ホテル・ピーベリー<新装版> (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
3.22
  • (63)
  • (222)
  • (463)
  • (113)
  • (21)
本棚登録 : 4071
感想 : 296
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575525724

作品紹介・あらすじ

木崎淳平は仕事を辞めて、ハワイ島のヒロを訪れた。友人から勧められた日本人が経営するホテルは「リピーターを受け入れない」ことが特徴だという。しかし、同宿者がプールで溺れ死ぬ事件が起きてしまう。直後にはバイク事故でもう一人が……。このホテルには「なにか」がある。最後のページまで気が抜けない、不穏な空気に充ちた傑作ミステリーの新装版!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたは『ハワイ』が好きですか?
    
    そんな質問に、はい♡大好き♡です、と迷わず答える私。このレビューを読んでくださっている方の中にもそんな答えに間髪入れず頷いていただける方も多いと思います。コロナ禍以前は年間に160万人もの日本人が渡航していたという夢の舞台、それがハワイです。

    そんな『ハワイ』にあなたはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?『はじけるようなまぶしい太陽』、『窓を開けると、心地よい風が吹き込んでくる』、そして『椰子の木を揺らす風の音以外、なにも聞こえない』、『それにしても静かだ』と感じるひととき。その幸せの瞬間は、彼の地を訪れたことのある人しかわからない特別な魅力に満ち溢れたものだと思います。『なんたって、気候がいい。暑いには暑いが、風がさわやかだ。人も親切だし、それこそ日本語が通じる場所も多い。旅行のストレスはほとんど感じなかった』というハワイ。

    そんな彼の地を舞台に描かれた作品がここにあります。『あそこは不思議な島だよ。行った人間を魅了する』という『いろんな顔を持っている』ハワイの魅力を堪能できるこの作品。そんな地に初めて赴いた主人公が『このホテルの客はみんな、嘘をついてる』という不穏な空気をそこに感じるこの作品。そしてそれは、一人の客が語る『きっとおもしろいものが見られる』という言葉が暗示するその先に近藤史恵さんが鮮やかに描くミステリーを見る物語です。

    『成田からオアフ島までは七時間。そこで乗り継いで、ハワイ島まで一時間』という飛行機から降り立ったのは主人公の木崎淳平。そんな木崎は『帰国便は三ヶ月後。長い長い休暇だ』とこの島でのこれからを思います。『日本人は少ししか』おらず、『ハワイで二番目に大きな町だと聞いたのに、空港のまわりはなにもない』と『思っていた』ハワイのイメージと異なるヒロの街に戸惑う木崎。そんな時、『木崎くん?』とバンに乗った『四十歳くらいの日本人女性』に話しかけられました。『キャミソール一枚で、ブラジャーさえしていないことがはっきりわかる』その女性を見て『瘦せていて、胸もほとんどないからいやらしさはほとんど感じないが、やはり少し戸惑う』という木崎は後部座席に乗りました。そして、『もうひとり同じ便でくるはずなんだけど』と女性が話す中、『ホテル・ピーベリーの方ですか?』と日本人女性が現れました。『木崎淳平くんと、桑島七生さんね。わたしは瀬尾和美。よろしくね』と挨拶した和美は早速バンを走らせてホテルへと向かいます。『仕事をやめて、四ヶ月ほど経ったとき』、『杉下という友人に』、『もったいないじゃないか』と言われた木崎。そんな木崎に『ハワイはどうだ?』と海外旅行を提案する杉下は、『ハワイ島に行ったとき、おもしろいホテルがあったんだ』と『部屋は全部で六室』というホテルの話を始めます。『このホテルには妙なルールがある』と語る杉下は『そのホテルに客が泊まれるのはたった一回だけ。リピーターはなしだ』とそのルールを説明します。いつしか心惹かれてしまった木崎は、ハワイ行きを決断し、今そんなホテルに到着しました。『和美さんは既婚者で、旦那はヒロで働いている』と、夫婦で経営しているそのホテル・ピーベリーには佐奇森真、蒲生祐司という二人の男性が先客として宿泊していました。彼らと共に木崎と桑島が、和美の料理で夕食をとっているところに『サングラスをかけた男性が入って』きたかと思うと『挨拶すらせず』立ち去ってしまいます。『ごめんね、感じ悪くて』と和美が謝るその男性が和美の夫・洋介でした。そして自室に戻った木崎は目が冴えてしまいます。そんな時、プールの音が聞こえました。外に出て見ると『プールで立ち泳ぎをしながら男がこちらを見ています』。『新入りか?』と訊かれ『そうです』と答えた木崎の元へプールを上がって近づいてきて『これから三ヶ月いるのか?』、『俺は…あと一ヶ月ってとこだな』と言う男『の口調に、嘲笑のようなものが潜んでいる』と感じる木崎。そんな木崎に男は『楽しみにしてろよ。きっとおもしろいものが見られる』と言うと自分の部屋へと入ってしまいました。そして、ホテルで長期滞在を始めた木崎の前から、不可解な事故によって人が相次いで亡くなくなるというミステリーな物語が始まりました。

    “様々な顔を持つハワイ島の自然と、人生の夏休みを謳歌する人々が抱える闇を巧緻な筆致で描く、一気読み必至の傑作ミステリー“と宣伝文句にうたわれるこの作品。そんな作品の舞台はハワイ諸島最大の島でもあるハワイ島の東海岸にあるヒロという街です。このレビューを読んでくださっている方の中にもハワイ大好き、ハワイに何度も訪れている、という方がいらっしゃるかと思います。私もハワイには何度か行ったことがありますが、訪れてみるまでに抱いていたイメージと、訪れて体感したイメージがこれほどまでに違うのかというくらいにイメージが変わる場所、それがハワイだと思います。この作品でもそんな感覚を『実は俺も行くまではそう思ってた。でもあそこは不思議な島だよ。行った人間を魅了するんだ。小さな島々なのに、信じられないくらいいろんな顔を持っている』という言い方で登場人物に語らせていますが、それはまさしくこの感覚です。そして、そんな風な捉え方を前提に描かれる物語はハワイ大好きという方にはたまらない魅力を感じる表現に満ち溢れています。まずは、そんなハワイを描写した表現を幾つかご紹介したいと思います。

    まずは気候について『世界には十三の気候区があるって知ってる?』いう和美は『熱帯、温帯、寒帯、乾燥帯… ほかにも、砂漠気候とかツンドラ気候とかね。で、ハワイ島にはその十三のうち、十一までもあるの』という驚きの説明をします。ハワイ諸島最大の島として『ビッグアイランドと呼ばれていても、四国よりもずっと小さい』という小さな島に『世界中の気候が集まっている』というその事実。色んな気候が集まっているということは、そこに世界各地の色んな景色を少しづつ目にすることにもなります。そんな光景を目にして、たまたま友人から勧められ、積極的意思なくこの島を初めて訪れた主人公・木崎が『思った以上にこの島はいろんな顔を抱えている』と興味を抱いていく様子はハワイを初めて訪れた人たちの感覚そのものだとも思います。一方で、そんな風に世界の気候が入り乱れるハワイ島を訪れた木崎が感じたのは『常夏のまぶしいほど暑い太陽を想像していた』というイメージに反し、『ひとつの島が、雨の降る地域と降らない地域に、くっきりと分けられる』という雨の降る側に暮らすことになった驚きでした。『ハワイで二番目に大きな町』とされるにも関わらず『空港のまわりはなにもない』というヒロの町。しかし、流石にそこはなんと言ってもハワイです。『パームツリーの並木の向こうに海が見えて、やっと南国らしい風景になる』と描かれていくハワイの風景は、ハワイ好きの人にはそれだけでゾクゾクするものがあると思います。それは、買い物の情景もそうです。『さほど大きくはない』と聞いたヒロのスーパーマーケットは、『日本人の感覚で言うとかなり大きい。駐車場も果てしなく感じるほど広かった』という木崎の感覚、『ここはまるで体育館の中に売り物が並べられているようだ』と描かれる様子はハワイを知るあなたが感じた感覚そのものだと思います。また、そんな出先での食事の場面もリアルです。『てっぺんまで昇った太陽の日差しは炙られるように強かったが、それでも日陰に入れば途端に過ごしやすくなる。日本の夏の暑さとはまるで違う』という中、テラス席に座る木崎が頼んだ『サンドイッチは、少し躊躇してしまうほど大きかった。しかもそれに、たっぷりのフライドポテトが添えられている。とても食べ切れそうにない』といういかにも初ハワイのあるあるです。そして、ハワイと言ったら外せないのがパンケーキです。一緒に買い物に出た桑島がオーダーした『パンケーキも、皿いっぱいの大きさのものが三枚も重ねられていて、マグカップのような容器に入ったメープルシロップが添えられていた』という表現、ハワイ好きの人はそれだけでもうたまらないと感じるのではないかと思います。そんな風にハワイを知っていく木崎は『アメリカだからスケールが大きいのか、それとも日本がみみっちすぎるのか』という感想も抱きます。その他にもハワイを感じさせる表現が頻出するこの作品、間違いなくハワイをよくご存知と思われる近藤さんが描くハワイを舞台にしたこの作品。ハワイ好きの人はそれだけの理由であっても是非とも手にすべき作品だと思いました。

    そんな作品は一方で宣伝文句にもうたわれる通りのミステリー作品でもあります。『五ヶ月前までは小学校の教師として働いていた』、『普通なら教師は年度の途中で退職したりしない』と訳ありの過去が少しづつ語られていく主人公の木崎。そんな木崎は熱にうなされる中、『冷たそうな髪と、なにもかも見透かすような大きな瞳』を見て『ごめん、ごめん。早希』と夢の中に繰り返し一人の女性の名前を呼びます。早希とは何者なのか?木崎にどんな過去があったのか?そこに隠されたまさかの事実に驚愕する物語は、主人公・木崎に見えていた読者のイメージを揺るがします。そんな物語には、幾つかの謎めいた言葉も登場し、作品のミステリーな雰囲気を盛り上げてもいきます。そんな四つの言葉をご紹介しましょう。

    まず一つ目はハワイへと赴くきっかけとなった友人の杉下が語る『このホテルには妙なルールがある』というものです。それが『そのホテルに客が泊まれるのはたった一回だけ。リピーターはなしだ』というその内容。世の中に数多あるホテルはゲストのリピートを期待して”おもてなし”をするのが当たり前だと思います。そんな中で”一元さんお断り”ではなく、”一元さんしか認めません”という感覚は摩訶不思議です。二つ目には同じホテルに宿泊する青柳という客が語った『楽しみにしてろよ。きっとおもしろいものが見られる』という言葉です。こんな意味深な言葉が語られると読者としてはその先の展開に大いに期待してしまいます。三つ目には客の一人が語る『このホテルの客はみんな、嘘をついてる』という言葉です。一見、善人ばかりと思える人々が穏やかな会話をする様が描かれる物語に『嘘』という言葉が与えるインパクトは強烈です。そして、四つ目にはこの作品の書名ともなっている『ピーベリー』が絡むものです。ハワイに行かれた方ならご存知だと思いますが、『ピーベリー』とはハワイで採れるコナコーヒーの中でも高級とされるものです。普通のコーヒー豆が『ふたつ一緒の莢の中に入っている』一方で、『莢の中にひとつしか入っていないの。だから希少なの』という『ピーベリー』。そんな『ピーベリー』のことを和美はこんな風に語ります。『なんか可哀想よね。ほかのコーヒーはふたつでひとつなのに、この子はひとりぼっち』。どこか意味深に語られるその言葉は、舞台となるのが『ホテル・ピーベリー』であり、それがこの書名にもなっていることから読者に大きな引っ掛かりを感じさせていきます。そして、物語はミステリーらしく『事故が起こったのは、昨日の午後だったらしい』と、宿泊客の一人が『プールで溺れて…』と急死したことで大きく動き始めます。そして、そんな物語は、亡くなった人物が残した『緊急連絡先に、電話をしたんだけど、まったく違う人が出たの』と、読者を一気にミステリーのど真ん中へと誘っていきます。それは、近藤さんならではの極めて読みやすい文体と、そこかしこに顔を出すハワイを感じさせる描写の数々もあって、もう”ページを捲る手が止まらない”という感覚の中に、一気に読み切ってしまう物語でした。

    『死んだ人は、もう読めない本のようだ。彼のことを知りたいと思っても、知ることができるのはほんの表層のことだけだ』。

    人の死を前に自身が抱える鬱屈とした人生を思う主人公の木崎が、ハワイという独特な空気感漂う地で過ごす様が描かれるこの作品。近藤さんの描く絶品のミステリーが、ハワイを舞台に描かれるこの作品。ハワイでの日々を『ここの居心地がいいのは、停滞していられるからだ』と冷静にも語る木崎の抱えるその闇、そして「ホテル・ピーベリー」に隠されたまさかの真実に読者が驚愕する結末が描かれるこの作品。ミステリーも得意とする近藤さんの真骨頂を味わうことのできる素晴らしい作品でした。

  • さらっと手軽に短時間で読める中編ミステリーです。

    木崎淳平は5カ月前、小学校の教師を辞めてハワイから一時間のヒロという街の近隣のホテルに3か月間の滞在を予定しています。

    そのホテル「ピーベリー」は、和美さんという女性がほとんど一人で切り盛りしていて夫の洋介はヒロの街で店を経営しています。

    「ピーベリー」は初めての客しか泊めないホテルで一回につき、一番長くてビザの切れる3か月までです。

    そこには佐奇森真、蒲生祐司、青柳という3人の男性と桑島七生という女性客が宿泊しています。

    そして、木崎は寝ぼけて和美さんとただならぬ仲になってしまいます。

    そんなある日帰国まであと二週間だった蒲生がホテルのプールに落ちて事故死してしまいます。そして蒲生の身元を調べるとパスポートがみつからず家族に連絡できなかったのです。皆、驚きますが、青柳は「このホテルの客はみんな嘘をついている」と言います。

    そして、次に青柳がバイクの事故で亡くなります。

    「長すぎる夏休みは人の心を蝕む」という言葉が印象的でした。

  • ハワイ島にあるホテル・ピーベリーは日本人が経営する小さなホテル。長期滞在客が多いが、なぜかリピーター客は受け付けない。

    宿泊客の相次ぐ不審死。
    主人公の謎に満ちた過去。
    さらには、オーナー夫人との密やかな関係…

    でも、重くはないです。
    軽くサクッと読める。
    優しい語り口だけど、読者を引き込む力があって、一気に読ませる。

    ピーベリーはコーヒー豆の品種ではなく、丸豆のこと。
    通常コーヒー豆は実の中に生豆が2粒向き合うように入っており、楕円の形状から平豆(フラットビーン)だが、1つのコーヒーの実の中に種子が1つしか入っておらず、丸い形をしたコーヒー豆をピーベリーという。

    希少で、クセが少ないことから飲みやすいと言われる。

    まさしくこの小説の印象そのままだなぁ、と思った。

    近藤史恵さん、初読み。
    「片づけの人、小説も書くんだー」とこんまりさんと勘違いしてた笑

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      お久しぶりです!
      戻ってきました笑

      こんまりさんで爆笑しました笑笑
      近藤史恵さんて、自転車作品のイメージがあります。
      以前、そ...
      たけさん

      お久しぶりです!
      戻ってきました笑

      こんまりさんで爆笑しました笑笑
      近藤史恵さんて、自転車作品のイメージがあります。
      以前、それに面白さを感じたのですが、シリーズものだったようで、途中から結局読まなくなってしまって、以降たまたま短編とかで出会った時しか触れてないんですよね…
      2023/02/09
    • たけさん
      naonaoさん、おかえりなさい!
      試験お疲れさまでした。

      僕、こんまりさん…じゃなかった近藤史恵さん、あまり存じ上げませんでした。
      笑っ...
      naonaoさん、おかえりなさい!
      試験お疲れさまでした。

      僕、こんまりさん…じゃなかった近藤史恵さん、あまり存じ上げませんでした。
      笑っていただけてよかったです笑

      ブクログ、だいぶシステム変わりましたよね。
      コメント書くとき、レビューや前のコメントが読めなくて少し不便だな〜
      2023/02/09
    • naonaonao16gさん
      おはようございます!

      実は無事試験終わったものの、ちょっとロス…
      時々家で何したらいいか分からなくなります笑

      ブクログ、仕様変わりました...
      おはようございます!

      実は無事試験終わったものの、ちょっとロス…
      時々家で何したらいいか分からなくなります笑

      ブクログ、仕様変わりましたね!!
      確かにコメントしやすいけど、コメント中に前のコメント見れないのは不便ですね( ´・ω・`)
      2023/02/10
  • 近藤さんの初読み。
    表紙がかわいいなあと思ったのと、
    みんな嘘をついているというキャッチコピーに惹かれ購入!

    主人公は、とある事から教師を辞めて、友人の勧めもあり旅に出る決意、そこがハワイ。
    リピート客は泊まれないという謎めいた決まりをもつホテルから物語は始まる。

    ミステリーなんだろうけれど、恋愛要素も少し含むのかな。
    ページ内に文字ぎっしり感でもないので、最後まで一気にスラスラ読めた。
    なんか、一直線に物語進み最後も一気に終わった読後感。

    リアリティは、どうなのか?問題は否めないが、そんな事できるー?みたいな。
    和美さんが最後までよくわからないというか、なんか馴染めなかったです。。

    ハワイ行った事ないけど、地球に13の気候がありハワイは11の気候あるのは、初めて知った。
    ちょいと数間違えてるかもだけどこんな感じだったような笑

    他の方のレビュー読んでみよう、私何か読み飛ばしちゃった可能性もあるかもな、、、
    ミステリー読みたい秋です。

  • みんな嘘つき
    コーヒー
    リピーターお断り

    不穏な感じはありつつも
    前半は淡々としたイメージ
    でも
    人がひとり死ぬ事件が起きてからは
    怒涛です
    一気読みでした

    甘美と不穏とが入り混じったミステリー
    ハワイの遠慮のない陽射しと
    その陽射しが生みだす濃い影
    丁寧な描写が印象的でした

  • 主人公の恋愛や過去と向き合おうと葛藤する心の動きが話のメイン、そして時々ミステリー
    日本人が経営する、リピーターを受け入れないハワイ島ヒロにあるホテル・ピーベリー
    静かでのんびりとした生活の中、客の一人がホテルのプールで溺死、そして今度はもう一人がバイク事故死と続く
    主人公にとってホテル・ピーベリーでの生活は、色々なしがらみを一度保留にして過ごすことが出来る場所だった
    日本で問題を起こして教師をできなくなった自分、小学生の女の子に恋をしてしまった自分、仕事をせずに怠惰に過ごす自分、そして受け入れてくれる人がいないと嘆く自分
    そんなすべてを一度眠らせて過ごす場所
    まさにコールド・スリープ。。。
    でもハワイに滞在することが解決するために必要だったわけではなかった

    ラストでハワイに居る好きな人に対し、連絡をくださいと主人公が繰り返し伝える
    誰かに受け入れてもらうことを何もせずに待つのではなく、自分自身が受け入れる側の人間になろうと考えた成長ぶりが伺えた
    主人公に対して少々嫌悪感を持ちながら読んでいたので、そんな意味でラストは良かった
    しかし一度日本に帰って4ヶ月後の事なのに、彼の帰国後の生活がどうなっているのかが描かれていない
    もやもやが残った

    この作品を読んでいると、ハワイ島に行って、美味しいコナコーヒーを飲みたくなる

  •  痛いミステリでしたね。

     人は嘘をつく生き物だし、嘘をつかないで生きていくことなんてできないし、その辺りがしんどい作品だなぁと思いつつ読んでました。

     ミステリというよりも文学よりの作品だなぁとも思ってました。

     生きていくことは時にしんどいことでもありますからね。

  • 旅に行きたくなるミステリー。
    女性陣は桑島さんも、和美さんも好き。逆に男性陣に魅力的な登場人物がいない(´-`)女性作家さんですが、男性を巧く描いているからでしょうか。

  •  ハワイ島にある、日本人夫婦が経営する小さなホテル。なぜかそこはリピーターお断りで…。宿泊する日本人旅行者も、みんな一癖あるか訳ありのような雰囲気を醸し出している。2件続けて事件が発生する前から不穏な空気感が漂い、ミステリーの展開にに引き込まれる。
     過去に女性に関わる傷をもち、仕事も棒に振り傷心した主人公が、事件に巻き込まれながらも、新たな希望を持とうとするのだが、人生はままならない。
     終末が急展開し過ぎ感があるのと、〝ひとつのコールド・スリープ〟として未来に託して主人公は救われたのか? と考え込んでしまった。
     しかしながら、ミステリーと別の側面で(並行して)ハワイの自然や気候、食文化等も描かれて、3か月もどっぷりと浸って堪能できたらどんなにいいだろうと思った。

    • さてさてさん
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、こんにちは!
      この作品お読みになられたのですね。お書きになられている通り、確かに急展...
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、こんにちは!
      この作品お読みになられたのですね。お書きになられている通り、確かに急展開は気になるところですが、私もハワイにどっぷり浸れる描写の数々にとても魅了されました。そもそも書名の『ピーベリー』からして、農園を見に訪れて説明してもらったことを思い出しました。ハワイ行きたい!が思いっきりくすぐられる作品ですよね。
      直近のタイミングでこの作品のレビューが見れて思わずコメントさせていただきました。
      2022/05/22
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      さてさてさん、おはようございます!
       ご丁寧にコメントしていただき、ありがとうございます。いつもレビューやブックリストを拝見し、さてさてさん...
      さてさてさん、おはようございます!
       ご丁寧にコメントしていただき、ありがとうございます。いつもレビューやブックリストを拝見し、さてさてさんの作品に対する見識と温かな眼差しに感心しております。己を反省しつつも真似はできません。
       ハワイ経験があるのですね。うらやましいです。浮かんでくる情景も違ってくるものなのでしょうね。触発されて私も! と思っても、なかなか現実的ではなく…。愚痴ってしまいました。
       今後ともよろしくお願いします。
          NO Book & Coffee NO LIFEさん
      2022/05/22
    • さてさてさん
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、コメントありがとうございます。
      何度も訪れたわけでもありませんが、たまたま行ったこと...
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、コメントありがとうございます。
      何度も訪れたわけでもありませんが、たまたま行ったことのある街が舞台でしたのでイメージがわきました。他の作品でもそうですが、知っている街が舞台だと違う起点からも興味がわきますね。
      私は女性作家さんの小説に絞って読んでいるのですが、NO Book & Coffee NO LIFEさんの本棚にも私の知らない作家さんを何名か見つけました。藤岡さん、一穂さん、永井さんメモさせていただきました。レビュー読ませていただいてとても面白そうです。ありがとうございます!
      こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
      2022/05/22
  • "ピーベリー"莢の中に1つしかない独りぼっちのコーヒー豆。ハワイのホテルピーベリー,のんびりした前半,宿泊客2名死亡から不穏な空気。最後主人公が謎解きするが,不祥事で社会から外れた彼の行く末は不安。

全296件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

近藤史恵の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小野寺史宜
米澤 穂信
朝井 リョウ
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×