のため。考えさせられる話でした。

  • 裁判員裁判とその裁判で明らかになる家族の問題、そして家族愛を描いた物語。

    裁判員制度の裁判の進め方がとてもよく理解できます。
    その課題や選ばれた裁判員の苦悩が伝わります。

    ストーリとしては、ホームレスが盗み目的で住宅に侵入し、認知症の老女を殺害し逮捕されます。
    裁判員制度でその裁判が始まり、その裁判の中で、裁判員によって明かされる真実といったところです。
    ホームレスが起訴事実を認めている中、本当にホームレスが殺したのか?その動機は?

    検察でもなく、弁護士でもなく、裁判員の質問から明かされる真実が秀逸。

    その真実は家族を思う気持ちでした。
    しかし、話がある意味きれいすぎる(笑)
    さらに、途中からその真実に想像が付いてしまいます。
    でも、本作は謎解きが目的ではなく、その家族愛を描くところ。
    そして、それが明らかになりながらも裁判員が下した判決とそのコメントがまた深い。

    認知症の介護問題、裁判員制度、とても身近な話題が故にとても考えさせられるテーマだと思います。

    お勧め

    こちはら帯には
    「父からの手紙」の著者が放つ感動作
    強盗殺人事件の裏側に隠された気高く不滅の愛情!
    不朽の愛を描く感動作!
    と書かれていて、期待を裏切られるほどではありませんでした!
    それぐらいの帯の記述にしてほしい(笑)

  • テレビドラマ化とあり、読み終わって納得。上手く出来すぎたお話で、ドラマで見るにもってこい。本で読むには軽すぎる。感動…あんまりしなかったかな。ちょっと裁判員も脚本化された感じでイマイチ。まあ、こんなもんかな。

  • 今回の一冊は、小杉氏の得意とするところの裁判が舞台となる。
    2009年(平成21年)5月21日から始まった裁判員制度がテーマとなっている。
    牧田孝一郎の母親が、自宅で何者かに絞殺されたことから物語は始まる。
    家庭内のいざこざが原因で実母を絞殺したのではと、メディアは息子の孝一郎に疑惑を集中して報道する。
    初期症状の認知症を発症した母親である文子に対し、日頃から激しい言葉を投げかけていた孝一郎が真っ先に疑われたのだ。
    そんな渦中、警察はホームレスの男を犯人として逮捕する。
    容疑者の三田尻作雄は取り調べに対し、素直に文子を絞殺したことを認めた。
    谷口みな子は、33歳を迎えた時から母親の介護に明け暮れていた。
    仕事などでやむ無く母親を一人にする時などは気が気ではなく、時には介護ヘルパーから緊急事態を告げられ、急ぎ帰宅しなければならない事態も度々だった。
    あまりにも忙殺される時、認知症の母親が居なくなればと想像したりもし、後にそんな自分勝手な想いを抱いた自分に自己嫌悪を感じることもあった。
    そんなみな子に裁判員としての要請があり、当初は母親の介護のために辞退しようとしたのだが、被害者が認知症を患っていた事をメディアで知っていたみな子は、息子の孝一郎が介護の問題から逃れるために、被告人の三田尻に殺害を依頼した嘱託殺人事件なのではとの疑惑を抱き、裁判員として参加することを決める。
    裁判が始まり被告と対面した時、殺人を犯すような人物には程遠い印象をみな子は抱く。
    傍聴席にいる被害者の息子である孝一郎は、被告人を見る目に怒りなどは伝わって来ず、三田尻に同情さえ感じているのではと思える程の表情をしていた。
    そんな二人の姿を見たみな子は、孝一郎は三田尻に母親の絞殺を依頼したとの疑念を一層強くする。

  • 裁判員制度が始まった当初の作品。裁判員制度と高齢化社会における介護に問題を投げかける法廷ミステリ。一気読みしたが重い。

  • 2018.09.18.読了
    うーーーーん。茶番だなー。
    こんな裁判ホントにあるの?
    あるなら、問題でしょう。つまらなかった

    ただ、安楽死問題については政府も早く着手すべきだと思う。どうしてこんなに大事なことをほったらかしているんだろう。
    高齢化、少子化、重税、社会保障、それらと並んで考えなければいけないのはやはり安楽死だと思う。
    臭いものに蓋するのはもうやめよう

  • 130809

  • 家族の物語。そして、裁判員制度の物語。
    ホームレスの男が盗み目的で住宅に侵入し、認知症の老女を殺害した。最初は、裁判員の一人の女性の思い込みで嫌な感じに物語が進んでいるなと思っていたが、その女性の真実を知りたいという思いから裁判は思いもよらない方向へ。家族を思う気持ちと自分の幸せが一致することは難しいのだろうか?

  • 裁判員に選ばれた人たちの葛藤や、裁判員制度についても書かれていて、興味深く読みました。実際にみな子のような言動を取る人は、まず居ないのでしょうが。でも、一般市民であるみな子が、裁判員として真実に迫っていく様子はとても面白かったです。

    そして、主題とも言える介護問題。
    自分も数年後には当事者かもしれない・・・
    みな子の現状を見ていると、暗澹とします。高齢者はお金がないと生きにくい現状。そんな中で家族としてどう
    暮らしていくのか。自分が介護される側ならどうか。考えさせられます。

    重いテーマですが、とても読みやすくて一気読みでした。

  • 法廷ミステリーと家族愛を描いた作品。小杉健治らしい二転三転のストーリー展開と行間から滲み出る人間愛が素晴らしい。

    ホームレスによる認知症の老女の殺害事件。裁判員制度により、裁判が始まるのだが…

    法廷では、殺害された老女と犯人のホームレスのそれぞれの家族の物語が少しづつ明らかになる。

    事件の結末は如何に。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九四七年、東京都生まれ。八三年「原島弁護士の処置」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。八八年「絆」で日本推理作家協会賞、九〇年「土俵を走る殺意」で吉川英治文学新人賞を受賞。他に「仇討ち東海道」「遠山金四郎」「風烈廻り与力・青柳剣一郎」「栄次郎江戸暦」「蘭方医・宇津木新吾」「親子十手捕物帳」「八丁堀赤鬼忠孝譚」「義賊・神田小僧」シリーズなど著書多数。

「2023年 『剣の約束 はぐれ武士・松永九郎兵衛』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小杉健治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×