卒業タイムリミット (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575525502

作品紹介・あらすじ

高校で人気の女性教師が誘拐され、72 時間後に始末するとネット動画で予告された。3年生の黒川のもとに「誘拐の謎を解け」と挑戦状が届く。仲間になったのは、体育会系男子、学年一の美女、幼馴染みの優等生。事件の背後には、思いがけない真相が――。『このミス』大賞出身作家が送る青春の光と影を描いたタイムリミット・ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 「一人一人に居場所を」をモットーとする欅台高校の女性教師が誘拐され、さらにネットにアップされた監禁動画では72時間後に彼女を始末するという犯人の宣言もなされる。そして卒業式を三日後に控えた三年生の四人に対して犯人からの挑戦状が送り付けられ、彼らは事件の解決に乗り出すものの、なぜこの四人が選ばれたのかということすらわからない。彼らは無事に誘拐事件を解決できるのか。そして犯人の目的は。スリリングな展開から目が離せないミステリです。
    とても素晴らしいモットーを掲げたように見える欅台高校ですが、実態はかなり窮屈なものです。「告白カード」って何それ。全力で打ち込むこともそりゃ大事だと思うけれど、何事もずっと全力だと疲れちゃうよね……と思ってしまいました。理事長の掲げる理想は分からないでもないけれど、実現するのは難しいですしそれを押し付けるのは良くないなあ。
    不登校ぎみの黒川、元サッカー部の荻生田、美少女の澪、優等生のあやね、この四人がなぜ選ばれたかの謎がまた魅力的です。随所に挿入された「告白カード」からそれぞれが抱えた秘密が徐々にわかってくるものの、しかしなぜ彼らなのか。最終的に真相がわかると一気に納得でした。特に黒川の秘密には驚愕です。
    犯人のやったことは間違いなく犯罪だし正しいとは思えないのだけれど。どこかしらすっきりしてしまうところもあるのは事実です。読後感は爽やかさすら感じました。

  • これは好き。だし、ラストのどんでん返しと果てに現れた物語はいい。
    ミステリーでしか語れない物語は素敵。

  • 作中で印象的なのは、最終場面の母と子の会話。主人公・黒川良樹の教師嫌いの元凶の父親。黒川良樹が記憶に刻まれた父親の姿、それは周囲から捻じ曲げられた偽りの姿だった。教師としての真の父親の姿を母の口から語られ、長年拗れていた母子関係が和解した場面には心打たれた。
    父親・黒川正樹がよく言っていたという「教師の命令をよく聞く優等生を可愛がるだけじゃ、教師が教師たる意味がない」
    この言葉は教師だけでなく親にも当てはまる。
    自分の学生時代、こんな言葉を投げかけて欲しかった。黒川正樹のかつての教え子、小菅泰治がやったことは許されることではない。
    ただ、教師誘拐事件のことで送られた挑戦状。それによって、黒川良樹は3人の同級生との絆を深め青春を過ごしたと思うと、小菅理事長がやったこと全てが無駄ではなかったのかもしれない。事件を通しての青春とは何とも皮肉なことだが。不良少年の気持ちが分かる彼は、やり方を変えていればきっと良い教師になったのではないか、と思わずにはいられなかった。

  • 不正を明かせば大人が助けてくれる、悪いやつには罰が下り、辛くても報われる、共に闘う仲間が必ずいる。そんな学校と教師の在るべき姿を書ききってくれた。コミュニティの外側(友達でもない、ただ同じ学年の人)に個人の物語を共有できる同士がいた、という設定も救いだ。過去の経験を互いに明かし合うシーンが印象的で、どうしようもなく悔しい過去は友人の存在で糧としてゆける。その存在は今近くに居ないとしても、必ずどこかで出会える。構成は確かにツッコみたくなるが、学校や教師の存在とは?という視点で読むとサイコーでしかない。

  • ミスリードに見事に引っ掛かった~。これが事件に繋がっていくのか。
    警察が最後まで犯人を見つけられなかったのには違和感ですが、犯人良い人じゃん。
    やり方は酷いけれど。
    伏線もいっぱいあって面白かった。
    4人とも卒業しても友達だといいなあ。特に黒川とあゆみ、この2人はずっと良い関係でいてほしいです。

  • なんだかんだで救われる。
    上手くいきすぎてるような気がしないでもない。
    でも面白い。人間描写がとても丁寧。

  • 表紙が綺麗なイラストだったので、怖さ弱めのミステリかと思ったが、描写が細かく夜1人で見るには少し怖かった

    実際に考えたらありえないトリックだが、それぞれの抱える内情や関係が面白かった

  •  高校で起こった人気美人教師・水口里紗子の監禁事件。その謎を解け!との挑戦状を受け取った4人の卒業間近の高校3年生たち。彼らはこれまで繋がりはほとんど無かった。札付き問題児の黒川良樹、優等生の高畑あやね、グランプリ優勝美少女の小松澪、サッカー部のホープだった荻生田隼平。彼らは若手教師・伊藤倫太郎の協力を得て卒業式までの3日間のタイムリミットに挑む。なぜこの4人が選ばれたのか…?徐々に明らかになってきた彼ら4人そして水口、伊藤の他、多くの教師の抱える秘密。主人公・黒川の推理はいくつも揺れる。しかし、最後は全くどんでん返しの結論。やはり若手女性小説家だからこそ書けるような青春物語であり、推理小説。やや展開に無理は感じないでもなく、重複した物語に混乱を感じないでもなかったが、楽しく読ませてもらった。

  • 犯人の動機に対して手段が行き過ぎな感じがするとか、展開が犯人にとって都合良すぎる(学校内の捜索を断られたら令状とってやるでしょう)などありましたが、全体的にテンポ良く読めました。
    告白文の使い方が上手くて、違和感を感じながらも騙されました。

  • 青春ミステリすこー

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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