- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575521276
作品紹介・あらすじ
芸人になることを諦めた池上省吾は、便利屋でアルバイトをしていた。ある日、古びたボクシングジムの前で佇む女性を見かける。聞くと、ジムに立ち退きを迫っているらしい。一枚かんで金儲けをしようとジムに通うようになる省吾だが、そこでひとりの若いボクサーと出会い、ボクシングに魅力を感じ始める。やがて省吾自身の中であることが……。『罪の声』の著者が、綿密な取材を重ねて描いた意欲作。息を詰めるボクシングシーンや人物の深い心理描写はまさに圧巻!
感想・レビュー・書評
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表紙の写真、タイトル、それに著者が塩田武士さんと来たら、当然バリバリ硬派のボクシング小説に違いない! と思ったら、なんということでしょう。漫才の掛け合いのような会話の軽妙さ、文章のリズムの軽快さがあるではありませんか!
(劇的ビフォーアフターかよ!)
今回の〝匠〟である塩田さん、『罪の声』と同一作者とは思えません。塩田さんの経験の為せる技なのか、「罪の声」が新聞記者の目だとすると、本作は「芸人」の目ですかね。
小さく古びたボクシングジムを舞台に繰り広げられる物語です。元芸人で便利屋の省吾、ジム会長・貞次郎と息子で期待の星・勇気、周囲を固める他の人物もとても個性的です。
シリアスと笑いの塩梅、いい加減さ、ボクシングのファイトシーンの迫力など、バランスよく人間味あふれています。そして、周りのみんなが勇気に、自らの再生を懸けて夢を託し、読み手も知らず知らずのうちに応援している気になりました。
拳に聞け!・・・最後は自分が努力し、積み重ねてきたものを信じ切るしかない! 本当にその通りですね。あらゆるスポーツ、仕事などの場面に共通する究極心理でしょう。
人情とスポーツのロマンを味わえる、コテコテの大阪ボクシングジム繁盛記、がピッタリな物語でした。 -
下町の貧乏ジムというと「明日のジョー」を思い浮かべるけど、ここは大阪やねんな。
元芸人が、貧乏ジムで、将来あるボクサーをサポートする。
自身の夢と重ねながら…
というセンチな部分は根底にあるけど、ボクシングのパンチと同じく、鋭いボケとツッコミが炸裂するのに親近感。
塩田さんの作品は、関西弁が生きてて凄い。
ボクシングにしても、芸人にしても、何にしても、夢は簡単に捨てたらあかんねんな…
激しい拳闘シーンもあるけど、この言葉で中和されてええ感じ。
日本チャンピオンになってな!
M-1優勝してな!
解説にもあるように、会話が面白い!
「あんた誰やねん?」
「ビル・ゲイツの遠縁のもんです」
「えらい距離ありそうやな」
でも、関西全員が、ボケとツッコミ出来る訳ではないので注意!(^-^)v -
下町の貧乏ボクシングジムの息子がチャンピオンを目指し、主人公が自分のこれまでの生き方を青年に投影しながらサポートする。騙し絵の牙の作者であることから手に取った。ベタな展開ながらベタであるが故に最後まで物語に引き込まれた。特に最後の試合の場面は一気読み必至です。作者による上手いキャラ作りが本作でも発揮されています。お笑い芸人とボクサーという一見接点がなさそうな二人が励まし合い前に進む展開が熱いです。前半で張った伏線、ミステリー要素もを後半できれいに回収してくれます。
笑わせてくれるキャラを揃えた割には作者ならではのギャグが控えめなのは大いに不満。ピルゲイツにクスリとした程度。終盤にシリアスにフェードアウトしてしまったベンにはもう少し活躍して欲しかった。ギャグについては別の作品に期待したい。 -
舞台は大阪の寂れたボクシングジム。
そこに集まるのは、挫折し、夢を追えなくなった大人達。その大人達が1人の優しき青年、勇気に想いを託し、願いを込めて、リングへ送り出す。
勇気の成長。勇気に夢を託し、夢に加担し、変わっていく大人達の姿が胸を熱くする。
いわゆるスポ根ものに近いかも。読んでるうちに胸が熱くなり、力をもらえる。好きなやつ。
大阪ならではの笑いのある軽妙なやり取りも魅力的。 -
著者初読み。大阪の貧乏ボクシングジムを舞台に青年ボクサーの成長とうらぶれた中年の再生を描くスポ根人情もの。題材のボクシングを差し置き、パンチの代わりにこれでもか!とボケとツッコミの応酬を繰り広げる登場人物たちだが、その所為で肝心の物語はかなり大味で予定調和。しかし、クライマックスに待ち構える因縁試合のカタルシスには思わず胸が熱くなった。未読ながら「罪の声」の硬派なイメージとは大凡結び付かない作風に驚くばかり。作中で少年隊の楽曲「湾岸スキーヤー」をしつこくいじり倒すシーンはさすがに笑ってしまった。(^ ^)
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何より塩田さんの作品の醍醐味はリズム。
関西弁のつらつらと音になって耳から入ってくるかのようなリズム。迫真のボクシングシーンは文章を読んでるとは思えないほどジャブ、フック、アッパーがリズミカルに繰り出される絵が浮かぶ。そして何より。登場人物の造形が新喜劇みたいに愛すべきキャラクターで活き活き動いてくる。そして最後はいつも予定調和でなくじんわりじんわり心が温かくなる。読んで楽しい一冊です。 -
サイン本に釣られて購入しただけなのに。ツボでした。
芸人の話もボクシングの話も今やあちこちに転がっていて、ちっとも珍しくはありません。冒頭では『火花』や『笑う招き猫』を思い出し、二人組の便利屋が登場すると『まほろ駅前多田便利軒』、そしてその後は当然『ボックス!』を思い出す。下町の雰囲気に『泣いたらアカンで通天閣』が頭をよぎり、ところどころ『戸村飯店 青春100連発』まで連想する。それなのに、寄せ集め感はゼロ。ちょっとそこいらにはおらんぐらい素直な少年の夢に大人が乗っかりまくって、みんなが再び夢を追いかける。読み終えたときには彼らと一緒に3年間を過ごした気持ちに。
読み手を置いてけぼりにしない熱さがありました。どストライク。あくまで私にとっては、ですけれど。 -
個人的には主人公・省吾の書かれぶりや「だめな人」への寛容な雰囲気、ぐだぐだに弛緩する空気、なかなか振り切ったボケ(優香の思い出話に対する省吾のツッコミが秀逸)を気持ちよく読んだので満足しているが、他人にはまず薦めない出来の作品でもある。「僕、練りもん苦手なんです」とか言わない人だけが読むとよい。
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こういう人情スポ魂ものも書けるんだ塩田武士。面白くて一気に読んだ。登場人物の描写もいいし、人間関係の組み立て方もうまいし、やっぱり会話がテンポよく可笑しみがあって大きな魅力になってる。帰ってきてくれたオヤジの愛弟子のシーンと、「拳に聞け!」のシーンは興奮した。
こんにちは!
あれ?いつのまにやらボクシング月間?w
ボクシング好きなんですか?
こんにちは!
あれ?いつのまにやらボクシング月間?w
ボクシング好きなんですか?
ボクシング、実は好きでも嫌いでもなく、井上尚弥くらいしか知りません。あはは‥
まぁ、たまたまの流れでこう...
ボクシング、実は好きでも嫌いでもなく、井上尚弥くらいしか知りません。あはは‥
まぁ、たまたまの流れでこうなってしまい‥という次第です。なので、あえて公言しませんでした、ハイ。
せっかくだからもう1、2冊読んでみようかなって時ありますよね
自分は気が付いたら...
せっかくだからもう1、2冊読んでみようかなって時ありますよね
自分は気が付いたら同じ訳者さん続けて読んでる時がけっこうあります
なんか縁としか表現できないような選書してる時ありますよね