それでも会社は辞めません (双葉文庫)

  • 双葉社 (2023年10月11日発売)
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575526981

作品紹介・あらすじ

人材派遣会社で働く初芽は、営業部での成績がふるわず上司から叱責される日々。ついに、会社中の使えない社員が集められたという噂のAI推進部へ異動になった。パワハラ、セクハラの横行する理不尽に耐えるのは、生産性の低い無能な社員だから? 「逃げたらいい」と「逃げ場なんてない」の狭間で揺れ動く初芽だが――。輝かない人々に当たる心温まるスポットライトは、これまでと同じ世界を新しい見え方へと変えてくれる。ビジネスの世界に精通した著者が従来と真逆の価値観で描く、決してかっこよくないヒーローたちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 和田裕美さん初読みの『それでも会社は辞めません』の概要と感想になります。

    書店で見つけた本作の装画から、社畜の奮闘記かな?と想像しましたが全然違いました(笑)

    派遣会社に正社員で入社した福田初芽(はじめ)は、派遣スタッフ一人ひとりと真摯に向き合うことを信念に営業部で頑張っていたが、AI推進部なる部署へ異動を言い渡される。そこは会社のお荷物と囁かれるような人々が集まる場所で、初芽は仕事のモチベーションを見失っていく。しかし、とあるラッキーアイテムを機に初芽とAI推進部の見える世界は次第に変化して…。

    平凡に思える仕事の毎日であっても、振り返れば幸せの積み重ねなんだと思わせてくれる本作は、仕事に疲れた時に程良い癒やしを与えてくれるセラピー的な作品でした。

  •  人材派遣会社に入社して間もなく、窓際部署に追いやられた女性社員とその仲間たちの奮闘を描くヒューマンドラマ。

     主人公の福田初芽と彼女と関わる5人の人間の物語が描かれる。
              ◇
     その日、福田初芽は朝から石黒部長に叱責され小さくなっていた。理由は些細なことだった。会議資料8部をカラーコピーしてしまったというだけである。だが、営業成績が上がらない初芽に対し石黒の叱責は容赦ない。生産性が低いクセに会社に損失を与えたというのである。

     結局この日、役に立たない人間は不必要とばかりに初芽は営業部を逐われAI推進部へと異動することになった。
     初芽が意気消沈して向かった AI推進部。それは11階フロアの片隅にあり、物置と見紛うような薄汚い部屋だった。
    そしてそこは、社内の IT環境の整備を担当しているわけでもなく、社運を左右する情報分析を行っているわけでもない、いわゆる誰もが嫌がる雑用をさせられるだけのリストラ部屋だった。
    ( 第1話「福田初芽(23)の叛逆」) ※全7話。

          * * * * *

     この会社、本当に大丈夫なのか。
     読み始めてまずそう思いました。人材不足が露呈しているように見えます。業界中堅なのだから、もう少し有能な人間がいるのではないかと思うのに、あまりにひどい。

     まず、頼りない2代目社長に代わって会社の実権を握っているのが、いち営業部長に過ぎない (「取締役」ですらない ) 石黒であるという点。重役連中の影も見えません。普通は副社長なり専務なりが若社長の補佐役につくでしょう。

     2つ目は、石黒の直属の部下たちの力量のなさ。石黒に阿るだけで、あとは上司の威を借りては目下の者にパワハラを繰り返すしか能がない。こんな阿諛追従の愚物を左右に置いているのは、そんな人材しかいないか、石黒がそれだけの人物でしかないかのどちらかでしょう。

     さすがにAI推進部に属する面々は多少は不器用であるものの、人間性が豊かで思いやりに満ちていて、実は一芸に秀でていたという設定は歓迎でした。
     けれど、ラストの一発逆転が……。

     それまで憎まれ役として登場してきた人間がすべて善良な人だったというのはどうなのでしょう。人間はコンプレックスや置かれた境遇でパワハラやセクハラをしてしまうのであって、悪意の塊というわけではないとでも言いたかったのでしょうか。 ( 小狡い人間はどこまでいっても小狡いだけだと思います。)

     もっと違うクライマックスを用意してもよかったのではないかと思いました。

     人気作品で、図書館で予約してから2か月待ちました。人生に対する希望を喚起する作品で、たとえ一時的に不遇であっても前を向いて生きていこうというメッセージはよくわかります。ただ、リアリティに欠けるという点で、小中学生向きの内容に留まっていたのは残念に思いました。

  • 今まさに仕事を辞めようとしてる自分。笑
    辞める決意は変わらなかったけど、とても良い作品だった。
    仕事だけでなく日常でも思い出せば心がスっと軽くなるフレーズがたくさん詰まってる。

    前向きになれるオススメの1冊。


    作中より印象に残ったフレーズ

    "悩んでも怒っても変わらないことに意識を向けるより、相手の心の中に意識を向けてちょっとだけ理解できると人の心は癒やされるんだ"

    "誰かへの強い憎しみは、自分の心の水槽に泥水を流すじゃないですか。汚染されていくのは憎い相手ではなく、自分の心だから"

    • Manideさん
      みたらし娘さん、おはようございます。

      タイムリーですね(笑)
      私も仕事を辞めようとして、ほぼほぼ決まったところだったので、私も興味惹かれる...
      みたらし娘さん、おはようございます。

      タイムリーですね(笑)
      私も仕事を辞めようとして、ほぼほぼ決まったところだったので、私も興味惹かれる作品です。最近、いろいろなところでめにする作品なので。

      前向きになれるのはいいですね。
      私も早く読みたい作品です。私も辞めちゃうけど(笑)
      2023/11/09
  • お仕事小説だけど社会人というより
    高校生や大学生とかにも読んでもらいたいと思った。

    生産性だけが全てじゃない。

  • パンダスタッフAI推進部の人々のお話。
    最初の初芽は入社1年目。就活のときにかっこよく見えた部長は入社後の対応とがらりと変わり・・就活マジックか、たぶん、よくある話。それでも自分からは会社を辞めないという。いい根性だと思う(いい意味で)。
    AI推進部に異動した先輩や後輩には嫌味しか言わないのに部長にはこびへつらう彼。退職勧奨ぎりぎりの嫌味を言う彼。ある種、能力。それでもそういう人が組織では残っていける。

  • ちょっとしんどいお話かとおもってたら案外そうでもなかった。

    最後の最後は「おっ?」と予想の斜め上をいきましたが、それはそれで良かった良かった。

    生産性や効率無しでは会社は成り立たないけれど、それだけじゃなく当たり前のことをちゃんとしてる人間がちゃんと報われる社会になってほしいなぁと思う。

  • 何があっても会社を辞めないことも価値観。
    何がなくても会社を辞めることも価値観。
    何が正しくて、正しくなくてというのは究極的には個人の価値観で決まる。
    同じ価値観を持った人が集まればクロがシロにもなるし、逆も然り。
    そんなことをあれこれ考えながら読んだ本。
    深く考えるとすごく難しい問題を投げかけている本だと思った。

  • ざっくりと表現しますと…人材派遣会社に勤めている新入社員と、彼女を取り巻く社員たちと展開されるお仕事小説です。
    最初に出てくる上司の発言一つひとつが、主人公の働く意義を全否定するような表現となっています。現実でも聞いたことがあるような発言です。パワハラと捉えられても否定できない位だなと感じました。

    会社では結果が重視され、結果を残せた人が出世していくのは良くあるパターンだと思います。その一方で目に見える結果がうまく残せない人がいるのも事実です。作中の主人公や異動先の社員たちは後者の方だと思います。しかし彼ら彼女らは困っている人と向き合い、見捨てずに手を差し伸べ、道を切り拓くきっかけを掴めるよう関わっている働き方をしていました。それは数値としては表現されにくいですが、一人の人の生き方を大きく変えられる力だと思います。もし現実であれば、主人公たちのように真剣に向き合ってくれる人に仕事を紹介してもらいたいなと、淡い思いを抱きました。
    目立つ業績を残す人もいれば、下地を丁寧にコツコツと整える人もいる。働くときの心構えとして、業績だけが全てじゃないと心に留めて仕事に臨みたいと思わせる作品でした。

  • 会社のお荷物社員の姥捨山として扱われているAI推進部。自己退社を促す、そんな部署で働く人たちのはなし。

    だれもが仕事をやめたいと思ったことがあると思うが、そんな気持ちを少し和らげてくれる。

    会社を水槽と見立てて、上でキレイに泳いでいる魚がいれば下で水槽のゴミを食べてくれるエビもいる。
    ほんとそうだと思います!
    どこの会社もそうだと思うけどエビの扱いや待遇がよくならないのは、エビのおかげで水槽がキレイなのが魚たちは分かってないんだよね。
    人の上に立つ立場の人に読んでほしい

  • 仕事が辛くなってきたときに読めば元気になるビタミン小説。しんどかっても、「置かれた場所で咲きなさい。見方を変えましょう。自分の仕事は誰かの役に立っている。みんな辛く苦しい場面でも、歯を食いしばって頑張ってるんだな。」と、自分を奮い立たせてくれた。水槽のエビの話は心に残る。

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著者プロフィール

和田裕美(わだ・ひろみ)
作家、京都出身。
外資系教育会社での勤務経験から『世界No.2営業ウーマンの「売れる営業」に変わる本』を上梓しデビュー。著書の累計は240万部を超え、女性ビジネス書作家の先駆けと呼ばれている。『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』『人に好かれる話し方』『人生を好転させる「新・陽転思考」』小説『タカラモノ』、そしてロングセラーとなる『和田裕美の営業手帳』など著作多数。華々しい経歴の陰にあった家庭環境や自身の極度な引っ込み思案を背景に書いた絵本『ぼくはちいさくてしろい』は、道徳科教科書『いきるちから』に掲載されている。NHK Eテレ「芸人先生」レギュラー出演、FM FUJI「WADA CAFE」パーソナリティーなどメディアでも活躍。2023年、自身の小説『タカラモノ』を舞台劇化し、2024年6月(東京)・7月(大阪)で再演した。

「2024年 『2025 W's Diary 和田裕美の営業手帳2025(マットレッド)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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