チョコレートの町 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575515954

作品紹介・あらすじ

不動産会社の支店で店長の遼は、故郷にある店舗に一時的に赴任することとなった。シャッターの下りた商店街、傍若無人な昔の同級生、どこか馴染めない家族…。一刻も早く元の店に戻りたい遼だが、友人の結婚問題や、父親の退職などを経て、徐々に気持ちが変わってゆく。-俺、ここに帰ってきたいのか?「故郷」を持つすべての人の胸に、チクリとした痛みと温かな想いを呼び起こす物語。

感想・レビュー・書評

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  • 共感するか、面はゆいと思うか、反発するか、人それぞれの受け取り方ができる作品。しかも、ほとんどが丸く収まって、その点では読後感は暖かい。

  • 故郷、というものへの複雑な思いが描かれる。
    いたる所で遭遇する友人、衣食住に頓着しない家族、町に漂う甘ったるいチョコレート工場からの匂い。中途半端な田舎ぐあい。
    そんな故郷が嫌で上京したのに、仕事で戻るはめになった主人公。早く都会へ帰りたいと思いながらも職場の居心地は良く、時々ふっとほだされたりする。
    嫌なところしか見えていなかったのが、一度離れてみるとイイところもあるし、地元に残る人にも理由があると分かってほんの少し愛着がわく。登場人物それぞれの思いが掘り下げられていて面白い。
    気持ちの上で故郷を持たない私には共感しづらいけれど、地元とか故郷とかを思う時ってこんな気持ちなのかな、となんだか納得できた。

  • 最後がハッピーエンドでよかった

  • 舞台は地方都市の近く、チョコレート工場からの匂いが漂う中途半端な田舎町。
    そんな町や無神経な家族に嫌気が差していた主人公の遼は、大学から都会に出ていたが、仕事の都合により臨時で故郷に帰ることになる。
    そして、色々な人、様々な出来事を通して、故郷への気持ちが変わっていくというお話。

    「地方都市の近くの町」のなんとも言えない中途半端さの描写が上手い!
    車社会、すぐ噂が広まる、地元に残った人の地元志向の強さ、外からは見えないヒエラルキー、外に出てる人の格好のイマイチさ……とかとか。
    都会に比べてなんか情けなさを感じるやつね。

    人物も、「そういう人居るよね」ってなるリアルな描写でした。
    沙知さんがとっても好き。素敵。
    あと、若槻さんも素敵。ああいう風に年を重ねたい。

  • 地方出身の主人公が地元の店舗へヘルプを命じられて東京から帰ってきて、家族や地元との関係について考え直す話。

    遼の同級生が「俺は長男だからいずれ家を継いで、嫁にも家に入って貰わないと。親を無縁仏にする訳にはいかない」と言うところで、「今時何言ってんだ」と思ったけど、昔からそう言われて育ち、それが当たり前と思ってればそれはそれで一つの考え方なんだな、とこの本を読んでいて素直に思えました。

    地元に居たくはないけど、大事に思ってない訳じゃないというところがすごく共感。
    どっちも大事っていう結論と、これからは頻繁に地元に帰るんだろうな、という終わり方が平和。

    兄の彼女で波乱が待ってるのかと思いきや、年相応の常識はないけど話してみたらいい人だったというのも拍子抜けだけど、嫌な人が出てこない安心感になってほっとしました。

  • 遼が実家を出たかった理由、深くうなづきながら読んでた。
    そうなんだよねぇ。
    でも同感する場面ばかりじゃなく、遼を若いなと思ってしまう場面も多く、それだけ私が年を取ったのかもしれない。

  • 故郷の町を歩くたびに旧友と出会い、声をかけられる遼が羨ましいと思った。
    それは、小さな町だからということではなく、遼がそれだけ慕われていることへの憧れだ。

    長い間離れていても、昔の同級生から親しげに声をかけられる。遼の場合は、同級生だけでなく、職場の同僚や上司にも頻繁に食事に誘われている。

    それだけ遼が付き合いやすく、魅力的な人なんだな、と思うのだ。
    言っていいことと悪いこと、言うタイミング、自分の立場などをわきまえて、そのときに一番ふさわしい態度を取る。
    そして、たまに本音(弱音も含む)を吐く。
    みんなから慕われているけれど、本人がそれを自覚してないところもまた、人間たらしだなあと思う(褒めてます)。

  • 不動産会社の支店で店長の遼は、故郷にある店舗に一時的に赴任することとなった。
    シャッターの下りた商店街、傍若無人な昔の同級生、どこか馴染めない家族…。
    一刻も早く元の店に戻りたい遼だが、友人の結婚問題や、父親の退職などを経て、
    徐々に気持ちがかわってゆく。ーーー俺、ここに帰ってきたいのか?
    「故郷」を持つすべての人の胸に、チクリとした痛みと暖かな想いを呼び起こす物語。

    飛鳥井さんといえば、女性同士の友情や繊細な気持ちの動き。
    また頑張りを描くの秀逸ですが、この本は珍しく男性が主人公でした。
    でも、主人公の遼の気持ち。
    凄くぅん!!“((o(・Д・o*)コクリ わかる!わかる!って共感出来た。
    故郷で何があったわけでもないし、嫌いでもない。
    でも、愛してるかって言われると…んーーー。
    私は、今現在離れていないし、故郷で暮らしてるけど、
    卒業後帰りたくなかったあの気持ち思い出した(笑)
    遼の気持ちわかっちゃうし、共感しちゃう。

    そして、遼が疎遠になっていた同級生たちとの交流や家族関係に向き合って、
    少しずつ少しずつ気持ちがかわっていくの良かったなぁ。
    離れていた事で、色んな事を見つめ直せたり本当に大切な事に気付けたりする。
    大人になっていったんだよね。
    私も、現在鬱陶しいなぁって事も多々あるけど、良いなぁって思ってる。

    チョコの香りも効果的に使われていました。
    心がとても暖まりました。物語の底に流れる優しさが良かったです。
    読んで良かったぁ。

  • 田舎から東京へ出てきた身としては、やっぱり少なからず自分と重ねて読んでしまうもんですね。

  • 自分が地元に転勤したときのことを思い出して、主人公に共感した。
    故郷を「中途半端」だと言うのもよくわかる。
    嫌いではないけど特別好きなわけでもない。
    それでも帰る故郷があるのはいいなと思った。

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著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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