らんちう (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 86
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575525120

作品紹介・あらすじ

「犯人はここにいる全員です」ーーリゾート旅館の支配人が惨殺され、従業員6人が自首したが、彼らの供述にはあいまいな殺意しかなく、支配人が殺された理由がわからない。完全違法な長時間労働、自己啓発セミナー、妖艶な美人女将……容疑者達の供述を聞けば聞くほど、予想外の真実が浮かび上がる。大藪春彦賞を受賞した奇才が放つ衝撃のクライムノベル!

感想・レビュー・書評

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  • 赤松利市『らんちう』双葉文庫。

    これまで味わったことの無いテイストの小説。本編も去ることながら、著者の実体験を綴ったあとがきが面白い。あとがきを読むと本作のどろどろした背景がより鮮明になる。

    リゾート旅館で起きた総支配人の殺人事件を巡り、殺人に加わった6人の従業員と退職した元従業員や関係者の証言で物語が綴られるクライムノベル。総支配人は死ぬに値する人物だったのか、それとも……終盤の元従業員の証言で印象は大きく変わり、新たな事実が見えてくる。誰が一番悪いのか……

    千葉県のリゾート旅館の望海楼で総支配人の夷隅登が従業員6人により絞殺される。夷隅が総支配人になってからの違法な長時間労働やセクハラ、パワハラなどの横暴振りに従業員6人全員は少しずつ恐ろしいまでの殺意を燻らせていた。殺人に加担した6人と元従業員と関係者の証言で少しずつ炙り出されていく事件の真相……

    本体価格690円
    ★★★★★

  • かなり面白かったけどグロテスクだな…
    読んでて色々思ったけど
    「昨日と同じことを今日もしていたい」
    的に生きてると、活動範囲狭まっちゃうし嫌なことに対する対抗策も減るよなぁ…とは思いつつ
    私は人間関係狭めの終わりかけみたいな中小企業のコミュニティも帰属できればいいものだと感じるのでなんとも…

  • 千葉にあるリゾート旅館で、総支配人夷隅登が殺された。従業員から通報があり、警察が駆けつけると、そこにいた6名の従業員全員が犯人だという。

    本書は、6人の従業員らがその犯行を語ることから始まり、警察での取り調べでそれぞれの事情を詳細に語り、さらに周囲にいる関係者たちが参考人として供述、そして、受刑者となった6人の心中が語られて、幕を閉じます。

    「あとがき」にあるとおり、この小説には主人公と言える人物がいません。始めから終わりまで、代わる代わる誰かが話しています。なぜこうなるに至ったのか、少しずつ事情が見えてくるのですが、赤松利市さんのことだからきっとこのままでは終わるまいと思っていたら、やっぱりね、でした。

    ひとことで言うと、不快な小説。すべてが、隅々までとことん不快。なんだけど、なんだろう、この不思議な感覚。一生懸命生きているこの人たちを、私は蔑むことなんかできないし、決して笑えない。ましてや憐れむなんて失礼すぎる。受け入れる、とまでは言えないけど、ちゃんと見なくては、こういう声を聞かなくては、と思います。

    「あとがき」を読むと、この本には著者の人生が凝縮されているのだとわかります。これからもこの人の書く物語を読んでいきます。

    最後に、気になった点をひとつ。「物事の心理」(たぶん「真理」)とか、「青色吐息」(正しくは「青息吐息」)といった誤りが目につきました。

  • 支配人が殺される。
    若女将との結婚から始まり、旅館の改革、リストラ、奉仕活動、啓発セミナーのまねごとの懺悔をする会等いろんなことをやって、評価が悪かった人物。

    だが、蓋を開けてみれば、若者社員と古参とでは意見が違う。働いている者と、リストラされた者、内部・中枢にいた者と、旅館そのもの、支配人の評価が真逆。現実の会社、社会にもある、その場をうまく過ごすために、同じ意見であると安心する、安心させる、仲間だという流れ…。旅館の内部事情に詳しい者は、自分のやって来たことを隠したいがために、悪口を垂れ流して自分の身を守るために一芝居打つ。それを真に受ける者もいたりして、支配人の評価は下がる一方。
    若女将が支配人と結婚したことも旅館の再建のためしかたなくだと思われていたが、それもまた違う。

    見えているもの、見えていないもの、それをうまく誘導する者、誘導される者。いろんな認識、誤認、思惑が混ざり合う。
    評価が高すぎる、若女将とたびたび出てくる啓発セミナーに重点をおいて読んだ。やっぱりねと思ったけど、面白かった。
    らんちうというタイトルの意味もちゃんと回収されていて納得。

  • 2022年3月15日読了

  • 独特な気持ち悪い感。そこが良い!

  • 視点が変われば人物像も背景もガラリと変わり、自己啓発セミナーの胡散臭さも合わさって面白いが、作者が言いたかったことを言わされてるだけのような演説が要所要所に入って萎える。突然めっちゃ語るじゃん。

  • この人の作品は社会の悪意を煮詰めてる感じで面白い

  • 2021年、19冊目は、3年連続、この時期に読む(文庫の刊行ペースがそぅなのか?)、赤松利市。

    千葉の海に面した旅館、望海桜。その総支配人が殺された。犯人は、従業員と元従業員の六人。

    『藻屑蟹』『鯖』そして、今作が『らんちう』。水性生物括り。と言う冗談は、さておき、今作も社会の歪みの狭間や、下側にいる人々が展開の核を成す。

    まづ、驚いたことに、全編そのパートの主人公の主観、一人称で描かれている。

    「人はそれぞれ正義があって」何て、どこかで聞いた歌詞を思い浮かべたりもするが、六人の犯人達のベクトルが合致した先に「総支配人殺害」があったのだろう(もちろん、異分子的存在もあったし、果たす役割もある)。それでも、「殺意」「動機」と言う点では十分とは言えない。

    第三章で「参考人」達の供述に入ると(もちろんココでも、主人公の一人称で語られる)、今まで見えていなかった側面が見えてくる。

    とてもサクサク読める。一部を除き、登場人物達の考え方も納得できる。華美な情景描写も、技巧的表現もほぼなく、ソリッド感さえある。そして、きちんと直前で減速して、第三章の切り替えポイントに進入する。造りは好みのタイプ。少し大雑把な言い方だが、かなり序盤から「怪しい」と自分が思った人物、事象がネックになってて、「やっぱり」的なトコでクライマックス。しかし、ソコで「ランチュウ」をそぅ絡めてくるとは。そして、終章でさらに1/4ひねり加えてきた。★★★★☆評価は決まり。

    『奇形は誉れ』そのためには、真っ当な者は躊躇なく葬る。さもなくば……。

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著者プロフィール

赤松利市
一九五六年、香川県生まれ。二〇一八年、「藻屑蟹」で第一回大藪春彦新人賞を受賞しデビュー。二〇年、『犬』で第二十二回大藪春彦賞を受賞。他の著書に『鯖』『らんちう』『ボダ子』『饗宴』『エレジー』『東京棄民』など、エッセイに『下級国民A』がある。

「2023年 『アウターライズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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