ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575516302

感想・レビュー・書評

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  • 「みをつくし料理帖」が人気の作者の初めての現代小説。
    丁寧な描写で、思わぬ苦労に向き合う普通の人を描いた短編集。

    江戸の風物が出てこないので、途中は作者のことを忘れていました。
    ふと食べ物が出てくると、その描写がすごく美味しそうなので、あっそうだ、と思い出したり。
    漫画の原作として書いた物をノベライズしたそう。

    「お弁当ふたつ」
    ありがちな問題はあるけど、ごく普通に幸せな家庭の主婦だった女性が、夫がリストラされていたことを知る。
    毎日出かけていく夫のあとをつけると‥?

    「車窓家族」
    電車の窓から、夜はくっきり見える老夫婦の部屋。
    いつも同じ電車に乗っている人々はそれぞれの思いを抱えつつ、いつしか親身な気持ちに。

    「ムシヤシナイ」
    大阪のとある駅で立ち食い蕎麦をやっている老人。
    勉強ばかり押し付けられている孫の少年が5年ぶりに突然、現れる。
    こんな祖父がいてくれることは、ありがたいですね。

    「ふるさと銀河線」
    高校卒業後は陸別の町に残り、福祉の勉強をしようと思っている星子。
    兄と二人きりの家族だ。
    星子の演劇の才能を惜しむ周りの人々は‥?

    「返信」
    15年前に旅先の息子から来たはがき。
    息子が急死、老夫婦は息子が旅した道をたどる。
    陸別の、星降る夜に‥

    「あなたへの伝言」
    アルコール依存症になり、夫と別居したみゆき。
    断酒会に入り、一日一日を真面目に生活している。
    夫がくれたインコと暮らし、明日飲んでしまうかもしれないが、今日は飲まない、と。
    アルコール中毒の恐ろしさは、強烈です。お酒が体内に入ると劇薬に変わってしまう体質になったのだから、周りも協力しないとね。
    それでも互いを思い合う夫婦の気持ちが切ない。

    シチュエーションに工夫があり、しっとりした描写で引き込まれます。
    既婚の女性が皆、卒業してまもなく見合いして、すぐ結婚したというケースばかりというのがちょっとだけ違和感でした。
    真面目な普通の人に起きた問題を描いているからか。
    いや、普通よりも真面目すぎるぐらいの人を描きたかったのかも。
    漫画原作として書かれたのは、もっと前だった、ということもあるのでしょうね。
    けなげな生きかたに、優しい気持ちを呼び起こされます。

  • 漫画原作を小説化したものとは、あとがきを読むまで知らなかった。
    鉄道を舞台に家族愛、人間愛を描いて、ほんわかした作品で、読んでいて心が温まる話ばかり。
    やはり、『みをつくし料理帖』の作者ならではの短編集。
    異色作は、『晩夏光』。
    アルツハイマーがテーマで、主人公はその怖れを抱きながらも最後は・・・。老年の身には、身につまされるなあ。

  • 現代小説で短編集で、えーと多少驚いたけど、作家デビューする前に漫画原作者として書いていたお話を今回ノベライズされたんですね。なるほど。
    ずいぶんいつもの高田さんとは違う感じですけど、しんみりと苦いなかにもあたたかみのあるおはなしで、確かに漫画や映像化向きだなぁと納得しました。
    ローカルな雰囲気の列車と町の風景が目に浮かんできます。

    なんていうか、人生の苦しみも悲しみもすべて包み込んでくれる優しさや温かさが描かれていて、とても切ない。
    なんでもない幸せとか当たり前の日常への感謝とか、ほんとにギリギリの時の支えになるものをもっと大切にしないとね。

    ぜんぶ素敵なんだけど、
    房総半島を各駅停車で周る「お弁当ふたつ」
    アルコール依存症に苦しむ「あなたへの伝言」
    認知症に脅えるおばあちゃんの「晩夏光」
    梅桃桜が16年ぶりに再会する「幸福が遠すぎたら」
    それから、表題作の「ふるさと銀河線」あたりがぐっときました。

  • 短編集。
    加速度的に廃れていく故郷。
    町の人々はどんどん外へ出ていき、かつては満員になった銀河線の車内もまばらな乗客がかろうじて利用するだけだ。
    高校受験を目前に控え、願書の提出期限も迫っていた。
    出願変更が進路を変える最後のチャンスとなる。
    少女は銀河線で運転手をしている兄を思う。
    全国演劇コンクールで個人優勝を成し遂げた星子。
    日々寂しくなっていく故郷への深い愛と、演劇にかける夢、そして不安。
    未来は大きく拓けている。
    そして未来は自分自身の手で作っていくものだ。
    「故郷は心棒」という言葉がちょっと胸にしみてきた物語だった。

    夫婦、親子、祖父と孫、兄妹、そして電車に乗り合わせただけの見知らぬ他人同士。
    それぞれの間に流れる心の交流が、あたたかな流れとなって私の中にも流れ込んでくる。
    あたたかなだけではない。
    明日を生きていく一歩を、力を、強く感じさせてくれる物語たちでもあった。
    「晩夏光」はすこし色合いが違う物語だったけれど、なつ乃の立派な生き様を描いている。
    「車窓家族」は本当に心あたたまる物語だった。
    そして巻末にあった寺山修司の「幸福が遠すぎたら」。
    初めて読んだけれど、強く印象に残る詩だった。
    「さよならだけが 人生ならば 人生なんか いりません」
    人は人と出会い、別れ、それでも生きていく。
    人とのかかわりの中にこそ、もしかしたら人生の意味があるのかもしれない。

    ことぶきジローさんに紹介していただいた本です。
    ほろ苦いところもあったけれど、あたたかくて優しくて、それでいてシッカリと根のある強さを感じさせてくれる本でした。

  • 著者の高田郁さん、何気にお初だったりします。
    元は漫画の原作で、それをリライトしたものとか。

    様々な人生の岐路を切り取ったような、
    そんな物語たちの連作短編集、でしょうか。

    それぞれに“電車”がモチーフに入っているのも、興味深く。
    北海道に東京、そして京都に大阪、個人的にも懐かしかったりも。

    少し哀しくて、でもほっこりと暖かくて、、
    中でも印象的だったのは「返信」の一編。

    零れ落ちてきそうな星空の中で、懐かしい人と出会う、
    想い出の鍵は様々にあれど、ただ美しいと、感じました。

    実はこの方の『みをつくし料理帖』や『銀二貫』は、
    読書会でも何回かおススメされていたりします。

    あらためて手に取ってみたいと、考えています。

  • 髙田郁さんの本は「みをつくし料理帖」シリーズと「銀二貫」を読みましたが、すべて時代小説。
    そして、全て大好きな本。
    この本に収められている連作短編9編のうち8編は髙田さんの漫画の原作を手掛けていた「軌道春秋」を小説にしたもの。
    やっぱり髙田郁さんはいいなぁ…
    中でも「晩夏光」は胸が締め付けられました。

  • みおつくし料理帖を読んで以来、大好きになった
    高田郁さんの現代小説。
    しかも「ふるさと銀河線」と聞いて、すぐに一昨年立ち寄った陸別駅を思い出し、懐かしさ半分で読み始めた1冊。(余談だが、鉄道好きの主人が、廃線になった跡地を利用してできる体験運転をさせてもらった。すごくいい思い出になったようで、時々思い出したようにこの話をします。よっぽど嬉しかったんだろうなぁ。)

    個人的には最初の「お弁当ふたつ」で涙。
    その他も心にぎゅっとくる内容で印象的だった。

    のらりくらり読んでいて途中になっていたのを、
    5月末にようやく読了。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「お弁当ふたつ」で涙。」
      とっても良い関係です。羨ましい、、、
      「「お弁当ふたつ」で涙。」
      とっても良い関係です。羨ましい、、、
      2014/06/11
  • 9編からなる短編集。
    「故郷って、人間にとっての心棒なんだと思うんだ。」
    故郷を出る者、帰る者。
    楽しい話ばかりでは無く、読んでいて辛い話もある。
    人と人。指先ほどの繋がりですら温かくも心強い。

  • 両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で揺れ動いていた…。苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を描く

    連載マンガの原作として描いた作品群を小説化したものだという。そう知るとマンガの方も読みたくなるが、映像化しても面白そうだ。各作品ともやや薄味なので演出の余地はかなりありそうだが。
    (C)

  • 珍しく高田さんの現代小説。
    9編の短編が収められており、題名にある通りすべて鉄道がテーマのお話です。
    短編なんだけど、すべてきちんとテーマがあり、きちんとまとまっています(あたりまえですが)
    そのテーマも多岐にわたりそれぞれ主人公の人生を垣間見せてくれます。
    高田さんはもとは、漫画の原作作家さんだったそうで、これらは漫画の原作として書かれたものを今回小説にされたそうで、断然小説として読むほうが味わいが増すと思いました(その時の漫画家さんには悪いのですが)

    ≪辛いことや悲しいことが多くて生きにくい世の中で、幸福は遠すぎて、明日に希望を見出すことも難しいかもしれない。それでも遠い先にある幸福を信じていたい。≫
    という作者の思いが込められたこれらのお話、忙しい日常の中で忘れがちなことや、見過ごしていることをふっと思い出させてくれるそんなお話です。

    • カレンさん
      nyancomaruさんはコミックも読まれているんですね?
      済みません、読まずに勝手なこと言っています。確かに漫画家さんと二人三脚で試行錯...
      nyancomaruさんはコミックも読まれているんですね?
      済みません、読まずに勝手なこと言っています。確かに漫画家さんと二人三脚で試行錯誤した、とあとがきにありますね。
      機会があれば、コミックも読んでみます。
      2014/04/28
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「コミックも読まれているんですね?」
      はい。最初どうしようか迷ったのですが、結局購入して読みました。
      絵を描かれている深沢かすみは、単独...
      「コミックも読まれているんですね?」
      はい。最初どうしようか迷ったのですが、結局購入して読みました。
      絵を描かれている深沢かすみは、単独で「本棚の神様」と言う、高田郁に影響を受けたような、マンガを発表していてます。
      2014/05/08
    • カレンさん
      猫丸さん(改名?)こんにちは。
      いつも感想を読んでいただいてありがとうございます。
      私は最初、コミックでお話と作画の分業というのがよく理...
      猫丸さん(改名?)こんにちは。
      いつも感想を読んでいただいてありがとうございます。
      私は最初、コミックでお話と作画の分業というのがよく理解できなかったんですが、まあ、作詞家が作った歌をほかの歌手が歌う、ということと同じなんですが・・・深沢さんはもともと高田さんの作風を描かれる方なんですね。
      2014/05/09
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