- 本 ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575517170
感想・レビュー・書評
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最近宮下さんの作品読みすぎでは?ってくらい読んでるけど、基本全部好き。こちらもよかった。
他の方の評価・コメントを見ると、意外と高くないことに驚いたけど、好みは人それぞれなんだと改めて感じた。
前情報無しだったから、タイトルと表紙のちょっと暗いところから、ホラー要素でもある?と思ってた。そんなことないです。むしろ心温まる。タイトルはともかく、表紙は明るくしても良かったのでは、、、
どこかの国の言葉で晴れという意味のある店名「ハライ」に訪れようとする人々の短編集。
予約が取りにくくて、いつもいいにおいのする町のレストランに行くときって、どんなときだろう。そういうちょっと特別なお店って、素敵だよなぁ。
登場人物はみんな何かしら問題を抱えてる。それが深刻かどうかは人の感じ方次第だけど、最後には明るい光が見える。
作品には描かれていないけど、ハライでおいしいものを食べたら、元気が出て、また前を向けるんだろうな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりの宮下奈都さんの作品。
レストランを舞台に6組それぞれのお客さんの物語。
レストランでのお話かと思いましたが、レストランに来る事になった経緯までが中心となっています。
それぞれの物語は派手さは無いのですが、生きるってそうなのかもと思わされます。解決してスッキリするお話ではありませんが、帯に書いてある、「足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。」そういう事か、と。
どう思い考えるかは読者次第と言われているような感じがしました。 -
『いつもお客さんでいっぱいで、あたたかなにぎやかさに満ちている。何を食べても素晴らしくおいしいから、お客さんたちはつい笑顔になってしまう。ハライ。俺の憧れの店だ。』、6つの短編の6人の主人公がこの人気レストラン『ハライ』に10月31日の午後6時という偶然にも同じ時間に赴くことになるまでのお話が展開します。
6つの短編から構成されています。ありそうな話から、いや、そんなこと絶対ないでしょうという設定まで極めて多彩です。男女、年齢そして境遇もバラバラなのでキャラも被りません。
そんな中で、えっ!と驚いたのが〈予約2〉の主人公でした。最初この方の境遇が理解できなかったのですが、『どうして私はいつも身内からさりげなくニュースについて聞かれるのだろう。どうしてそれにきちんと答えることができないのだろう。』という表現から彼女が認知症であることが分かります。認知症の人を看る視点ではなく、認知症の人の側からの視点。これはある意味とても新鮮でした。行ってしまったり、戻ってきたり。そんな彼女の薄れ行く記憶の彼方にもこのレストランの名前が残っていました。
『自分ひとりで塞ぎ込んで息が詰まって、もうどこにも逃げ場がないように思えるときに、誰かに笑ってもらえたら、さっと気が晴れたりすることもあるのかもしれない。』どこかの言葉で『晴れ』の意味だという『ハライ』。みんなの憧れるレストラン。
何だか取り止めのない、まとまりのない話が展開していくようにも感じますが、この作品は最後の最後の場面で悩んでいる人が一歩前に進むためのヒントをくれます。
仕事で失敗をして落ち込んでいる時、取り返しのつかないことをしたと苦しんでいる時、そんな時に、この「誰かが足りない」という一見すると不安定なこの書名の意味するところが、少し違う視点から優しく声をかけてくれる、そんな作品だったと思います。 -
予約で埋まっているはずの席が、ぽつんと空いている。
誰かが足りない。
誰かが足りない。(私は)いつもそう思いながら生きてきた(かもしれない)。大事な何かが足りない、その答えを探りながら私は恐る恐る読んでいたのかも。
足りないのは、もしかしたら、私ー。
ドキリとした。こんなに気持ちがはまるとは思っていませんでした。表紙のレストランらしきテーブルの椅子の絵、ミステリーの要素(誰かが消えたとか)があるかと思っていたら違った。
煉瓦造りの古い一軒家、屋根に蔦を這わせ建っている、予約を取るのも難しいレストラン「ハライ」。
10月31日午後6時、たまたま店に居合わせた客らの物語。
印象的だったのは予約4
母の病気、家族の形が変わってしまってから、部屋に引きこもっている主人公、僕。僕は、ビデオカメラを回してなければ外へ出られない。人に会えない、向き合えない。そんな兄の心を解きほぐす妹遥香と篠原さん。
「ビデオを通して話すのは、過去に向かって話しているようなものではないですか。今、ここに目の前にいる私を見て話してください」
篠原さんは言う。自分がいじめに合った時、遥香は私をぎゅっと抱きしめてくれた。遥の温かさが今だと気づいた。もう過去のことで震えたり泣くのはバカバカしいと思えた、と。だが、僕は生身は脆い、苦手だと。
そんな僕だが、徐々に心のリハビリをしてゆく。今を生きている目の前の相手に自分を重ねた。
10月の青い空。妹たちの笑い、美味しい食べ物。
笑い、涙、喜び、悲しみ、驚き、みんな「今」。
予約6も良かった。
何かあったときに乗り越えるコツを教えてもらいたい、と。あたし、不安なんです、大きなショックに弱いんです。精神力もないし、機転も利かないし。
一緒に共感してくれる人も必要だが、塞ぎ込んで息が詰まって、もう逃げ場がなくなったとき、誰かに笑ってもらったら気が晴れたりする。
笑っていいんだ、笑ったらいいんだ。そしたらもう怖くない、失敗も生きてゆくことも。
この言葉で気持ちが楽になりました。
好きなところ
誰かが足りない。そう思えるのはしあわせなことではないだろうか。誰かを待つ、満たされる日を夢見ることができるのだから。 -
おいしいと評判のレストラン「ハライ」。
6組の客が前を向いて一歩踏み出そうと決心し同じ時に「ハライ」を予約する。
認知症に対する葛藤。
人の失敗の匂いをかぎとってしまう重たい心情。
経験したことがあるかのように心の動きを見事に描いている。 -
何かをなくした人々が一歩を踏み出す…そんなお話。6話の短編集。
6話共「ハライ」というレストランに10月31日の6時に予約を入れるが、実際ハライに関する描写はあまりなく、幸せの象徴みたいな感じに描かれている。でも、温かいレストランに心のこもったスープ…それだけで立ち直れそうな予感があるから不思議だ。私もハライに行ってみたいな~ -
ハライという、レストランを訪れた何かしら問題を抱えた人達のお話。短編で、関係ないお話しなのだけれど、ハライという、レストランが共通項なので、面白く読めてしまう。電車に乗っていると、自分の知らない人生が人の数だけ有るのだなと思うそれに、似ていた。
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誰かが足りない。、
いつも予約でいっぱいの美味しいお店。
そこへの予約1.2.3.4.5.6.
6つの短編から成り立って、みんな繋がっていく
同じ日にそのお店「ハライ」
10月31日
期せずして同じ日の予約。やはり宮下奈都は素敵だ。
それぞれの人に投げかける眼差しが優しい。
読めば読むほどこの作家が好きになる。
本文よりー
しあわせな記憶がこの人を支える
思い出せるしあわせだけではない。思い出せない無数の記憶によっても人は成り立っているみたいだ。
本文よりー
失敗自体は病じゃないんだ。絶望しなければいいのだ。
苦しんでいる人を助けられたらと思う。
作品の中にホルストの「惑星」が出てくる
その水星
ユーチュブで聴くと
馴染みの曲で嬉しかった。 -
なかなか重いなぁと思いながら読み進めた。
何かしらを抱えている登場人物がリアルすぎる。今この日本のどこかにいるんだろうなぁって思える人たち。
光と言えるほどのものはないけど、何かしら自分の中で消化して折り合いつけて生きていこうと決めた登場人物がハライに集まってくる。
人生はそう簡単に大きく変わらないけど、自分の捉え方で光のある方に向かっていけると気づかせてくれる。
この本を読んでなにかの渦中にいる人が救われてほしい。 -
読み終えた今、日曜の夜ながら心がぽかぽか温かくなりました。
"誰かが足りない"
心の拠り所のないような、淡い喪失感のような、この感覚。
普段から意識しているわけではないのに、言われてみれば既視感を覚える、この「足りない」という感じ。
1つ1つのエピソードを通して、ここにはいない誰かに思いを寄せました。
静かで淡々としたこの物語、章を追うごとに音楽が聴こえ、色や温度を感じるようになってきます。
この、物語が動き出すような感覚が絶妙で、おまけに美味しくて特別ながらも、ぽつん、と所在なく佇んでいるようだった「ハライ」が、最後はとても温かく居心地のいい場所となっているのが印象的でした。
「誰かが足りない」という、すこし淋しさを感じさせるようなこの言葉が、いくつものエピソードを下地に、最後のページで一転してこんなにも温かい意味を持つだなんて。何度も繰り返し読んじゃいました。最後のページ、だいすき。予約6のお話も。
それから「抽斗(ひきだし)」とか、「薬缶(やかん)」とか、あまり漢字で見ることのない言葉をあえて漢字で書いていたように、1つ1つの言葉が丁寧に選ばれていたのも心地よかったです。
マイナスを、マイナスと思われるものをプラスに持っていく力、というのはこんなにも心を温かくしてくれるものなんですね。
著者プロフィール
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