また、同じ夢を見ていた

  • 双葉社 (2018年7月12日発売)
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本 ・本 (304ページ)

作品紹介・あらすじ

250万部を超える大ベストセラー青春小説「君の膵臓をたべたい」。その著者、住野よるの第二作目が、待望の文庫化。友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女性、一人静かに余生をおくる老女。彼女たちの“幸せ”は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今”がうまくいかない全ての人たちに贈る物語。

感想・レビュー・書評

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  • 2024.12.13 読了 ☆9.2/10.0



    物語の主人公の小学生の奈ノ花は、なにかと「人生とは〜」が口癖の女の子なのですが、賢いうえにませているので、クラスの中では浮いてしまっていて友達もいないのです。

    しかし、学校の外に友達がいます。草むらで出会った悪女の黒猫、季節を売る仕事をしているアバズレさん、リストカットを繰り返す南さん、お菓子作りの上手なお婆ちゃん…
    奈ノ花は学校帰りに彼女たちに会い、様々な体験をしていきます

    ある日、学校の国語の授業で「幸せとは何か?」という課題が出されます。
    彼女は学校外の友達や、クラスメイトで絵の上手い桐生君とのやり取りを通じて、そしてそんな彼ら彼女らにとっての幸せを見て感じて、自分なりの幸せとは何かを見つけ出す物語です。



    幸せ、人生とは…自分の中に確かにあるけど出そうで出ない思いを引き出してくれるような、そんな生きる上での珠玉の名言と核心めいたヒントがつまった一冊です。

    主人公の奈ノ花が例える人生や幸せというものが、具体的でとても身近に感じられて分かりやすかったです。



    “人生とはプリンと一緒だ。
    人生には苦いところがあるかもしれない。でも、その器には、甘い幸せな時間がいっぱい詰まってる。人は、その部分を味わうために生きているんだ。”



    “人生はリュックみたいなものだから。
    背負うものがあった方が、背筋も伸びるの”



    彼女の紡ぐ可愛らしい言葉、発想の中に、核心を突くものがあり考えさせられました。

    自分も、こんな風に身軽に力を抜いて、堅苦しくなく楽しく発想できたらなと思いました。

  • アバズレさんが奈ノ花の名を呼ぶ場面、おばあちゃんが、きっと今日で最後だからとつぶやく場面。南さんも含めて、友達のいない奈ノ花に親しく接してくれた人々、そんな人たちがいなくなるそれぞれの最後の場面。本当なら、寂しいから悲しいから涙が出るはずなのに自分の中からこみ上げてくるのは、良かったね、という感情からくる暖かい涙。自分の心の内まで暖かいものに満たされてゆく瞬間、それによって自然とわきあがってくるような涙。悲しい時の涙は冷たく感じますが、嬉しい時の涙はあったかいです。

    初めて読んだ後に感想が書けなかったのがこの作品でした。読んだ後の自分の気持ちを言い表す言葉がどうしても見つからなかったから。でも何かとても幸せな気持ちになったことだけは良く覚えていて、いつか自分が辛い立場に置かれた時にまた読もう、でもそんな日は来て欲しくないね、と思っていましたが、今回二度目を読むことになりました。

    この本は悲しみ苦しみを直接に慰めてはくれませんし、人によって幸せの形はそもそも異なります。そうではなく、この本は、奈ノ花の幸せとは何かを問う姿を通して、同時に読んだ人の心の内にも同じ問いかけをしてくれるのです。

    「まるで、自分に訊かれているみたい。あなたは今、幸せなのかって。」その問いに答える時、言葉にはやはり上手く出来ないけど、明日の朝見える景色は多分違っているだろうなという気がしています。

    また、自身に迷った時に読み返したいと思います。
    「また、同じ夢を見ていた」、出会えて良かった。

    • 胡桃さん
      さてさてさん、いつも素敵なレビューを楽しみに拝見させていただいてます。


      この本は、私にも
      色んなこを気づかせてくれて、考えるきっかけを与...
      さてさてさん、いつも素敵なレビューを楽しみに拝見させていただいてます。


      この本は、私にも
      色んなこを気づかせてくれて、考えるきっかけを与えてくれました。

      ただ読み進めるにはもったいない、そんな思いで、読み進めては、立ち止まってを繰り返して。。

      読み終わってから、半日まだ本の世界から抜け切れずにいます。

      色んなことを感じてはいるのですが、どう言葉にしたら良いかわからず、感想が書けずにいます。

      みんなさんの感想を見ていたら、さてさてさんが書かれたレビューが今とってもしっくり来て、言いたい気持ちをそのまま表現してくださっていたので、ひとつしかボタンは押せないのが残念ですが、いいね!にたくさん気持ちを込めました。

      一方的にですが、同じ気持ちを共有できたような嬉しさから、コメントをせずにはいられませんでした。


      「また、同じ夢をみていた」私も、この本に出会えて良かったです。
      2020/07/16
    • さてさてさん
      胡桃さん、はじめまして
      こちらこそ、いつもありがとうございます。

      私、今は本を読み終えたその日にレビューを仕上げるというのがパターンになっ...
      胡桃さん、はじめまして
      こちらこそ、いつもありがとうございます。

      私、今は本を読み終えたその日にレビューを仕上げるというのがパターンになってるのですが、この本を読んだ当時はそもそもレビューを書いていないので、このレビューを書くのに二度目を読み返しています。一ヶ月ほど空いてからのことだったかと思いますが、ストーリーは覚えているはずなのに、何度もグッときてしまってページ数のわりに読了まで時間がかかったのを覚えています。

      私の拙いレビュー、評価いただきありがとうございます。そんな風に言っていただけるととても嬉しいです。ありがとうございます。

      「また、同じ夢を見ていた」、本当に味わいのある書名ですよね。また、読み返したくなってきます。

      引き続きよろしくお願いします。
      ありがとうございました。
      2020/07/16
  • とてもいいお話しでした、感動しました。という、真っ直ぐな感想がぴったりくる。
    これは、主人公奈ノ花の。そして、自分に訊かれているみたいな、当てはめてしまう物語だった。
    そういう考え方があるのだな。会いに行く、来てくれるという。自分もまだ間に合うかななんて思いを巡らせる。
    自分にとっての南さん、アバズレさん、おばあちゃんの頃。奈ノ花の頃の自分になんて言ってあげられるだろう。
    小学生にしては、大人びた、小生意気な奈ノ花にひっかかり少々の違和感。奈ノ花の感性が認められるのは難しかった。しかし、だからこそその独立心を生かし成長を遂げられたのかも。

    所々で、胸が一杯になり目頭が熱くなる。
    ストーリーに泣けた、というより自分自身に刻まれたというか。こうやって心を動かされることもあるのだと。
    タイトル回収がきれい。
    不思議な夢の空間へいざなわれ、心が満たされたようなほわりとした気持ちで本を閉じた。

  • 小学生の女の子が高校生の女の子、若いお姉さん、近所のおばあちゃんの3人との関わりを通して、世の中を知り学んでいくといったシンプルで分かりやすいストーリー。
    ブクログでは結構な高評価であるが、個人的な評価は普通より少し下くらい。
    話に深さがなく当たり障りのない内容でずっと進行するので少し退屈。
    そしてなにより最後のオチが本当に好みに合わない。
    これやっちゃうんだ、という感じ。
    住野よるさんの"君の膵臓をたべたい"はとても大好きな作品なので少し残念でした。

  • 映画化された『君の膵臓をたべたい』の原作者の作品ということで手にとった作品。

    『また、同じ夢を見ていた』
    主人公の小柳奈ノ花は、
    分かりやすくこましゃくれた小学生。
    学校には友達がいないけれど不思議な縁で出逢った
    「ナー」と鳴く尻尾の短い黒猫や、
    憧れの女性である“アバズレさん”、
    手首に傷がある“南さん”や、
    大きな木の家に住む“おばあちゃん”が
    彼女に生きるヒントを教えてくれる。

    そんな折、国語の授業で出された
    「幸せとは何か」という課題。
    自称特別で賢い奈ノ花がたどり着いた答えとは?

    読み始めて直ぐに、作者特有の独特な言い回しと、
    主人公の強烈な個性が広がる世界に誘われる。
    脳裏に『君の膵臓をたべたい』の浜辺美波さんの透明感に溢れて掴みどころのない魅力がチラついたが、今回の奈ノ花は全く違うタイプだった。
    不思議なこの感覚はきっと、少女が持つ魅力を最大限に表現できる作者さんが作り出せる空気感なのだろうと思う。ただ、この語り節は苦手意識を感じる方も居るような気がする。

    徐々に物語の核の部分に近付いていき、漸く全体像がみえた時には穏やかなラストで読み終えることができた。構成は面白いが、未来は自分で変えられるという力強いメッセージの割には、選択次第でなかなかヘビーな人生が待ち受けていることを暗示されている部分もあり何だか手放しで楽しめない。
    そもそも賢い奈ノ花なのに気付かなかったの?という釈然としないモヤモヤが残る。

    再読するとまた違うのかもしれないが、伏線回収されるものの、現実感が乏しい割に説明や裏付けが弱く、急な幕引きに戸惑ってしまったので、正直私にはあまり響かなかった。

    私の読みが浅いのかも知れないので、また他作品も読んでみようと思う。


  • 住野よるさん初読。

    「幸せとは何か」という重大なテーマと、小学生1人称視点の軽い文章が特徴。この対比が面白く、印象的なフレーズがポンポン飛び出してくる一方で、何か起こるのではという不穏さも感じさせてくれます。

    読み終わってみればなかなか考えさせられる作品。主人公のように、人生の重要な選択のタイミングって誰にでもあるモノだと思うし、その時受け身ではいけないなーとしみじみ。

    幅広い年齢の方に勧められる小説でした。





    小さい子から大人まで幅広く読める小説では。

    この描写の仕方のおかげで、

  • 主人公がちょっと個性的すぎて、最初は取っつきにくかったんです。でも、読み進めるうちにどんどんその世界観に引き込まれていきました。その物語の雰囲気は、映画『インセプション』(レオナルド・ディカプリオ出演)のような感覚に少し似ていて、未来が何層にも重なっているようなストーリー。こういう「選択肢が絡み合う物語」は、個人的にとても好きなんです。

    読んでいるうちに思い出したのが、「選択の科学」という本に出てくる一節。
    「X量の選択、Y量の偶然、そしてZ量の運命」
    これって、人生の本質を捉えている言葉だと思いませんか?今回読んだ小説は、この法則を物語として楽しめるように表現した作品でした。

    この小説では、「幸せとは何か?」というテーマが一冊丸ごと描かれています。主人公・菜ノ花が、小学校での人間関係や近所の人々との交流を通じて、幸せの意味を少しずつ見つけていく姿に、読者も引き込まれるような感覚でした。

    「幸せ」って言葉、漠然としているけど、「あなたにとって幸せとは何ですか?」と聞かれると、案外答えるのは難しいですよね。人それぞれで定義が違うし、その振れ幅は無限大。でも、読んでいるうちに「これはみんなに共通するんじゃないかな?」と思えるフレーズに出会いました。

    ”幸せとは、自分が嬉しく感じたり楽しく感じたり、大切な人を大事にしたり、自分自身を大切にしたり、そういった行動や言葉を、自分の意思で選べること。”

    この一文には、ハッとさせられました。幸せになるための選択肢が多いということは、すごく恵まれたことなんですよね。けれど、普段の生活の中でそのありがたさを忘れてしまうことが多い気がします。

    この小説を読んでから、「自分は何に嬉しく感じたり楽しく思ったりするんだろう?」と、少し立ち止まって考えてみたくなりました。

    毎日の忙しさに追われていると、つい自分の気持ちや選択を後回しにしてしまいがちで。でも、ふとした瞬間に「これが自分にとっての幸せだな」と思える小さな発見があると、それだけで気持ちが軽くなります。

    あなたにとっての幸せとは何ですか?その「選択肢」に目を向けてみると、日常がもっと豊かになるかもしれませんよ。

  • 今まで読んだ本の中で1番といっていいほどの名作。幸せとはなんだろうかと自分も考えてみたくなった。南さん、アバズレさん、おばあちゃんの正体、タイトルの「また同じ夢を見ていた」とはどういう意味だったかなどの伏線回収が素晴らしかった。いろいろな人に読んでみてもらいたい。

  • 幸せ、人生とは…自分の中に確かにあるけど出そうで出ない思いを引き出してくれるようなヒントがつまった一冊。

    主人公の奈ノ花が例える人生や幸せというものが、具体的でとても身近に感じられて分かりやすかった。

    ・人生はプリンみたいなものってことね
    甘いところだけで美味しいのに、苦いところをありがたがる人もいる
    ・人生はリュックみたいなものだから。
    背負うものがあった方が、背筋も伸びるの

    可愛らしい発想の中に、核心を突くものがあり考えさせられた。こんな風に堅苦しくなく楽しく発想できたらなと思った。

    出会いは本の交換をしたときに貰ったことがきっかけ。本当は夏に読み終えてたのだけれど、自分のなかの例えがどうしても出てこなくて時間を置いての再読。でもそう簡単にでるものでもなし、、。
    思い巡らせながら時だけが過ぎてしまうのかと思ったけど、とつぜん心にふっと出てきた。

    それは人生とは幸せとは、おにぎりの様、、だった。三角のおにぎり。

    ◯でもなく×でもない 上を向いた△
    良し悪し、可不可ではなくて、すべてがよいというイメージ。

    具も人それぞれ違うからいい。いろんな味が詰まった贅沢感のある海賊おにぎりが好きでした。今は、梅干しと塩が一番すき。笑 おにぎりは何を入れるのが正解とかはなくて、色んな具味があるからこそより楽しいし美味しい。
    ○や×で評価されるのは苦しい。人生もおにぎりの様だったら、幸せだなと感じた。


    素敵な一冊を贈ってくれた友人へ、心からありがとうを伝えたい。

  • この本は、住野よる先生があなたのためだけに描いた特別な『クリスマス・キャロル』。
    もちろん、ディケンズが書いたような意地悪な守銭奴のスクルージも3人の怖いゴーストも出てこないから安心して。

    ここに出てくるのは、3人のあなた。
    あなたは、尻尾のちょっと短い黒い猫に導かれて、別の姿をしたあなたに出会う物語。
    それは子供だったり、大人だったり、老人だったり。

    そう。これは全部、あなたの姿。
    それぞれのあなたは、それぞれの悩みを持っていて、それぞれ選んできた道を後悔しているの。

    今のあなたも、悩みを持っているはず。
    そして、自分の選ぶべき道を迷っている。

    あなたは、今の姿とは違う別の姿をしたあなたと出会って、あなたは必ずこう思うはず

       あの時、ああすれば良かった・・・

    と。

    残念だけれど過去を変えることはできない。

    でも、未来を変えることはできるのよ。
    自分自身を変えることによって。

    遅すぎることなんて絶対にないの。

    この本は、住野よる先生があなたのためだけに描いた特別な『クリスマス・キャロル』。

    ほら、あなたにも見えるでしょ。
    あなたを迎えに来た尻尾のちょっと短い黒い猫の姿が。

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著者プロフィール

高校時代より執筆活動を開始。デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなり、2016年の本屋大賞第二位にランクイン。他の著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『この気持ちもいつか忘れる』『腹を割ったら血が出るだけさ』がある。カニカマが好き。

「2023年 『麦本三歩の好きなもの 第二集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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