- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575515954
作品紹介・あらすじ
不動産会社の支店で店長の遼は、故郷にある店舗に一時的に赴任することとなった。シャッターの下りた商店街、傍若無人な昔の同級生、どこか馴染めない家族…。一刻も早く元の店に戻りたい遼だが、友人の結婚問題や、父親の退職などを経て、徐々に気持ちが変わってゆく。-俺、ここに帰ってきたいのか?「故郷」を持つすべての人の胸に、チクリとした痛みと温かな想いを呼び起こす物語。
感想・レビュー・書評
-
共感するか、面はゆいと思うか、反発するか、人それぞれの受け取り方ができる作品。しかも、ほとんどが丸く収まって、その点では読後感は暖かい。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
故郷、というものへの複雑な思いが描かれる。
いたる所で遭遇する友人、衣食住に頓着しない家族、町に漂う甘ったるいチョコレート工場からの匂い。中途半端な田舎ぐあい。
そんな故郷が嫌で上京したのに、仕事で戻るはめになった主人公。早く都会へ帰りたいと思いながらも職場の居心地は良く、時々ふっとほだされたりする。
嫌なところしか見えていなかったのが、一度離れてみるとイイところもあるし、地元に残る人にも理由があると分かってほんの少し愛着がわく。登場人物それぞれの思いが掘り下げられていて面白い。
気持ちの上で故郷を持たない私には共感しづらいけれど、地元とか故郷とかを思う時ってこんな気持ちなのかな、となんだか納得できた。 -
最後がハッピーエンドでよかった
-
舞台は地方都市の近く、チョコレート工場からの匂いが漂う中途半端な田舎町。
そんな町や無神経な家族に嫌気が差していた主人公の遼は、大学から都会に出ていたが、仕事の都合により臨時で故郷に帰ることになる。
そして、色々な人、様々な出来事を通して、故郷への気持ちが変わっていくというお話。
「地方都市の近くの町」のなんとも言えない中途半端さの描写が上手い!
車社会、すぐ噂が広まる、地元に残った人の地元志向の強さ、外からは見えないヒエラルキー、外に出てる人の格好のイマイチさ……とかとか。
都会に比べてなんか情けなさを感じるやつね。
人物も、「そういう人居るよね」ってなるリアルな描写でした。
沙知さんがとっても好き。素敵。
あと、若槻さんも素敵。ああいう風に年を重ねたい。 -
遼が実家を出たかった理由、深くうなづきながら読んでた。
そうなんだよねぇ。
でも同感する場面ばかりじゃなく、遼を若いなと思ってしまう場面も多く、それだけ私が年を取ったのかもしれない。 -
故郷の町を歩くたびに旧友と出会い、声をかけられる遼が羨ましいと思った。
それは、小さな町だからということではなく、遼がそれだけ慕われていることへの憧れだ。
長い間離れていても、昔の同級生から親しげに声をかけられる。遼の場合は、同級生だけでなく、職場の同僚や上司にも頻繁に食事に誘われている。
それだけ遼が付き合いやすく、魅力的な人なんだな、と思うのだ。
言っていいことと悪いこと、言うタイミング、自分の立場などをわきまえて、そのときに一番ふさわしい態度を取る。
そして、たまに本音(弱音も含む)を吐く。
みんなから慕われているけれど、本人がそれを自覚してないところもまた、人間たらしだなあと思う(褒めてます)。 -
田舎から東京へ出てきた身としては、やっぱり少なからず自分と重ねて読んでしまうもんですね。
-
自分が地元に転勤したときのことを思い出して、主人公に共感した。
故郷を「中途半端」だと言うのもよくわかる。
嫌いではないけど特別好きなわけでもない。
それでも帰る故郷があるのはいいなと思った。