よるのばけもの (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 356
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575522099

作品紹介・あらすじ

夜になると、僕は化け物になる。寝ていても座っていても立っていても、それは深夜に突然やってくる。ある日、化け物になった僕は、忘れ物をとりに夜の学校へと忍びこんだ。誰もいない、と思っていた夜の教室。だけどそこには、なぜかクラスメイトの矢野さつきがいて――。280万部超の青春小説『君の膵臓をたべたい』の著者、住野よるの三作目が待望の文庫化!!

感想・レビュー・書評

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  • 『君の膵臓を食べたい』の住野よるの長編3作目。住野よるの作品を読むのは『君の膵臓を食べたい』以来の2作目。

    夜になるとばけものになる中学三年生の『僕』は宿題を忘れたことに気がつき、ばけものの姿のまま空を飛び越えて学校へ忍び込む。深夜の中学校には誰もいないはずだったが、なぜか教室にはクラスメートの矢野さんがいて、『僕』の正体を知られてしまう。それがきっかけで毎晩『僕』と矢野さんは深夜の学校で時間を過ごすようになる。

    このあらすじだけ見るとここからお互いの秘密を共有した二人の淡い恋愛小説に発展するのかと思いきや、まったくそんなことはなく、「いじめ」問題を鋭くえぐる社会派小説になっていく。

    なぜ『僕』が深夜になるとばけものになるのか、クラスメートからいじめにあっている矢野さんがなぜ深夜に学校にいるのかということの真相は本書内では明かされない。

    自分的な考察としては、夜の出来事はすべて『僕』の中では夢の中の出来事で、『僕』の潜在意識の中で矢野さんを助けたいという気持ちがあり、その気持ちが夜という特別な空間を通して『僕』と矢野さんのお互いの夢の中で意識を交わすことができたということではないだろうか。

    昼間の『僕』は、いじめは正しくないことだとは認識しているけれども、それを指摘したり、矢野さんの味方になってあげられるほどの勇気はない。そんなことをしたら今度は『僕』がみんなからいじめの標的にされてしまう。それに矢野さんが自分でクラスメートに悪いことをしたのだからある意味、制裁としていじめを受けることは仕方のないことなのだと『僕』は自分を正当化している。

    しかし、深夜、矢野さんに会うと彼女の態度や言葉から、彼女も彼女なりの考えがあり、それを考えると、一概に彼女が『悪』とは思えない。もしかしたら僕たちは彼女を根本的に間違って認識しているのかもしれない。

    他のクラスメートと共に矢野さんを無視する昼間の『僕』とばけものの姿のまま矢野さんと親しげに話しをする深夜の『僕』。どちらも『僕』であり、違いはない。『僕』には昼間は昼間の価値観があり、夜には夜の価値観がある。

    ある夜、矢野さんから『僕』はこう聞かれる。

    『人間の姿をした昼間の君とばけものの姿をした夜の君はどちらが本物の君なの?』

    ああ、そうか。矢野さんにとっては、ばけものの姿の『僕』が本物の『僕』で、人間の姿の『僕』が仮の姿なのだ。
    つまり、矢野さんにとっては、昼間がすべて仮の姿だから、どんなつらいことや悲しいことがあってもそれはあくまで仮の姿なので我慢できる。そして今この瞬間、深夜の今の時間こそが彼女にとっての真実であり、この深夜の学校生活を彼女は十二分に楽しんでいるのだ。

    ばけものの僕も人間の僕もどちらの『僕』も同じだ、でも、昼間の『僕』は自分の心を偽っている『僕』だ。
    そして、『僕』は勇気を出すことにした、いや、勇気を出すんじゃない、偽りの『僕』を捨てて自分のそのまま姿を出せばいいんだ。

    矢野さんは、いつものように一人で登校し、無視されるのが分かっているにもかかわらず今日もクラスに入ると「おはよう」と挨拶をする。
    誰も彼女の挨拶には答えないし、舌打ちする者すらいる。

    そんな中、『僕』はこう答えた「おはよう」と、皆の視線が一斉に『僕』に突き刺さる。皆が聞き間違えじゃないかと勘違いすることのないように、もう一度、さっきよりも少し大きな声で矢野さんに答える「おはよう」と。

    矢野さんは笑顔を浮かべ、『僕』にこう言った『やっと会えたね』。
    その夜から僕がばけものになることはなくなった。

    『夜』と『ばけもの』というメタファーを通じて、少年少女の内面を描写し、現代のいじめ問題を鋭くえぐる、住野よるの秀作。

  • 自分とは何か。いつ、どこに生きていて、誰と関わっている自分が本当の自分なのか分からなくなることがある。
    しかし、この本を読んでそんな事を考える事自体が無意味なのだということに気づいた。なぜなら、どこにいても、生きている限りそれは自分だからだ。
    最後、矢野の放った「やっと、会え、たね」は、安達が自分というものに会えたという意味なのではないかと思う。

  • 夜の間だけ「ばけもの」になる、安達くん。
    ふと訪れた中学校にいたのは、「夜休み」を過ごしているクラスメイトの矢野さんだった。

    昼間はいじめられ、存在を無視されている矢野さんに正体を知られた安達くん。
    二人の昼と夜が展開していく。
    以下ネタバレ含む、注意。



    こういう結末なのか。
    そりゃあそうだ。もしも、そこに間違いのない解答があるのなら、現実世界はもっと明るい。

    安達くんは、万能の「ばけもの」だった。
    きっと虚構の名を借りて、好きなように暴れ回れるし、矢野さんを救うことだって出来ただろう。
    けれど、苦悩しながらも彼は人間として、昼の矢野さんを見ることを決意し、その結果、万能を捨てる(解放される)ことになる。

    矢野さんにとっては、昼こそが「ばけもの」の世界だったのだろうか。
    攻撃され、傷つけられることが当然の、昼休みのない世界だったのだろうか。

    生きていればいつかは、その世界を外側から見ることが出来る。
    保健室の先生の唱える終わらせ方は、あり得るかもしれないけど、私が求めるものではない。
    じゃあ私にはどんな結末を提示出来るのかと、ずっと考えても、やっぱり答えは出ない。

    ただ。昨日読んだ、階段島シリーズの最終巻を思い出した。
    小説はトライアンドエラーの宝庫だ。
    物語を、繰り返して、繰り返して、多くの作者が傷つきながら、結末を書き換えながら、それでも求めるものに叶う世界を作り出そうとしている。

    私たちはそのピースを、何度も、何度も読んで、これも違う、これも違ったと言いながら、その一冊に出会えることは、いつか出来るかもしれない。
    この本も、誰かにとっては、その一冊になるかもしれない。

  • 自分とは何なのか。
    誰しもが抱いたことのあるテーマであると思う。
    そして、この本の主人公も、いじめられている女の子との関わりを通してその悩みを抱く。

    彼が出した答えは、誰にも正しいかはわからない。
    しかし、彼自身が決めたことで、彼は初めてよるのばけものから解放されたのであろう。

  • 学校にある見えない「いじめ」の空気感を主人公目線で感じさせていただきました。
    終わり方には賛否両論あると思いますが自分ならどの立場を選ぶだろうかと考えさせられ、これが学校の現実であると痛感しました。

  • 夜になるとばけものになる主人公と学校に夜休みに来てる少女。学校でも会社でも、世間的な常識が通用しないそこだけのルール=正解がある。そつなく空気を読み、その場の正解を選び続ける主人公だったが、少女との秘密の夜の時間を通して、自分の心とのズレを少しずつ無視することはできなくなった。
    空気を読む。それは時にとんでもないばけものを生む。
    最後のあの、なんでもない一言が言えて良かった。その一言で癒えた。

  • 最初の始まりは読みにくかったけど、読み始めると止まらなかった。
    小学校高学年から中学校にかけてこのようなクラスに当たることが多かった。とくにここまでの嫌がらせはなかったがら近いこともあったし、どちらの立場にもなったことがあるので読んでると痛いほど感情移入してしまった。
    当事者になったことがある人にとっては苦しくなるくらい共感できる作品だと思います。

  • ここで終わるのかっていう感じのラストだった。テーマや描き方にははっとさせられただけに、最後まで書いて欲しかった気持ちが強い。

  • 中身の記憶があまりなく‥
    ちょっと苦手なジャンルだったかな?

  • ★4つ付けてるが気持ち的には3.5。
    住野よるさんの作品は、少し青臭いけどゆったりと、それでいて誰の心の中にでもある感情を柔らかく刺激してくる。
    夜になるとバケモノになってしまう少年が、夜中の校舎でいじめられっこの少女と鉢合わせし物語は進んでいく。
    作品の中で少女は昼の話、夜の話、と自分の世界を2つに分けて考えているが、これは時間軸での分類ではなく、誰の心の中にでもある二面性やしがらみだと思われる。
    どう思われたいか、どう見せたいか、本当の自分はどうなのか、主人公の少年は常に迷い悩んでいる。
    そんな中、少女が少年に問いかける「昼と夜の姿、どっちが本当?」という言葉が印象的だった。
    作品を通して残念だと思った点は、会話が作り物っぽかったところ、ここがもう少し作り物ではないリアルな言葉と運びのチョイスだったら、間違いなく4評価でした。

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著者プロフィール

住野 よる(すみの よる)
高校時代より執筆活動を行っていた。2014年2月ごろ夜野やすみ名義で、様々な賞に落ちてしまった小説「君の膵臓をたべたい」を広く世で読まれてほしいという願いから小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿。同作が話題となり、2015年6月双葉社から書籍化されデビュー。同作が「本屋大賞」2016第2位、「読書メーター読みたい本ランキング」1位、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2015」1位と高く評価され、売上面でも「2016年年間ベストセラー」総合5位、文芸書1位(トーハン調べ)、「2016年 年間ベストセラー」総合4位・単行本フィクション1位(日販調べ)となり、累計発行部数200万部を突破した。実写版映画が2017年7月28日公開、アニメ映画が2018年公開。
その他作品に、『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』がある。

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