図書室のキリギリス (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 1082
感想 : 103
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575518184

作品紹介・あらすじ

バツイチになったのを機に、資格を持たない"なんちゃって司書"として高校の図書室で働きはじめた詩織。慣れない仕事に戸惑うものの、生徒たちと本の橋渡しをしたり、謎めいた本の来歴を調べたりするうちに、次第に学校司書の仕事にやりがいを覚えるようになる。-自分の道を歩きはじめる女性と、読書を通して世界を広げていく高校生たちの姿が爽やかな感動を呼ぶ、ハートフルブックストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。
    初読みの作家さんです。
    図書館でずっと、借りっぱなしにしていて、読まずに返却せず、ちゃんと読んでよかった本です。
    タイトルがちょっと地味ですよね。『図書室のキリギリス』では。

    主人公は夫が失踪して三年経ち、離婚届を提出した高良詩織。
    友人の音楽教師の井本つぐみの勤務先の高校で、司書の資格がなくても勤務できる、学校司書として働き始めます。
    「キリギリス」というのは、つぐみが真面目に教師となった「アリ」で自分が遊び惚けた「キリギリス」と詩織自身が名づけた言い回しです。

    そして、詩織には物に刻まれた思いを感じ取ることができる能力があります。

    書名がたくさん出てきて、読んでいるだけで楽しくなりました。
    ストーリーはあっても、なくても、高校生たちと詩織の会話を読んでいるだけで楽しいです。
    そして、私の大好きなビブリオミステリーの要素もあります。
    前任の学校司書の永田さんが、なぜ年度末まで勤めずに急に学校を辞めたのかから始まる謎を解いていきます。
    最後は、夫がなぜ失踪したのかも判明します。

    『ハリーポッター』に出てくるダンブルドアみたいな校長先生。
    星野道夫の『十六歳のとき』を読んで、旅に出る男子生徒の大隅くん。
    図書委員で大学の英文科を目指して、オー・ヘンリーやサキ、そしてE・W・ヒルディック『マガーグ探偵団』を読む楓さん。
    など個性豊かな生徒たちが、色々な本を読んでいます。

    書名がたくさん出てきて、知っている本でも、未知の本でも、面白くてわくわくしてくるのは、私のブックガイド好きが高じた為もあると思います。

  • 夫の失踪後3年経過。離婚が成立した詩織は友人のつぐみが務める高校で司書の仕事につくことになった。物に残る残留思念を読み取れるという少し変わった力を持つ詩織。司書の仕事やたくさんの本たち、それをめぐる人々に触れて知ってゆくたくさんの喜び。

    作中にたくさんの本が登場するのでブックガイドとしてもいいし、詩織の私生活のお話もあるし、司書というお仕事小説でもあるし、高校生たちの進路や生き方をめぐる青春小説でもあり、本を手掛かりに何かを探すという推理小説でもある。そして全体を流れるのは優しい感じ。
    これは面白かった。と同時に自分の読書の仕方を見つめなおしもした。「ただひたすらに読み漁る」という読み方だと気づいてしまった。数をこなし何冊読んだかを誇っているような、そんな読み方。自分の性格をあらわしているなと思った。といってそれを否定してもいないのですが。
    この本の中で、ブック・リテラチャーってやつやってて「人に紹介して、共有して、あれこれ話し合って楽しむ」なんていう贅沢な本の堪能の仕方があるなんて初めて知りました。好きな本が肴なのだったらポジティブな話ばかりがでるのだろうし、楽しそう!
    ある意味このブクログもそういう側面がありますよね。実際この本を読もうと思ったのもある方がブクログにレヴューを載せていたからだし。
    どうあれ、本が好きな方にはおすすめの本。ささくれた気持ちがほろほろほどけてゆきます。

  • 「真っ当な司書は、好奇心で元利用者の貸出履歴を閲覧して内容を友人に漏らしたり、貸出履歴から思考や行動を分析して一面識もない元利用者に会いに行ったり、などということは決してしません。」

    丁寧な文章と人物描写、必要性に疑問のある超能力設定、図書館業務の詳しい説明、作中図書を1冊ずつ紹介した巻末附録。この本には、評価の対象になる要素は他にも色々あります。しかし本職としてレビューの形でお伝えしたいことは最初の一文に尽きます。
    本を借りたら会ったこともない司書が好奇心から貸出履歴を見て他人にも話し、こちらの思考や行動を探ってある日突然訪ねてくる。そんな図書室/図書館を誰が安心して利用できるでしょうか。
    あれが主人公の行動として肯定的に描かれていて、作中でその評価が覆されることはないと確認できた時点でもうだめでした。読書状況は「いま読んでる」ですが、これ以上読み進めはしません。

    個人情報保護の観点から、どの図書館も貸出履歴の扱いにはとても気を遣っています。返却と同時に記録を削除し、利用者本人の履歴照会にさえ応じない(応じられない)所も少なくありません。その一方、カウンターで「私が予約してる本、今誰が読んでるの?」「この本を読みたいんだけど誰の研究室に備え付けてあるの?」と訊かれることもたまにあります。
    ただでさえ知名度の割に現実と乖離したイメージが一人歩きしがちな職業なのに、悪気なくこうした誤解を広められるのは本当に困るのです。

    なまじ作者さんの図書館業務の知識や本への愛着が伝わってくるだけに、「良くないと知りつつ」軽い気持ちで職業倫理に背く司書が主人公に据えられたこと、この本がどのレビューサイトでも「理想の司書、素敵な図書室を描くハートフルストーリー」として高評価を得ていることが、とても残念でならない。

    • syoriさん
      同感です。
      フィクションとはいえ、わたしもとても残念に思いました。
      同感です。
      フィクションとはいえ、わたしもとても残念に思いました。
      2020/06/22
  • 作者の読書に対する造詣の深さが存分に発揮された作品。
    高校の図書室って思い出せない。司書さんがいたら、行ってたかな。
    お話の中で取り上げられた本を、あと書き的なところで作者が掘り下げてくれて、読んでみたくなるサービスまで。

  • 音楽教師の友人からの紹介で資格はないが学校司書として図書室へ勤めることになった詩織。男子学生が自分と同じ誕生日に亡くなったカメラマンである星野道夫さんの最後の写真を探しに図書室へやって来る。詩織から渡された「旅をする木」を読んだ男子学生は後に北海道へ旅に出かける。読書を通して広げられていく彼らの世界。私もこの本と続編の図書室のピーナッツ、詩織によって読書の世界が広がった。



  • なんだかもう、夢中で読みました。

    本に触れるとそこに残った思念や感情を
    読み取れる学校司書。

    この怪しい設定は、少しも怪しくないかたちで
    とても効果的なスパイスとして、あちこちに
    振りかけられている。

    本にまつわるミステリーの数々も、
    成長してゆく生徒たちも、詩織も、
    何もかもが素敵だった。

    物語の中に散りばめられた多くの本は
    これから私の読書歴に加わるかもしれない。

    本が好きなら、三倍は楽しめる本です。

  • あまり行儀はよろしくないが小説をはしご読みしていると、思いがけずあっちで読んだ時に出てきた言葉がこの本にも出ている、という謎の再会を果たすことがある。
    「日常の謎」つい先日、乾くるみ著の「蒼林堂古書店へようこそ」でも似たような話を目にした。
    特に意図してはいなくても、本を読んでいるとこういうことがあるので面白い。

    本書は学校図書館に学校司書として勤務することになった主人公、高良詩織のお話。
    そして、本を手にすると、それまで読んだ人の感情が残留思念として流れ込んでくることがあるという不思議体質の持ち主でもある。
    本を中心に起こる何でもないような、でもなんだか気になる日常の謎を解こうと詩織や図書委員が一緒に、時には詩織1人で奔走する。
    司書と生徒は実際あまり深く関わる機会はない。
    けれど、図書委員になると話は別だ。
    こういうところでしか密に関わらない関係性というものがある。
    同じ経験をしたはずなのに、やはり読んでいると羨ましいなとどこかで感じてしまう。

    図書室のお話だけに、色々な本も登場するし実際に勧められているような気分になって手に取りたいと思うような素敵な紹介が多い。
    特に星野道夫の本が出てきた時は大きくうなずきながら読んでしまった。
    私は小学校の教科書で読んだ「森へ」という話が好きだった。

    図書司書というと、憧れを抱くと同時に、偏屈でプライドが高く、自己のやり方を曲げない頭の固い人間というイメージがどうしてもある。
    恐らく高校の頃の、平和とは言い難かったが自分なりに戦った2年半ほどの図書局時代を思い出すからだろう。
    あの頃の自分がこの本を読んで司書の気持ちを汲めていればまた何か違ったのだろうか。
    それともそれはそれで、やっぱりこの人のやり方にはついていけないと頭を抱えたのだろうか。
    学校の図書館という場所が、生徒にとって寛げて、またいろんな本との出会いがある場所として開けているこの直原高校は理想であり夢だなぁと思う。

  • 離婚した高良詩織(たからしおり)は学生時代の友人である音楽教師、井本つぐみから、自分の働く高校で学校司書を募集している話を聞き、応募し、そこで学校司書として働くことになります。
    詩織には不思議な力があり、ものを手に取ると、そのものに刻まれた思いを感じ取ることができます。

    詩織や司書の前任者の永田さんの学校図書館に対する熱い思いが良く伝わってきます。
    本好きは読み終わったら、あたたかな気持ちになるのでは。

    本が本を呼ぶというか、色んなつながりをもって人と人をつなげたり、視野が広がったり。

    本好きに読んでほしい。
    学生時代、こんな司書さんに出会いたかったです。
    司書という仕事にも俄然興味がわいてきました。

    ※ この本には実際に出版されている本がたくさん出てきます。それを読んでみたいと思うのも、本から本へのつながりになるのかな。

  • 学生の頃、図書室や図書カード、司書の先生の存在は自分にとって大きかったから、話がスラスラ入ってきた。

    主人公のもつ、物から人の残留思念がわかる不思議な力は、普段ひとり対本で静かに交わされる思いをわかりやすく表現するためかな、と思った。

  • 「図書室のピーナッツ」という2作目を先に読んでしまったので、忘れたころに1作目を読みました。わざわざそんなことする理由は、2作目から読んでもとても面白かったので、是非最初から読んで行きたいと思ったからであります。
    さて、本作もがっつり図書館と本の話で非常に楽しめました。重要な位置に星野道夫の本が出てきたり、ちょいとだけグインサーガが出てきたり、にやりとする瞬間が沢山ありました。
    本好き御用達みたいなジャンルなんで、結構ニッチなのかもしれないけれど、物語としてきっちり作られているので変に色々な事件や衝撃性に頼っている本よりは相当いいと思うんですよね。
    なんで図書館で働くことになったのかもしっかり読めたので、また2作目読んでみようと思います。3作目も出ているようなので楽しみです。

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