塀の中の美容室 (双葉文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575521511

作品紹介・あらすじ

『ご』と入力すると『ゴメン』と出てきて……『ゴメン。今日も仕事でダメになった』の一文ができあがる――。激務が続く番組制作会社で働く芦原志穂。彼女は今日も恋人にデートのキャンセルを告げるメールを打っていた。最近では「次はいつ会えそう」というメールすら届かない。そんな中、志穂は上司からの命令で、刑務所の中の美容室を取材することになるのだが――。彼女たちは、なぜそこに髪を切りにいくのか。刑務所の中で営業を行う美容室を舞台にした、感動の連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『女子刑務所』の中に『美容室があって、受刑者の人が髪を切ってくれる』、『女性なら誰でも利用できる』という事実を知っているでしょうか?

    全国に75施設あるという刑務所、その中に女性が入所することになる『女子刑務所』は9ヶ所しかないのだそうです。そもそも女性の受刑者がそれだけ少ないことをこの数字は示してもいます。そして、刑務所には、受刑者の出所後の人生も踏まえ、手に職をつけるためにさまざまな機能も有しているようです。

    その一つが『美容室』の存在です。あくまで『刑務作業の一環』として、そんな場に立つ受刑者たち。そして、そこに客として訪れるのは”塀の外”に暮らす一般人です。そう、女性なあなたもそんな場所で髪を切ってもらうことができるのです。

    さてここに、「塀の中の美容室」を舞台とした物語があります。髪を切ってもらうために『塀に囲まれた建物』の中へと訪れる人たちのそれぞれの想いを見るこの作品。そんな人たちを迎え、『頑張ります』、『できる限りやってみます』と髪を切る受刑者でもある美容師の姿を見るこの作品。そしてそれは、そんな場に臨む女性たちの心の中に、それぞれが抱く髪への想いを垣間見る物語です。
    
    『ゴメン。今日も仕事でダメになった』と約束のキャンセルを『恋人の奏(そう)』に送信したのは主人公の芦原志穂(あしはら しほ)。『最初のころは「次はいつ会えそう?」とメッセージが続い』ていたものの『今はない』という状況。そんな志穂は『寝たい。ベッドでぐっすり眠りたい』と『仮眠できてもイスに座った姿勢でせいぜい一時間がいいところ』という今を思います。そして、『来週の月曜日は大丈夫だから。本当にごめんなさい』と『送信してスマホをしまった』志穂は、『今日これからのスケジュールを確認』し、『どうせ深夜まで撮影だろう』と思います。『この業界の時間が不規則なのは覚悟していた』という志穂でしたがそれは『想像以上』でした。最初は『芸能人を見ては、キャーキャー騒いでいた』ものの『知りたくなかった裏の顔』を見る中にすっかり慣れた毎日。しかし、『人を人とも思わない』上司のもとで『モチベーションが右肩下がりになる』志穂。そんな時、『芦原』と呼ぶ上司は『髪切ってこい!』と突如指示します。『何を言われているのか理解でき』ない志穂に『美容室へ行って、髪を切ってこい』と再度指示する上司。『クレームでも来ましたか?』と訊く志穂に『なんで芦原の髪にクレームが来るんだよ。オマエの外見なんて、誰も見てねーよ。切るのは来週の月曜日だからな』と言う上司。それに『え?でもその日は有休を…』と返す志穂ですが、『先方の都合で、その日なんだよ。後日休ませてやるから、今回はあきらめろ』と上司は言い切ります。『今回だけは、引きさがれない』と思う志穂は『嫌です。その日は休ませてください…他の日に変更はできないんですか?』と食い下がりますが、『いろいろな日程の都合でその日になったんだよ』と反論の余地を与えないどころか『不満なら辞めろ。今すぐ辞表書け。そうすりゃ、月曜休めるぞ』と無茶苦茶なことを言います。その言葉に『今この会社を辞めたら…』とさまざまな思いが渦巻く志穂は『なぜ髪を切れと…』とその理由を尋ねます。それに、『取材に決まってんだろ。撮影はまだ先だが、資料として美容室のレポートが欲しいんだと』と説明する上司に、他の社員ではダメなのか確認すると、『物理的に女限定なんだよ』と言う上司は、『机の引き出しを開けて』リーフレットを取り出し『美容室のある場所が ー 女子刑務所だからだ』と説明します。
    場面は変わり、『来週の月曜日は、奏と出かける約束をしている』と思う志穂は、『無理しなくていいよ』という奏に、『せめて誕生日くらいは一緒に過ごさせてと頼ん』でいました。そんな月曜日がダメになってしまうことを思う志穂は、『奏のアパート』へと向かいます。会うなり、『もしかして明日、ダメになったって話?』と訊いてきた奏に、『女子刑務所』の中にある美容室に取材に行くことになったことを説明します。そんな志穂に『こんな時間にここまで来たのは、誠意を見せてるつもり?…先が見えない中、志穂は続けられる?』と訊きます。『仕事のことばかりじゃなくて、僕とのことも含めて聞いているんだよ』と続く問いに答えられない志穂。そして、アパートを出て電車に乗った志穂は『一通のメッセージ』を受け取ります。『別れよう。この状況は続けられない。もう疲れた』。そんなメッセージを見つつ『誰でもできる仕事しか任されず、変わりはいくらでもいると言われる自分』を思う志穂。その一方で、『少しずつ取材先のことを考え始めていた』志穂は、『刑務所 ー か』、『どんなところなんだろう』、『どんな人がいるんだろう』と思い始めます。そして、『塀に囲まれた建物』に到着した志穂は、門の中へと一歩を踏み入れます…という最初の短編〈一章 芦原志穂〉。「塀の中の美容室」というものを全く知らない読者に合わせて主人公・志穂の目線で丁寧に物語に入っていく好編でした。

    “彼女たちは、なぜそこに髪を切りにいくのか。刑務所の中で営業を行う美容室を舞台にした、感動の連作短編集”と内容紹介にうたわれるこの作品。書名が読者を煽りまくりのサスペンスミステリー「殺した夫が帰ってきました」で桜井美奈さんの作品に初めて接した私でしたが、あれから一年が経ち桜井さんの次の三作品を読もうと作品リストを眺めている中に真っ先に目に止まったのがこの作品でした。そして、「塀の中の美容室」という書名から受刑者の方も髪を切らないわけにはいかないでしょうから、そんな受刑者の髪を切る場を舞台に受刑者の人生が語られていく、そんな展開を勝手に想像しました。しかし、読み始めて早々にそんな想像が間違っていることに気づきました。なんと、この国には刑務所の中に営業を行う”塀の外”で暮らす一般人が訪れることのできる美容室があるのだそうです。これには、ビックリです。そして、この作品が舞台とするのはそんな美容室を訪れる”塀の外”に暮らす人たちの人生を描く物語なのです。

    とは言え、物語の舞台となるのは「塀の中の美容室」です。では、まずはそれがどういうものなのかをご紹介しましょう。作者の桜井さんは、この作品の執筆に当たって、岐阜県にある”笠松刑務所”へ取材に赴かれたことが〈あとがき〉にも記されています。書いて良いことと、ぼかすべきことは当然にあるはずですが、取り敢えずはこの作品に描かれる「塀の中の美容室」の描写を見てみましょう。『塀の中の美容室』は『あおぞら美容室』という名前が付けられています。まずは、外観です。

    ・『思ったほど壁は高くなかったし、有刺鉄線も、そびえたつ高い監視塔もなかった』という敷地に入った志穂。『小さな平屋建てで、外壁が白い』『独立した建物』が美容室です。
    → 『一般のお客様に利用していただく場所なので、できるだけ刑務所であることを感じさせないようにしている』ようです。

    次は、料金ですが、支払いは『美容室の方で、お金は扱わないことになって』いるため刑務所の受付で支払います。

    ・『メニュー表を見ると、カット九百円。シャンプー三百円。そのほかのメニューもカラー二千円、パーマ千八百円、セットが六百円だ』
    → 『一般的な美容室と比べるとかなり安い』

    お金を支払うと『店内での注意事項が書かれ』た『一枚の紙を渡され』ます。『塀の中』のルールはあるはずですからこれは当然でしょう。

    ・『店内での携帯電話やスマートフォンの使用禁止と禁煙。男性、保護者付き添いのいない十五歳未満の子ども、ペットを連れての利用ができないことと、受刑者への物品の授受や雑談は不可』
    → 『禁煙とペットはお店によるだろうけど、その他のことは、多くの美容室では許されている。特に、携帯やスマホの利用と雑談の禁止というのは、一般的ではないだろう』と思う志穂

    そんな美容室で働くのは受刑者です。『全国各地の刑務所にいる女性受刑者の中から希望を募り、認められた人が二年間学び、国家試験を受験する』という『美容学校』が刑務所の中にあるようですが、誰でも「塀の中の美容室」の店舗に立てるわけではないようです。

    ・『刑務所の中で美容師になった人は、ある程度刑期が長くなければ、店に立つことができないらしい』。
    → 『刑期が長い人は、大きく分けると二種類いる。一つは罪を繰り返す人。そしてもう一つは ー 重い罪を犯した人だ』

    いかがでしょう。このような情報をあなたはご存知だったでしょうか?私は全くの初耳、知らないことばかりで、この作品を読んで得られる知識は相当なものがあると思いました。この国には私たちが知らないことが如何にたくさんあるかを改めて思い知らされました。

    そんなこの作品は六つの短編が連作短編を構成しています。もちろん、その中心にあるのが「塀の中の美容室」であることに違いはありませんが、それだけでなく、別の短編に登場した人物のその後が他の短編で背景として描かれるなど六つの短編は緩やかに結びついています。そして、そんな六つの短編には、それぞれに視点の主となる人物が登場します。「塀の中の美容室」が舞台ですが、その主人公は、”塀の外”で暮らす一般人であるという点がこの作品最大のポイントです。そして、そんな視点の主となる人物は、”塀の外”の美容室に行くことが当然できるはずが敢えて「塀の中の美容室」へと訪れます。そして、そんな美容室を利用するに当たって心理的なハードルがあることがわかります。

    『直接お客様に、刃物を向ける仕事だから、嫌がる人もいるでしょ』

    そうです。上記しましたが、『ある程度刑期が長くなければ、店に立つことができない』という条件に該当する受刑者は、『罪を繰り返す人』か『重い罪を犯した人』に限られます。そして、美容室では当然にハサミが使われます。このあたりの感覚についても物語では描かれていきます。では、そんな六つの短編の中から三つをご紹介しましょう。

    ・〈三章 加川実沙〉: 『塀の中の建物と隣接している』官舎に暮らすのは主人公の加川実沙。『慣れる日が来るのだろうか』と働き始めて三ヶ月の今を思う実沙は、『塀の中』に設けられた『美容学校』で講師をしています。『美容師として店に勤めているころも楽ではなかった』と思うものの『張り詰めた勤務』の中に日々を送る実沙。そんな実沙は、『あおぞら美容室に立つ、唯一の美容師。もちろん受刑者』に『今はできることが限られている』、『技術を磨いておきたい」と相談を受けます。

    ・〈四章 一井 彩〉: 『彩ちゃんの髪。すっごく綺麗な のに、辞めちゃうなんて、やっぱりもったいない』と言われたのは主人公で『ヘアモデル』の一井彩。『モデルは一生続けられませんからね』と答えた彩。あることを起点に以前から知っていた「塀の中の美容室」を訪れます。『どのようにしますか?』と訊かれ『バッサリ切って下さい』と言い切る彩に、『良いんですか?ここまで枝毛や切れ毛が少ない、美しい髪は初めて見ました。切るのがもったいない気がします』と言う美容師に『もう、必要ないんです…』と返す彩は…。

    ・〈五章 藤村史佳〉: 『毎日、つまらない』と思うのは主人公で中学生の藤村史佳。『勉強しなさい』、『靴のかかとを踏まない』と小言ばかりに辟易する日々を送る史佳。そんなある日、友だちの優愛に『最近退屈だから、ちょっと面白いことをしてみたいんだよね』と言われます。もう一人の友人・心春と興味を寄せる中、『刑務所の中に美容室があるんだって』と優愛は続けます。『普通の人が行ける美容室』と説明された二人に場所や金額を説明する優愛。そして、代表で一人が様子を見に行くことになり…。

    三つの短編をご紹介しましたが、登場する主人公は全くといって良いほどに年齢も仕事も、そして境遇も異なります。これは街中の美容室でも同じことです。美容室は基本的には万人に開かれているからです。もちろん、「塀の中の美容室」は女子限定等の最低条件はありますが、その程度です。美容室に入り、椅子に座って、希望を聞き、施術していくという流れも街中の美容室と変わりはありません。そんな中に主人公たちが見せていくそれぞれの物語は想像以上に深く、幅の広い展開を見せていきます。

    『重かった頭が、少しずつ軽くなる。わたしの一年三か月分の時間が、ハサミが動くごとに消えていく』。

    髪を切るという一つの行為だけとっても、そこにはさまざまな思いが去来します。髪を切るということ自体に間違いなくそれぞれの主人公の強い想いが存在します。そして、髪を切るという行為自体には男性よりも女性の方が想いがこもる場合が多いようにも思います。

    『過去を忘れようと髪を切る人もいれば、過去を忘れないようにと伸ばし続ける人もいます』

    髪を切るという、それだけの行為にもかかわらず、そこに見え隠れする主人公たちの深い想いの存在。そんな想いの先にある人生の葛藤が丁寧に描かれていく物語に、次第にどんどん自身の感情が入っていくことに気づきました。そして、上記の内容説明では、敢えて一切触れないようにしていますが、物語は後半に入って、そんな「塀の中の美容室」で働く美容師自身に光を当てる物語も展開していきます。「塀の中の美容室」という存在自体に興味が湧いてこの作品を手にした読者の方も、その興味は当然にそんな美容室だけでなく、受刑者でもある美容師自身に向くのは当たり前だと思います。この物語の見せ方、正面からではなく斜め後方から角度を変えつつ核心に迫っていくような桜井さんの描き方には驚きました。そして、そんな美容師にまつまる物語の全体像が明らかになるその結末、さまざまな思いが去来するその結末に、あたたかいものがこみあげてくるのを感じました。

    『そもそも、なぜ美容師になったのだろう。どうして、刑務所に入っているのだろう。いったい、何をしたのだろう』。

    『刑務所の中に』ある『一般の人も利用できる美容室』を舞台にしたこの作品。そこには六つの短編それぞれに、人生に思い悩む六人の主人公たちの姿が描かれていました。そんな主人公たちが「塀の中の美容室」で髪を切る先に、それぞれの未来へとまた歩みを進めていく姿を見るこの作品。「塀の中の美容室」で髪を切ることに深い想いを抱く美容師の姿を見るこの作品。

    どっぷりと感情移入させていただける物語展開の上手さの中に、「塀の中の美容室」という実在の施設をテーマにした小説の醍醐味を存分に味わわせてくれる、これぞ傑作だと思いました。

    • さてさてさん
      和ヤカさん、こちらこそありがとうございます。
      今後ともどうぞよろしくお願いします!
      和ヤカさん、こちらこそありがとうございます。
      今後ともどうぞよろしくお願いします!
      2023/11/18
    • aoi-soraさん
      さてさてさん、おはようございます♪
      非常に興味深くレビューを読ませて頂きました。
      受刑者が理美容師の資格を取れる、というのは聞いた事がありま...
      さてさてさん、おはようございます♪
      非常に興味深くレビューを読ませて頂きました。
      受刑者が理美容師の資格を取れる、というのは聞いた事があります。
      か、塀の外のわたし達がが利用出来る美容室があるなんて、知りませんでした。
      ストーリーも面白そうですね。
      読んでみたーい ^⁠_⁠^
      2023/11/19
    • さてさてさん
      aoi-soraさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。
      私は”塀の中”で資格が取れるということも知らなかったですし、ましてや、...
      aoi-soraさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。
      私は”塀の中”で資格が取れるということも知らなかったですし、ましてや、”塀の外”の人間が髪を切りに訪れることのできる美容室があるだなんて全く知りませんでした。この作品と出会ったことで得られた事ごとはとても大きなものがあります。
      ストーリーもとても良くできていますし、これ、とてもお勧めです!是非、読んでみてください!
      2023/11/19
  • 桜井美奈|note
    https://note.com/sakurai_mina

    女子刑務所の中の「美容室」その知られざる実情 | 漫画 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
    https://toyokeizai.net/articles/-/386847

    株式会社双葉社|塀の中の美容室|ISBN:978-4-575-52151-1
    https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52151-1.html

  • 刑務所の中にある美容室
    刑務所で美容師免許がとれるなんて!
    この美容院は明るい雰囲気…
    美容院のお客様目線で物語は進む

    こんなに安かったら私も行ってみたい!

  • 同じ新潟県出身でご在住の桜井さんの作品を2冊目。
    刑務所内にある美容室を中心に様々な人達の人間模様を描いた作品。
    6章からなる短編の中、最終的には美容師として働く受刑者の彼女の事まで。
    心に少し痛みはあるものの温かくもなれる物語でした。
    未来に希望も見えた。そんな終わり方だったかな。

  • 刑務所の中にも様々な人生があり、外の世界とのつながりはとても大切で…

    刑務所の中と外は別世界のように思うけれど、実際は紙一重で誰もが中の住人になる可能性を秘めている

    犯罪になる前に立ち止まれるのが一番だけれど、反省は認められるべきで、きちんと罪を償った人々が、きちんと社会復帰できる世の中だとよいなぁと考えさせられた

  • 面白かったな。コミカライズ版を先に読んでたのだけど、原作もとても良かった。綺麗事じゃ済まない話を綺麗にかついい意味でお涙頂戴に仕上げてあって見事に泣けた。マンガ版独自の味付けもわかって二重に楽しめた。どちらの作者も素晴らしい。

  • 〈女子刑務所の中に、“受刑者が一般客の髪を切る”美容室がある〉コミックで読んでいたのでイメージしやすく、心理描写など細かな部分を補うように活字を追った。
    そのため、人物像がくっきり浮かび上がってきた。
    第五章 女子中学生・藤村史佳の話が好き。

  • 淡々と出来事を追っていく中で、じんわりほっこりくるものがありました。
    静かな物語です。心穏やかになる内容で、最後はホッとしました。

  • 髪、それは忘れえない過去、それは生きてきた記憶かもしれない、それも贖罪とも言うのか、それは願いの祈りかもしれない、未来への希望なのか。

    表紙の、髪を切る顔にあるのは、笑顔なのか別な想いか。六章の6人と屏の向こう側の美容師と刑務官の8人の物語が人生の優しさを描き出す。

    誰にでも訪れるかもしれない悲劇、そして贖罪の日々、それを支える生き様とやり直せる希望の物語でした。

    重いテーマを感じさせないリズムが、サラサラと読ませます。
    「生きていく」事を考えながらの読了です。

  • 友達に借りて。
    刑務所の中の美容室という設定が興味深いから、もっと美容師さんの受刑者としての心の揺れとかが書かれていると良かったな。美容師さんの罪が最後に解明されるのは良いけど、そこに行き着くまでに、これまたお客さんとのやり取りの中からじわじわ伝わる感じだともっと引き込まれたかも。

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著者プロフィール

2013年、第19回電撃小説大賞で大賞を受賞した『きじかくしの庭』でデビュー。21年、コミカライズ版『塀の中の美容室』が、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。著書に、『幻想列車 上野駅18番線』『殺した夫が帰ってきました』など多数。本書は、相続を通し、バラバラだった家族が過去の軋轢や葛藤を乗り越える期間限定の家族の物語。

「2022年 『相続人はいっしょに暮らしてください』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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