奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
4.13
  • (86)
  • (94)
  • (37)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 1003
レビュー : 95
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575520712

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 誰でもが知っているであろうヘレン・ケラー伝の物語を、あえて日本に置き換えて小説化した著者の意気込みを評価するとともに、その作品の出来栄えにも敬意を表せざるを得ない。
    それだけで感動の物語を、そのままでは小説にした意味はない。
    著者は、舞台を青森に設定し、津軽弁を巧みに織り交ぜる。後に重要無形文化財として賞される、ボサマにして盲目の少女キワと恐山のイタコを介在させることによって、独自の物語に昇華した類稀な感動作となった。
    そして何よりも、三重苦の少女を尊厳ある人間へと導こうとする教師安の、絶望的な状況をものともせずどんな困難にも怯まない行動力に圧倒される。崇高な信念と怯まない意志力に魅せられながら、読者はたちまち最終頁に至ってしまうだろう。
    奇跡の人とは、奇跡をもたらした人=安を指すのだと述べている解説者の説に、確かに同意できる作品である。

    • kaze229さん
      全く、同感です。原田マハさんの新刊情報にはいつもワクワクさせられてしまいます。
      全く、同感です。原田マハさんの新刊情報にはいつもワクワクさせられてしまいます。
      2018/04/03
  • 祝文庫化!

    双葉社のPR
    盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女が弘前の旧家にいるという。明治二十年、教育係として招かれた去場安は、その少女、介良れんに出会った。大きな苦難を背負った少女と、人間の可能性を信じて彼女の教育に献身する女教師、ふたりの長い闘いがはじまった――。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』の著者、渾身の感動傑作!
    http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52071-2.html?c=40198&o=date&type=t&word=%E5%A5%87%E8%B7%A1%E3%81%AE%E4%BA%BA

  • かの有名な「ヘレン・ケラー」と「アン・サリヴァン」の物語を、設定や年代も揃えて青森の津軽を舞台に「介良れん」、「去場安」という人物に置き換え話が展開されていく。普段私達は言葉という伝達手段を用いて、自分の伝えたいことを伝えたい相手に当たり前の様に伝えているが、その行為がいかに本書のタイトルにもある「奇跡」的なことなのかを教えてくれる一冊。物語も感動的でとても面白かった。

  • 読み始めてすぐに
    これってサリバン先生とヘレンケラーのお話だと
    誰もが気がつくと思う

    この本に出てくる三重苦のれんは土蔵に閉じ込められている。
    平成が終わる今ですら、障がいのある我が子を閉じ込めていたなんてニュースがあるのだから,明治時代ではなおさらでしょう。

    そこへ,アメリカに留学していたアンが先生としてやってきます


    奇跡の人
    それはサリバン先生の事だと私も思う(あとがきでもありましたが)
    ヘレンケラーの努力ももちろんだけれど
    それ以上の忍耐と愛がサリバン先生にあったからこそだと思うのです。

    昔に比べれば今は障がいのある方も社会で生活しやすくなってはきた
    ほんとうのバリアフリーにはまだまだですが…
    どう向き合えばよいのか
    どうすればわかり合えるのか
    排除ではなく共生できる世の中になればよいと思う
    きれい事だけでは仕方ないけれど
    それでもそんな世の中がくればよいと思う

  • 原田マハさんの本にはいつも「生きる」とは何なのかということを考えさせられる。この本も同様であった。弘前の屋敷で蔵の中でけものの子のように生きていたれん。でもこれは生きていたのではなく、生かされていただけ。どんな障碍があろうと、人間としての尊厳は失ってはいけないという安先生の熱く厳しい指導でれんは生きることができた。
    「生きる」というのは能動的なことなのだ。自分の意思を持ち、自らの道を自由に選択して生きて初めて、ちゃんと「生きている」ことになるのではないか。とそんな風に思わされる。
    どんな障碍を持っていても、持っていなくても、人間としての尊厳は失われてはならないのだ。
    こんな風に人生を生きた人がいる。それだけで勇気をもらえてそして涙した。

  • 文庫本でのレビューではなく、単行本で発売されたときに読んで書いたレビューです。ご容赦ください。<(_ _)>

    冒頭───
     その町のいっさいの色を奪って、雪が降っていた。
     一両きりのディーゼルカーの箱から降り立った場所は、駅のホームに違いなかっただろう。けれど、革靴の底が踏んだのは、コンクリートではなく、経験したこともない深い雪だった。ホームはすっかり雪に覆い尽くされて、周囲には雪の壁ができている。小さな駅舎にたどり着くまでのわずか数メートルの間、柴田雅晴は、何度も転びそうになって足を踏ん張るはめになった。
    「だめだなあ、柴田さん。長靴を履いてきたほうがいいって、あれほど言ったじゃないですか。格好をつけて、革靴で来るんだもの。霞が関への通勤とは、わけが違うんですよ」
     慣れた足取りで一足先に金木駅舎に入った小野村寿夫は、得意そうに足踏みをし、ゴム長靴のかかとをきゅっきゅっといわせた。柴田は、参った参った、と苦笑しながら、英国製のウールのコートに降り積もった雪をはたいて落とした。
    ──────

    ヘレン・ケラーの伝記は、おそらく日本中の多くの子供が読んだことのある物語だろう。
    僕も子供の頃、間違いなく読んだはずだ。
    だけれど、それほど深くは内容を覚えていない。
    眼が見えず、耳が聞こえず、口がきけない三重苦の少女をサリバン先生がどんな方法で立ち直らせたのか、その細かなところの記憶がない。
    読み終えた後は感動したような気もするが、それも定かではない。
    この作品は、それを日本風に置き換えて、小説として完成させたものだ。
    少女の家庭教師としてやって来たアメリカ帰りの去場安(サリバン)。
    三重苦を背負った少女、介良れん(ヘレン・ケラー)。
    この二人の闘いの物語だ。
    これを読んで、あらためて“奇跡の人”の素晴らしさを思い起こすことができた。
    けものの子として扱われていた少女を、必死の思いでまともな未来のある人間に育てようとする安先生。
    そこには、幾度も挫折しそうになりながらも決してくじけることのない安の断固とした固い決意と意志があった。
    “彼女だって人間なのだから”という信念のもとに。
    安の固い信念が、れんに人間らしい心を植え付け、変化をもたらしていく。
    人としての習慣を身に付け、表現する方法を覚え、言葉という概念を理解し、一歩ずつ成長していくれん。
    苦難の壁に何度も跳ね返されながら、そこに至るまでひたすら立ち向かう安とれんの姿に、読みながら、何度も何度も涙が零れた。

    そんなれんに初めての友だちができる。
    盲目の旅芸人一団で三味線を弾く少女キワ。
    その唯一の友だちとの出会い、そして別れ。
    出会えたときはどれほどうれしく、別れるときはどんなに切なかったことだろう。
    ここでも涙があふれ出た。

    最後の最後まで、一文字たりとも疎かに読むのを許されないような、そんな緊張感にあふれた感動作。
    原田マハさんの素晴らしさをあらためて感じることのできる傑作です。

    かつて「ヘレン・ケラー物語」を読んだことのある人も、読んでいない人も、人間であるならこの作品は心に響いてくるはず。
    今年一番のお薦め作品です。

    それにしても、時代も環境も劇的に変わってしまい難しいのだろうが、今この時代にサリバン先生のような本当の情熱を持った教師がたくさんいれば、世の中も良い方向に変わっていくのだろうな、とふと思った。

  • ヘレン・ケラーの物語を明治時代の青森に移して描き直したフィクション。

    元になったノンフィクションの持つ力強さと、古くから続く強固な家族制度や、独自の風土、風習を持つ明治時代の青森という環境が見事に掛け合わさって、ぐいぐいと「奇跡の物語」にひきこまれます。
    なんというパワー。

    ヘレン・ケラーやアン・サリバンの名前がそのまま日本風に。
    翻案であることを高らかに(?)宣言しつつも、単なる舞台の置き換えに終わっていないことに、作家の「どうだ!」という気概を感じました。

  • かの有名なヘレン・ケラーとアン・サリヴァンの物語を、青森県津軽を舞台に置き換え、独自のエピソードを追加しながら語られているのが、原田マハ「奇跡の人」だ。

    --
    教師役の去場安(さりば・あん)は、とあるきっかけから、津軽の裕福な家庭に生まれた三重苦の娘・れんを教育し、人間らしく成長させるという、長く壮絶な闘いに取り組む事となる。

    れんの持つ可能性をひたすらに信じ、時には厳しく、しかし確かな愛情を持って、教育し続ける安。彼女こそが不可能を可能にする「奇跡の人 - The Miracle Worker」。
    --

    原田マハの作品は本作で二作目だけれど、登場人物の心情の描き方やストーリー構成が上手で、いつも一気に読み進めてしまう。これはぜひ映像化してほしい。

  • 2018006

    舞台は津軽地方。身分社会が色濃く残る明治時代に生まれた6歳の少女のれん。見えず、聴こえず、話せずの三重苦を背負う彼女を一人前の女性にしようと奮闘する案先生。彼女もまた、目が見えなくなる過程にある。そんなふたりの女性を軸にした日本版ヘレン・ケラーのストーリー。

    ひとは皆平等なんて嘘。目の見えない人、耳の聞こえない人、話せない人。様々な身体的特徴を受け入れる事から平等と言う意識は生まれるべきだと。

    言葉といっても色々な形があります。日本語、英語もあれば、手話、点字もあります。言葉は自分の意見や意思を表す手段にすぎない。そんな当たり前が実はものすごい奇跡なんだと思います。



  • 時は明治。弱視のアメリカ留学帰りの去場安の元に伊藤博文から書簡が届く。聾盲唖の三重苦の少女が青森県弘前の名家にいるという。
    名家故に、その子を蔵に閉じ込める私宅監置が行われる。
    見えず、聞こえず、話せず、その姿はまるで、けもののようだと。

    そう、本書はヘレンケラーとアン・サリバンの日本版。ヘレンケラーの奇跡の人は未読だが、目頭が熱くなってしかたがない。聾唖盲の人間にどうやって言葉を教えるのかと疑問であったが、やはり入りはパブロフの犬で始め、そこからは人類ゆえの学習能力の高さがモノを言う。
    しかし、教師としての覚悟が凄まじい。教員ではなく教師。克服した主人公れんももちろんだが、奇跡をもたらした去場安に感服です。
    しっかし、舞台が青森の僻地って設定が良いね。日本人の遺伝子に刻まれてるのか、醸し出すね。
    初めて読む作者でしたが、素敵な一冊でした。

全95件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

原田 マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。
2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞となり話題になった。

奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫)のその他の作品

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする