二千七百の夏と冬(上) (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575520064

感想・レビュー・書評

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  • 弥生時代(縄文時代)を舞台にした小説は少ない。荒唐無稽な物語は別として、文字資料が残っていないので、歴史小説として描きにくいからだろう。それでも私は、私がいつか描きたいという野心があるので、出来るだけ読んできた。

    でも、このブクログ登録した小説だけでも、読むと多くは失望した。
    「吉備大王の物語」(藤井正)、「古事記外伝」(多羅尾整治)、「女王」(連城三紀彦 厳密にいえば歴史小説ではないが著名作家にしてはトンデモ作品だった)、「夢追いて卑弥呼」(虎尾幹司)

    一部合格作品は
    「縄文4000年の謎に挑む 福島市宮畑ミステリー大賞作品集」(素人作品ながらレベルは高い)、「日御子」(箒木蓮生)

    でも1番刺激をもらったのは、日本の話ではなく、3万5千年前の西欧の話「エイラ地上の旅人」シリーズ(ジーン・アウル)である。科学的な知見は尊重しながら、1人の少女の一生がクロマニョン人の誕生・変革そのものを表し、かつハラハラドキドキがあり、恋愛あり、何よりもエンタメ作品として成立していた。唯一の弱点は、語ることがありすぎるのか、シリーズ後半は冗長になったことである。

    さて、本書はどうだろう?

    上巻は、この物語のプロローグだと思う。まだ物語としては始まってないよね?

    BC8世紀の北関東の1つの縄文人ムラの少年(15才から16才へ)ウルクの話である。これからどうやら縄文ミーツ弥生という話になるらしい。

    流石、直木賞作家の古代小説。科学的知見に関してはツッコミ所が見当たらない(←エラソー。ごめんなさい)。その上で、作家的な想像を膨らませて「創り込んでいる所」が多々ある。

    ◯数の数え方は独創的。20までしか数の単位はないが、一般的長さは、親指と人差し指の間で「1ヒラ」(17.5センチ)と単位名をつけていた。因みにウルクは森の中で四つん這いの肩高が8ヒラ(140センチ)を超えている熊に出会う。月の輪熊でそんな大きな熊はいないから、仲間に笑われる。しかしそれはとんでもない熊、ヒグマだった。
    ◯名前の付け方は苦労している。イー→猪、カァー→鹿、ヌー→犬、オホカミィ→狼、クムゥ→熊(月の輪)、ミミナガ→ウサギ、キナリ→蝉、コーミー→米、海渡り→渡来人(未知のヒトという意味もある)、オチュコチョ→セックス、鼻曲り→鮭、最初わからないが、しばらく読むとわかる様に工夫している。
    ◯抜歯の習慣・意味付けは、考古学成果をふんだんに活かしている。ムラ中の階層、成人儀式という意味合いも持たせながら、少年が物凄い痛みに耐えている時に「歯抜きというのはきっと、さんざん獣を殺し、肉を喰らい、骨や腸を道具や飾り物にしてきた報いを受け取ることなのだ」と悟るのは、とても新鮮な発見だった。そういうアニミズム社会に生きる人間特有の心得を獲得する「意義」もなければ、何千年もこんな生産性のない事、続かない習慣だよね。
    ◯「生肉と焼き肝な服」→「贅沢な服」、「鳥の巣に卵」→「たぶん」、「夏の羽這え」→「げんき」等々彼らにしか通じない「ことわざ」言葉を「創作」している。
    ◯縄文人の生活は、神送りの儀式等含めて、かなりの部分をアイヌの民俗を参考にしている模様。
    ◯狩猟生活の知恵は、現代マタギの知恵をかなり借用しているのではないか。
    ◯土偶の意味を「女たちが子はらみやオチュコチョを教わるために持たされ、嫁に行ったり婿を迎えた後も、子どもを無事にたくさん産める守り手として手元におく女人形だ。本人が死んだり、子を産まない年になったり、子どもが死んで生まれたりすると、何処かを壊し、祈ってもらってから、本体と壊したかけらを出来るだけ離れた場所に捨てる」と説明していた。もちろん、定説ではない。が、最もよく言われている説をきちんと説明している。
    ◯裂け石(黒曜石)〈ナイフや矢尻等用途は貴重〉を採取する時、川の神に感謝を示すために水面に唾を吐く。
    ◯ヌペ(ドングリ)はアク抜きをして粉にして日常的にお粥にして食べてはいるが、貧しい食べ物という設定になっている。

    ◯ただ、秋になると男たちは日常的に果実酒を昼日中ずっと飲んでいるし、魚喰い(海人)との交易場面では盛大な酒盛りをしていて、いくらなんでもそこまでの酒量は確保できないのではないか?と疑問に思った。しかし、平安時代ぐらいになれば果実酒は一切登場しないが、縄文時代は確実に作られていたことがわかっている。問題はどの時代から何故消えたのか?ということである。

    ここ迄は良い。
    これからドキドキハラハラのエンタメ小説になるのを待ってる!
    下は、これから取り寄せて読むつもり。
    misachi68さんのレビューで存在を知った。ありがとうございます♪

    • misachi68さん
      kuma0504さん、こんにちは!
      おお〜!お読みになってますね〜!
      そうそう、序盤は言葉の意味を想像しながら読んでたんですよ。クイズ感覚で...
      kuma0504さん、こんにちは!
      おお〜!お読みになってますね〜!
      そうそう、序盤は言葉の意味を想像しながら読んでたんですよ。クイズ感覚です。
      私は歴史に疎いので、小説を読んで気になったところを調べたりしてその場限りの知った気になってます。なので、縄文生活の細かい描写に本当かどうかなんてわからないんだけど、イメージしやすくて楽しめました。

      私は下巻のワクワクドキドキがめっちゃツボりましたのでぜひkumaさんも楽しめますように祈ってます♫
      2022/10/04
    • kuma0504さん
      misachi68さん、良い本を紹介してくださりありがとうございました♪

      おお、後半ワクワクドキドキがあるんですね。楽しみです。
      上は図書...
      misachi68さん、良い本を紹介してくださりありがとうございました♪

      おお、後半ワクワクドキドキがあるんですね。楽しみです。
      上は図書館で借りたのですが、これは手許に置いておきたいと思い、取り寄せました。昨日上下巻が届きました。

      やはり、上巻は世界を説明するために説明が長々と続いています。もちろん、論文にならないように、いろんな工夫をしているので、その分長くなっているんですね。自費出版ならば、そこまでの工夫はしないのかもしれませんが、やはり人気作家は何万部か売らなければならない縛りがあるのかもしれません。現代パートを入れて、何も知らない読者にもとっつきやすくして、なおかつ、(注)の意味も持たせるというのもその工夫の一つ。その他直木賞作家は凄いなぁというところが多々ありました。

      抜歯の歯の選択に意味があったことを知らなくて、これは作家の創作かなと思い調べたら、最近の研究で明らかになったことのようです。勉強になりました。

      2022/10/04
    • misachi68さん
      kuma0504さん
      私もこれは図書館に通い出した頃に借りて読んだのでした。
      kumaさんの詳しい感想を読んでたらまた読み返したくなりました...
      kuma0504さん
      私もこれは図書館に通い出した頃に借りて読んだのでした。
      kumaさんの詳しい感想を読んでたらまた読み返したくなりましたよ。
      荻原浩さんの作品はこれが初めてだったので、他の作品も壮大なスケール感なのかと勘違いしてしまってました。他の作品ももちろん読んで好きになりましたけど、この作品がとびきり好きです。
      2022/10/04
  • 古代縄文時代へ…の一冊。

    2011年、ダム工事の現場で発見された縄文人と弥生人の二体の人骨。この二人はどんな時を過ごしていたのか…壮大な時を巻き戻すかのように描かれていく物語。

    縄文、弥生時代=土偶、土器ぐらいしか思い浮かばない自分には新鮮な世界への入り口。

    何を思い、どんな時を刻んでいたのか、縄文人の少年ウルクの成長と共にその時代を暮らしを追うのが楽しい。

    ミミナガ、クムゥ、ヌー…言葉を解読するのもまた楽しい。

    神を崇め奉る時代をまざまざと感じ、新しい地へと足を踏み出したウルクと共に下巻へ。

  • 久々の荻原作品。

    現代と縄文時代の話を交互に織り交ぜて、物語は進みます。
    縄文時代の小説を読むのは初めてで、作者がつくった造語に慣れるのに少し時間がかかりましたが、そこをクリアしてからは一気に読むスピードが上がりました。

    まず縄文人の狩。躍動感があって、一緒に狩に同行している気分になりました。ハラハラする。
    現代人より確実に知恵があるだろうし、限りなく神さまと近い場所で生きていたんだろうな、と想像する。

    現代と縄文時代がどうリンクするのか、下巻が楽しみです。

  • 縄文時代と弥生時代に生きる少年の今までありそうでなかった斬新なテーマ設定。
    ピナイの村で呼ばれる動物や植物の名前から、現代のもので何なのか想像しながら読むのがなぞなぞのようで楽しい。
    ウルクはどのような最後をとげるのか、遺跡として発見される経緯は何だったのか、下巻に期待。

  • 現代で見つかった縄文時代の人骨。
    縄文時代と現代が交互に描かれていく。

    縄文時代の描写がまるで実際に
    行って見てきたかのような臨場感で、
    縄文時代の人間が使っていた言葉や行動、
    思考をすんなりと受け入れている自分がいた。
    本当にこんな言葉を使っていたのかも。
    と思わせる作者の構成が素晴らしいと思った。

    見つかった人骨と縄文時代の主人公が
    どう結びつくのかが気になる。
    下巻に期待。

  • ダムの工事現場で発見された「縄文人」と「弥生人」の人骨、二体は男女でお互いに手を重ね向き合っていた。三千年近く前、この男女にいったいどんなドラマがあったのか?

  • 現代で見つかった古い時代の人骨を記事にしようとする香椰の物語と縄文時代の少年ウルクの成長の物語。

    ついウルクの物語にのめり込むと、ふと現代に引き戻されるようなありさまだった。

    縄文時代は当然、文献が残っているわけでもなく、個人的に興味があることも手伝って夢中になって読み進めた。描写も細かく、ひとつひとつの単語も現代の言葉に近い単語になっているため情景が想像しやすく、頭の中に映像が広がる。

    ウルクの物語と香椰の物語がどうつながって行くのか、次の巻も楽しみ。

  • レビューをみて読んでみた。この作家さんとは相性が合わないのだろう。読み進めても引き込まれない。縄文人の生活、暮らしぶりを書いているんだけど、自分の想像と違う展開でしかも情景が浮かんでこない。情景より心情を書いているからなのだろうか。
    禁忌の森に入った主人公、5歳で父親を亡くし、弱い者として扱われていたが罰のため村から追い出される。海渡りとコーミーを探して旅に出るがそこで主人公が成長していくのが下巻なのかな??

  • なかなか面白い。なんか原始的な生き方ってやつに憧れるというか、興味を持ってしまうんだよな。多分便利すぎる現代にいる自分をどこかでダサいな思ってる。

    縄文時代と弥生時代のグレーゾーン。いい視点。
    村を追われたウルク。先が気になる。

  • 久しぶりに読書。

    荻原浩氏の『二千七百の夏と冬』
    縄文・弥生時代のあいだくらいの少年の物語。
    ほんとに、久しぶりに夢中で読んだ。
    これ、ほんとに面白いよ。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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