たった、それだけ (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575519617

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  • 「逃げ切って」。贈賄の罪が発覚する前に、望月正幸を浮気相手の女性社員が逃す。告発するのは自分だというのに…。正幸が失踪して、残された妻、ひとり娘、姉にたちまち試練の奔流が押し寄せる。正幸はどういう人間だったのか。私は何ができたか…。それぞれの視点で語られる彼女たちの内省と一歩前に踏み出そうとする“変化”。本屋大賞受賞作家が、人の心が織りなす人生の機微や不確かさを、精緻にすくいあげる。正幸のその後とともに、予想外の展開が待つ連作形式の感動作。

  • 望月正幸という、優しくて強くて弱くて優柔不断な男をめぐる六人の男女の物語。全ての話は独立しつつも繋がっていて、最後に優しく輪が閉じる。

    優しい男って誰にでも優しくて結局は優しくない、といつも思うけど望月はまさにそれで、会社の悪事を背負わされ、ずるずると浮気をし、結局は一番大事にしていたはずの家族を捨てて逃げることになる。

    不倫相手、姉、妻、娘の教師、娘、娘の同級生それぞれが思いをはせる正幸とは。

    読み終わったあと、タイトルの「たった、それだけ」の意味をかんがえている。

  • 贈賄の罪で逃亡する男と、彼と関わりのある人達のお話。
    人に言えない本心が描かれている。それぞれの「たった、それだけ」への執着。登場人物の本心を受け止めながら読み進めるので、少し悲しかったり、辛かったり、反感を持ったりする。
    ラストは、「これから良いこと一杯起こるぞぉ」って予感で終わりる。その後のストーリーが頭の中で自然と生まれてくる感じ。
    2014年刊

  • 結局ある男性の身に何が起こっていたのか分からないままだけど、表面的なことだけでこんなにも人の人生が変わってしまうという恐ろしさや、周囲の人の痛みを強く感じる本だった。
    特に妻の傷はとても痛々しいものだった。
    強さが見えれば見えるほど辛くなった。
    どんな思いで日々を過ごすのだろう。
    唯一の救いは必要ないと逃げたけど、大切に思っていたこと。
    読後感は温かさを感じられて良かった。

  • よかった。
    希望に向かう余韻が残る終わり方でよかった。
    父親がなぜ娘の出生届を出す時「涙」にしたのか、それも第6話から読み取れる。
    宮下さんの作品にはいつも感動させられるけど、この作品はいつもよりもっと重くて深くて、でもとってもよかった。


  • 分かっていても、知らないフリを。
    あの人も知っている。私がまんざらでもないこと。
    暗い部屋の中で、優しくすり寄るあなたに。

    知らないフリ。安全に生きていく術。
    でも立ち止まり続けたその足元には枯葉ばかりで、
    雨が降ったら真っ逆さまに落ち続けるかもしれない。

    歩き続ければ、地は固まるかもしれない。
    気づくのは振り返ったあとだけれど。
    切り傷もすり傷もたくさんあるけれど。

    手を離す。元ある場所へ。
    私も帰る。誰かが待つ場所へ。

  • 贈賄の容疑で失踪した、望月正幸。
    彼にまつわる人々をえがく、連作短編集。
    いつも笑顔なのに、心の距離を感じてしまう〈冷たい〉人。
    あとから振り返って、何ができたのか考えてしまう、周囲の人間。
    人と人とがかかわることの難しさがある。
    やるせなかったり、つらかったり。
    重めだけれど、淡々としていて、ふしぎと引き込まれる。
    最後は救いがあってよかった。

  • 『自分の発言を気にしてしまうのは、自分が信用できないから。そう思ってるでしょう。』
    『ほんとうはね、自分ではなく、相手を信用していないんですよ。(188より)』


    これが私が一番響いた言葉。
    付き合いの長い友人と居ると楽なのは、『信用』があるからなのかってなんだか腑に落ちました。
    相手と自分をまるっと受け止められる関係性って居心地がとても良い。


    犯罪を犯した望月正幸。
    その人の愛人・妻・姉・娘etcそれぞれの視点で描かれています。


    それぞれから語られる正幸はいつも優しくて、でもどこか壁がある。


    犯罪者に関わったそれぞれの人生が、いたたまれなくて悲しい気持ちにもなるけれど、最後は光が差して優しい気持ちになれます。


    宮下奈都さんにもハマってます(๑>◡<๑)

  • 会社組織の中で贈賄にからんでしまったひとりの男性、望月を、周りの人々の目線から描く連作短編集かと思っていた。でも、これは望月の人となりを周りから語らせるものでもなく、ましてや贈賄に至った経緯を探るものでもなく、彼と関わった、あるいは関わらざるを得なかった女性たちの、それぞれが変わっていく物語だった。場所も時も違う中で、彼女たちは望月をきっかけにして何かを乗り越え変わっていく。その描き方が見事だったし、こんな風に加速度のついた展開になるとは思わなかった。読後感がよく、しんどい状況にありながらもなぜかほっとする。逃げ切って。その言葉も深い。

  • 私の想いは"たったそれだけ...."

    それはほんのわずかなことでしかない
    たったひとつだけのことだったのよ....と
    まっすぐ素直に受け止めることができれば
    それは儚くもありながらとても美しいことのように思えます。

    けれども、それが例えたったそれだけのことの想いであったとしても
    その心の想いを強い気持ちで露にされてしまうと、まるで
    恩に着せているような、押しつけがましい、単にエゴを追及しているだけの
    自己満足な印象を与えているようにも感じられてしまいそう...

    "逃げているように見えても、地球はまるいんだ。
    反対側から見たら追いかけているのかもしらねーし"

    たったそれだけことでも
    自分の中でだけなら、見よう(捉えよう)によって悪を善に変え
    明るくいくのはとてもいいこことだと思う。

    けれどもここに対人が絡んでいたとしたなら..?
    自分にとっては善良であるたったそれだけの想いは、相手にとっても
    果たしてよい想いであってくれるのでしょうか...

    たったそれだけのこと。
    なのになんだかとっても複雑な気持ちになりました。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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